130.幕開け
数体の魔物が俺たちの行く手を阻む。
魔物たちは紅の眼をぎらつかせながら、狩る気満々の威嚇をしてくる。
「くそっ、ゴールはすぐそこなのに!」
「戦いは避けられないみたいですね……」
最後の最後でこの展開。
運は俺たちに味方してくれたけど、その代わりに試練を与えたということか。
「やるしか……ないか」
奴らは俺たちを本気で狩りにくるだろう。
ここで全滅してしまっては今まで頑張ってきた意味がなくなる。
かといって逃げようと背を向ければ、やられてしまう。
戦うしか……ない。
「ブライアンさん、またソフィアをお願いしてもいいですか?」
「ランス、まさか一人で魔物を相手にするつもりですか?」
「そう思ってたけど、二人には後衛をやってもらいたいんだ。正直この数を相手にするのは骨が折れるからな」
最初は俺とブライアンさんで前に出てドンパチやろうと思ったが、それではソフィアの方に牙が向いてしまう可能性が高い。
ソフィアが使う魔法の主軸となるのは回復魔法だ。
一応俺がいくつか攻撃魔法を教えてはいるが、実戦で使えるものは少ない。
ブライアンさんも先の戦闘を通じて、攻撃というよりかは防御特化なところがあったのでこのような結論を下したわけだ。
「分かりました、殿下は私がお守り致します」
「ありがとうございます。ソフィアも、サポート頼めるか?」
「も、もちろんです! さっきまで守られてばかりだったので、今度はわたしが皆さんのお役に立ちたいと思っていたところです!」
やる気で眼を輝かせるソフィア。
こういう時はもっと目の前に現状に恐怖するもんだと思うんだが、ソフィアにそれは一切なかった。
毎度ながら流石のメンタルである。
「さ、もうそろそろ始めるとしますか。後で死体処理するのが面倒だけど仕方ない……殺れっ!」
――GUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUU!!!
ゲート解放した男の指示で魔物たちは一斉に俺たちへと襲い掛かって来る。
戦いの火蓋はきって落とされた。
「……バースト!」
まずは俺に襲い掛かってきた二体の魔物を撃沈。
さらに奥にいた魔物数体に炎属性の範囲魔法を使って一気に焼き尽くした。
ソフィアたちの方にも何体か魔物が行ったが、ブライアンさんが全部処理してくれたみたいだ。
「ほう……なるほどね。流石はここまで忍び込んでくるだけのことはある。ならば……これならどうかな?」
男は再び腕を天高く挙げパチンと指を鳴らした。
すると。
ゲートから出てくる黒い影と共にさっきの数とは比にならないほどの魔物が次々とその姿を露わにする。
(数で押し倒す作戦か……)
いいだろう、受けて立ってやる。
一応ブライアンさんたちの方にも気を配りながらも、俺はすぐに臨戦態勢を整える。
「この数なら、流石の君たちもお手上げだろう。さぁ、地獄を見るがいい!」
第一ラウンドは終了と共に。
第二ラウンドが幕を開けたのだった。