異世界9日目 午前 初お金を稼ぐ
「あら!カミューくん今日は、どうしたの?」
「いや、昨日魔物の解体を頼んできた冒険者が、丁寧な仕事だったって、オマケに肉をくれたから少し持って来たんだ」
「にく!?やったーーー!」
「いつも色々とありがとう。生活大変じゃない?なんなら、ここに戻ってきても良いのよ」
「マリナ姉、心配し過ぎだよ。俺なら大丈夫だって・・・。それより、リリアの隣にいるこの子は・・・」
「初めまして、アリスって言います。よろしくお願いします」
特に何かをした訳ではないのに、凄い睨まれている。挨拶しかしていないのに第一印象は、よく無かったみたい。
「目が覚めてよかったな。でも、あまりここの奴らに迷惑かけるなよ」
(うぅ……。私何かしたのかな?刺々しい言い方・・・。ん?でも、何処かで聞いた事あるような?目が覚めて?)
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『いつまでも、苦しんでる原因が分からないなんて可笑しいだろ!?変な病気を持ってるかも知れない!』
『だからって殺すなんて……絶対駄目です!』
『俺は、ここのみんなを守りたいだけだ!』
(あぁ〜!私が寝込んでる時にマリナさんと揉めていた人かな?)
「出来ればそうしたいのですが、如何せんまだ知らない事ばかりで・・・。しかも、現在進行形で困ってまして、どうしたらいいのか……」
「げんざいしんこうけい?なんだそれ?」
「今、とても困っているって意味です」
「・・・・・・」
「アリスちゃん何に困っているの?」
カミューさんには、言ったそばからって言いそうな、何とも言えない顔をされてしまった。でも、優しいマリナさんは話を聞いてくれるみたい。
「これです」
私は、頭に乗っている花冠と周りに散らばっている。作品たちを指差す。
「リリアちゃんと花の冠を作っていたんですが、作り過ぎてしまって、どうしようかと・・・」
「はい!マリナさんにもあげる!」
「まぁ、可愛いわね。リリアちゃんありがとう」
「カミューおにいちゃんにも、あげる!」
「俺はいいかな。これを頭に付けるのはちょっと・・・・」
「えっ……がんばってつくったのに・・・」
断られて、かなり落ち込んでしまったリリアちゃんを、隣で慰めていたらカミューさんが名案を出してくれた。
「これさぁ、広場で売れるんじゃないかな?ほら、花だけ売ってる人がいるんだから、これも売れるんじゃない?」
私は、全く意味が分からなかった。こんなの子供が遊びで作った物だし、ただの野花を編んだだけの物が売れるなんて思わなかった。だけど、マリナさんは違うらしく、真剣に考えて売れると思ったみたい。
「そうね。売れるかも知れないわね」
「本当に売れそうですか?それなら、ちょっと街へ行って売ってきます」
「わたしもいくー!」
「私はこれから、お昼ご飯の用意をしなくちゃ行けないから、ついて行けないわね。でも、女の子2人だけじゃ心配だわ」
「なら、俺がついていくよ。今日は特に何も無いし」
「そう?じゃあ、カミューくんよろしくね。帰ってきたら、ここでみんなと一緒にお昼にしましょうね」
「あっ、いや・・・「カミューさん、よろしくお願いします」
カミューさんは、何かをマリナさんに言いかけたけど、私はお昼ご飯には帰って来たかったのでカミューさんを急かす。急いで作品たちを集めて、リリアちゃんと手分けして持って、人がいる広場まで向かう。さぁ、出発だ!
「ところでそれ、いくらで売るんだ?」
「う〜ん、花だけ売ってる人は、何本でいくら何ですか?」
「確か……銅貨1枚で5〜6本だったような・・・」
「じゃあ、花冠は銅貨3枚。腕輪は、2枚にします!」
「随分安すぎないか?こんなに、手が込んでいるんだから銀貨1枚でも・・・」
「そういっても野花ですし、生花だから枯れてくるし、こんなのその場のノリで付けたりするだけですよ。実質、1日だけしか使わない物に、カミューさんは銀貨出しますか?」
「・・・・いや、買わないな」
「だから、この値段が妥当かと・・・。2日目以降は、紐を付けて壁や扉に付ける事を勧めます」
(あんなに一生懸命リリアちゃんが作ってた物を、1日でポイッとは、させない!)
