閑話 その後のみんな…②
小林さんが亡くなった後の話(庄司視点)
本当に母さんは、どうしようもない人だった。俺の彼女をよく、怒鳴りつけたり虐めたり……。たまたまその現場を目撃した時は、かなりのショックだった。俺がいない間、常にこんな感じなのかと、何かあったら俺に言ってくれとも、彼女には伝えたのに、大丈夫大丈夫ばかりで何も言ってこなかった。
だから余計に、ちょっとした事が目について直ぐに母さんに文句を言った。そんな俺を逆に止める彼女がまた、イライラを募らせた。そんなに頼りないのかと!実際に彼女とも話した。
「何か母さんに言われたら、直ぐに俺に言ってくれれば、なんとかするから!」
「庄司さん、大丈夫ですよ。私が全然出来てないから、怒られてるだけだから。ずっと今まで、実家だったから料理もまともに出来ない私が悪いの」
「なんで、庇うんだよ」
「庄司さん落ち着いて、庇ってるのではなく事実を言ってるだけよ」
そんなことを言う彼女に俺は納得いかなかった。その話し合いから何日か経って、ずっと怒られてる彼女が可哀想になり、言ってもダメだからと行動をした。
彼女に一切相談しないで、部屋を借り、荷物をまとめ彼女を連れて出てきた。彼女は暫く呆然としていたけど、新しい部屋に連れて来たら、俺が家を出たのが本気と分かったらしく、かなり怒られた。
彼女の為にと思ってやったのに、相談しなかった事を、三日三晩怒られた。
「私はお母様の所へ様子を見に行って来ます。なんなら、また一緒に住んでくれるようにお願いしてきます」
「えっ!ここで二人で一緒に住もうよ」
「二人で住むのはいいですが、お母様とこんな関係のままでは嫌です。それに、ここは貴方が一人で決めた部屋です。二人で住むなら、私の希望も入った所がいいです。とりあえず、行ってきます」
そう言って、出掛けてしまった。"付いて来るな"オーラが出てたから、一緒に行くとは言わなかった。これ以上怒らすと怖いと、ここ数日でよく分かりました。でも、やっぱりまだ怒っているみたいだな。3日間じゃ済まなかったらしい。この部屋も気にいらなかったみたいだし近々解約しないと……。帰ってきたら、もう一度よく話さないと……。今後の事や、母さんの反応とか新しい部屋の希望とか。
プルルルル・・・
暫らくすると携帯が鳴った。色んな着信音を試したけどやっぱり電話はこれだよね。ディスプレイを見ると、母さんに会いに行ってる彼女からだった。
「もしもし、どうした?母さん居なかったか?」
「庄司さん!大変よ!お母様が血だらけで倒れているの!声を掛けたり、ゆすっても動かないの!私どうしたらいいの?」
「救急車に連絡して!今、俺もそっちに行くから!」
「お願い!早く来て!」
(なんだなんだ、どうなっているんだ?母さんが、血を流して倒れているって?しかも意識が無いとか、何があったんだ!?)
俺は混乱しながらも急いで、実家に向かった。実家まで電車で1時間、この1時間がもどかしい……。
実家に着いたら、救急車と警察も来ていた。
(なんでまだ、救急車が発進していない?それに警察って……)
「あ!庄司さん!こっちこっち」
俺に気付いた彼女が警察の方で手招きしている。泣いたのか、目が赤くなっていて、ハンカチを握っていた。
「なんで警察がいるんだ?母さんはどうだった?大丈夫なのか?まだ救急車が出ていないって事は、受け入れてくれる病院が決まってないのか?」
俺は、はやる気持ちのまま、思ってる事を全て質問した。彼女は、いっぺんに沢山の事を質問されて、何から答えて良いのか戸惑ってる感じだ。
「ちょっといいですか?あなたが、息子さんの庄司さんですか?」
「はい。そうですが……」
「先程までどちらに?」
「家に居ました。彼女から連絡をもらったので、急いで来ました」
「家はお近くですか?」
「電車で1時間ぐらいの所です」
「一昨日の夜はどちらに?」
「一昨日?……同僚三人と一緒に飲んでました。色々と相談したい事があって・・・」
「その同僚の方の名前を教えて下さい」
「はぁ?そんなことより母さんは!?」
こちらは、急いでいるのにどうでもいい質問ばかり警察がしてくる。埒が明かないので、家に入ろうとしたら、警察官複数人に止められた。何故!?
