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閑話 カミューの憂鬱

遅くなってすみません。

異世界9日目のカミュー視点です!

今回長くなってしまいました・・・・。


「ん〜、今日は結構寝たな。外は良い天気だし何しようかな。昨日の冒険者が肉をオマケしてくれたから、教会に少し持って行ってやろうかな」


 休みの日は大抵遅めに起きる。その方が、朝と昼の食事が1食で済むからだ。俺はさっそく教会に持って行く肉の準備を始めた。あそこは人が多いから、いまある肉を大き目にカットして持って行く。


「これ位でいいかな。皆、元気にしているかな?」


(この間は時間がなくて、串焼きを届けるだけだったから、マリナ姉としか会っていない。今日は、1日休みだから皆に会っていこう)


 しっかり、手土産を持って教会に向かう。教会へは、歩いて2km位なのですぐに着く・・・・。でも着いたはいいけど、人が見あたらなくて庭の方にも行ってみる。


「「〜〜〜〜〜きゃっきゃっ」」


(声が聞こえるから誰かいるな。おっ!いたいた!)


「あっ、リリア!ちょうど良かった」


 この教会で最年少のリリアが同じ位の友達と花で遊んでいる所だった。


「あっ!カミューおにいちゃん!」


 リリアの近くに行くと大量の花に囲まれている天使が2人居た。頭にも花の輪っかを乗せていて、とても可愛かった。


「きょうはどうしたの?」


「マリナ姉かマリアーヌさん、どこにいるか分かる?」


「きょうかいのそうじしてたよ。あっ!マリナさん!こっちこっち!カミューおにいちゃんがきたよ!」


 礼拝堂に行こうと思ったけど、掃除がちょうど終わった所なのか、マリナ姉が来たので今日の用事を1つ済まそうと思う。


「あら!カミューくん今日は、どうしたの?」


「いや、昨日魔物の解体を頼んできた冒険者が、丁寧な仕事だったって、オマケに肉をくれたから少し持って来たんだ」


「にく!?やったーーー!」


「いつも色々とありがとう。生活大変じゃない?なんなら、ここに戻ってきても良いのよ」


「マリナ姉、心配し過ぎだよ。僕なら大丈夫だって・・・。それより、リリアの隣にいるこの子は・・・」


「初めまして、アリスって言います。よろしくお願いします」


(全くマリナ姉は心配性なんだから・・・。おっと、リリアの友達はアリスって言うの……か……)


 挨拶されたので、俺も挨拶しようとアリスって子をよく見たら、知ってる奴だった。訳の分からない病気だったのか、ずっと意識がなく教会の部屋で看病されてた奴だった。目覚めたのか・・・。


 あの時は本気で教会の皆を心配した。只でさえ貧しくて、医者も呼べないし、回復魔法を使える奴もいないのに、ずっと目覚めないガキを教会で看病してるなんて、マリナ姉の人が良すぎるのも問題だ。性格だから仕方ないけど・・・。だから、ついついその元凶を睨んでしまった。釘も一応刺しとく。


「目が覚めてよかったな。でも、あまりここの奴らに迷惑かけるなよ」


「出来ればそうしたいのですが、如何せんまだ知らない事ばかりで・・・。しかも、現在進行形で困ってまして、どうしたらいいのか……」


「げんざいしんこうけい?なんだそれ?」


「今、とても困っているって意味です」


「・・・・・・」


(こいつ言ったそばから・・・・)


「アリスちゃん何に困っているの?」


「これです」


 何故かリリア達の周りにある沢山の花を指差している。どういうことだ?


「リリアちゃんと花の冠を作っていたんですが、作り過ぎてしまって、どうしようかと・・・」


「はい!マリナさんにもあげる!」


「まぁ、可愛いわね。リリアちゃんありがとう」


「カミューおにいちゃんにも、あげる!」


「俺はいいかな。これを頭に付けるのはちょっと・・・・」


「えっ……がんばってつくったのに・・・」


 リリアが落ち込んでしまったけど、いくらリリアの頼みでも、頭に花の冠をつけるのは無理だ。なんとか話を変えないと・・・。花……花……そうだ!