「………なるほど」
「もうすぐで、ひろばだよ!」
「リリアちゃん、お金の計算出来る?」
「けいさん?わからない……」
「カミューさん、リリアちゃんに付いてあげてください。金額はさっきの値段で!」
「それはいいけど・・・。お前は?」
「私は計算出来るので大丈夫です!手分けして少しでも売りましょう」
私は2人から離れて、ターゲットを探す。狙うのは、カップル・優しそうなおばさん・子供を連れた親・女性グループかな。
(おっ!カップル発見!突撃ーーー!)
ベンチに座って話をしているカップルに近づいて、出るタイミングをはかる。丁度よく、話が途切れてお互いに少しの沈黙が出来ていた。今だ!!
「お兄さん!お花の冠は如何ですか?」
「花の冠?」
「はい!そちらの綺麗なお姉さんに、どうですか?」
「綺麗だなんて………凄く可愛いお花の冠ね。でも、私には似合わないわよ」
「えっ!そんな事ないですよ!この白いお花のとか、お姉さんのイメージに合ってますよ。ちょっと付けてみてください!」
私はオススメの花冠をお兄さんに渡して、お姉さんの頭に付けてもらう。お兄さんに付けさせるって言うのが大事!
「どうかな?」
「わぁ〜、お姉さんお姫様みたい!ですよね!?」
トントンッ
「っあぁ、本当にお姫様だ」
お姉さんの可愛いらしさに見惚れていたのか、お兄さんが固まっていたので、私が代わりに即褒めてあげて、お兄さんを強制的に現実に戻す。駄目だよ?いくら見惚れていたからって、女性の伺う質問には、すぐに答えないと!
「これ、もらうよ」
「ありがとうございます!銅貨3枚になります」
「はい、どうぞ」
「お姉さん、その花の冠は紐を付けると、お部屋やドアに飾れるので良かったらやってみてください」
「そうなの?分かったわ。ありがとう」
(本当に売れた!これなら教会の運営資金の足しに少しはなるかな。よーし、残りも売るぞ!)
私は、やる気を出して次のターゲットを探す。見つけたのは、女性3人の冒険者達だった。お店をいくつか覗いてみてる様なので、買い物がメインなんだろう。よし!突撃ーー!
きゃいきゃい・・・わらわら・・・・
「お姉さん達、花冠は如何ですか?」
「ん?な〜に?わぁーー!可愛い!!」
「凄いな、花でこんなの作れるんだ?」
「とても、可愛らしいですね」
ぱっと見、子供に見えなくもない小柄でイメージふわふわな女性と、役職剣士なのか長身で凄く凛々しい女性と、可憐・儚げと言う言葉が合いそうな女性の3人だった。全然タイプが違うけど、どんな組み合わせだ?
