異世界8日目 サファリスタ観光
遅くなってすみません
始めは民家ばかりだったけど、街の中心へと近づくと、色んな屋台やお店が建っていた。私は匂いに釣られて、1つの屋台の前まで来ていた。
『ホーンラビットの串焼き 2本 銅貨3枚』
(ホーンラビット・・・私、確か何羽かゲットしてたよね?銅貨・・・お金は幾らか持ってるけど、貨幣価値が分からない)
「マリナさん、銀貨と銅貨の違いは何ですか?」
「お金のお勉強?銅貨は10枚で銀貨1枚、銀貨は100枚で金貨1枚、金貨は1000枚で白金貨1枚になるのよ」
「なるほど・・・。勉強になりました!ありがとうございます」
(確か私のインベントリにあったのは・・・。金貨1枚、銀貨10枚、銅貨50枚だったかな?教会を綺麗にする事になると、なんか心許無い……。どうやって稼ぐか……)
「お金はどうやって、手に入れるのですか?」
「ん?そうね。アリスちゃんがもう少し大きくなったら、お手伝いとかしたら貰えるわよ」
「じゃあ、もっと大人の人は?」
「そうね。やっぱり食べ物屋さんとかの商店のお手伝いかな?後は、自分でお店を出すとか。命の危険はあるけど、冒険者になって魔物を狩って売るとかかな?」
「なるほど!」
(よし!私は、魔物を狩って売る冒険者になろう!)
これからの資金繰りを考えながら、歩いていると、美味しそうな焼きたてのパンの匂いがしてきた。どうやらマリナさんは、この匂いのパン屋さんに向かっているらしく、ワクワクが止まらない。もう、頭の中はパン一色だ。
ようやく、目的のパン屋さんに着いたのに、マリナさんは何故かそこを通り過ぎて行く・・・なんで?
取り敢えず、何も言わずにマリナさんに付いていく。パン屋さんを過ぎて最初の路地を右折して、更に次の路地も右折して、ある扉の前で止まった。
(ん?ここは、さっき通り過ぎたパン屋の裏口?)
私は頭に疑問符を浮かべながら、マリナさんの行動を見る。マリナさんは躊躇いなく、裏口の扉をノックして、暫く待っている。少しすると中から強面のおじさんが出てきた。
「また来たな……」
「いつものをお願いします」
「たまには表のを買ってくれると助かるんだがな……。ほらよ……。銀貨2枚だ」
「はい。いつもありがとうございます」
凄く失礼な物言いをしてくるおじさんに、マリナさんがニコニコと笑顔で対応しているのが信じられなかった。買ったのは、いつも食べている固いパンが3袋。80個ぐらいあった。安いかも知れないけど、言い方がムカつく。
「ん?そのガキは?」
「つい最近うちに来たアリスちゃんです」
「あぁ?ったく、またガキ増やしたのか?金も無いのによくやるよ」
「それが、私達のお役目ですから……。こんなに沢山のパン・・・。ブラッドさんには、いつも感謝しております」
「ふん、それはちゃんと金でやり取りした。お前達の商品だ」
「ふふふ・・・。ありがとうございます。それでは、そろそろ次の買い物がありますので失礼致します」
そう言ってお辞儀をしたマリナさんに習って私もお辞儀をした。
(早く人目につかない所でサスケに仕舞わせないとなぁ)
キョロキョロと、周りの確認をしていると・・・。
「おい。お前ら昼飯は?」
「これからです。お昼はどこかの屋台で何か買って食べようかと・・・」
「・・・・・お前らちょっとそこで待ってろ」
マリナさんの話を聞いて、おじさんは渋い顔になり、言うだけ言って建物の中に入って行った。
(ん?何なんだろう?ってか今、誰も居ないからサスケに回収させちゃおう)
「サスケ、このパン仕舞っといて」
「チチチ・・・」
お願いしたら、瞬時に回収して私の元に戻ってきた。サスケに向かって指を出し、次いでにご飯をあげる。
「本当に凄いわね。あの量のパンを収納してしまうなんて!アリスちゃん、サスケちゃんありがとう」
暫くすると中からおじさんが出てきた。
「あれ?パンはどうした?」
「たまたま通った、教会のお姉さんズが先に持って帰ってくれました〜」
マリナさんは、いきなり確信をつかれて、何て答えていいのか分からなく、固まっていたので、私が適当な説明をしてあげた。
「そうか……」
「はい!優しいお姉さん達です」
「・・・・・(ニコニコ)」