「これさぁ、広場で売れるんじゃないかな?ほら、花だけ売ってる人がいるんだから、これも売れるんじゃない?」


「そうね。売れるかも知れないわね」


「本当に売れそうですか?それなら、ちょっと街へ行って売ってきます」


「わたしもいくー!」


「私はこれから、お昼ご飯の用意をしなくちゃ行けないから、ついて行けないわね。でも、女の子2人だけじゃ心配だわ」


(流石にこの2人だけで、広場に行かすのは不安だ。仕方ないからついてってやるか)


「なら、俺がついていくよ。今日は特に何も無いし」


「そう?じゃあ、カミューくんよろしくね。帰ってきたら、ここでみんなと一緒にお昼にしましょうね」


「あっ、いや・・・「カミューさん、よろしくお願いします」


 只でさえ貧しいのに、俺の分まで食事を用意して貰うのは悪いと思って、断ろうとしたのに失敗した。このガキのせいで・・・・。はぁ〜、行くか。


「ところでそれ、いくらで売るんだ?」


 肝心な事を決めていなかったので、広場に行く間に聞いてみる。


「う〜ん、花だけ売ってる人は、何本でいくら何ですか?」


「確か……銅貨1枚で5〜6本だったような・・・」


(お金を稼がなくちゃと思って、俺も花を売るのを考えたけど、この金額だったから辞めたんだよな。効率が悪すぎる)


「じゃあ、花冠は銅貨3枚。腕輪は、2枚にします!」


「随分安すぎないか?こんなに、手が込んでいるんだから銀貨1枚でも・・・」


(ただの摘んだ花じゃなく、なんか色々と手が込んでるのに、そんなに安くていいのか?)


「そういっても野花ですし、生花だから枯れてくるし、こんなのその場のノリで付けたりするだけですよ。実質、1日だけしか使わない物に、カミューさんは銀貨出しますか?」


「・・・・いや、買わないな」


「だから、この値段が妥当かと・・・。2日目以降は、紐を付けて壁や扉に付ける事を勧めます」


「………なるほど」


(こいつ、よく考えているんだな。言われてみれば、その日だけの物に銀貨は高過ぎる。貴族じゃあるまいし・・・)


「もうすぐで、ひろばだよ!」


 リリアの声で、思考から戻り保護者として、2人を見守る事にする。


「リリアちゃん、お金の計算出来る?」


「けいさん?わからない……」


「カミューさん、リリアちゃんに付いてあげてください。金額はさっきの値段で!」


「それはいいけど・・・。お前は?」


「私は計算出来るので大丈夫です!手分けして少しでも売りましょう」


 流れで俺もリリアと花を売る事になった。離れると俺がみるのに大変なんだけど・・・。もう行っちゃったよ。たくっ、自分勝手な奴だな。


 俺達の方は、人見知りしないリリアがどんどん話しかけて、足りない説明とお金の計算を俺がしていく。広場を通る人みんなに話しかけてるせいか、思ったより早く売れていく。


 あいつの方は、たまに見ていたけど相手を選んで声をかけているみたいで、1組終わると次に声を掛ける人を探しているのか、辺りを見回している。


 声をかけた人には確実に売ってるみたいだから、目が利くのか話が上手いのかは分からんが、変わった奴だ。おっと、こっちもどんどん売らないとな。


           ・

           ・

           ・

           ・



「私の方は終わったよ。リリアちゃん達はどう?」


 そう声をかけながら、あいつがこっちにやって来る。もう売ったのか・・・。


「こっちはあと1つ。アリスちゃんがつくってた、うでわがまだのこってるの」


「そうか〜でも、そろそろお昼ご飯だから帰ろう?」


「やだ。これもうるの!」


「う〜ん、それじゃあこうしよう!この最後の1つは手伝ってくれたカミューさんにプレゼントしよう!」


「はぁ?いきなりなんだよ!いらな・・・(取り敢えず、今は貰ってよ。後でなら捨ててもいいから、じゃないと何時までもここにいる事になるから!)」


「(うっ・・・分かったよ)」


「ありがとう。貰っとくよ」


「これでよし!さぁ、リリアちゃん帰ろう」


「うん!」


(あ〜しなきゃリリアが動かないのは分かるけど、全く強引だな。まぁ、まだあのコテコテの花が付いたやつよりはマシだけど・・・)


