131.終演
押し寄せる魔物たち。
だが俺たちにとっては数など問題ではなかった。
普段から鍛え上げている俺の魔法。
同じく毎日の厳しい鍛錬を受けている国家騎士。
優秀な回復魔法を多数持つ王女様。
攻撃と回復のサイクルが見事に噛み合った俺たちはいくら倍以上の魔物が来ても、全て追い返してしまった。
「これで、最後……っ!」
最後の一匹を仕留める。
辺りには俺たちが始末した大量の魔物の亡骸が横たわっていた。
「ば、バカな……! たった三人でこの数を……あり得ない!」
流石にこの結果には驚いているようで。
でも正直なところ、前のドラゴン退治と比べたら全然楽なものだった。
「さぁどうする? 俺たちとしてはそこをどいてもらえればそれでいいんだけど」
最初から戦う意思はないからな。
というか最初は見つからないことが前提だったんだが……
「な、舐めやがって……!」
だが男の表情はすぐに冷静さを取り戻す。
そして何故かニヤッと笑みを浮かべると、
「ふっ、そうか。ならもういい。俺も限度なくやらせてもらう」
まだやるつもりなのか……
(いやあの顔を見る限り、やる気満々だな)
男は両手を天に掲げると、声を張り上げた。
「君たちは完全に俺を怒らせた。面倒だからって適度に手を抜いていた俺がバカだったよ……」
手を抜いていたのか……?
殺意満々な感じだったのに……
てか面倒だから敵相手に手加減だなんて、随分と舐められたもんだな。
「悪いけど、君たちには完全に消えてもらう。塵も残さずにね……」
最初は口先だけの奴かと思っていた。
が、それはすぐに違うと気付く。
「……ん、なんだ。この魔力の高まりは……」
両手を掲げた男の身体から謎のオーラが湧き出てくる。
同時にひしひしと伝ってくる魔力の圧。
男の身体は邪悪なオーラに包まれ、天井のゲートもその霊気に反応する。
「ランス、これは……!」
「ああ、ちょっと面倒なことになりそうだ」
「恐らく大型召喚ですね。過去に黒魔術師の捕縛した際に似たような光景を見たことがあります」
「ということは一線級の魔物が?」
「出てくる可能性は高いですね。……召喚に成功すればの話ですが」
でも魔力の勢いは緩むことなくどんどんと肥大化していく。
「この力……久々だ! 俺の魂が震えている……奴らを殺せとな! ふふふ……ははははははっ!」
闇のオーラと共に力は膨れ上がっていく。
もうここまで来れば成功は確実だろう。
だがその時だった。
「もう終わりですよ、茶番は」
魔力の高まりが臨界点に達しようとしていた時、パチンと指を鳴らすような音と同時に力がどんどん引いていく。
そしてゲート諸共……全てが無に帰ったのだった。