三途の川らしい②
「あ!帰ってきた!」
「結構遅かったですね。何かありました?」
そこそこ収穫はあったんだけど、まずは確認しないといけないことがある。
「二人とも懐にお金ある?ゆうり君、胸の所なんだけど何かある?」
コバさんは確認後、横に顔を振り、ゆうり君は前を開けて見せてくれた。まだ見つかって供養されてないのか、二人とも持ってなかった。
(まぁ、譲渡出来るって書いてあるし私のを少し分ければいいか。ただ、万が一疑われるとやっかいだから……)
「二人ともちょっとこっちに来て」
私は、二人をインフォメーションの鬼の所へ連れて行った。ゆうり君は怖がるかなって思っていたら。
「うわー、ツノかっこいい」
と、はしゃいでました。言われた鬼も満更ではない様子。ニコニコしてた。
「どうしました?また、何か質問ですか?」
さっき、私の対応してくれた鬼だ。ゆうり君にカッコいいって言われてたからか、すっごい笑顔で話しかけられた。
「いえ、今回は質問ではなく、お金の譲渡の保証人をお願いしようと思い来ました」
「譲渡の保証人?」
突然連れてこられた二人は、訳が分からず、鬼も今まで譲渡を、目の前で保証人として改めてやられた事がないのか、皆がみんなキョトン顔していた。
「万が一にも、譲渡を強制だと疑われない為に鬼さんに保証人として見届けて貰おうと思って…後で保証書みたいなのを戴けると助かります。よろしくお願いします」
私は、それだけ言って頭を下げてお願いした。鬼さんは、始め吃驚していたが了承してくれた。また凄い笑顔だ
「わかりました。自分がこの譲渡の保証人をします」
「ありがとうございます!それでは、ゆうり君に10文銭を。コバさんには、残りを半分にした20文銭をそれぞれ譲渡します」
何も相談も無くやったから、二人は吃驚していた。私は、50文も懐に入れた家族に吃驚だわ。
「おかねもらっていいの?」
「うん。ゆうり君ここまで頑張って歩いてきたから、ご褒美だよ」
「わーい、ありがとう」
ゆうり君は素直に受け取ってくれたが、コバさんは、あげたお金を返そうとしてくる。
「こんな…全財産の半分なんて!いけません。貰えませんわ」
コバさん全財産って…そう言われれば、かなりの大事だけどたかだか20文でこう言われちゃうとな…。もう、やりとりが面倒なのでコバさんに任せることにした。
「もう、譲渡したのでそれはコバさんの物です。私は再度受け取らないので、要らなければ捨てても構いません。コバさんの自由にしてください」
そう、言われてしまったら捨てるわけにも行かず、しぶしぶ受け取ってくれた。
「すみません。ありがとうございます」
「皆さん譲渡は、済みましたね?これが証明書になります。これを船守りに渡してください」
そう言われて渡された証明書は、金のコガネムシのブローチだった。これが証明書?豪華だな。
「わーい、きんのむしだー」
ゆうり君は、喜んでいる。
「あ!それ!」
隣の鬼が金のコガネムシを貰って喜んでいる、ゆうり君を見て焦ったような声を出した。
「ん?なにかあるの?」
ブローチをくれた鬼が、声を出した鬼に目配せをして黙らせていた…。
「いえいえ、大丈夫ですよ。彼はまだ新米でね。この制度を知らないから吃驚しただけですよ」
「新米って貴方も若いですよね?見た目も同じぐらいじゃないかと思っていたのですが…」
「私の種族は小鬼なので、こんな見た目でもかなりの年齢になってます」
「それは!すみませんでした。見た目で判断してしまいました。保証書ありがとうございます」
「いえいえ、少しでも役に立てば嬉しいです」
私達はインフォメーションを離れ、船着き場に向かった。暫く並んで、私達の番になった。
始めはゆうり君。ちゃんと、お金とブローチを渡してた。ブローチが出てきた時の船守りの反応が面白かった。取り上げたりは、出来ないらしくブローチを手渡されるまで、凄いそわそわしてたよ。渡された後もブローチを眺めてて、仕事を忘れてたみたい。しばらく経って、ようやく気付いたようで案内してくれたよ。
コバさんも水晶の光はゆうり君と同じで、同じ船に案内されてた。私はというと、少し光が強く船守り達が集まり、協議の結果違う船になった。なので、ここで二人とはお別れだ。
「なんで、よしこちゃんだけそっちなの?いっしょがいいよ」
「ゆうり君、後で追いつくから先にコバさんと行って、お父さんとお母さん見つけといて約束ね」
にっこり微笑んで、ゆうり君の頭を撫でてあげて、そのまま手をゆうり君の小指に持っていき、指切りげんまんをしてあげた。
「コバさん、ゆうり君をよろしくね」
「早く来てくださいね。ゆうり君、私達もお父さんとお母さんを見つけるの頑張ろうね。よし子ちゃんが追いついた時に、すぐに紹介できるように…」
「うん。がんばる」
私達はお互い握手をして別れた。二人の船はもう出発した。まっすぐ行ったから、川を渡ったのだろう。
(私も早く追いかけなきゃな。心配させちゃう。私の船、まだ出発しないのかなぁ…)
船が出るまで、次々と各船に乗る人をボーっと眺めて暇を潰すのであった。
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