三途の川らしい①
長くなっちゃいました。
ただ話しながら歩くだけだと、ゆうり君が飽きちゃうと思って、たまに立て札から立て札までの間を使って、グ◯コをやったりして楽しく進んだ。
二人は何度もグリ◯をやりたがった。それもそのはず、ビリはもう決定してるから楽しいのだろう。何故か私が負けまくった。まさかのジャンケン激弱だったよ。これじゃあ、センターはとれないな……。
そうやって、もう何時間歩いたか分からなくなるぐらい進むと、私達と同じ格好をした人が、ちらほらと見えてくるようになった。皆、同じ場所を目指してるみたい。向こうも複数でいるから、声は特にかけなかった。それでも、ゆうり君にパパとママじゃないか聞きながら…一応ね。
しばらく行くと、大きな川と船着き場が見えてきた。もっと近づいていくと、誰が用意したの?ってくらい大きな立て札があった。私達の前には人がたくさんいて、船着き場までかなりあるのに、その立て札は何が書いてあるかまで読める程、大きかった。
「なんてかいてあるの?」
ゆうり君が目をキラキラさせて聞いてきた。それもそうだろう、こんな大きい物なんて105年生きてきた私だって見た事ない。何て書いてあるのかな…
『 三途の川
川のこっち側に長く居ると、身体が消滅・消去・消えてなくなります
川を渡る方法は2通りあります
1. 船守りが持つ水晶に触れて六文銭を渡す
2. 六文銭が無い者は、それを船守りに告げ水晶に触れる
※脅迫・強要・暴行・盗み・詐欺・誘導等による、本人が望まない譲渡をさせた場合。罪が重くなる。
※申告・譲渡はこの船着き場のみ有効』
って書いてあった。六文銭?昔のお金かな?ゆうり君にも分かりやすく教えてあげた。
「おかねないから、わたれない?パパとママにあえない?」
「大丈夫だと思うよ。コバさんとここで待ってて。ちょっと見てくる」
そう言って、もっと情報を集める為に二人と別れて、前の方に向かった。みんなこのままいると消えるとあって、我先にと手続き(?)している感じだ。ん?あそこは…?
少し離れた所にテントらしきものがあった。そっちはそんなに人が、集まって居なかったので行ってみた。
そこにはなんと…インフォメーションと書かれた案内板と、まだ新人で研修中です!みたいな、若い鬼が二人居た。見た目は、人に角が付いてるだけの様な姿をしている。だから、なんとなく歳も若めだと分かった。ザッ☆鬼!だったら、流石に分からんわ。前が空いたから話してみよう。
「あの…すみません。お聞きしたいのですが、ここはなんですか?」
私の相手をしてくれたのは一本角の鬼。
「ここは、書いてありますようにインフォメーションです。分からないこと聞きたいこと等を教える場所です」
「何故、英語なのですか?案内所とか日本語でいいのでは?」
「ここも現代に合わせて欧米かっ!一度言ってみたくて…いや、失礼しました。欧米化しようとしているらしく、グローバルになっています。他にも何かありますか?」
誰かにインフォメーションの質問されるのを待ってたんだろうなって分かるぐらい、凄い笑顔で返してくれた。あはは…どうも。
「お金を渡して、向こうに行くんですよね?」
「はい。そうなります」
「じゃあ持ってない人は?」
「持ってない人も最終的には、向こう側に渡る事になってます。一部の人を除いてですが…」
「最終的にはって事は、何かやるの?」
「それは…行ってから説明を受けて下さい」
じーと見ているがニコニコ笑っているだけだ。……何かあるな。どちらも最終的には向こう岸に行くみたいだけど、そこにお金が発生してる時点で、扱いが違うだろう。しかも、肝心な所は教えてくれないときている。まっ、そこは自分で確認出来たらするか。後は……
「私なんで、若返っているの?ここはどこ?それは教えてくれる?」
「貴方が若返ったと言うなら、その年齢が一番罪を犯しているからだと思われます。」
「どういうこと?」
私は訳が分からず直ぐに聞き返した。
「まずは、ここに来る人の特徴から説明します。ここには、何らかの理由で命を落とした方がきます。それは事故だったり、病気だったり、殺されたり、寿命がきたり等でです。そして、生きていた時の年齢までの間に、罰する必要があると判断された年齢で、ここに来ます。早く言えば、一番やんちゃだった頃ですね。貴方の場合その10代後半ぐらいが、そうだったのでしょう」
なるほど。そういう仕組みで私は若返っているのか。ゆうり君は、あの年齢で亡くなって、イタズラとか悪い事してたからあの姿なのかな…コバさんは絶対、息子の彼女イビリが原因だな。どんだけ虐めたんだよ……あの人……。
「それと、ここが何処かという質問ですが、ここは地獄の入り口です。皆さんに分かりやすく言うと三途の川と言われてる場所です」
(えっ!三途の川って地獄の入り口だったの?知らなかったわ~)
「他にも聞きたいことありますか?」
「あの立て札をみると、六文銭持ってる人と持ってない人がいるみたいだけど、何故?」
「六文銭は亡くなった人が、向こうで苦労しないようにと家族が持たせるお金です。現世でちゃんと供養された時点で手元にきます」
手元にって、私無いんだけど…
困ってる私を見兼ねて、鬼が教えてくれた。
「皆さんだいたい、右の懐に入ってる事が多いのですが…」
改めて自分の身体を調べると、懐から野球ボール位の大きさの袋が2つ出てきた。それも右と左から1つずつ…
(誰だ!こんなイタズラをしたのは!私はてっきり、あれ?ちょっと胸が大きい?ラッキー☆とか思っちゃったじゃないか。恥ずかしい…)
野球ボールぐらいの袋をみて、恥ずかしさで顔を赤くしていると、それをみて察した鬼が、気の毒そうな目で私をみていた。
落ち着け!落ち着くんだ。まずは、こんなことを仕出かしてくれた犯人探しだ!
