134.大きな闇
「おやおや、一番乗りは君だったか……」
聞き覚えのある声に反応し、その声がした方へと顔を向ける。
男は俺を見るなり意味深な笑みを浮かべた。
「色々聞きたいことがあるって顔だね」
「当然だ。こんなもん見せられては嫌でも聞かざるを得ないだろ」
この目の前にあるものは何かは大体察しがつく。
そして”コイツ”をどう使おうということも……
「まぁまぁそう焦るな。お友達が到着したら、冥土の土産に洗いざらい話してあげるからさ」
はははっと余裕綽綽の態度を取り始める。
勝利を確信した人間の顔だ。
「みんなは無事なんだろうな?」
「それについては心配ないよ。もうすぐここに来るはず……おっ、噂をすれば」
男が俺の背後に目線を向けた瞬間、嫌な予感を感じた。
俺が後ろを振り向くと、さっき見た謎の歪みのようなものが発生し、その歪みから吐き出されるように、ソフィアたちが現れた。
「あ、これって……」
気づいた時にはもう遅かった。
俺はそのままソフィアたちの落下クッションとなった。
「う、うぅ……あれ、ここは?」
まだ意識が朦朧としているからか俺の存在には気付いていない。
てか……
(く、苦しい……!)
俺の顔は今、完全に埋め尽くされた状態にある。
どこにって?
多分この感触的にソフィアの……
「あ、そう言えばランス……ランスはどこに!?」
意識が元に戻りつつある時に俺を心配するソフィア。
俺はここだとアピールしようにも全体重をかけられ、それどころではなかった。
(早くそこをどいてくれ……!)
苦しさのあまり心の中でそんな言葉を叫んでいたその時、ようやく助け船が出される。
「で、殿下。ランスくんならそこに……」
「えっ……あれ、ランス!?」
ようやく俺の存在に気付いてくれたようで、急いでその場から身を退けた。
「し、死ぬかと思った……」
いつぞやの感覚。
確か前にも似たようなことがあったような……
「ご、ごめんなさい! まさか下にいるだなんて……」
ペコペコと頭を下げてくる。
俺はそんな彼女に「大丈夫だ」と一言言い、宥めた。
あとちょっとで大丈夫とは言えない状況になっていたかもしれなかったが、彼女も悪気があってやったわけじゃない。
ただの不幸な事故なのだ。
「さて、全員お揃いとなったところでそろそろラストパーティーを始めるとしましょう。時間も限られているんでね」
男のその一言で俺たちの意識は特殊魔法が込められた太い鎖で繋がれたデカブツへと一斉集中する。
ドロイドさんたちは身じろぎもせずにそれを見ていたが、ソフィアは表情から見て驚いているのが分かった。
「な、なんですかあれは……魔物?」
いや違う。
俺も最初はそう思ったが、あの力の高まりは魔物が出せるようなものじゃない。
あれは……
「……神獣だ」