私は、悪びれもせず普通に嘘をついてやり過ごした。マリナさんは会話を挟まず、ずっと笑顔でいた。
「お前たち……ほらよ……」
そう言ってくれたのは、パンに野菜や肉が挟まってる所謂クラブサンドを2個。私は、受け取ってそのまま固まっていると……。
「くす……。ありがとうございます。いただきます。アリスちゃんも頂きましょう」
「え!いいの?じゃあ頂きます」
パクっ✕2
もぐもぐ……もぐもぐ……
ゴクン…………バクッバクバク……
「美味しい!!パンも柔らかいし、ほんのり甘みがある。そこにシャキシャキの野菜と濃いめの味が付いてるお肉!最高ー!!おじさん、とっても美味しかったです。ご馳走さまでした」
全部食べ終わってから、おじさんに改めてお礼の言葉とクラブサンドの感想を伝えた。美味しすぎて、テンション上がりまくりで、本当の子供みたいに身体を命一杯使って、美味しさをアピールした。
「・・・おう。ならよかった。うちは忙しいんだ。さっさと行け」
「おじさん!ありがとう!じゃあね〜」
私は、おじさんに向かって笑顔で大きく手を振った。おじさんは、戸惑いながらも手を小さく挙げてくれた。まぁ〜、直ぐに扉の中に消えたんだけどね。
「次はどこに行くの?」
「次は、野菜を売っている所ね。よく買う場所が向こうにあるから行きましょう」
そう言って、幾つもある八百屋の前を通り過ぎて行く。
「マリナさん。あそこの大きな建物はなんですか?」
「ん?どれかな?あぁ、あれは冒険者ギルドね」
「冒険者ギルド!?入ってみたい!お願いマリナさん!」
「いいけど、恐い人が多いから大人しくしててね」
「は〜い」
マリナさんに手を繋がれて中に入ると、とても大きな建物だけあって広かった。
「うわ〜、広〜い。でも、あんまり人がいないね」
「今は、お昼過ぎだから少ないのよ。朝と夕方は凄い人だかりになるから、建物自体に近寄るのは辞めた方がいいわよ。アリスちゃん潰されちゃうよ」
「気をつけます……。あれ?酒場がある」
「そうなのよ。冒険者ギルドの中には、酒場がある所と無い所があるみたいで、ここは酒場があるギルドなのよ。だから、アリスちゃん1人で来ちゃ駄目よ。幸い今日は誰も居ないみたいだけど、酔った冒険者に絡まれたら大変だから・・・」
(うわ〜、絡まれるのか〜。しかも酔っぱらいって言うのがタチ悪いな。酒場無くしたい・・・)
「あそこのボードには何が書いてあるの?見てみたいです!」
「あれは、依頼書よ。私みたいな一般の人が、冒険者さんにお願いをして、取ってきてもらう為のボードよ」
「なるほど……」
そこには、色んな魔物の名前や素材?の名前。あとは期限や金額、依頼主が書いてあった。
(ふむふむ……。私が森で狩ったものは、どれも売れるのね。ん?依頼主の所にいくつか商人ギルドって書いてある)
「この商人ギルドって何ですか?」
「詳しくは分からないけど、変わった物を取り扱ってる場所って感じかな。ここからもう少し東に行った所にあるわね」
「なるほど……。冒険者って誰でもなれるのですか?」
「確か10歳からだったかな?」
「そうなんですね、色々とありがとう御座いました。もう大丈夫なので、買い物の続きに行きましょう!」
私は、マリナさんの手を引いて冒険者ギルドから出て行く。そこから暫く歩いてようやく目的の八百屋さんに着いた。大通りからかなり離れていて、人通りも少なく、こんな所でやっていけてるのか心配になる立地だ。
「こんにちは、カリンさん。今日のお買い得な野菜は何ですか?」
「あら、マリナさん。いらっしゃい!今日はそうだね。このジャガイモとダイコンだね。いくついる?」
「じゃあ、ダイコン5本と銀貨4枚分のジャガイモを下さい」
「あいよ。いつも沢山ありがとう。これおまけね。食べてみて!」
そう言ってくれたのが、枝豆だった。
「美味しそう!カリンさん、いつもありがとうございます。また来ますね」
「まいどあり〜」
凄くサバサバしたおばさんだった。おまけもくれたし、私はとても気に入った。何か買う時はここに来よう。
誰も見ていない所で、買った野菜をサスケに回収して貰って、そろそろ教会に戻る。私は、まだまだ街を探検したかったけど、買った食べ物を出さなくちゃいけないし、夕飯の支度があると言われたので戻る。夕飯大事!
