閑話 マスト隊長視点
遅くなってすみません!
前の話もちょこちょこ手直ししましたm(_ _)m
「休みの日に、何してるんだろう俺……」
俺は今、森を歩きながら探し者をしている。あの4人組の冒険者達が言っていた所まで、まだまだ掛かりそうだ。
あちこちから、話しを聞く限りじゃあ何がしたいのか、何者なのか全く分からない人物……『アリス』を探して……。4日前の夜に、部下のカイルから報告があったのが、今回の事の始まりだ。
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ーー 4日前の夜 宿舎 隊長室
練習と報告書類の確認という業務を終え、食堂で腹を満たし、ようやく部屋に戻ってきて着替えている時にそれは、もたらされた。
コンコンッ
「西の詰め所担当のカイルです!隊長居られますか?」
(ん?こんな時間に何だ?)
「入れ」
ガチャッ
「失礼します」
入ってきたのは、将来を有望視されている新人のカイルだった。剣さばきは上手いが、それ以外が色々と爪が甘い。この間の取り調べもそうだ。あの後、しっかり注意しといた。質問でもあるのか、わざわざ俺の部屋にまで来るなんて、なんて骨のある奴だと思って、上機嫌で用を聞いてみる。
「何かあったか?」
「朝、うちの西の詰め所から報告があったと思うんですけど、冒険者の揉め事の件で・・・」
「あぁ……子供が冒険者に蹴られたってやつか?彼等は、牢屋で反省中と聞いたが?」
(一般市民に絡めばどうなるか知ってる筈なのに……しかも、堂々と俺達の目の前で……はぁ〜、朝から血の気が多過ぎる。蹴られた子供は大丈夫だったのか?)
「はい、その事なんですが………。その蹴られた子供はこの間、詰め所に来たアリスちゃんだったんですが……」
ちょうど心配していた子供の話を聞けたのは良いが、それがまさかの"あの"変わったお嬢ちゃんだったとは・・・。驚き過ぎて暫く固まってしまった。それでも、詳しい話しを聞かねばと、声を出す。
「……なに?」
つい、眼差しがきつくなってしまった。それを見て俺が、報告の内容を訝しんでいるのを察してか、もう少し詳しい情報を報告してくれた。
「話によると、街の外に出る方法を詰め所の受付で聞いてる時に、冒険者に絡まれて蹴られたらしいです」
「・・・」
「それで……怪我の治療は自分がしたんですが……どうにも腑に落ちない事が………」
「どういう事だ?」
「1番目立った腕の擦り傷の治療の後、他の怪我を探したんですが、その時に腹部にかなりの痣を発見しまして、治療をしようとしたのですが気のせいだと言われて、部屋を少しの間追い出されました」
「見間違いだったのか?」
「教会まで送って行った時は、全然普通だったので、自分も見間違いだと思ったのですが、夜番の人に詳細を聞いたら"モロに腹部に蹴りが入っていた"と言ってました。因みに、自分が見た痣だとしたら骨折してるかと……」
(報告書には、『街の子供が詰め所で冒険者に絡まれ蹴られた。応急処置をして帰った』としか、書いてなかったから、大した揉め事じゃなかったと思っていたんだが……腹部の痣………)
「・・・・分かった。この話は預かろう。カイルも、この話は周りにしない様に!報告ご苦労だった」
「はい。失礼しました」
バタンッ
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ーー 現在(森の中)
あのあと俺は、カイルが言っていた報告書を見直し、揉めた冒険者のチーム名を頭の片隅にいれた。警備隊の目の前で、問題を起こすような奴らは、またやらかす。たまたま、初めがあのお嬢ちゃんだっただけだからな。用心の為……。
ガサガサ・・・
俺が今、森を彷徨っている理由を思い出しながら歩いていると、草むらから物音が聞こえた。回想を止めて、音のした方向に注意を向けながら剣を構える。
草むらから出てきたのは、ホーンラビットが1匹。素早い動きからの頭突きを気をつければなんてことは無い魔物だ。魔法で身体強化をするまでもなく、サクッと仕留める。
(・・・これぐらいの大きさなら持って帰れるか。街に戻ったら、行き付けの酒場の親父に渡せば調理してくれるだろうしな。ホーンラビットの串焼きとエールなんて最高だな。早く用事を済ませて呑みたい。はぁ〜)
ホーンラビットの血抜きをして、皮袋に入れる。それを腰の辺りに結びつけて、探索を再開させる。そして直ぐにさっきの回想の続きが、頭を過ぎる。
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ーー 3日前の夜 宿舎 隊長室
今日も練習と報告書類の確認という業務を終え、食堂で腹を満たし、ようやく部屋に戻ってきて着替えている時にそれは、またもやもたらされた。
コンコンッ
「西の詰め所担当のカイルです!隊長居られますか?」
(ん?何だ?今日は、これと言って気になる報告は無かったと思うが……)
「入っていいぞ」
ガチャッ
「失礼します」
「おう、お疲れさん。今日はどうしたんだ?」
昨日は冒険者とお嬢ちゃんの揉め事の報告だったけど、今日も俺の所に訪ねに来たと言う事は……。何か技術的な質問かなっと、感心しながら新人に話しを促す。
「昨日揉めた者達の話なんですが……」
「あぁ、一晩牢屋に入れて朝方に帰したと報告が来てるぞ?他に何かあったのか?」
話し出したカイルの顔が深刻だったので、机に着いて真面目に聞く姿勢になる。
「今日の朝詰め所に、揉めた冒険者とアリスちゃんが来て、一緒に森へ行きました」
「はぁっ!?すまん、ちょっと話しの内容が頭に入って来ないんだが……。昨日揉めた同士で森に行ったと言ったのか?」
「はい」
「………何故止めなかった!!お前等は何をしていたんだ!!」
話しが段々と飲み込めてきたら、何故そんな愚行を許したのかと、カイルに怒鳴っていた。どう考えても、目障りなガキを森に捨ててくるのが見え見えじゃねぇか!
