異世界9日目 早朝 外に出れるか試してみよう
遅くなってすみません
「サスケおはよう。今日も外は良い天気だね」
窓は一応あるけど、カーテンが無いので外が明るくなったら、眩しくて起きてしまう。身体が完全に起きるまで、サスケにご飯をあげながら、ぼーっとしている。
森の中や緊急事態とかなら、「会社に遅刻するヤバイ」って位に、即覚醒出来るんだけど、普段はこんな感じだ。ぼーー。
ようやく動けるようになって、身支度を整える。朝食まで時間が結構あるので、昨日マリナさんに連れて行ってもらった、冒険者ギルドに行ってみる事にする。
「うわ〜、これは凄いね」
昨日、案内してもらったので迷いはしなかったけど、冒険者ギルドの外からもう、人が凄い。まだ早朝なのに・・・。
「邪魔だガキ!」
「おい、危ねえぞ!」
「あっちに行ってろ!」
「あっ、すみません・・・」
この人混みじゃあ、中に入るのも大変そうなので、少し離れた所で観察する事にする。しばらく、冒険者装備をしている人達を観察したけど、みんな大人で若くても10歳ぐらいの冒険者がギルドに出入りしていた。
(う〜ん、これはやっぱり・・・。私ぐらいの年齢はいないか・・・)
今すぐギルドに入るのは止めて、森に行けるか確認しに詰め所へ行く。顔見知りのカイルさんやマスト隊長が居たらいいなぁ〜と思いながら、西の詰め所へ向かう。
朝食を食べる前に詰め所に向かったのが良かったのか、昨日マリナさんと来た時みたいな行列ではなかった。私も急いで最後尾に並ぶ。
40人ぐらい並んでいたけど、同じチームとかが何組かあったみたいで、思ったよりサクサク進んだ。詰め所に近づくと受付が2ヶ所あって、どちらでも好きな方で良いみたい。
でも、どちらも知らない人だったので、適当に並んだ。私の前に結構人がいたけど、グループが多かったみたいで、すぐに私の番になった。ラッキー☆
「はい。次の人〜」
「はい!おはようございます。あの〜、森に行きたいのですが・・・」
「・・・・子供1人では行かせられません。保護者と一緒ならいいですよ」
「保護者………他に方法はないですか?」
「子供でも森に行けるのは、冒険者カードを持ってる人だけですね。後は保護者が一緒じゃないと駄目です」
二度も言われた・・・・。
「そんな〜、そこを何とか・・・」
私がなんとか、通してもらおうと警備隊の人に食い下がっていると、いきなり後ろから怒鳴られた。
「おい、ガキ!混んでんだから、さっさと退け!」
後ろを見ると、列が長くなっていて、本当に混んできていた。私は、怒鳴ってきた方を確認する。大きな身体で、顔も強面だった。盗賊の頭領に間違えられても、可笑しくない風体の人と、チンピラみたいな人と、インテリ風な人がいた。
「あっ、すみません」
また、空いている時に来れば良いと思って、私は謝ってそこから離れようとしたが・・・。
「邪魔だ!」
ガッ
ドサッ ズズズーーーッ
山賊の頭領みたいな人に思いっきりお腹を蹴られ、吹っ飛ばされた。ぐふっ……。
「さすがゲノムさん!結構跳びましたね!」
「あらら〜、退けと言われたらさっさと退かないと」
多分同じグループなのだろう。男の方からそんな声が聞こえた。
「おい!お前何してんだ!」
ガヤガヤ・・・・ガヤガヤ・・・
「………アリスちゃん!」
向こうで受付の人と蹴ってきた冒険者が揉めているみたい。私は蹲って痛みに耐えていた。そしたら、聞き覚えのある声が聞こえた。カイルさんだ。
カイルさんは急いで駆け寄ってきて、私を抱き上げ、詰め所内に運んでくれた。
「そこに座ってて、確かこの辺に薬箱があったはずだから・・・少し痛いけど我慢してね」
蹴られて飛ばされた時に、無意識に頭を腕で庇ったせいか、腕がかなり擦りむいていたみたい。
(腕より、蹴られたお腹が痛い。これ、肋骨いってるなぁ〜。アイツ等後で覚えてろよ〜)
「これで、腕は良し!でも、かなり辛そうだね。後は何処を・・・・これは!!」
私が奴等への仕返しを考えてる隙に、カイルさんが服をめくって痣を確認してしまった。私は急いで隠して・・・。
「カイルさん!女性の服を許可なく、いきなりめくるのは良く無い事です!」
「そんなこと言ってる場合じゃあ無いだろ!その怪我は・・・「何でも無いです!大丈夫ですから!見間違えですよ。ちょっと部屋から出て行って貰えませんか?また呼びますから」
「何を言っ 「良いから!早く!3秒以内に出て行って下さい!じゃないと、マリナさんにカイルさんは、女性の服を許可なく脱がす変態だと言いますよ」
(脅迫みたいになっちゃったけど、痛みでそれどころじゃない!)