「ちょっと、付けていい?どう?どう?可愛い?」
「可愛いけど、シャナにはこっちの明るい花の方が合うかな」
「じゃあ、これにするー!ソニアはこれが合うかな?」
「そうだな。ソニアは白や青がよく合うからな」
「だよね。だよね。ステラも、そう思うよね!」
「2人が、そう言うなら私はこれにしようかな」
「ステラはどれかな?」
「私は似合わないからいいよ」
「えぇー!そんなこと無いよ!」
「そうよ。付けてみなさいよ」
「いいって・・・・」
凛々しいお姉さんは、いいと言いながらも少し寂しそうな顔をしていた。それもそうだよね。自分以外はお揃いなんだもん。私は腕輪の方を勧めてあげた。
「あの〜、この腕輪ならそんなに花を付けていないので、お姉さんも抵抗なく、付けれると思うのですが、どうですか?」
「これ位なら、いいかな。どうかな?」
「とても良く似合っています!」
「うん。うん。ステラに合うね。私は、この花がいっぱい付いてる腕輪も下さいな」
「うふふ、みんなでお揃いね」
(腕輪勧めて良かった〜。やっぱりみんな一緒が良いよね)
3人とも嬉しそうにしている光景を見てそう思った。結局3人で、花冠を2つと腕輪4つが売れた。ん?腕輪の数が合わない?そんなこと無いよ。イメージふわふわなお姉さんが2つ買って、後は1つずつ買ってくれたからさ。ちゃんと明日以降の使い方のアドバイスもしといた。さて、次は誰にしようかな。
「あら?あなた……アリスちゃんだっけ?ここで何しているの?」
「あっ!この間、教会で会いましたね。お肉とても美味しかったです!ご馳走様でした」
「あらあら、そんな丁寧に……喜んでくれて良かったわ。ところで、その綺麗なお花は?」
「花の冠と腕輪を作ったので、教会の友達と売ってるところです。お肉の御礼に1つ差し上げます」
「そんな、売り物なのに悪いわ。しかも、おばさんには似合わないし・・・」
「じゃあ、何か紐をつけてもらえれば、ドアや壁に付けれる小物になるので、やってみて下さい!」
「こんな素敵な物をありがとう」
「いえいえ、飾ってくれるだけで嬉しいですから」
「それじゃあまたね。シスター達にもよろしくね」
「はい!」
私はその後も、親子連れや女性グループを見つけては、順調に売っていった。最後の1つを売って、リリアちゃんとカミューさんの所へ行く。
「私の方は終わったよ。リリアちゃん達はどう?」
「こっちはあと1つ。アリスちゃんがつくってた、うでわがまだのこってるの」
「そうか〜でも、そろそろお昼ご飯だから帰ろう?」
「やだ。これもうるの!」
「う〜ん、それじゃあこうしよう!この最後の1つは手伝ってくれたカミューさんにプレゼントしよう!」
「はぁ?いきなりなんだよ!いらな・・・(取り敢えず、今は貰ってよ。後でなら捨ててもいいから、じゃないと何時までもここにいる事になるから!)
(うっ・・・分かったよ)
「ありがとう。貰っとくよ」
「これでよし!さぁ、リリアちゃん帰ろう」
「うん!」
私達は、3人揃って教会に帰ることにした。さぁ、お昼は何かな?
「ただいまーー!」
「お帰りなさい。どうでしたか?」
「マリナさんただいま。全部売れて銀貨5枚になりました。はい、これ」
「ん?これは貴方達で稼いだお金だから、貴方達で分けていいのよ」
「そういう訳には………!食事や寝る所までお世話になっているので……」
「いいのよ、子供が気にしないの!」
「じゃあ私が、分けますね。リリアちゃんと私は銀貨2枚で、残りを手伝ってくれたカミューさんにあげます」
「俺も?いいのか?」
「はい!売るのを手伝って貰ったので、遠慮なく貰ってください。そして、私は自分の2枚から1枚を教会に入れます!」
「えっ?」
「私は、教会もここのみんなも好きなので1枚寄付します!これで、美味しい物を食べましょう」
「リリアもきふする!」
「アリスちゃん、リリアちゃんありがとう。みんなで美味しい物を食べましょう。さぁ、そろそろお昼ご飯よ。カミューくんも一緒にね」
「リリアがつれてく!」
「あっ!ちょっと・・・」
カミューさんはリリアちゃんに、ガッチリ腕を掴まれて、逃げれない状態になっていた。マリナさんのが上手いな。カミューさんを帰らせない様にしてるし・・・。
食堂に行くと、殆ど皆んな集まっていた。今日のメニューは、固いパンとスープとステーキだった。お肉は塩のみだったけど、スープに入れられてるより、豪華に感じたし、量は少なかったのに、かなりの満腹感だった。やっぱり肉最強!
・・・。
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