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閑話 その後のみんな…③

 つい先ほどを振り返って(一本角の鬼視点)



 今日は、なんて楽しい日なのでしょう。インフォメーション係になって、何百年と経ちますが、こんな素晴らしい日は初めてです。


 毎日毎日、説明とクレーム対応、質問もありきたりなものばかりで正直飽きていた。そろそろ配置替えを希望しようかなって思っている時に彼女は来た!


「あの……すみません。お聞きしたいのですが、ここはなんですか?」


 私は、いつものように答える。


「ここは、書いてありますようにインフォメーションです。分からないこと聞きたいこと等を教える場所です」


 この後の質問も分かっている。自分はどうしたら良い?とか、六文銭の入手の仕方等を聞かれるだろうと。だが……


「何故、英語なのですか?案内所とか日本語でいいのでは?」


 キターー!私が聞いて欲しかった質問が!待ち続けて数十年、もう旬は過ぎたけど堪らず直ぐに・・・


「ここも現代に合わせて欧米かっ!・・・・一度言ってみたくて……いや、失礼しました。欧米化しようとしているらしく、グローバルになっています。他にも何かありますか?」


 仕事中だし後輩もいるから、態度には出さないけど、今テンション凄い上がってます。舞い踊りたい程に!ありがとう!お嬢さん、何でも聞いてくれ教えてあげるよ。


 内心の嬉しさが顔に滲み出てるのか、目の前の子はちょっと呆れ気味の顔している。


 その後の質問は、六文銭についてや向こうに渡ることについてだった。『普通ならお答えできない』と答えるのだが、ちょっとサービスで"最終的"には皆渡れると教えてあげた。


「私なんで、若返っているの?ここはどこ?それは教えてくれる?」


 この場所を聞かれるのはよくあるけど、若返っている理由を聞かれたのは初めてだ。大抵みんなラッキーとか、こういう仕様なのかと自分で納得して、改めて聞いてくる事は無い。周りを見ると、年配者もいるのだから疑問に思うと思うのだが……。そこは自分だけという優越感なのか……。おっと、答えねば。


「貴方が若返ったと言うなら、その年齢が一番罪を犯しているからだと思われます。」


「どういうこと?」


 これはちょっと、分かりづらかったですかね?もう少し分かりやすく説明する文を考えないといけませんね。おっと、その前に……。


「まずは、ここに来る人の特徴から説明します。ここには、何らかの理由で命を落とした方がきます。それは事故だったり、病気だったり、殺されたり、寿命がきたり等でです。そして、生きていた時の年齢までの間に、罰する必要があると判断された年齢で、ここに来ます。早く言えば、一番やんちゃだった頃ですね。貴方の場合その10代後半ぐらいが、そうだったのでしょう」


 この説明も長いですね。やっぱり、もう少し短くて分かりやすい説明文を考えないとですね。忘れるところでした。もう1つの質問にも答えないと。


「それと、ここが何処かという質問ですが、ここは地獄の入り口です。皆さんに分かりやすく言うと三途の川と言われてる場所です」


 これは、すぐに納得してくれたみたいですね。


「他にも聞きたいことありますか?」


 もう、だいたいの事は説明したので特には無いと思うけど、一応聞いてみる。


「あの立て札をみると、六文銭持ってる人と持ってない人がいるみたいだけど、何故?」


 あぁ。まだその質問が残ってましたね。


「六文銭は亡くなった人が、向こうで苦労しないようにと家族が持たせるお金です。現世でちゃんと供養された時点で手元にきます」


 彼女は困った顔をしながら、服にポケットが無いか探し始めた。なので大抵入ってる所を教えてあげた。


「皆さんだいたい、右の懐に入ってる事が多いのですが…」


 入ってない事もあるので、必ずとは言えないけど、この子はどうかな?