 俺は少し疲れながらも、2人を連れて教会に戻った。


「ただいまーー!」


「お帰りなさい。どうでしたか?」


「マリナさんただいま。全部売れて銀貨5枚になりました。はい、これ」


「ん?これは貴方達で稼いだお金だから、貴方達で分けていいのよ」


「そういう訳には………!食事や寝る所までお世話になっているので……」


「いいのよ、子供が気にしない」


「そうですか……。じゃあ私が分けますね。リリアちゃんと私は銀貨2枚で、残りを手伝ってくれたカミューさんにあげます」


「俺も?いいのか?」


 こいつとマリナ姉のやり取りを見ていただけなのに、俺に話しが向いて、しかもただ子守りとして付いて行っただけなのに、俺にも金をくれた。


「はい!売るのを手伝って貰ったので、遠慮なく貰ってください。そして、私は自分の2枚から1枚を教会に入れます!」


「えっ?」


「私は、教会もここのみんなも好きなので1枚寄付します!これで、美味しい物を食べましょう」


(教会に寄付って、こいつ良い奴だな・・・・)


「リリアもきふする!」


「アリスちゃん、リリアちゃんありがとう。みんなで美味しい物を食べましょう。さぁ、そろそろお昼ご飯よ。カミューくんも一緒にね」


「リリアがつれてく!」


「あっ!ちょっと・・・」


 改めて食事を断ろうとしたのに、リリアに捕まっちゃ逃げれない。諦めて大人しく食堂についていく。


 食堂の席に着くと、皆久しぶりだからか凄く話しかけてくる。皆変わらず元気で良かった。食事は固いパンとスープとステーキだった。


 久しぶりの教会の料理は美味しかったけど、ちょっと豪華だったので、また何か持ってこようと思う。食事中に皆と色々と話したから今日は満足した。


(挨拶して、そろそろ帰ろうかな)


「カミューさん!この後、用事とかありますか?」


「・・・なんで?」


 凄い笑顔でこの後の用事を聞いてくるので、かなり警戒して返事をした。


「もし良かったら、この間差し入れしてくれた美味しい串焼き屋さんを教えて欲しいのですが・・・」


(そんな事ならいいか。どうせ暇だし教会に寄付してくれたから案内位はしてやるか)


「・・・・分かった。なんなら連れて行ってやるよ。この後特に何もないし・・・」


「ありがとうございます!やったー!あの串焼き屋さんの場所が分かる!」


 飛び跳ねんばかりの喜びように、そんなに気に入ったのかと、差し入れした俺もまんざらでは無かった。さっそく2人で教会を出て、串焼き屋を目指す。


「お昼のお肉も美味しかったぁ。ご馳走様です!あれは、カミューさんが解体したのですか?」


「あぁ、そうだよ」


「えっ!って事は、カミューさん冒険者ですか?私、冒険者になりたいのですが……」


(冒険者か・・・誰もが1回は夢をみるよな。魔物を狩って生計をって、俺もそうだった。でもこの街じゃ無理だな。特に俺達みたいな出のやつは・・・)


「いや、俺は冒険者じゃない。たまに頼まれて剥ぎ取りや解体をしているだけだ。それに………ここで冒険者はオススメしない」


「何でですか?魔物を沢山狩れば、お金が貰えるんですよね?」


「基本はそうだが、ここのギルドはマニー教会が占めている」


「教会が?どういう事ですか?」


「マニー教会に入っている冒険者には、旨味があるけど、それ以外の奴にはあまり良くない。かなり低い査定額が付く、それでも無いよりマシだと我慢してる奴もいる」


「マニー教会に入れば得ならなんで、みんな入らないで我慢しているの?」


「あそこは他宗教を嫌うから、入るなら今信じている物を捨てなきゃならない。それが出来ない奴らなんだよ。俺もウィズホルンと言う神を信じてはいないけど、親に捨てられた俺を助けてくれた、マリアーヌさんとマリナ姉が信じてるものは信じる!だから、マニー教会には入らない!」


(密告とかあるみたいで、一度入るとマリナ姉や皆に会えなくなるからな。不自由でも今の方がいい)


「なるほど。でも冒険者にそんなサービスをして何処から、その分を回収するの?」


「・・・さっきから話していて思ったけど、お前いったい何歳だよ。子供がする内容じゃないだろ」


(こいつ一体なんなんだ?見た目はリリアと同じ位と思ったのに、話し方や考え方・目の付け所がガキとは思えない・・・。もしかして、こいつ噂に聞いたエルフとかドワーフとかホビットなのか?)


