異世界14日目 目的地までの道のりは遠い
休んでいた分、更新頑張ります!
「さっさとその宿に行って、用事済ませて解体やろうぜ。どうせかなりの量だろ?」
「!! なんで分かったんですか?」
「・・・・いや、冗談で言ったんだが……。そんなにあるのか?」
「さぁ〜、行きましょう!」
私はそれだけ言って目を外らした。それを見たカミューさんの顔が引きつっていたけど、見ないように努めた。見てしまったら、何か言われそうだったから・・・。
2人で月影荘を探しながら通りを歩いた。歩いた。歩いた。そして着いた東の詰め所へ。おい!
「カミューさん……詰め所まで来ちゃったのですが?この通りにあるって言ってませんでしたっけ?」
私は目を細めてカミューさんを見た。今度はカミューさんの方が目を逸らして話し始めた。
「俺は、多分って言ったんだ。絶対この通りにあるとは言ってない。それに、宿屋なんて縁が無かったから、どっかで見た程度しか知らん」
「そうでしたね。なら仕方ないです。ここまで来たのなら詰め所の人に場所を聞いてきます!ちょっと此処で待っていて下さい」
「おい、あいつ等は止めとけ・・・・おい!知らないぞ」
何か後ろから聞こえたけど、私はそのまま詰め所にいる衛兵さんの所へ向かった。ちょうど、手が空いた人に話しかけた。
「すみませ〜ん、ちょっと道を聞きたいのですが?」
「ん?何かな・・・・・チッ」
今まで笑顔で対応していたのに、私を上から下まで見るなり、あからさまに嫌悪感を出してきた。私は早く用事を済ましたかったので、諦めずに話しかける。
「あの〜、道を聞きたくて……」
「あぁ''?こっちは忙しいんだ!どっか行けよ」
そう言って歩いて行ってしまった。仕方がないので他の人に聞こうと思って、しばらく門の周辺をうろちょろとしていたけど、どの人もゴミを見るように私を見てくるだけで、近寄ると避けられる。全然話しかけられない。
ガチャッ
「先輩、昼飯お先でしたー。交代します」
「あぁ、ちょうど良かった。お前、そこのガキをどっかにやれ!さっきからうろちょろと仕事の邪魔だ」
(はぁ?私はただ道を聞きたいだけなのに、誰も答えてくれないからじゃん!いいわよ、このケンカ買ってやろうじゃない……髪を焼くか、服を濡らすか、切り刻んで笑い者にするか・・・)
売られた喧嘩をどう買おうと、色々と思案していたら、さっき詰め所から出て来た若い隊員さんがこっちにやってきた。
「おチビちゃんどうしたんだ?何か用事があったのか?邪魔にならない様にこっちで話そうな〜」
この詰め所の奴らは、皆どうしようも無いのばかりかと思っていたら、ちゃんと対応してくれる人も居て、少し怒りが落ち着いた。ちゃんと笑顔だし。
「すみません、ちょっと道を聞きたかっただけなんですけど……」
「あれ?君、カイルの知り合いの子だよな?」
「えっと、何処かで会いましたっけ?」
「西の詰め所で何回か見かけた。冒険者に蹴られた所、大丈夫だったか?」
こんな格好の私を、本当に心配しているって顔で聞かれて、この人はここの奴らと違うと言う事に安心した。
(なるほど……私が蹴り飛ばされたあの現場にいたのか)
「大丈夫でしたよ!大した事ありませんでした。私は、アリスって言います。よろしくお願いします」
「俺はハルトム。あの時は、助けに入るのが遅れてごめんな。険悪な雰囲気とか無いのに、いきなり暴行に及ばれて、反応が遅れちまった」
「あれは、私もビックリしました」
(理不尽な暴力がまかり通るのが、この世界だと身を持って痛感したけどね)
「そうだよな、恐かったよな?」
そう言いながら頭を撫でられた。
「でもな次の日、蹴った奴らとアリスちゃんが一緒に森に入って、なかなか帰ってこなかったから、あの日受付をしていた俺とカイルは、かなり心配したんだぞ。奴らは、はぐれたとしか言わないしさ!森に入ったら大人しくしてる!」
頭撫で撫でから、少しづつ力が入ってきてアイアンクローに変わっていた。
(あっ!この人、森に行く時に受付してくれた人か!って、なんか手に力がこもってきて……)
「っ痛い痛い痛い!離して下さい!」
「ちゃんと反省しているか?」
「はい!ったたた。反省しました!すみませんでしたたたた……」
「よし、それなら離してやる。今度からは、もう少し周りの気持ちも考えて行動するんだぞ!」
そう言って最後に頭をポンポンとされた。まぁ、今回の事は色々と周りに心配をかけたと反省していたので、この頭の痛みも甘んじて受け入れよう。
ようやく本題の宿屋の場所を聞こうとした時に、思いっきり腕を引っ張られて、誰かの背中に庇われた。
グイッ
「うわっ!」
「おい!大丈夫か!?」
「あれ?カミューさん?」
私の前に現れたのはカミューさんだった。私を背にハルトムさんを睨みつけている。どうしたんだろ?
