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閑話 マスト隊長視点2

遅くなってすみません!

 



 俺はここ2〜3日で起こった事を思い出しながら、森の中で探し者を続けている。



(思ったよりも森の奥に来たな。もうそろそろで、あの4人組冒険者が言っていた所に着くな)



 4人組冒険者はまだ新人で、前に森に行く前に心得的なのを教えてあげたチームだった。不運にもその日、大量のウルフに襲われて、なんとか街まで逃げ帰れた子達だ。



(まさか、こんな形でお嬢ちゃんの安否確認が取れるとは思って無かったがな・・・)



 そう思いながら、例の如く昨日部屋に来たカイルとの話しを思い出す。




             ・

             ・

             ・

             ・



ーー 昨日の夜 宿舎 


 練習と報告書類の確認という業務を終え、食堂で腹を満たし、ようやく部屋で休めると向かっていると、部屋の前に誰かが居た。ここ数日見かけてる奴なので、直ぐに分かった。


「カイル、どうした?俺に用事か?」


「隊長!お疲れ様です!朗報です!アリスちゃんが生きてたみたいです」


「なに!?」


「今日、帰ってきた冒険者が……」


「分かったから落ち着け、取り敢えず中で話そう」


 興奮のあまりに、俺の部屋の前で話そうとしていたカイルを宥めて、部屋に入れてから報告させる。隊長なので他の部屋より広く、家具もそれなりにある。カイルに椅子を勧めて、自分も向かい側に座る。


「それで?無事に帰ってきたのか?」


「いえ……」


「ん?どういう……あぁ悪い、初めから順をおって話してくれ」


「はい!自分は昨日隊長に報告した後、アリスちゃんが生きてるかも知れないと思って、いつもの朝の当番と更に、冒険者が帰ってくる夕方も詰め所に行ってました」


 昨日の俺の話しを聞いて、わざわざ自由時間を削って詰め所に居たと聞いて驚いた。そこまで、責任を感じていたのかと、昨日の俺の言い方にも少し反省した。


「そこで夕方に帰ってくる方の受付の手伝いをしていたら、男2人女2人の4人組の冒険者が森から帰って来て、軽く手続きをしてる時に『あの……2〜3才ぐらいの子供を一緒に連れた冒険者は、もう街に帰ってきましたか?』と聞かれました」



(ん?子供を連れた冒険者?それはかなりの変わり者だろう)



「自分も子供を連れた冒険者なんて、そんな目立つ奴なら直ぐに分かるので、まだ帰って来ていないみたいだと伝え、なんなら言付けぐらいなら、来たら伝えると言い。泊まってる宿の名前とチーム名と早く会いたいって事を伝えて欲しいと頼まれました」


 カイルはしっかり受付の仕事をしているようで安心した。受付で伝言を預かるのは、よくある事だ。それも業務に含まれてるけど、中々顔見知りとかじゃないと頼まれ難いって言うのがある。こちらから声をかけないと、言付け出来るって事も知らない奴も多いだろう。それで、詰め所周辺で待たれると逆に混雑して迷惑なので、積極的に声をかけさせている。


「そのまま暫く受付業務をしていて、大分辺りが暗くなった頃、先程の冒険者の女性2名が来て、『言付けを頼んだ者ですが、帰ってきましたか?』って聞いてきたので『まだだ』と伝え、辺りが暗くなって来たから、女性だけで街を歩くのは危ないので、宿で待ってるように言いました」



(俺達が定期的に見回りをしていたとしても、暗くなってきた街を女性や子供が歩くのは物騒だ。カイルの対応は適切だと思う)



「そのまま、そろそろ交代の時間なので言付けの引き継ぎをして、宿舎に帰ろうとしたら、先程の冒険者の男性2名がやってきて『まだ帰ってきませんか?』って聞かれて、自分は業務が終わったので、詳しく特徴を聞こうと思い広場のベンチまで行って話しました。その子の名前を彼等は聞いてたみたいで教えてもらったら、なんと!アリスちゃんだったんです」