「カミューさんは何歳なんですか?」


「俺は12歳だ」


「私はそこから、10を引いてください」


「12から10を引く・・・2歳かよ!すぅっと教えろよ!面倒くさい!てか、嘘だろう?」


「信じるか信じないかは貴方次第です」


(くそっ!このガキにからかわれた!てか歳なんてもう、どうでもいい!こいつはこいつだ!)


 からかわれた自分に腹を立てながら、目の前の奴を睨みつけていると、話の続きをしだした。何て、マイペースな奴だ・・・。


「それで?さっきの続きですが、何処から損した分を回収してるんですか?」


「詳しくは分からないけど、商店や商業ギルド、他の街に高く売ってるって話を聞いた。だから、そこら辺からは嫌われてるみたいだな」


(マニー教会の奴らは、自分に入ってくる金の事しか考えてないからな。俺には出来ないけど、なんかもっと上手くやれば更に金が入ると思うんだけど・・・)


「あれ?カミューさんが冒険者じゃないなら、どこで解体やったんですか?何処でもやって良いって訳じゃないですよね?」


「冒険者なら、森で済ましてくるんだろうけど、俺はまだ保護者無しに外に出れないから、知り合いに場所借りて、そこでやったけど?ほら、串焼き屋に着いたぞ」


「ここがそうなんですね!!良い匂いがします!すみませ〜ん、串焼き12本下さい!」


(本当にガキなのかもな・・・)


 誤魔化せられたから、中身は実際どうなのかは知らないが、本当の子供みたいに喜んで、出店に駆け寄っていく後ろ姿をみていると、少し顔が綻んだ。のは、一瞬で躊躇なく沢山買っている姿にげんなりした。


「買ってくのかよ・・・しかもそんなに沢山・・・」


「銀貨3枚と銅貨4枚だ」


(これ、俺が払うのか?)


「はい。銀貨4枚」


「ほら、銅貨6枚な」


「ありがとうございます。カミューさん今日は色々と教えてくれてありがとうございます。1本あげます」


「ん?いいのか?」


(こいつ自分で全額払えたのか……。しかも1本くれるし……何故だ?)


「はい!少なくて申し訳ないですが、情報料だと思って遠慮なくどうぞ」


「じゃあ貰うけど・・・。さっき飯食べたばかりなのにそんなに食うのかよ」


「1本は今食べます!残りは・・・サスケ!」


「うわっ!なんだそれ?」


 どこに隠れていたのか、こいつの服の中から生き物が出てきた。


「サスケ、これ仕舞っといて」


「ジジジ……」



ぱっ!



「なんだそいつ!串焼きが消えたぞ!」


(なんなんだ?この生き物は!?食べたわけでもなさそうなのに、大量の串焼きが何処かにいっちまった)


「この子が使える空間魔法?みたいなんだけど、珍しいみたいなので、皆には内緒でお願いします」


(なるほど・・・。空間魔法か・・・初めて見たけど、内緒にしなきゃいけないものを、何故今日あったばかりの俺に見せたんだ?)


「・・・・何でそれを俺に見せた?」


「流石カミューさん!実は、お願いしたい事がありまして・・・」


(絶対良くない話だ。これは聞く必要ねぇな)


「嫌だ」


「返事はやっ!聞くだけ聞いてくれても・・・。聞いてから断ってくれても構いません」


 潤んだ目で頼んできた。串焼きも貰ったし聞くだけは聞いてやるか。


「・・・・なら聞くだけ聞いてやる」


(あれ?俺が聞くだけ聞くと言ったら、こいつちょっと笑ったか?)


「カミューさんには、魔物の解体&剥ぎ取りをお願いしたいのです」


「・・・どういう意味だ?魔物の解体を必要としている冒険者を紹介するって事か?」


「いえ、違います。私が狩った魔物を解体して欲しいのです」


「・・・・それは、随分先の話しだな。今、2歳なんだろう?自称だけど……。冒険者になるまで最低まだ8年先だよな。そんな先のお願いされてもなぁ」


「自称って・・・。2歳は本当です!いや、3歳かな?」


「1つ差じゃ対して変わらんからな!」


「解体の話は今です!ナウです!」


「なう?よく分からないんだけど・・・」


(一体どういう意味だ?魔物の解体は分かるけど、こいつが狩った魔物?こんなガキに魔物が倒せるのか?)


