124.人質
「あれってどう見ても……」
同じ連中とは思えない。
完全に行動を制限されているところ見ると、人質か何かだろう。
「いや、待て……」
俺はふとあることを思い出す。
それは前にドロイドさんが話してくれた、人が何者かに次々と誘拐されているという奇怪な事件だ。
誘拐された人たちはそれから消息不明になっていたらしいが……
「これは、もう一つ大きな情報を手に入れてしまったみたいだな……」
これで誘拐犯の犯人は完全に特定できた。
(でもなんで人質なんか……)
あの事件を聞いてから、人質を利用した交渉とかは全く行われていない。
むしろ騎士たちが総出で探しても見つからないほどだったらしいから、恐らく隠し通すことに専念していたのだろう。
と、なると別の用途に人質たちを利用するということになる。
さっき拘束されていた人は奥の部屋に連れていかれたようだし……
「いや、考えるのは後だな。とにかく今は……」
彼らを助けることに集中しよう。
探知魔法を引っ掛けたところ、部屋の中にまだ人がいるようだし。
「とはいっても……」
見つからずに彼らを逃がすことは至難の業だ。
その上、ここは建物の高層部。
流石に人を抱えて飛び降りるわけにはいかないから、下まで降りる必要がある。
ここまで順調に事を進めてきたが、思わぬ壁が……
でも、見捨てるわけにはいかない。
「多少強引でも行くしかないな」
見つかったらその時はその時。
今はいちいち方法を考える暇があるなら動いた方がいい。
人命救助。
これが最優先だ。
俺は周りの状況を確認しつつも、例の部屋へと近づく。
今のところ周りに人の気配はない。
さっきの連中も奥の部屋に入っていってから出てくる様子はないし……今がチャンスだ。
俺は部屋へと近づき、ドア前に一度立ち止まる。
「トラップはない。鍵も……よし、開いてるな」
探知魔法を展開し、中に仕掛けがないことを確認。
扉も開いていたので、俺は音をたてないように素早く中へと入る。
すると頭に黒い袋を被せられた人質たちが3名、手足を拘束された状態で横たわっていた。
俺はすぐに一人目の袋を取り、手足の拘束具も熱量の高い魔法で切り裂いた。
「だ、大丈夫ですか!?」
「う、うぅぅ……き、キミは……?」
「助けにきました。回復魔法をしますので、少し楽にしていてください」
俺は回復魔法を放つと、他の人たちも同様に解放させた。
「た、助かったよ……ありがとう」
「ありがとう、君は命の恩人だ」
「いえ、それよりも今は一刻も早くここから抜け出さないと……」
お礼を言われるのは非常に嬉しいが、今は一刻を争う時。
それにさっき連れていかれた人も救助しなくては――
「おい、貴様何者だッ!」
その大きな声は扉がバタンと開くと同時に聞こえてきた。