異世界14日目 親切過ぎても周りは疲れる
遅くなってすみません!
「マスト隊長の所に一緒に来てくれて、ありがとう御座います。ちょっと用事があるのでマリナさんは、この辺で大丈夫ですよ。教会で色々と用事があるでしょうし?」
私はこのまま、マスト隊長に教わった宿屋まで行って、森で会った彼等に挨拶と心配をかけたお詫びに行こうと思っていた。でも、マリナさんが一緒だと森に行っていたのがバレてしまう恐れがあるから、ここで何としても別れたくて言ってみた。
「何を言ってるの?朝も言ったけど、今は1人だと危ないのよ!教会の用事は後でも出来ます!」
「これだけ人が居たら大丈夫ですよ!マスト隊長にもその話しを聞いたら、人気の無い所に行かなければ大丈夫みたいだし、暗くなる前に帰るから、マリナさんは教会に戻ってて良いよ」
「駄目です。誰かが一緒じゃないと危ないわ!用事ってどんなのなの?」
(このまま冒険者達に会いに行く予定だったけどマズいな。予定を変更して、先にカミューさんの所に行って、カミューさんと2人で行動する様に何とか話しを持っていければ大丈夫かな?)
「・・・カミューさんに会いに行こうと思っていて……」
それを聞いたマリナさんは、驚いた顔をして私の両肩を掴んで、迫ってきた。
「アリスちゃん!カミューくんのお家の場所分かるの?」
「えっ?えっ!?」
「カミューくん……私には何故か、居場所を教えてくれないのよ。だから、心配で心配で……」
「えっと・・・・」
(これは、カミューさんがマリナさんには教えたくない何かがあるって事なのかな?私が勝手に教えちゃう訳にも行かないよね……。えー、それじゃあカミューさんに会いに行く予定も厳しいじゃん。しかも、私が居場所を知ってると思ってるみたいだし……。えー!どうしよう・・・・)
「その・・・・」
「教えて!アリスちゃん!」
マリナさんの危機迫る感じに押されながら、何とか誤魔化せないかと思い、考える時間を稼ぐ為に遠回しな言い方で話す。
「うぅ……、私が知っているのは仕事場だけですよ?」
「仕事場?なんだ、冒険者ギルドの事ね」
「えっ?」
「あら?違うの?」
「いえ、そうです!冒険者ギルドです」
マリナさんが上手いこと、誤解してしてくれたのでそれに乗る事にした。
「じゃあ、一緒に行きましょうね」
「……はーい」
そう言って、手を出されたので渋々その手を握って、2人で冒険者ギルドを目指して歩き出した。
(カミューさんが冒険者ギルドに居なかったら、今日の予定は諦めて、そのままマリナさんと一緒に教会に帰るしかないかな?)
「はぁ〜〜〜」
そうと決めたら、冒険者ギルドに行くまでの街並みを楽しんだ。あちこちのお店を覗いたり、マリナさんに質問しながら歩いていた。ついでに私が気になるお店もチェックしといた。雑貨屋さんと武器と防具のお店だ。
どちらも見たいけど、流石にマリナさんを連れて行くのは気が引けた。特に武器と防具のお店。今は場所だけチェックして、カミューさんに連れてきてもらおう。
そんな感じで歩いていたら、あっと言う間に冒険者ギルドに着いた。さっさと、カミューさんが居るか確認して、帰るかと思いながらギルドの入り口に向かう。何故か途中でマリナさんが止まったので、手を繋いでいた私も釣られて止まった。何だろうと思って振り返ると、マリナさんが声を上げた。
「あっ!カミューくん!」
「あれ?マリナ姉?」
そう言って声に気付いたカミューさんがこっちに来てくれた。私の身長じゃあ全然見えなかったけど、マリナさんからは見えたみたい。たまたまだろうけど、ギルド周辺で現れてくれて良かったよ。
「マリナ姉、どうし・・・」
近くに来た事でマリナさんの隣にいる私に気付いたんだろう。カミューさんが一瞬顔をしかめた。失礼な!
「本当にカミューさんだ!やっほ〜」
「・・・・それで?マリナ姉。何か用事?」
私が笑顔で手を振ったのに、それをカミューさんは、華麗に無視をしマリナさんと話し出した。……あまり冷た過ぎると泣いちゃうぞ!グスッ。
「カミューくんに用があったのは、私じゃなくてアリスちゃんよ?」
「アリス?」
そう呟いて首を傾げているけど……あれ?少し会わないだけで忘れられちゃった?これは私、本当に泣いていいよね?