「なっ、それは!でも・・・」
「3、2、1・・「速いな!?分かった分かったから!」
渋々了承して、部屋から出て行ってくれた。私は直ぐに、服をめくり怪我の確認をする。
(うわ〜、これ確実に肋骨いってるし、内出血で色がヤバイ・・・。早く治そうっと)
『ヒール』
お腹に手を当てて、この世界に来た時みたいに、怪我を治していく。骨折やヒビをヒールで治すのは可笑しいと思うけど、結局は想像力なので、言葉は何でもいいと思っている。ただ私は良くても、この世界の人はどう思うか分からないので、カイルさんを追い出したのだ。
(ふぅ〜、楽になってきた。カイルさんには、悪い事しちゃったから、今度何か埋め合わせしよう)
私は椅子から降りて扉を開けて、カイルさんを呼ぶ。近くに待機しててくれたらしく、直ぐに来てくれた。
「どうした?もういいのか?」
「はい!カイルさんに手当してもらったので、もう大丈夫です!まだ朝ご飯食べてなくて、お腹が空いたので教会に帰っても良いですか?」
「本当に大丈夫なのか?途中で倒れると行けないから、教会まで送って行くよ。ちょっと待ってて」
「はーい」
カイルさんは、同僚の人に一声かけて来たのか、直ぐに戻ってきた。
「さぁ、行こうか」
教会に着くまで、何度も心配され、私の体調に異変が無いかチェックしているのか、しょっちゅう視線が飛んできてた。
「あの人達は、どうなったの?」
「彼らは捕まえたよ。警備隊の前で住民に暴力を振るったからね。今日1日は牢屋ですごしてもらう」
「ふ〜ん、そうなんだ」
「あら?アリスちゃん、カイルさんといたのね。カイルさん、おはようございます」
「おっ、おはようございます。マリナさん!」
もうすぐで教会に着くと言う所で、マリナさんが出てきた。どうやら、朝ご飯だから探しに来てくれたみたいだ。
「あら、アリスちゃん腕の所どうしたの?」
「朝、詰め所で並んでいた冒険者に絡まれたらしく、それでこんな怪我を・・・」
「でも、カイルさんにちゃんと手当して貰ったので大丈夫です。マリナさんお腹すきました」
「そうね。カイルさん、わざわざ送って頂いてありがとうございます。アリスちゃん行きますよ」
「カイルさん!ありがとうございました。またね〜」
私はカイルさんにお礼を言って、マリナさんに付いていく。お腹空いた〜。
「アリスちゃん、お出かけしてもいいけど、一言どこに行くか言っといて貰えると助かるんだけど・・・」
「すみません。今度からそうします」
朝、静かに出て来てしまったから仕方ない。多少のお叱りは受けます。食堂に行くとみんな座って待っててくれた。本当に申し訳ない・・・。私は、いつものようにリリアちゃんの隣に座る。
「さぁ、いただきましょう」
「いただきます!」
今日の朝ご飯は、固いパンと野菜スープだった。美味しいけど、そろそろ違うのが食べたい。早く、私が狩った魔物をなんとかしないとな。
食事が終わって、魔物の解体の事を考えていたら、リリアちゃんに捕まった。
「アリスちゃん、いっしょにあそぼう?」
今からギルド行ってもまだ混んでるだろうし、ちょっとこの世界の子供の遊びも気になったので一緒に遊ぶ事にする。
「いいよ。リリアちゃん何して遊ぶの?」
「えっと、きょうは、おにわで、へやにかざる、おはなをとるんだって」
「・・・・そうなんだ。他には何していつも遊ぶの?」
「くさとりきょうそうとか、ぞうきんできょうそうとかかな?」
(・・・・家事の手伝いじゃん!遊びと違う!この世界じゃあ、子供も働くのか〜)
「じゃあ、庭に行こうか」
「うん!」
私は、リリアちゃんと手を繋いで庭にやってきた。広い庭に生えている綺麗な花を選んで摘んでいく。リリアちゃんは、楽しそうにいつまでもやっていたけど、私は数分で飽きてしまった。
「リリアちゃんちょっと来て」
私は、両手一杯に花を持っているリリアちゃんに手招きして呼んだ。
「なあに?アリスちゃん?」
「お花の冠を一緒に作らない?」
「おはなのかんむり?」
「そう。作り方を教えるから、その通りに作ってみてよ」
「わかった!つくる!」
私は、リリアちゃんが集めてきた花を少し貰い。茎の長すぎるやつはちょっと短くして、準備をする。
「まずは2本の花をこういうふうに絡ませる。その次もこれと同じ様に、それを暫く繰り返して作っていくよ」
「うん。こうやってこうやって・・・」
「ある程度長くなったら、始まりと終わりの方を持ってきて、ここに終わりの方の茎の部分を差し込んで、出来上がり!はい、あげる」
私は出来上がった花冠をリリアちゃんの頭に乗ってけてあげた。
「わぁ〜!かわいい!わたしも……!こうやって……こうやって……できた!これ、アリスちゃんにあげる」
「ありがとう」
「みんなのぶんもつくる!」
2人で花冠をいくつも作った。お花の色を変えてみたり、小さく作って腕輪にしてみたり、気付いたら孤児院の人にあげる以上に作ってしまった。
(作りすぎた。どうしよう・・・)
「あっ、リリア!ちょうど良かった」
2人で沢山の花に囲まれながら、途方に暮れていると、どこからかリリアちゃんを呼ぶ声がした。
「あっ!カミューおにいちゃん!」
(カミュー……カミュー………どこかで聞いた……あっ!あの美味しい串焼きをくれた人か!)
串焼きの人は、こっちに来ると・・・。
「きょうはどうしたの?」
「マリナ姉かマリアーヌさん、どこにいるか分かる?」
「きょうかいのそうじしてたよ。あっ!マリナさん!こっちこっち!カミューおにいちゃんがきたよ!」
掃除が終わった所なのか、丁度マリナさんが通りかかった。リリアちゃんの大きな声が聞こえたのか、こっちに来てくれる。
(マリナさんとのお話が終わったら、美味しい串焼き屋さん教えてもらおう)
私は、それまで大人しく待つ事にする。美味しい食べ物の為に・・・。
次回は2週間後に更新します!