「そこで………じゃじゃーん!サスケの登場です」


 なんかよく分からない、さっき出してきた生き物を前に掲げて俺に見せてくる。しかも、何故か周りをキョロキョロと確認している。怪しい・・・。


「ウルフを1匹出して」



ドサッ



「なっ!?どこから!」


「これも、サスケの空間魔法。仕舞えるって事は出せたりも出来るんだけど、この魔物の解体をお願いしたいの」


「これは、お前が殺ったのか?」


「そうなんだけど・・・。ただ、そのせいで暫く寝込む事になったんだよね」


(あのずっと寝込んでいたのは、魔物に襲われて必死で戦ったからなのか・・・少し悪い事をしたな)


 前にこいつがずっと寝込んでいる時に、変な病気を持ってると思って、殺してしまえと言ってしまった。悪かったな・・・。


「そうだったのか・・・。まぁ、ウルフ位なら解体は余裕だな」


「他の魔物も大丈夫?」


「・・・・・・・例えば?」


「えーと……、ラビットとボアとゴブリンとスネーク、カエル、ミミズ、カタツムリだったかな」


「・・・・・」


(マジかよ・・・。そんなに沢山、本当にこいつが全部狩って来たのか?)


「報酬は現物支払いでもいいかな?肉とか……」


「・・・・断る」


「えーー!じゃあ後払いでお願いします。解体してくれたやつを売ってお金にしてくるから、その間待っててもらって……」


「いや、この話自体を断るって意味なんだが」


(こんな怪しい話しに乗れるか!)


「そっか……、肉は沢山あるけど、処理してないから教会に寄付出来なくて・・・。カミューさんが解体してくれれば、このお肉を少し教会に寄付する予定だったんだけど・・・」


「っっつ!分かった!やってやるよ!教会の皆の為に仕方なくな!」


(こいつ……後で断われるとか言って、教会の皆を盾に俺に強制してきやがった!)


「わぁー!ありがとうございます!サスケ、見られるとマズイからウルフ回収して!」


(何度見ても、この空間魔法は凄いな。跡形もなく消えるなんて・・・)


 暫く謎の生き物を感心したように見ていたら、ガキの服の中に戻って行ったので、この後の事をどうするか聞いてみる。


「それで?これからどうするんだ?解体するのか?」


「カミューさんとは、ビジネスパートナーになったので、色々相談があります。なのでまず、カミューさんの解体場に行きましょう!」


「解体場に行けばいいんだな?それは分かったけど、ビジネスなんとかって、なんだそりゃ?」


 取り敢えず、俺の作業場に向かう間に聞きたい事を聞いておく。


「仕事仲間って意味ですよ。それでですね……肉を直接お店に売りたいのですが、どこかオススメのお店ありますか?」


「・・・・そこからかよ。言っとくが、俺はお店の良し悪しは分からないから、節約の為に食堂には入らないから」


(自炊じゃないと、生活出来ないから仕方ない)


「そっかぁ……。じゃあ自分で探して飛び込みで交渉するよ。なので、1匹解体お願いします」


「もうすぐで着くからちょっと待て!」


「あそこ?」


「そうだ。先に師匠に挨拶してから解体するから、それまで大人しくしろよ」


「なっ、そのぐらいできるよ!子供扱いしないで!」


「はいはい」


 待ちきれないのか、かなり急かしてくるので、子供を注意するように言ったら怒り出した。マジでガキだ。


「ボリスさん、カミューです!また、作業場借りますね」


「おうよ。綺麗に使ってくれよ」


「分かってますって!」


「ほら、行くぞ」


「えっ!もういいんですか?」


「いつもの事だから、これでいいんだよ。早く解体終わらせるぞ」


 いつもこんな感じで、解体場を使わせて貰っている。ボリスさんにはかなり感謝している。俺が食うに困っていた時に、魔物の解体を教えてくれて、何とか食う分には困らないようになった。もう少し稼げるようになったら、何か恩返しをしたいといつも思っている。


