表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/50

閑話 逆恨みの鬼

 後輩を虐めてた鬼の視点


 許さん!絶対に許さないぞあの小娘!エリートコースまっしぐらだった、俺の人生をことごとく狂わしやがって!


 俺の家は代々優秀な人材を出してる家柄だ。俺の両親も兄貴もみんな優秀だった。自分で言うのもあれだけど、俺も例に違わず優秀だった。エリートコースまっしぐらで、花形のお迎え科(一般で言う死神)にまでなった。ただ俺には運がなかった。あの地域を任されたのだから……。


一 回想 一


 初仕事に、かなり緊張していた俺は一緒に来た指導役の先輩に『初めは簡単な、お迎えだから大丈夫』だと聞かされた。内容は飯田海斗って子供が車に轢かれるらしい、しかも『助けられる範囲には人がいないから、確実に事故は起こる』と言われた。こんなシチュエーション新人向けにあてがわれた、お迎えだと思った。事実そうなる予定だった。


 なのに、まさかの事が起こった。車に轢かれる筈だった飯田海斗は、どっかから飛んできたサッカーボールに当たって吹き飛ばされ、車に轢かれると言う最悪の状態から助かっていた。


 その光景を見て、俺も先輩も何が起こったのか分からず、しばらく呆然として動けなかった。やっと動けるようになって今の出来事を先輩に聞くと『予測不能で何が起こったのか分からなかった。けど新人のお迎えであり得ない事が起こった。上に報告するからお前は、呼ばれるまで自分のデスクで待機しててくれ』と言って先輩と別れた。


 その後、俺は寿命を全うした人のお迎えをやって初仕事はなんとか終えた。ただ、寿命を全うした人と何らかの原因で突然亡くなってしまった人のお迎えは違う。


 寿命だと、自分の死期が何となく分かっているから、大人しく来てくれるんだけど、突然死だと、死んでも分からなかったり、パニックを起こしたりと、お迎えの難易度が上がる。だから初めにそれを先輩同伴で経験させるのが初仕事になる筈だったのに、予定が狂ってしまった。飯田海斗……。


 それから何年かして、突然死のお迎えの仕事がやってきた。内容は『始めの犠牲者安藤さゆり他5名が男にナイフで刺されて死ぬ』と言うものだった。今回は先輩が同伴していないが大丈夫だろう。男の周りを観察すると、子供ばかりで事件は必ず起きると、今度こそ突然死の仕事をこなしてやると意気込んでいた。あの時までは……。


 自分の目を疑う様な事が起きた。一人の子供が、犯人を縛り上げていた。大人の男をそれも女の子が……。結局、起こる筈だった惨劇は未遂で終わり、俺もこの事を上司に報告しに行かなきゃならなかった。


 今回は、先輩もいないので、事情聴取に時間がかかった。嘘発見器にもかけられた。それでようやく俺の報告の事実が立証された。結局また突然死案件ができなく、同期から俺は未熟とか言う事聞く奴しかお迎えに行けないだの馬鹿にされた。


 同じ所で、何度も突然死になる事件が起こる訳もなく、今回のも5年は経った後の事件だった。次は、いつになるか分からず、ずっと馬鹿にされたまま過ごすのは、俺には耐えられなかった。


 俺は方法を色々と考え、自然に自動車事故に見せかける事にした。本当は細工なんて厳罰物だけど、俺は今まで優秀で来ていたから、馬鹿にされる今の現状は厳罰より耐え難かった。


 ちょうど前回失敗した。安藤さゆりの父親が、古い車でよくドライブしていると調べはついたので、故障してもおかしくない車のブレーキに細工をした。


 しばらく経つと計画通りに、お迎えの仕事がやってきた。内容も『安藤健作の車が故障して、交差点で待っている人達に突っ込み、かなりの死傷者が出る』というものだった。


 俺は事故が起こる交差点で待っていたが、いくら経っても車は来なかった。後で色々な方法で調べたら、安藤さゆりの友達が、車をイジり倒してその車は、危ないからと一応点検に出されたと分かった。


(おかしい!なんで俺の担当の所だけ、起こる筈だった事故や事件が無くなるんだ!?)


