謎の声
この回はずっと会話が続きます。
死ぬってこんな感じなんだ。苦しいとか無く。身体がふわーと何かに持ち上げられ、天井なんか無いかの様に、いつまでも上っていく。いや、他の人達も同じかは分からないけど、私の場合はこんな感じだ。周りを見渡して見るけど、何もなく真っ白で・・・(目が痛い!何これ!瞼なくて閉じられない!)
『君はいつも賑やかだよね。死ぬ瀬戸際でも、寿命とうに尽きてるのに孫たちに説教してたし…』
と呆れたような声が聞こえた。
(誰!?って言うか、まず話す前にこの部屋(?)の明るさを少し暗くして欲しいのだけど…)
『しばらくすると慣れてくるから我慢して。はぁ…』
(また呆れられた。話さなくても思ってる事が分かるのは凄いけど、この声だけ星人ちょいちょい失礼だな。姿を見せろ!)
『あぁーごめんね。まだ、ここの責任者に許可取ってないし、手続きも済んでないから姿を見せれないんだ。ってか、この声だけ届けるのもダメなんだけど、裏ルートを使ってお届けしてます…てへっ』
(あ!目(?)が慣れてきた。なんだこいつ。声だけだけど結構軽い奴だな。そこまでして、私に接触してきた理由は何?)
『それなんだけど…君にお願いがあってきました。詳しいことは手続きが終わって会った時に話すことになるけど・・・僕を助けて欲しいんだ!』
・・・はい?
『おぉー!即決とは嬉しいね。よろしく』
(いやいや、今の『・・・はい』は、困惑して聞き返した時の返事でしょう。それを分かっていながら、流して話を進めたでしょう)
『バレた?君が僕を助けてくれるなら、チートを付けて、この世界のみんなが憧れる剣と魔法がある僕の世界に招待するよ!さぁ~行きたいよね!』
(うわー、何こいつ。かなり腹が立つ。わたし特に憧れてないし、それが人にものを頼む態度?なら、断らせていただきます)
『え!今、断られた?おかしい。この世界の人は皆、転生や転移、チートや魔法が好きだから、その世界に行けるってだけ伝えれば大丈夫って神友達に聞いたんだけど……』
(一部には、いると思うけど…みんなでは無いな。とりあえず、私は違うかな。ゲームや小説もやったり読んだりするけど、実際自分が行くとなったら食事は不味いし・トイレはどのレベルであるか分からないけど私がいた所より発展して無さそうだし・衛生面の問題もある・娯楽ないし、しかも人の命が軽い、人権全くない。こんな良い所なしの状況の場所に誰が喜んで行きたいと思う?)
『……そうやって言われると僕も行きたくないね。先程の態度スミマセンでした。ぺこり…』
(姿が見えないから、本当に謝ってるのか分からないけど何が『ぺこり…』よ。最後ので、ふざけてるのは分かったわ。)
『ふざけてるなんて、そんなつもりは無いよ!ただ、姿が見えないから頭を下げてるのを分かりやすく音で表しただけで……スミマセンでした……。どうしても、君じゃなきゃダメなんだ!』
(ドラマとかロマンチックなシチュエーションなら、胸きゅんの台詞だけど、今ここでは一切私に響いてないわね…なぜ私?)
『先に言っとくけど、これは褒めてるんだからね。』
(分かったから早く話してくれる?)
『君の魂は他では、なかなか見つからない物なんだ。その魂は色々な経験をしている。だから、君がやった事ないスポーツをしても、少し教わっただけで出来てしまうのはそのせいだ。魂にそのスポーツをやっていた記憶があるから身体がそれに合わせて動けてしまう。しかも死ぬ際に見せたあの生命力!かなり強靭なんだよ。君じゃなきゃダメだと確信した。お願いだから僕を助けて』
(う~ん・・・それなら、いくつかの条件によっては引き受けてもいいかな)
『本当!?言質はとったからね!条件飲めばやってくれるんだね』
(うん…そうだね…それならやってもいいかな)
『どんな事でも言って、難しい事でも今回みたいに裏から手を回せばなんとかなるから、それで君が動いてくれるなら安いものだしね。君の気が変わらないうちに、どんな条件か早く教えて』
(じゃー、まず1つ目。手続きとかいうのが済んだら貴方は私の前に現れるの?)
『そうだね。詳しい事情とか話さなきゃいけないからね』
(なら、私の前に現れたとき2発でいいから殴らして)
・・・・
『え!なんで殴るの?僕をってことだよね?それは難しいなぁ、それ以外なら…』
(あれ?おかしいな。今、『どんな事でも言って』って、『難しい事でも大丈夫』って言ってたじゃん。何も難しい事じゃないよ?ただ、貴方の身を差し出せば済むことだよ)
『……逆に言質をとられてた。分かりました。その件は了承します』
(チートをくれると言ってたけど、どんなやつ?)
『それは、これからの君の頑張りようによって違うからなんとも言えないかな。インベントリと言語、鑑定や看破あたりは付けようかと思ってるけど…あっ、そうそう。ペットをあげると言われたら何が欲しい?犬?猫?』
(モモンガ)
『…はい?モモンガ?何故!』
(リスみたいで可愛いのと、あの飛んでるのどうなってるのか近くで見てみたいよね)
『そうなんだ…』
(失礼な奴だな。聞かれたから素直に答えただけなのに…ま、いいや頑張り次第と言うのがよく分からないが、それだけチートくれるなら大丈夫かな。後は…自由にさせて下さい)
『ん?どういう事?お願いは聞いてくれるんだよね?』
(はい、やりますよ。ただ、期間を決めて急かせたり、方法や手段を強制するのはやめて欲しい。私は楽しみたい。楽しくないのなら、この話受ける意味ない)
『了解。他には?』
(連絡はとれるの?)
『そこは何か考えとく、お告げ的な?ふふん♪』
(うわっ、きもい)
『はぁ、君って人は…まぁいいや、これでだいたい大丈夫かな?』
(うん、そだねー)
『……なら次に会う日まで頑張って、自分を鍛えてね!よろしくー』
なにかの気配が遠のいてく感じがする。声だけ星人、最後いうだけ言って消えやがった。鍛えるってどういう事?しかも、一言も名乗ってないし。結局誰だよ!勝手に話し終わらせて消えるなんて次会った時、一発多く殴る事は決定だね。
こうして私は、わけ分からない人とよく分からない約束を交わして別れた。これが、あんなドキドキして楽しい冒険の始まりとは、この時全然思っていなかった。
早く冒険に出たいなぁ。
次は2週間後に更新します。