「落ち着いてください。今から説明します。それと、現場検証が済んでいないので、家にはまだ入らないで下さい。」
「……現場検証ってどういう事だよ」
「お母さんの梅子さんは、一昨日の夜に何者かに刺されて、出血多量で亡くなっていました」
「・・・・亡くなった?」
「時間は夜の7時~9時ぐらいだと思われ、部屋が荒らされて金品が無くなってることから、空き巣に入られ運悪く出くわし、刺された模様です」
「・・・母さんが死んだのか?」
説明している警察官の話を、呆然と聞いている俺に彼女は、心配そうに寄り添ってくれている。そうしているうちに、家の中から人が出てきて、『親族がいるなら、確認してほしい物がある』と言われ、中に入る事ができた。
入る前に、靴にビニールを履かされ、余計なものには手を触れるなと注意された。付いて行くと、目の前にテープで人の形に貼られてる所に着いた。その形通りに、母さんが倒れていたと思うと、込み上げてくるものがある……。
「これなんだが……」
そこには、ダイイングメッセージみたいな物が残されていた。
『庄司をよろしく ヒロミさ~』
(何故弟に俺を任せるんだ?おかしいだろ)
なんて、母さんが最後に残した言葉に疑問を抱いていると、警察官から質問された。
「この『ヒロミさん』は、そちらの彼女さんの名前ですか?」
(ヒロミは弟の名前だけど?この人は何を言っているんだろう?)
「いえ、違います!私も誰だか分かりません」
俺がまたしても疑問符を浮かべてる間に、彼女が質問に答えていた。何故だかちょっと睨まれながら……
「庄司さん、この『ヒロミさん』とは、どこの女性であなたとは、どんな関係なんですか?」
警察官から再度聞かれた質問に、彼女が何故怒っているのか、ようやく理解できて焦った。
「ヒロミは女性じゃなくて、俺の弟です!」
両サイドから疑わしい視線が飛んでくる。後日、弟を呼び。母さんの訃報と母さんのせいで起こった浮気疑惑を払拭して貰った。
ー 最後のお別れ
本当に母さんはどうしようもない人だな。死ぬ時まで人を騒がせて逝くんだから・・・
(だから、これは浮気疑惑を被せられた仕返し、向こうで少し苦労しな)
そう最後に母さんに言って懐にある六文銭をそっと抜いた。
ゆうり君が亡くなった後の話し(父親視点)
まさかこんな事になるとは・・・。村の広場で遊んでいたから大丈夫だと思って、妊娠している妻の様子を見に行った。また、広場に行った時は見当たらなかったけど、きっと何処かで遊んでいるのだろう。行っちゃいけない所も教えてあるし、夕方になれば帰ってくると、あまり気にしなかった。
でも、夜になっても帰ってこなく、探そうにも辺りは真っ暗で何も見えない。それでも行こうとした俺を"明日から村人総出で探してくれる"という村長の言葉を信じて、その日は早く休んだ。
次の日は雨だった。村人総出で探してくれたけど、視界が悪く捜索は難航していた。そのうち、雨足は強くなり危険という事で、一時捜索中止となった。
それでも俺は探しに行こうとしたら、村人数人に止められた。1番効いたのは・・・
「馬鹿野郎!この雨の中探しに行って、もしお前になんかあったら、嫁さんとお腹の子はどうする?」
そう言われて、この雨の中探しに行くのは止めた。俺はその日、ずっと妻の側にいた。ただでさえ妊娠してて大変なのに、今回の事で心労が重なり、少し体調を崩していた。
次の日、朝早くから捜索を開始した。でも、思い当たる所が無くて、最後に行ってはいけないと教えた所を探しに行った。ここには堀があるのだが、思ったより深くて危険なので、絶対に近付かないように言ってあった。
まさかこんな事になるとは・・・。そこには浮いている、ゆうりが居た。俺は急いで引き上げ確認したけど、冷たくて息をしてなかった……。急いで街の医者に診てもらったけど駄目だった。
家に帰って待っている妻に報告した。辛かったけど、妻とこれから産まれてくるお腹の子を必ず守ると決意した。
ゆうりは、この村の埋葬の仕方で弔ってあげた。都会のとはちょっと違うけど、亡くなっても側にいるという神秘的な弔いだ。
(ゆうり、守ってやれなくてごめんな。次は絶対二人を守るからお前も、この子を守ってくれよ)
小林さんの名前出ましたねw
二人が六銭紋持ってなかった。理由の回でした!
次は1週間後に更新します!