 あの後、俺の不審な行動や言葉が引っ掛かったらしく、逆に調べられ、車に細工したのがバレてしまった。本当なら死刑は免れないのだが、今まで功績を上げてきた家の力を使って、降格で済んだ。


 そんな事があり、俺は家の中では落ちこぼれ扱い。その鬱憤うっぷんを毎日後輩にぶつけていた。まぁ、鍛え方が足り無いから手伝ってやってるだけだがな。パワハラじゃないぞ!今日も、いつも通り霊が逃げない様に、閻魔様の所まで連れて行く仕事で1日終わると思っていたんだが……あの小娘と会わなければ……。


 閻魔様の裁判中に出て来た名前。『飯田海斗』『安藤さゆり』それに俺が降格されたブレーキ事故!全てこの小娘が関わっていたとは!


 しかも補佐官に気に入られやがって、やっとここまで来たのにまた、1からやり直しにさせられたじゃねぇーか!復讐してやる!


 俺は自分の机に戻る前に急いで呪術をしている、変わり者の大叔母の所にやってきた。

よく効くけど呪術的には嫌がらせ程度の効力しかなく、それがちょうど良いと評判で、いつも忙しそうだった。今は休憩中の札が掛かってるけど、大丈夫だろう。俺は扉に手をかけた。


(そういえば最近のあれこれも、もしかして俺に対して誰かが頼んだとか……有り得そうだな)


「大叔母さん、ちょっと急ぎでお願いしたい事があるんだけど……」


「ん?あぁ問題児のはとこ殿か!何か用かい?」


「問題児じゃねぇ!」


「あら、そう?花形の職業に就いたのに、不正を働いて家の力を使って、降格で許して貰ったと聞いたけど……違ったかしら?」


「くっ、大叔母さん頼む!俺の出世の邪魔をした奴が分かったんだ。仕返しをしたいんだ!期限は3年あるから、それまでに何か仕返し出来るものを作ってくれ!」


「まぁ、あんたは身内だし期限も結構あるから、作ってあげてもいいけど、効果は嫌がらせ程度なのを忘れないでね」


「それでも良い!最高にイヤな嫌がらせの呪術を頼む!」


「なら良いけど、誰にかけるんだい?」


「猪俣よし子とか言う小娘にだ!」


 名前を言っただけで、イライラしてくる。あたり散らしたいが、ここは大叔母さんの家だし、頼んでる以上馬鹿な事は辞めたほうがいいだろう。後で後輩を指導しに行こう。


「猪俣よし子さん……。あなた女性にやられたのね。ククク……。分かったわ、もう少し彼女を調べてから作るから待ってて、出来たら呼ぶわ」



一 3年後 一


「一応出来てるわよ」


 そう言って手渡されたのは、小瓶に入った液体だった。


「サンキュー、大叔母さん。これどう使ったら良いんだ?」


「簡単よ。その猪俣よし子さんって言う人の持ち物か本人にかければ良いのよ。調べた所によると彼女、他の世界の神様に能力を買われて、スカウトされてるみたいだから、ときどきステータスが半減するような呪術にしといたから……。地味に嫌でしょう?」


「それは嫌だね。だが、最高だ大叔母さん!」


「ただ、他の世界に行った時少し仕様が変わるかも知れないけど、概ねそんな感じだと思うわ」


「ありがとう。大叔母さん!早速付けて来る」


 そう言って、いつも調子の良い事ばかり言う子分の鬼の所へ行き、小瓶を渡し猪俣よし子本人か、そいつが身につける物とかに付けてくるように命令する。子分は『それは、かなり難しい』と文句を言いながらも出て行き、暫くすると戻ってきて、上手く付けてきたと報告してきた。


(良くやった!今日はこの子分に、何かご馳走してやろう。さぁ、猪俣よし子。俺の怒りを知れ。これから存分に苦しめ。ハハハハ……)


次回は2週間後に更新します!

次回は本編に戻ります!

いよいよ、ストーリーの始まりです!


(長いわ) みんなの気持ち……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