閑話 その後のみんな…
猪俣よし子が亡くなった 後の話(滝視点)
たったいま、お祖母ちゃんが息を引き取った。最後の最後まで全然変わらない、いつものお祖母ちゃんだった。怒ったり、説教したり、殴ったり……あれ?上手くお祖母ちゃんの良い所が説明出来ないな。まだ、かなり動揺してるみたいだ。このままだと、ただの暴力を振るう短期なお年寄りみたいに思われちゃうな。まぁ、半分は合ってるんだけど・・・
死ぬ前に、明日の夕飯のリクエストまでしてたよ。本人はマジで言ったんだろうな。ただ、食べたいものを言っただけ、疲れたから寝ただけ、そんな感じだった。お祖母ちゃんの中では、次の日起きて肉を食べる予定だったのだろう。
これからは毎年、お祖母ちゃんの命日の日は、高級の柔らかいお肉だな。弟達の事は任せといて、安心して休んでくれ。
そう思いながら、まだ温かいお祖母ちゃんの手を握った。
一 お通夜について
今日はお祖母ちゃんのお通夜だ。最近はよく家族葬とかで、小規模で終わらせる葬儀が流行ってる。うちのお祖母ちゃんも大袈裟にではなく、家族でさっと終わらせて欲しいと願っているだろう。それをうちの父さんに伝えたが
「そうだろうね。でも、ちゃんと葬儀をやらないと後が大変な事になる。こればかりは、お祖母ちゃんには我慢してもらうしかないね」と言って苦笑していた。
始めは言ってる意味が全然分からなかったけど、父さんの手伝いで訃報を伝えた方がいい人リストを作っていったら、理由が分かった。もう、かるく100人超えてるし!これ、どこの芸能人の葬式ですかってぐらいの人数なんだけど・・・
どんな繋がりなのか父さんに聞いてみたら、殆どが『助けられた』とか『命の恩人』とからしい。
「本人は覚えてない!とか言って話さなかったけど、あちらさんが大体話してくれるよ。興味があるなら、こちらから話しかけてみなよ。快く話してくれるからさ」
と言っていた。命の恩人って……お祖母ちゃんは、やっぱり凄いな。そんなお祖母ちゃんに負けないように、僕も頑張らないと。
新しい決意と共に、リストをどんどん作っていく……
一 お通夜当日
長かった。この日まで、たった数日なのにやる事が多すぎて、何週間も経過した感覚だ。
お通夜と告別式に来れない人たちからの、お詫びの手紙と豪勢に見送ってあげて欲しいと、お金も一緒に送られてくる。送り返す訳にもいかないから、有り難くお葬式に使わせてもらう。あとで、お礼の手紙とお葬式の風景の写真を送らなきゃな。
今日は沢山の人が来るから、お祖母ちゃんも改めて綺麗にしてもらっている。お化粧してもらい、後は持たせるお金を入れて、服を整えてもらえば出来上がりだ。
僕は用意したお金を2袋、係の人に渡す。
「・・・あの、持たせるお金は6文でいいのですよ?何故、2袋もあるのですか?」
この質問に僕は当然のように答えた。
「えっ!だって、向こうで苦労しないようにと持たせるお金ですよね?この位は、最低限必要でしょう?本当はもっと持たせたいのに……没収されてしまったからね……」
「あれは流石に没収するよ。10袋はやりすぎだ。お前、本当にお祖母ちゃん大好きだよな。そのくせ、本人を目の前にすると素直じゃなくなる」
「・・・・」
「弟達がよくイタズラをして、怒られてるのをみて、構ってもらってる事にヤキモチ焼いて、それが拗れて素直じゃない性格になっちまったんだよな。」
「うるさいな。もういいだろう!」
父さんが僕をからかって遊び始めたので睨みつけてつい怒鳴ってしまった。さっき袋を没収された事も根に持っていた。
一部バレないように、隠して持って行こうとしたのに、父さんはマジシャンだったのかと思うぐらいに、手際よく次々と没収された。簡単に言うと身ぐるみを剥がされた……。服のあちこちに隠しといたのにやられた。
なんとか死守出来たのが、両手に持っていた2袋のみだった。
(少なくなっちゃったけど、ごめんね)
やっぱり自分で入れたくて、係の人から受け取って、お祖母ちゃんに詫びながら入れた。そしたら、ここきて弟達が……
「あ!そうだ!2つあるなら、1つは分かり難いところにしようよ」
「いいね、それ!上手く見つけられたらラッキーって事で」
そう言いながら、1つは少し服を返した、左の懐に入れていた。もう1つも、同じように右の懐に入れていた。懐と言うよりは胸辺りである……。しかも、落ちないように、しっかり紐を結んで貰っている。
弟達にそこまでの他意は無いんだろうけど、場所が場所だけに更にやらかしてしまってる感がある……。もう1つ見つけてラッキーとは、ならないだろうな。お祖母ちゃんなら『誰がやった?』って怒る案件だ。
あえて弟達には注意しないようにする。どんな形であれ罰が下ったなら、近くでお祖母ちゃんが見守っているって証拠だから……
お祖母ちゃん……弟達がまたイタズラをしているよ。早く怒りにこないと。
後で、お祖母ちゃんの話しをいろんな人に聞いてまわろう。僕にとって自慢のお祖母ちゃんの話を聞くのは好きだ。最後まで故人を思おう。
滝は、かなりのお祖母ちゃんっ子です。
次は1週間後に更新します。