 言われた所を彼女は確認していた。袋が2つ出てきた。2つとは……結構多いですね。しかも、見た感じぎっしりと入っているようだ。


 その2つを両手に持ち、暫らく固まっていたかと思うと、顔を赤くしていた。何をしているのか最初分からなかったけど、出てきた所と、2つという事と、顔を赤くしていることから察してしまった。気まずくて、視線を逸らそうとしたら、その前に目が合ってしまった。


 なんて声をかけたらいいのか分からなくて、黙っていると


「この袋が入ってる所は、死んだ時に家族が入れた所と同じですかね?」


「………そうなります」


 彼女は誰がやったか、思い当たるらしく、ブツブツと仕返し案を呟いていた。その後は、お礼を言って船着き場に立ち去って行った。平静を装ってたけど、まだまだ気持ちが荒れている感じだった。



ー 数分後


 その後も何人か対応していると、さっきの娘とその後ろに2人が付き添って、こちらに向かって来ているのが見えた。なので、"一度対応しているから"と最もな理由をつけて、その三人になるように順番を操作した。


 私が声をかける前に、一緒にいた幼子が声をあげた。


「うわー、ツノかっこいい」


 そんな事言われたのは初めてで、大抵恐くて泣かれるか、隣の様な二本角の鬼の方が人気がある。子供に素直な反応をされて、嬉しくない訳がない!


 しかも、私は一本角を誇りに思っている。そんな角をこんなに褒めてくれるのは、凄く嬉しい。おっと、仕事をしなければ。


「どうしました?また、何か質問ですか?」


「いえ、今回は質問ではなく、お金の譲渡の保証人をお願いしようと思い来ました」


「譲渡の保証人?」


 どういう意味でしょう?お金の譲渡なんてみんな勝手にやってるのに……。困った顔をしている私に。


「万が一にも、譲渡を強制だと疑われない為に鬼さんに保証人として見届けて貰おうと思って……後で保証書みたいなのを戴けると助かります。よろしくお願いします」


 こんな頼まれごとは初めてだ。この娘は余程、用心深いのだろう。わざわざ、何かあった時のための保険を用意して欲しいとは……。そういう娘は凄く好ましい。


 「わかりました。自分がこの譲渡の保証人をします」


「ありがとうございます!それでは、ゆうり君に10文銭を。コバさんには、残りを半分にした20文銭をそれぞれ譲渡します」


 結構思いきって譲渡しますね。その後は話してなかったのか、しばらく揉めていたが、何とか話はついたようだ。


「皆さん譲渡は、済みましたね?これが証明書になります。これを船守りに渡してください」


 揉めている間に用意した証明書と金のブローチを渡す。


「わーい、きんのむしだー」


「あ!それ!」


 幼子は凄く喜んでくれて、それを見てるだけで嬉しくなってくる。途中、騒いでるのに気付いた後輩が余計な事を言おうとしたので、視線で黙らせた。


「ん?なにかあるの?」



「いえいえ、大丈夫ですよ。これを船守りに渡して下さい。隣の彼はまだ新米でね。この制度を知らないから吃驚しただけですよ」


 あのブローチは船守にだけに効くアイテムだ。普通なら、あれを渡せば多少の便宜はしてくれるだろう。


「新米って貴方も若いですよね?見た目も同じぐらいじゃないかと思っていたのですが…」


「私の種族は小鬼なので、こんな見た目でもかなりの年齢になってます」



 それはよく言われる。この見た目のせいで後輩によく舐められる。そんな後輩を私は実力行使で黙らせる。


 年齢分、毎日鍛えてきたし、若く見られるコンプレックスを何とかしようと、より筋トレにせいをだした。結果、体質のせいか見た目は変わらなかったけど、力はついた。


「それは!すみませんでした。見た目で判断してしまいました。保証書とブローチありがとうございます」


「いえいえ、少しでも役に立てば嬉しいです」


 そう言って、今度こそ船着き場に向かって行ったみたいだ。暫くして、人が減ってきた時、隣にいた後輩が話しかけてきた。


「先輩!あれ良かったんですか?あんな高いの3つもあげちゃって!」


「あの子たちには、嬉しい言葉も貰ったし今までに無い反応で楽しませて貰ったからいいんだ。それに、そんなに高くないよ」


「嘘だ!あれ、自分の給料三ヶ月分くらいする筈です!それを3つも・・・」


「あぁ……そうか、私だと1つでだいたい一月分だし、普段そんなに使わないから、孫に玩具を買ってあげた感じだな。あんなに喜んでもらえると、気分が良いね」


 本当に今日は、最高の1日だった。まだこれからも、ここで頑張って行こう。


次はいよいよ本編に戻ります。


2週間後に更新します!

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