マリナさんと教会に戻ってきて、厨房に買った物を全て置いてきた。私は、夕飯まで時間があるので、礼拝堂で時間を潰す事にする。
礼拝堂に行くとフォードさんとシウルくんがお祈りをしていた。邪魔をしない様に静かに近づくとシウルくんが何かを胸に抱いて必死でお祈りをしていた。もう少し近づくと・・・。フォードさんが気付いた。
「おやおや、今日もお会いしましたね。ほら、シウル。アリスさんですよ」
シウルくんは、胸に抱いていた何かを直ぐにしまって、フォードさんの後ろに隠れてしまった。
「本当にすみません。全く、仕方ありませんね。隠れるなんて失礼ですぞ。ほら」
「私は、大丈夫ですよ。それと、私にさん付けはちょっと、フォードさんのが大人何ですから!」
「いえ、女性に対してそんな失礼な事はできませんので・・・。このままアリスさんと呼ばせて頂きます」
「まぁいいですけど……。シウルくん!さっき何を持っていたの?」
「・・・・おまもり」
「お守り?」
聞き返すと、更にフォードさんの後ろに隠れてしまった。
「このウィズホルン様ゆかりのお守りです」
「そうなんですね」
(かなり気になる、でも見せてもらうのはもう少し仲良くなってからにしよう。取り敢えず、フォードさんの後ろから出て来てくれないとなぁ。あっ!そうだ!)
「シウルくん、ちょっとこっちに来て!良い物あげる!」
私はこいこいと手をやってるけど、中々来てくれない。その様子をみかねたフォードさんが、後ろにいるシウルくんを前に出し、その背中を押して此方に送り出してくれた。
こっちに来たシウルくんの手をとり、内緒話をするみたいに部屋の隅へと行く。服の中からコリンの実を1つ出して、シウルくんにプレゼントする。
「あんまり無いから、シウルくんにだけあげる。美味しいから食べてみて」
「・・・うん」
サクッ……
「っ!おいしい・・・」
「でしょう?喜んでくれて良かった」
モグモグ………
シウルくんは笑顔でコリンの実を食べていた。食べ終わるまで、その様子を見て満足したので、私はフォードさんの所へ行く。
「あっ!まって!ぼくもいく」
後ろからシウルくんがついてきたので、手を繋いでフォードさんの所へ戻った。少しは慣れてくれたのかな?
「フォードさん。そろそろ戻らなきゃですよね?シウルくんをお返ししますね」
「これはこれは。ご丁寧にありがとう御座います。シウル、そろそろ行きましょう」
「えっ!・・・うん・・・」
「シウルくん、またね!」
私はそう言って手を元気よく振ると、シウルくんも小さくだけど、同じ様に手を振り返してくれた。
(よし!餌付け作戦で仲良くなろう。その為には、もっとコリンの実を手に入れないとなぁ)
まだ、時間があるのでこのまま教会にいる事にする。暫くすると・・・。
「あっ!アリスちゃんいた。ごはんだよ。はやくいこうよ」
「リリアちゃん、呼びに来てくれてありがとう。お腹空いたね」
シウルくんが帰った後も礼拝堂にずっと居たけど、夕飯で呼ばれるまでの間、誰も来なかった。本当に心配だ・・・。
食堂に着くと私の横にはいつも通りに、リリアちゃんが座り、夕飯を頂く。今日のメニューは、固いパンとジャガイモとダイコンが入ったスープだった。買いに行って良かった。とても美味しかった。
食事が終わり私だけ、みんなと違う所で寝ているので1人で部屋に向う。サスケに餌をあげながら、明日の予定を考える。
(明日は森に行けたら行ってみようかな。コリンの実を調達しに、あとは冒険者ギルドで色々情報を集めようかな。私の持ってる魔物を処理したいし・・・)
私は明日やる事を決め、早いけど寝る事にする。
「サスケおやすみ」
次回は2週間後に更新します!
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