123.運命は託された
「≪カモフ≫」
敵地へと潜入する前に迷彩魔法を発動する。
「さて、ここからどう動くか……」
屋根裏への道を切り開くのは俺の手に託された。
言い出した手前、二人の為にも必ず成功させないといけない。
「奥に数人……上にもいるのか」
このフロアはとにかく広く、吹き抜けになっており、二階側からも下が見える仕様になっている。
下手に動けば上の連中に見つかるし、無理に動けば下の連中に見つかる。
いかに相手から見えない位置から迅速な判断を下し、素早く移動できるかがカギとなってくるだろう。
幸いなことにこのフロアは広い上に物陰で身を隠す場所も多い。
潜入するには申し分ない環境だ。
「この人員の数はフロアの広さに準じて……ってわけか」
とにかく入り口付近で止まっていても何も始まらない。
「……≪ポイントサーチ≫」
探知魔法の一種である索敵術式を展開。
視界が数秒ほど暗くなり、敵と認識した相手だけがオレンジ色に光り輝く。
ただ索敵できる範囲に限りはあるが。
「この付近だけでも20はいるか……」
だが潜伏している奴はいない様子。
姿を消して見張っているという場合があるからな。
索敵に引っかからなかったということはいないという認識でいいだろう。
部屋の広さ的に最奥付近にいる敵の明確な数は分からないが、今は安全地帯へ一つ一つ踏んでいくことが重要だ。
俺は視認でも周りの敵がいないか、そして二階側にいる連中の動向も気にしながら少しずつ先へと進んでいく。
出来るだけ姿勢を低くしながら。
それら一連の行動を繰り返し、俺はフロア内をどんどん奥へと進んでいく。
「……ようやく中間地点か」
気がつけば入り口から結構奥の方までやってきていた。
今のところ、特に大きな問題はない。
予想よりも早いペースだ。
物陰がいい仕事をしてくれている。
「次点に行くとしたら、あそこか……」
次なる行動地点を把握。
同じく索敵と視認をするが……
「敵がいなくなった……?」
突如姿を消す敵たち。
さっき視認した時は3人ほどいたのに……
「ん、あそこは……」
前方右斜め前に。
二カ所ほど小さな扉があった。
俺は少し近づき、再度索敵すると、部屋の中にさっきの3人が。
「部屋の中にいたのか……」
俺としてはかなり助かる。
おかげでノーリスクで次の地点まで到達できた。
「えっと、次は……」
次なる行動を考え、ルートを模索していた時だった。
「オラぁ、早く歩けぇ!」
さっきの部屋から人が出てくる。
結果に反して索敵した敵三人に加え、最後にもう一人の存在があった。
しかし……
「あ、あれは……!」
その状況を見た時、俺は一瞬目を疑った。
というのも、最後に出てきた人物は口にテープで貼られ、手足には拘束器具がつけられていたのだ。