「カミューさん、私ですよ!私がアリスです!もう、忘れないで下さいよ」
「あぁ……悪い。そんな名前だったなお前。それで何の用だ?」
早く話せと言う態度で聞いてくるので、私への扱いの酷さに不満を持ちつつ、用件を伝える。
「今、マリナさんと一緒にカミューさんに会うために、働いている所へ行く途中だったんですよ」
「……っマリナ姉と一緒に俺の働いてる所へ!?」
「はい!なので、冒険者ギルドに来ました」
「そっ、そうか……」
話しを聞いて動揺していたカミューさんも、目的地が冒険者ギルドと聞いて、少し落ち着いたみたいだ。
「それじゃあマリナさん、カミューさんと会えたので、私はこのままカミューさんと街中を見て帰ります。お昼ご飯は入りません!夕飯までには帰ります」
「おっ……おい何を勝手にっ……いった……何しやがっ……危なっ……おっ、おい!」
余計な事を言わさない様に足を踏み付け、カミューさんの手をぐいぐいと引っ張って行く。マリナさんと別れる為に、帰宅時間だけ伝えて手を振り、直ぐにカミューさんを引っ張る作業に戻る。
「二人共気をつけるのよー!」
声に振り向くと、そう言ってマリナさんも笑顔で手を振ってくれていた。
(よし!これでマリナさんと離れられる)
そう思って、次の目的地の方角へとカミューさんを引っ張って行く。
「おいっ、もうマリナ姉はいっちまったぞ。歩きづらいから、そろそろ手を離せ!」
「あっ、はい!すみません……」
パッ
私も歩きづらかったので、カミューさんの訴えを聞き入れ直ぐに手を離す。
「いきなり何なんだ?」
「いや〜、唐突にすみませんでした。最近街中が危ないとかで1人で歩かせてくれなくて……。カミューさんに魔物の解体して貰おうと思ったんですが、マリナさんが作業場まで一緒に行くとかで、勝手に場所を教えて良いものか分からなかったので、どうしようかと……。あそこでカミューさんに会えて良かったです!ギルドで解体のお仕事だったんですか?」
「……まぁな。作業場の事は、マリナ姉には内緒で頼む。場所が分かると、毎日様子を見に来そうだからな」
「それは良いですけど……。街中1人で歩けないんじゃカミューさんに解体頼みに行けないのですが・・・・」
それを聞いて驚いた顔を一瞬していたけど、その後すぐに納得した顔に戻って、問題解決の提案をしてくれた。
「仕方ないから俺が、教会まで迎えに行ってやるよ」
「本当ですか!?ありがとう御座います」
「ところで、どこに連れて行こうとしてたんだ?俺に会いに来たと言う事は解体の依頼だろ?」
「はい!魔物の解体をカミューさんに頼もうと思いまして……。あっ、今更ですがこの後お時間空いてますか?」
「本当に今更だな。まぁ、今日の用事は終わってるから大丈夫だけど、そっちは俺の作業場じゃないぞ?もう場所忘れたか?」
ただ突っ立って話してるのも、時間が勿体無かったので、目的の方向に歩こうとしたら、ひどい言い草が飛んできた。私は振り向いて、指を突きつけながら言った。
「カミューさん、一言余計です。まだ忘れてませんよ!この後、解体もお願いするんですけど、その前に行きたい所があるので、そこも一緒にお願いします!いや〜、カミューさんが暇で良かった」
「お前も一言余計なんだけど、暇って……もっと言い方があるだろうが!」
「売り言葉に買い言葉です!これは、カミューさんから始まった事ですが……」
まだやる?っていう意図を含んで私が笑顔で返したら、ため息と共に降参してくれました。
「はぁ〜、俺が悪かった。で?何処に行くんだ?」
「月影荘っていう宿屋に行きたいんです!東の詰め所辺りにあるらしいんですけど、分かりますか?」
それを聞いたカミューさんは、顎に手を置いて思い出してくれているのか、渋づらを作りながら答えてくれた。
「自信はないけど、確かこの通り沿いにあった様な気がする。何しに行くんだ?」
「森でお世話になった冒険者達がそこに居るらしくて、挨拶に行こうと思っていて……。カミューさんに会えて良かったです。マリナさんと行くと、私が森に行った事がバレて、心配をかけちゃうので……。なので私が森に行ってるのは内緒でお願いします」
「……あぁ、分かった」
「マリナさんって優しくて頼りになりますけど、色々と明かすのには面倒ですよね?おもに、教えたあとの対応が・・・・」
「・・・だな」
「「はぁ〜」」
私の言ったことにかなりの心当たりがあるのか、どちらからとも無くため息がもれてしまった。
次回の更新は2週間後です!
よろしくお願いします(^^)