「それは、名前が同じとかではなく?」


「自分もそう思い、他にも外見の特徴を聞いたんです。2〜3才ぐらいの女の子で赤っぽい髪の可愛い子だったらしいんです。森に1人にするのも危ないので、街に一緒に帰ろうと言ったら、仲間の冒険者を待ってるとかで、街に帰ったらまた会おうと約束したそうで……」


「仲間の冒険者って、一緒に出て行った奴等のことか?仲間の誰かを見たのか?」


「詳しくは、ちょっと分かりませんが、一緒に出ていった奴等では無いのは確かです」



(……まぁ今回はお嬢ちゃんが生きていたって事で、嬉しくて詳しく話しを聞く事を忘れたんだろうが……カイルもまだまだだな)



「なるほどな。その冒険者の泊まってる宿とチーム名は何て言うんだ?」


「月影荘って宿で『スタバの希望』ってチーム名です。でも、どうして?」


「いや、明日ちょうど休みだから少し話しを聞いて森に探しに行ってこようと思ってな」


 最近仕事詰めで、ストレスが溜まっていたから、魔物相手にストレス発散させたいと思っていたので丁度いい話しだ。


「なっ!そんな!隊長自ら!」


「最近ずっと書類ばっかりだったから、魔物を狩りたくてな」


「ですが!一人で森に行くのは・・・」


「大丈夫だって、そんなに奥まで行かないし、最近魔物の数が減ってると報告が上がってる。魔物を狩りたいと言っても、そっちは次いでで子供を見つける事が本命だ。無理はしない」


「分かりました。気を付けて行ってきてください。では、そろそろ失礼します!」


「報告ご苦労。ゆっくり休めよ」


「夜分遅くなりすみませんでした。失礼します」



バタンッ



 そう言いながら、カイルは椅子から立ち上がり一礼して部屋から出て行った。その後ろ姿を見送ってから、明日に備えてさっさと着替えて寝た。



             ・

             ・

             ・

             ・



ーー 現在(森の中)



ガサッ ガサッ



 少し離れた草むらで音がしたので、剣を抜いて気配を消し近づいて行く。草むらを覗くと、まだ子供のホーンラビットが1匹いた。これ以上持って帰れないし、子供なら害は無いからそのまま見逃してやる。



(本当に魔物の数が少ないな。彼等が言っていた通りだ)



 そんな事を思いながら、今朝の事を考える。



             ・

             ・

             ・

             ・



ーー 今日 まだ辺りが暗い早朝の頃(月影荘の食堂にて)


 俺は昨日カイルが話していた。お嬢ちゃんらしき子供と会ったと言う冒険者に、改めて話しを聞こうと思い。彼等が動き出す前の早朝に、聞いた宿屋に来ていた。


「すみませーん」


 中に入って番頭さんを呼んだ。見た目は古くて、お世辞にも綺麗とは言えないかも知れないが、俺的には趣きがあって、とても落ち着ける場所だと思った。


「はいはい。いらっしゃいま……なんだい隊長さんかい。どうしたんだい?」


 奥から来たのは話しが好きな、女将さんのメーガンさんだった。古くから営業しているお店の人や、街内の巡回中によく話しかけてくる住民は名前を覚えている。


「おはようございますメーガンさん。朝早くにすみません。ここに泊まっている4人組で、スタバの希望って言う冒険者達が泊まっていると聞いたのですが?」


「あぁ、あの子達だね。確かにうちに泊まってるけど!なんだい?あの子達が何かしたのかい?言っとくけど、あの子達はうちが忙しい時に手伝いもしてくれるし、礼儀は良いし、おばさんの愚痴にも付き合ってくれて、みんな良い子なんだよ!悪い事なんてやりゃしないよ」