 あのガキは解体場に入るなり珍しいのか。辺りを見回している。早く解体を始めよう。


「よし、じゃあ解体するからウルフを出してくれ」


「はーい。サスケ!ここにウルフを出して!解体よろしくお願いします」


ドサッ


 改めてウルフの死体をみて、今まで解体してきた魔物と状態が違っていて違和感を覚えた。死体の状態は綺麗なんだけど、綺麗過ぎてある筈の傷がなく把握するまで時間が掛かってしまった。


「・・・・おい」


「なに?」


「これはお前が殺ったんだよな?」


「うん。そうだよ」


「どうやって殺った?」


「ん?静かに近づいて魔法でサクッと」


(マジでこいつが仕留めたのかよ!まぁそれは良いとして・・・)


「・・・・まぁいい。それで血抜きは?」


「血抜きって何?」


「お前っ!血抜き知らないのか!?クソッ少しでも・・・」


サクッ


 俺は急いでウルフを縛って喉を裂き、上から垂れ下がっているS字フックに吊して、血抜きを始める。血は勢い良く出ているから大丈夫そうだ。安心したので、お説教をする。


「血抜きしないと、肉に血の味が染みついて不味くなっちまうんだよ。だから出来たら仕留めて、すぐに首を裂いて、血抜きした方が肉が旨くなるんだ。分かったか?」


「はい………。すみませんでした」


「他のもどうせ血抜きしてないんだろ?」


「はい………」


「取り敢えず、5匹程出せ。先に血抜きしないと解体出来ないからな」


「分かりました。サスケ出して」


ドサッ✕5


「また見事に………同じ傷跡かよ………」


サクッ✕5


 さっき聞いた魔物の種類を考えて、ウルフならかなり現れるから、試しに多め数で出せと言ったのに、普通に出てきて驚いた。更に、どれも同じ傷跡しか残っていなく、綺麗な死体だったので、またも静かに驚いた。


(こいつが殺ったなら、本当に何者だよ・・・)


 俺は5匹とも縛りあげて、喉を裂き吊るす。そして、血抜き作業を終えた1番最初のウルフを見に行く。思ったよりいい感じに血抜きが出来ている。よし!これなら・・・。


「思ったより血が出ているな。よし、先ずは始めの1匹を解体するか」


「お願いします」


 ウルフの解体をして、皮と肉に分けていく。ウルフには、そのぐらいしか売る所がない。中でも大事な肉を丁寧に取り出していく。


「肉は大丈夫そうだぞ?なんなら、他の冒険者が血抜きして持ってくる肉より、しっかり血抜きされてる感じだ………」


「えっ!そうなんですか!?良かった〜」


 何やら神様に祈りを捧げているのか、胸の前に手を組んで空を見上げている。俺はそんなのは放っといて、残りのウルフの解体を済ましてしまう。


 解体をしていて、フッと気になった事を聞いてみる。明らかに可怪しい・・・。


「・・・お前のその生き物の魔法。空間魔法だっけ?それって時間も止まるのか?」


「ん?分からないけど………あっ、ちょっと試してみる!」


 何やらいきなり、先程仕舞っていた串焼きを1本出して食べている。まだ、食い足りないのか・・・。


パクッ


「………暖かい。うん、これ、時間止まってるみたいです」


「それはかなり便利だな。俺に、その生き物くれ」


「サスケはあげません。あげても餌が私の魔力なんで死んじゃいますよ?なので、カミューさん。サスケの事はより内緒でお願いします」


「………分かったって。で?俺の今回の報酬は?ウルフ6匹の解体分」


(まぁ仕方ない。かなり便利だと思ったけど、餌が特殊過ぎて無理だ。多分そういう契約とかで、テイム出来たんだろうな、あの生き物を・・・。今は目の前の報酬の話をしないと・・・)