(昨日の目の前での暴力行為を許した事と言い、今日の事と言い、最近弛んでるんじゃねぇか?あ"ぁ?)
「っ……すみませんでした!隊長!」
俺は今、かなりヤバイ目つきをして睨んでいるんだろう。カイルが青い顔をして、頭を下げていた。普段はここまで怒ったことはない。あまりの出来事につい、素が出てしまっていた。
一度自分を落ち着かせる為に、机に組んだ手を額に当てて、そのまま話しの続きを促した。
「それで? 『なぜ』、『揉めた者同士を』、『森に行かせたんだ?』」
まだまだ怒りが抑えきれていなく、子供でも分かるように、一言一言噛み砕く様に質問をしてしまった。はぁ〜、大人気ない……。
「アリスちゃんが、彼等と森に行くと聞いて勿論止めたのですが、本人の希望だとアリスちゃん本人から言われて……」
「……それは、本人が言ってたのか?」
「はい……」
「言わされてたって事は?」
「多分無いかと……かなりの笑顔で彼等と森に行くと言って、自分は止めたんですが強引について行きましたから……」
「・・・・」
(あのお嬢ちゃんは、一体何を考えているだ!)
あまりの事に、さっきまでの怒りを忘れて顔を上げて呆けてしまった。そのまま暫く思考が停止していると、カイルから更なる報告がきた。
「しかし!隊長の言うように、何としてでも止めていれば……」
カイルは前髪を掴みながら、かなり後悔をしている顔つきで、まるで懺悔しているかのように報告をしてくる。
「何かあったのか?」
「アリスちゃんと一緒に行った冒険者が夕方には帰って来たのですが、その隣にアリスちゃんは居なく、問いただしたら『はぐれた』と……それしか言わなく……」
「……そうか」
(かなり怪しいが……証拠が無いからこれ以上追求は出来なかったんだろうな。もし本当にはぐれたのなら、2歳の子供があの森で、数刻と生きては行けないだろう。カイルは、詰め所で止められなく無駄に死なせてしまった事を、悔やんでいるのか)
俺は立ち上がりカイルに近づき、肩に手を置いて慰める。
「そう、思い詰めるな。魔法も使えるみたいだし、街からあまり離れて居なければ魔物も少ない、まだ生きてる可能性はある。明日依頼をやりに行く冒険者の誰かが、見つけてくれるかもしれない。だから、今日は早く休んで明日の仕事に集中してくれ。報告ありがとう」
「……はい。失礼しました」
バタンッ
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ーー 現在(森の中)
グルルル・・・・
草むらから今度は獣の声が聞こえて、回想を止める。即座に戦闘の構えをとり、草むらを睨む。
(この声は、ウルフか……1匹……いや、2匹か)
1匹のウルフが目の前の草むらから出てきて、飛び掛かって来ようとしている。それに合わせて、違う草むらからもう1匹が出てきて、噛み付こうとしてきた。
俺は気配で2匹居るのが分かっていたので、魔法の身体強化を使い、後ろに下がって噛み付こうとしたウルフを飛び越え、手前の1匹を剣で切り倒す。次に飛び掛かってきたもう1匹の所に逆に突っ込み、その勢いで剣を一閃した。
(ここまで、ホーンラビット1匹にウルフ2匹か……魔物が少ないな)
そう感じながら、お嬢ちゃんを見たと聞いた所に向かって歩いていく。
次は二週間後に更新します!