「メーガンさん!ちょっと、落ち着いて下さい!その子達は別に何もしていません。ただ、人を探しているみたいなので、その人の特徴とかを詳しく聞くために来たんです」


「そうだったんかい。そう言えば、森で会った子供が帰ってこないとか何とか言ってたっけねぇ〜。あの子達の前じゃ言えなかったけど、森に居た子供が帰ってこないってそりゃ〜ね〜。可哀想だけど、もう生きてはいないね。それなのに隊長さんが探しに行くのかい?」


「今日は休みだし、森の魔物が少ないと聞いたからちょっと見てこようと思ってさ。人探しは次いでだね。可哀想だけどもし、遺品か何かあったら持って返ってきてあげて、現実も教えてあげないとね」


「そうかい……」


「・・・・」



(カイルからの報告だと、まだ新人の冒険者っぽいんだよなー。冒険者を続けていくなら、よくある事だが、もし森で死んでいたら、初めて知り合いが亡くなることになるんだ。精神的にかなりキツイだろうな)



 女将さんも俺も視線を下げて暫く黙ってしまっていた。まだそうと決まった訳ではないけど、亡くなった事を知らせた後の冒険者達の事を想像して、気分が落ちてしまった。


「探しに行くなら、早い方がいいわよね!あの子達を呼んでくるわ」


「お願いします」


 そう言って女将さんは、2階に上がっていった。暫くすると、女将さんの後ろに1人の少年がついて来ていた。


「お待たせしてすみません。僕達に用があると聞いたのですが……」


「あぁ……朝早くにすまない。この街で警備隊長をやっているマストっていうものだが、ちょっと森で会ったって言う、子供の話しを聞きたくて呼んでもらったんだが……」


「なっ!あの子を探してくれるのですか?えっ!ってか隊長さん!?」


 女将さんは俺がなんで、この子達を呼んでいるのかの説明を一切しなかったのか、かなり驚いていた。


「取り敢えず落ち着こうか。女将さんそこのテーブル使わせて貰うよ」


「はいよ。しっかりと話していきな」


ガタッ✕2


 お互い向かい合わせに座る。先程の女将さんの言葉には、色んな意味が含まれているような気がしたが、まだそうと決まった訳じゃないので、暗い話にならない様に気を付けて話そうと思う。


「君の名前は?」


「あっ、メイソンって言います。さっきはすみませんでした!色々と驚いてしまって取り乱してしまいました」


「えーと、4人パーティーだっけ?他のメンバーはどうした?」


「すみません!女性2人はまだ身支度中で、もう1人は寝てます。叩き起してきましょうか?」


「いや、君がいれば大丈夫だから……朝早く急に来た私が悪いのだから、そのまま寝かせといてあげてくれ」


「分かりました」


 責任感が強いのか、今にも『起こしてきます!』って言う感じで部屋に戻りそうだったメイソンを呼び止めて、今日ここに来た本題を聞こうと口を開く。


「今日、私がここに来たのは森で会った子供について聞きたくてな」


「えっ!アリスちゃんのことですか?」



(やっぱりそうなのか?あのお嬢ちゃんなのか?)



「その子の特徴は?どんな外見だった?」


「2歳ぐらいの女の子で、赤っぽい髪で長さはだいたい肩ぐらいでした。後は……子供なのに、受け答えがちゃんとしていると言うか……」


「……なるほど。どこで会ったんだ?」


「森に入っ……「誰よ!こんな朝っぱらから!」


「女将さんがー私達にお客さんだと言ってたねー。まだ、眠いですー」


 階段から下りてくる音とともに、そんな会話が俺達の耳に聞こえてきた。目の前に座っているハリソンは、仲間が失礼な事をと俺に頭を下げそうになっていたのを、手で制して止めさせる。本当に俺が悪い。