「えっと……ウルフは肉以外に売れる所ありますか?」


「ウルフは肉と皮だな」


「なるほど・・・。現物支給でもいいですか?肉1匹分どうぞ!」


「おいおいおい、いくら何でも貰いすぎだぞ。こんぐらいの作業なら、この肉だとその半分ぐらいが普通だ」


 そのまま黙って貰っておけばいいのに、俺は何も知らないこいつの発言に吃驚して、丁寧に相場を教えてやった。


「えっ!6匹も解体してくれてるのに、1匹の半分が報酬って少なくないですか?」


「いつもこんなもんだけどな・・・」


「あっ、そういえば!丁度いい魔法があったんだった」


『鑑定』


ウルフ


肉 良質 銀貨 10枚


毛皮   銀貨 3枚



 何やらブツブツと言い始めて、いきなり何かの魔法を発動させてきた。その時に知り得たのか、肉と皮の大体の価値を教えてくれる。


「・・・やっぱり、1匹でこれだけ貰えるのに報酬が少なすぎる」


「そんな便利な物があるのかよ。さっきも言った通り、鮮度も良いし解体も俺が丁寧にやったから、毛皮の値段もかなり良いと思うぞ」


 俺は肉と皮の値段を聞いて、かなり良い金額がついてる事に嬉しくなってしまった。解体の良し悪しで、値段も大分変わってくるので、丁寧な仕事が求められる。


「報酬もう少し後でもいいですか?専門家を交えて、適正金額をお支払いしたいので」


「専門家って………。俺は後でも構わないぜ。それなら肉は、仕舞っといた方がいいぞ。鮮度が落ちる」


「っ!それはヤバイ!サスケ!全て回収して!」


 慌てて全てを回収している様子を見て、次はどうするのか聞いてみる。


「商業ギルドに持って行って聞くかな」


「あそこは、普通の魔物の肉は取り扱わないから、持って行っても意味ないぞ」


「そうなのか・・・。じゃあ、食べ物屋に直接持って行って交渉するしかないね。ちょっと損しても仕方ないと割り切って行くかな。カミューさん、入った事なくても食べ物屋がある所は分かりますよね?」


「あぁ、いくつかなら・・・」


「連れて行ってください。お願いします」


「金を払って貰う為には、仕方ないか・・・いくぞ!」


(こいつ・・・どこまでも俺をこき使うな・・・はぁ〜)


「はい!ありがとうございます」


 俺は解体場を掃除し、使ったナイフも手入れをし、来た時と同じように綺麗にして、ボリスさんに声をかけていく。


「ボリスさん、ありがとうございました」


「気をつけて帰れよー」


 2人で広場を目指して歩いていると、途中で居酒屋を見つけた。その途端あのガキは、すぐに中を覗いて声をかけていた。


「あの〜、すみませ〜ん。誰か居ませんか?」


「なんだぁ?ガキがここに何しに来た?さっさと帰れ!」


 中から現れたのは、かなりガタイのいい中年のおじさんだった。頑固そう〜。


「おじさんの所はウルフの肉を扱ってますか?」


「ぁあ?そんなの当たり前だ。ウルフの肉が1番手に入るからな。分かったらさっさと帰れ!仕込みの邪魔だ!」


(やっぱり無理だったかぁ。おじさん、仕込みの邪魔されて、奥に帰っていく所じゃん。次を探さないと・・・)


 ここは諦めて俺が外に行こうとしたら、いきなりガキに呼び止められて、声を低めて話しだした。


「(カミューさん、カミューさん、ちょっと手をこんな感じに出してこれをその上に乗せてください!)」


「(なんだよこれ!)」


「(いいから!動かないで下さい!)」


 よく分からないが、変な格好で待機させられ、何故か腕の上に服を乗せられた。一体何がしたいんだ?


「(解体したウルフの肉をここに!)」


「うおっ!(いきなり何するんだ!説明・・・)



「(しっ!いいから静かにしてて!)」


「おじさん、おじさん!」


「まだ何か用か!さっさと出て行け!」


「ここにウルフの肉1匹分あるんだけど、銀貨10枚で買ってくれませんか?」


「さっきそんなもん持ってたかぁ?ウルフ肉が銀貨10枚は安すぎだろう?なんか別の肉か?それとも……訳ありか?」


(ほら見ろ、かなり怪しまれて警戒されてんじゃんか。ここで肉を売るのは無理だろ)


 そう思って、気持ち的にもただの荷物持ちと化している俺は、小さくため息を吐いた。そんな状態でも必死に肉を売り込むガキ。


「ちゃんとウルフの肉ですよ!なんか、頼まれて沢山仕入れたらしいんですけど、嫌がらせなのか急に断られてしまって、損はするけど少しでもお金が入ればと言って、この値段になってます」


「・・・そうか」


「・・・・・」


(こいつ……よくそんな出鱈目な嘘がスラスラと出てくるな。さっき俺をハメた事と言い、もしかして詐欺師?)