「やっぱり、ここの詰め所の奴らは最低だな!こんな子供にも手をあげるなんて!」
「俺!?特に何もしてないけど?」
「嘘つけ!後ろ姿しか見えなかったが、こいつが『痛い』と叫んでいたのを聞いたんだぞ!」
「あ〜、カミューさん。あれは私のせいだから……私が、森に入ってなかなか帰ってこなかったから心配したと言うお叱りを受けてただけだから……」
「・・・・・・」
「因みにこの人は、私が森に入る時に受付をしてくれた人」
「お前……何してるの?」
しばらく私の言っている意味が分からなかったみたいで無言で固まっていたけど、話の内容がようやく頭に入ってきたことで、呆れた顔をされた。
「まぁ〜色々と・・・ハハハ・・・・。それより、カミューさん!ちょっと気になったセリフがあるんですけど?」
「ん?」
「カミューさんが "無駄に" 格好良く登場した時に『やっぱり、ここの詰め所の奴らは最低だな!こんな子供にも手をあげるなんて!』って言ってましたよね?」
「無駄は余計だ!……あぁ、言ったな」
「あれはどう言う意味なんですか?」
カミューさんに質問をしてみたら、またハルトムさんの方を向いて睨みながら説明をしてくれた。まるで何かを訴えてるかの様に・・・。
「ここの詰め所の奴らは、俺達みたいな汚い格好をしたガキや大人は、同じ人とは認識してないみたいでな、ゴミや石ころの様に無視か蔑んだ目で見てくる」
「でも、見てくるだけなんですね。さっきの私がされたみたいに……」
「あぁ、一応ここは街の玄関口で、他の街の商人や人が多いからな。表立って衛兵が町民に、暴力や暴言を浴びせてるのは対外的に宜しくないからじゃないか?なのに、お前に手を出してきたから助けに来てやったんだ。ありがたく思え」
そう言って、私に視線を向け胸を張ってきた。感謝しろって言う事らしい。でも・・・・。
「そこまで知っていて、なんで道を聞きに行くと詰め所へ向かった私を止めてくれなかったんですか!」
「俺はちゃんと止めたぞ。それを無視して行っちまったのはお前だぞ?」
「っうぐ、聞こえなかったんです!もっと、肩とか腕を掴むとかして、強制的に止めてくれれば良かったじゃないですか!」
「いや、どうせ無視されるだけで手は出してこないだろうから、社会勉強の為にそのままにした」
(なにが、社会勉強だ!無視される私を面白おかしく見てただけだろう!)
そんな言い訳を聞いた私は、カミューさんを睨みつけて、唯一チビの私に出来る攻撃……さっきみたいに足を踏みつけてやろうと、足を振り上げ力いっぱい下ろした。
ダンッ ザッ
私の渾身の一撃は失敗に終わった。
「そう何度も踏まれてたまるか!」
「くっそ〜〜〜」
ダンッ ダンッ ダンッ
「こら!逃げるな!」
「やだね。誰が好きこのんで、やられるか!」
私の足踏みを、ことごとく躱して逃げるカミューさんを追いかける事数分。
「はぁ〜、仲が良いのは分かったから、2人ともちょっと落ち着け」
「「誰がこんなのと!!」」
「はいはい。分かったから、一先ず止めて落ち着こうか」
それを聞いたカミューさんが、ハルトムさんの所で止まったので、私はチャンスとばかりに脛を蹴ってやった。
「いッ!」
「ふふふ……これで許してやろう」
「こいつ……」
ガシッ
「ん?」
私の攻撃で崩れさるカミューさんの前で勝ち誇っていたら、後ろにいた人に頭を掴まれた。
「俺は、止めろと言ったよな?」
「っ痛い!痛い痛い!すみませんでした〜!!」
2回目のアイアンクローを食らって、私もその場で崩れさった。痛みが引くまで2人で暫く蹲っていた。
「これで大人しくなったな。そっちの坊主が言う通り、この詰め所の先輩達にはそういった態度の奴が多い。俺に出来るのは、その事を市民からの声として、隊長に伝える事しか出来ない。すまないな・・・・」
「いえ、別に・・・・あんたが悪いわけじゃないし……」
「ありがとう。率直な意見も助かる」
そう言って、ハルトムさんはカミューさんの頭を撫でていた。始めはハルトムさんに敵意丸出しだったのに、自分の話しを聞いて素直に謝られて、カミューさんは見るからに狼狽えていた。面白い……ふふふ……。
「えーと、それで?何か俺達に聞きたい事があったんじゃないのか?」
「「あっ!」」
色々とあり過ぎて、本来の目的を2人とも忘れてしまっていた。
「えっと、月影荘っていう宿屋の場所を知りたかったんですが……」
「あぁ!それなら、そこの路地を入って暫く行くとあるぞ。看板が出てるからわかると思うが」
「そんな近くに……今までの時間は………いえ、ハルトムさん。ありがとうございました。時間を長く使ってしまってすみません。お仕事頑張って下さい!ほら、カミューさん行きますよ!」
「あぁ………」
「すぐそこだけど2人とも気をつけて行けよ」
私達はようやく目的の場所を聞いて向かう事ができた。ハルトムさんは良い人だけど、あそこの詰め所の衛兵は駄目駄目だな。私からも隊長さんに言えば何とかなるかな?
次回の更新は未定です!