「この袋が入ってる所は、死んだ時に家族が入れた所と同じですかね?」
「………そうなります」
……決まったな。犯人みつけたわ。こんなことするのは、あいつらしかいないわ。か~い~、そ~ら~、覚えてろよ!絶対、仕返ししてやる。
「そう。色々教えてくれてありがとう」
と、平静を装ってお礼を言い。インフォメーションを離れた。
少し歩くと船着場が見えてきた。その頃には、幾分気持ちも落ち着いてきた。さっき見た時より、人だかりは整理されていて前で何をしているのかが、よく見えた。…おっと、観察しなきゃ。
今やってる人は、女性で六文銭持ってる人だったみたい、袋を渡して水晶に触れてる。船守りは、水晶の光と袋の中を確認して、その人が乗る船を教えているみたい。
次の人は持ってない男性で、光も前の人と比べると明るかった。教えられた方に歩いて行ったけど、船に乗ろうとしたら縄で捕まってた!っえ!何故に?
捕まった男をしばらく観察していると、なんとなく理由が分かった。どうやら、男が教えられた船と違うやつに乗ろうとしたらしい。紙みたいのを取られて、見せられて、取られた紙は燃やされてたので分かった。そして、違う船へスマキ状態で乗せられていた。乗ってるやつ皆スマキだ。
(どうやら『間違えた』は、許されない仕組みになっているらしい…後は行き先だな…)
その騒動の後も、振り分けの傾向を掴むため何人か見ていたら、ちょうど出発する船があったので、そのあとを海岸側からついて行った。光が強く六文銭を払った人が乗った船だ。
沖に出られたらどうしようもないので
、そうしたら諦めようと思い追いかけているのだが、なかなか行かない…海岸沿いをもう20分は漕いでるだろう。流れにのってるからまぁまぁのスピードだ。
私?私はもともと身体能力高いから大丈夫。このスピードなら1時間は走ってられるから。本格的に鍛えてた訳じゃないから、マラソン選手には到底及ばないぐらいの速さと持久力持ちです。速度が落ちれば、もう少し長く走れるけど……
(私が付いて行けるぐらいの距離ならいいな)
っと思いながら走り続ける。あれから更に10分ぐらいで船は止まった。まだこっち側の岸にいる。そして、乗っていた人を次々と降ろして行く……何故?
「どういう事だ!お金払ったら向こう側に渡らせてくれるんじゃないのか?違うなら金返せよ!」
っと男性が喚き散らしています。周りもそれに同調して、叫んでいる。
「そうだ。そうだ。」
「向こう側に連れてけー」
『黙れ。うるさい。説明する。お前たちには、ここから泳いで渡ってもらう。流されても大丈夫。しばらくすれば、ここに戻ってくる。必死に向こう側を目指せ。諦めたらあぁなる。』
っと、船守りがちょっと離れた所で、疲れたのか諦めたのか座って呆然としてる男の方に指を指した。そうすると、男の身体が少しづつ透明に…元々、少し薄い感じだったのに更に薄くなっていった。
「!うわーー、止めてくれー、消えたくない。消えたくないよーー」
っと言いながら消えて行った…。呆然としていると、船守りが他の場所も指を指し、そこでも人が一人また一人と消えていった…。
『生き返りたければ渡れ。消えたくなければ渡れ。ここが試練の始まりだ。』
船守りは、それだけ伝えると沖に出て行ってしまった。その後は、皆必死になって川を渡りだした。私は、そこまで見届け二人がいる船着き場まで戻った。
そろそろ、別視点も書こうかな。
今回は2話更新します!