「アメリア、リサーナこっちだよ」


 ハリソンの呼び声に気付いて、2人ともこっちに向かってくる。


「2人ともこの人は警備隊の隊長さんでマストさんと言うんだって、マスト隊長こっちが仲間のアメリアとリサーナです」


「ど……どうも、アメリアです」


「リサーナでーす」


「マストだ、よろしく。今日は朝早くに呼んでしまってすまなかった。取り敢えず君たちも座ってくれ、ちょっと聞きたいことがあってな」


ガタッ✕ 2


 お互い挨拶を終えて、まずは椅子に座ってもらうように促す。2人が落ち着いてから本題に!っと思っていたら……。


「あぁー!思い出した!前に詰め所で私達にアドバイスをしてくれた人ですよね!?」


「んー?それはー、いつの話だっけー?」


「ほらほらリサーナ、ウルフの大群に襲われた日よ!まさか隊長だったなんて……」


「あぁ!思い出したよ!『無理はしない。驕らない。逃げるが勝ちって』ってアドバイス貰いましたね!遅くなってしまいましたが、あの時は、ありがとう御座いました。お陰で初日に全滅っていう悲劇を防げました」


「「「ありがとう御座いました」」」


 3人にいきなりお礼を言われてしまった。アメリアとハリソンの話を聞いていたら、俺も少しは思い出してきた。確か、新人の4人組がこれから魔物狩りに行くからとアドバイスをしたんだった。運悪くウルフの大群に襲われて、一目散に詰め所に戻ってきたと……いや、生きていられたのだから運良くか。


「あの時の冒険者か!大変だったようだが、生きて帰って来て良かった。また何かあったら詰め所の警備隊に相談するように!」


「「「はい」」」


 3人とも素直で、将来がとても楽しみな冒険者だと俺は思った。さて、ようやく本題に入れそうだ。


「今日、君たちを訪ねたのは森で会ったという子供について聞きたくてね。外見とかは、先にハリソンから聞いたから、どこで会ったか教えてくれるか?」


「森で会った子供ってアリスちゃん!?隊長さん探してくれるの!?」


「話しを聞く限りだと、私も知ってる子っぽいんだよ。だから、どこで会ったか教えてくれると助かるんだが……」


「確か森に入って、南西の方角に10kmちょっと行った辺りです」


「ん?君たちは森で一泊したのかい?」


「いいえ、あの日はホーンラビットを取ってくるという依頼をやる為に、朝早くに街を出ました」


「いくら早く街を出たからと言って、魔物がいる森で数刻で10kmちょっと行くのは、だいぶ無理をしたのではないか?」


「いえ、全然魔物がいなくて、そんな奥まで行っちゃったんです」


「その距離まで、ホーンラビットがいなかったのか?」


「はい……」



(それはおかしいな。ホーンラビットは簡単に見つかる、お手軽な魔物なのだが……やっぱり今日、自分の目で確認しないとな)



「南西の方角に10kmちょっとのところだな。その子は怪我とかしていたか?誰かと一緒にいたのか?」


「あった時は1人だったよね?なんか、罠を見張ってたって……」


「そうそう。でも、仲間が獲物を狩ったら一緒に戻ると言っていたから、誰かと一緒だったんじゃない?」


「怪我はしてなかったですよー」


「……そうか。情報をありがとう。そろそろ私は行くよ」


「あっ!森に探しに行くんですか?私達も一緒に行きます!心配だから!」


 3人はお互いに顔を見て頷いていた。ちょっと今回は、森の様子を見るというのもあるので一緒に行くのは遠慮したい。


「君たちは、この街で待っていてほしい。聞いた場所もだいぶ森の中だし、私と入れ違いに戻ってくるかも知れないからね」


「……分かりました。アリスちゃんをよろしくお願いします」


「「お願いします」」


「はいはい」


 森で少し会っただけの子を、自分の仲間の様に心配している彼らのお願いを聞いて、宿から出ていく。俺も準備をしっかりして行かないとな。




次回は一週間後に更新します!

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