117.潜入2
「ソフィア、何かあっても俺の後ろにいるんだ。分かったな?」
「わ、分かりました!」
建物内潜入に成功してから。
俺たち一行は出来るだけ姿勢を低くしながら、目的地の屋根裏へ向けて進んでいた。
今のところ、怪しい気配はない。
それと少し薄暗い。
「てか、汚いな。なんだこのゴミの量は……」
「匂いもかなりきついです……」
裏口から入ると真っ先に俺たちを待っていたのはゴミ袋の山だった。
パッと見る限り、中身はカフェで出た生ゴミとかその他諸々。
しかも袋からゴミが飛び出ているのもあり、袋の口を閉じていないのもあるからか匂いが部屋内に充満していた。
挙句の果てに一つの場所に纏めてあるわけではなく、そのまま適当な場所に放りっぱなし。
これだけ見ても、しっかりとした管理がされていないのがすぐに分かる。
飲食店の裏口とは思えないほどの不衛生さだ。
「せめて、一つの場所に纏めておけよな……」
「こういうのを見ると、綺麗にしたくなっちゃいますね……」
「分かる。超分かる」
ソフィアの気持ちはよく分かる。
俺も家事を始めてからこういう光景を見かけると、綺麗にしたいと思うようになったからだ。
ちなみにこれは余談だが、最近ソフィアは屋敷の家事をするようになった。
今までそう言った類のものは使用人に任せていたから、初めは色々と大変だったらしいけど、最近はだいぶ慣れてきたみたいだ。
たまにアリシアさんと一緒に厨房に立って料理しているところも見かけるし。
とまぁ日常話は今は置いといて……
「屋根裏だからとりあえず最上階まで行かないとな……」
「確かこの建物は5階建てでしたね」
「ああ。先は長いな……」
この建物。
実は外装の割に中は結構広く、ドロイドさんが言うには構造をある程度把握していないと迷うかもしれないとのことだった。
だから作戦開始前にドロイドさんがある程度構造が把握できる地図のようなものを持ってきてくれた。
当然、何故そんなものを……と聞いてはみたが、ドロイドさん曰くそれは言えないらしい。
ギルドマスター権限的な何かだろうか?
気になる所だが、色々あるのだろうとあえて触れないようにした。
おかげで建物内の構造はある程度は把握できた。
だが、それよりも一番心配なのは……
(見つからずにそこまで辿りつけるのか……だな)
ここが敵地なら見つかった瞬間、俺たちは即刻排除対象となる。
その上、場所が建物内というのもあってハチの巣になる可能性も高く、逃げ道がなくなることもあり得る。
その場合は魔法を使用してもいいとのことだが、どちらにせよ俺たちからすればかなり不利な状況であることは変わらない。
見つからないように慎重に動くつもりではあるが、少々運任せなところもあるのは事実だ。
だから上手くいくよう、神様に祈るしかない。
「あ、ランス。あそこに階段がありますよ!」
「お、本当だ」
裏口から入って少し行くと階段があった。
恐らく従業員用の階段だろう。
「周りに人の気配は……うん、ないな」
「行けそうですか?」
「大丈夫そうだ。少しペースを上げるぞ」
「はい!」
俺たち一行は階段へと早歩きで歩いていく。
だが、その時だった。
「おい、貴様らッ! そこで何をしているッ!?」