「いてっ!」


 俺がそんな事を思って、こいつを見ていたら何故か蹴られた。意味分からん。


「買っていただけませんか?」


「・・・肉はまだあるのか?」


「まだまだ、沢山あります・・・」


「この値段なら2匹貰おう」


(マジかよ!あんな出鱈目な話で2匹も売れるのかよ!このおじさん大丈夫か?)


「ありがとうございます!サスケ!ここにさっき解体したウルフの肉を出して」


「ジジジ……」



ドサッ



「なっ!こいつは!?」


「2匹で銀貨20枚になります!」


「あっ、あぁちょっと待ってろ」


 おじさんがお金を取りに奥に消えたので、早速さっきの文句を言う。


「なんで蹴るんだよ!痛いじゃないか!」


「あんな顔をしてたら、おじさんに怪しまれるでしょうが!」


「でもよ。あの説明は何だ!しかも、その魔法見せても大丈夫だったのかよ」


(俺には内緒にしろと言っていたのに、会ってすぐの奴に見せやがって、どういう事だ?)


「おじさんがどんな人か見極める為だよ。2匹も買ってくれたし。魔法は大丈夫だよ。ここは酒場だし、酔っ払いの色んな話が飛び交う場所だから」


「そういうもんか」


(まぁ、あの出鱈目な話で安いとは言え、2匹丸ごと買うなんて、お人好しにも程がある。あの魔法も、酒の肴程度にしか周りは思わないか)


 そんな話をしていると、お金の入った袋を持って奥からおじさんが現れた。その袋をガキに渡したら、中も確認しないでいきなり、懐にしまった。


「おいおい、確認しないのか?」


「ん?後で確認しますよ。今は、おじさんを信じて見ません」


「・・・少なかったら、どうするんだ?」


「おじさんはそんな事しませんよ。それでは、次の食堂に向かいますので、今日はありがとうございました。また何かあったらよろしくお願いします」


(このお人好しのおじさんなら、お金を誤魔化すなんてしないだろうな)


 俺達は次の取引先を探しに広場の方のお店に行って、何件か覗いた。けど、何処も忙しそうで、入って行けなかった。


「もう、だいぶ暗くなってきたので今日は、この位にしましょう。1日お付き合い頂きありがとうございました。これ、今日の解体と街案内のお礼です」


 そう言って銀貨を8枚もくれた。


「少なくて悪いんだけど、教会にも入れる分を考えると……すみません」


「全然多いんだけど・・・いいのか?」


「これからも、(色々と)よろしくお願いします」


「・・・・」


(マジでこれから、こんな変なやつとやっていくのか・・・はぁ〜)


「あれ?よろしくお願いしますね!」


「・・・あぁ」


 これからの事を考えると疲れるけど、教会の皆の為にやるしかないな。一応腹を決めて、明日からの予定を聞いてみる。


「明日も解体でいいのか?あの生き物にまだ入っているんだろ?」


「サスケですよ。う〜ん、明日は行く所があるからなぁ。解体を頼むときは連絡入れますよ。何処に行けば会えますか?」


「大抵は、あの解体場にいるから用があったらそこに来てくれ」


「わかりました。では、そろそろ失礼します」


「またな。気をつけて帰れよ」


 俺はさっきの解体場に向かいながら、今日の事を思い出していた。


(はぁ〜、今日は休みの筈なのにかなり疲れたな。リリアと花を売ったり、変なガキの頼みを聞いて、魔物を解体する事になるし、肉も売りに行ったりして大変だった。まぁ、銀貨9枚は1日で稼いだ中では1番良かったから良いけど・・・。まぁ、しばらくは奴に付き合うか)


「あら、カミューくんお帰りなさい」


「ただいま、ケイトさん」


「沢山作りすぎちゃったから、一緒に夕飯食べましょう?うちの人も待ってるわ」


「お言葉に甘えて……。いつもありがとうございます」


 ケイトさんはボリスさんの奥さんで、この夫婦は俺に魔物の解体を教えるだけでなく、寝る所や沢山作りすぎたからと、たまに食事まで用意してくれている。もっと稼いだら、何か恩返ししないと・・・。その為にも、人使いは荒いけど金払いの良いあいつと上手くやって行くしかない。頑張れ俺!こうして、忙しかった休日が終わった。



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