閑話 可哀想な神様
遅くなってすみませんm(_ _)m
今回は少し長いです。
ウィズホルン視点(雄一と別れた後)
彼が帰ったのと入れ違いに来た。接客担当の人が色々と施設の説明してくれている中、僕は先ほどの事で、内心かなり浮かれていた。まぁ、僕はずっとニコニコしてるから怪しまれはしないだろう。
まさか最高の人材が向こうから来てくれるとは、僕はなんて運が良いんだろう。しかも、あの娘が手作りの魔道具をプレゼントするぐらい特別な人材が!
しかも僕の交渉次第だけど、もしかしたら後二人も手に入るかも知れないなんて、僕の運は今日、最高潮にいいね!てへっ
おっと試合が始まった。なるほど、彼が言うように戦闘は申し分ない。それどころか、あの娘と息が合っていて、見てると戦闘と言うより、演舞を見せられてる感じがする。
戦闘が終わり、気付けば3時間経っていた。華麗な演舞だったからか、本当にあっという間だった。『ここに居ろ』と、あの娘が言うので待つ事にする。
いやー、本当に彼が名乗り出てくれて良かったよ。向こうで記憶が無くても、あれだけ息があっていれば、また会えるだろうし、なんか彼からは青春の雰囲気も漂ってるし、僕は色々と楽しみだよ。
戦闘を終えて、あの娘がやってきた。とりあえず二人で僕が予約していた個室に行き、今後の話と僕からのクレームを伝える。小部屋に着くあいだは、勉強の成果とか他愛もない話をしながら向かった。
さぁ、小部屋に着いたぞ。ここからが本題になる訳だけど・・・。僕にはまず、言わなきゃならない事がある。
「さてと、歩いてる間に色々と話しを聞いて、結構役に立つものを覚えてくれていて助かるよ。これなら直ぐにでも行けるね」
「そうなの?私まだ一年残っているんだけど……」
「・・・それは大丈夫、僕の力でなんとするから……。それで君に言いたい事があったんだ」
「なにかな?」
「君は何をやらかしたの!?この破天荒娘が!」
(君に会うまで、どれ程大変だったか!このっ!)
「いたっ」
「いきなり殴るなんて酷くない?言ってる意味も分からないんだけど……」
「はぁ。説明するよ・・・。君の前世の行いだと、軽い刑を半年、長くても一年で終えて、ここに居るはずなんだよ。そして今、
僕に会ってる時点で2年終わるぐらいの予定だったんだ。なのにまだ1年とはどう言う事かな?そのせいで、すんなりと会える筈だったのに、まだ2年経ってないから面会できないとかで、已む無く僕の秘蔵のお酒が犠牲になった。何故、刑期が増えたのか教えてくれるよね?」
いくら、ある程度の融通は利く僕の立場でも、今回の面会には流石に賄賂が必要だった。頼み込んだら『二年ぐらい直ぐなんだから待て』と言われてしまったからだ。いや、僕も普段ならそうしてるけど、今回は一年でも一時間でも時間が惜しい。だから仕方なく、僕の秘蔵のお酒を出さざる負えなかった。
(全く!せっかく手に入れた500年物のワインが・・・)
「いやぁ、私についた鬼がムカつく奴でして、そいつに罰をくらわせる為に閻魔を殴る真似をしたら……」
「君何してるの?それ刑期10年とか下手すりゃ魂抹消案件なんだけど……」
(地獄界のトップを未遂とはいえ殴るなんてあり得ない……。今、こうして会えてる事が奇跡だよ)
「でも、三途の川を見直す案とか補佐官の長年の悩みとか解決したから2年で許してもらえたよ」
「本当に君何してるの!?ここで相談役として働く気!?」
「そんなのあるんだ。面白そう!」
(消されないだけ、結果良かったものの、かなり危ない所だった。これは、きつく言っとかないと……)
「あのね……。そもそも君は・・・」
「まぁ、なんとか会えたんだからいいじゃん。それより時間無いんじゃないの?」
(あからさまに誤魔化そうとしてるな。でも、急いでるのも事実で仕方ないから。今回は君に乗るか)
「そうだね。じゃあ始めようか」
僕は自分を落ち着かせる為に、飲み物を取りに行った。ついでにあの娘の分も・・・。
「ありがとう」
「どういたしまして。まずは、君に選んでもらおうかな。経緯説明を全て飛ばして、君のやる事だけ話すか、こうなった経緯とか聞いてから本題に入るか。どっちがいい?」
「うーん。どっちでもいいけど、ここで聞かなかったとして、後で聞く機会あるの?つまり転生後にウィズと会話出来るの?」
「そこは、なんとかなったから出来なくは無いよ。ただ今の僕は、力を殆ど失っているから、そんなしょっちゅうは無理だけど……」
「なるほど。その力が戻ってきたら、ある程度は会話出来るのね?」
「そうなるね。君の頑張り次第になるけど……」
(ふふん、僕の力で前に言っていたお告げみたいな仕様が上手く出来たんだよね。ただ、まだ力が足りないから微妙な感じだけど……)
「なら急いでるみたいだし、経緯省いて話して、気になったら改めて聞くから、その時によろしく!」
「そうか……」
(彼女の言ってる事は正しいんだけど、少しは話を聞いて欲しかったな)
「分かったってば今度、聞いた時に愚痴も聞いてあげるから、今は本題をよろしく」
「約束だよ!絶対聞いてね!話す事沢山あるからさ」
「うわー、まぁ~話す友達が居ないみたいだし、しょうが無いから私が聞いてあげるよ」
「・・・なんで、独りぼっちの可哀想な子みたいな扱いになっているの?色々と言いたい事があるけど、もう愚痴を聞いてくれるなら、何でもいいや」
(なんか、飴と鞭攻撃をくらった感じ。まぁ本人は早くも行く気満々だから、愚痴は後にして本題に入るか)
「君には、とりあえず僕の世界の調査と信者を増やして欲しい」
「はい?」
「よし、理解してくれたみたいだね。じゃあ後は頼んだよ」
「そのやり取り、前にもやったからもういいよ。意味が分からないから!私は布教の為にそこへ行かせられるの?」
「細かいの省いて、大まかに言えばそうなるね」
「もう少し噛み砕いてくれると助かるんだけど……」
(よし!今までの意趣返しが出来て、少しは気持ちがスカッとしたわ)
「え~と、僕みたいな神様は、慕われると力が出るんだ。だから人を助けて信者を増やして欲しい。何が起こっているのか分からないんだけど、僕の力が殆ど無いんだよね。僕が創った世界なのに……。だから、何が起こっているのかの調査も頼むね」
「了解。その代わり私には自由を頂戴ね」
「分かってる。それと僕の世界では高レベルになると、寿命が伸びて外見や筋力は、若くて1番良い時の状態が続く仕様だから」
「それ、どうなってるの?」
「わりと最近出来た仕様で、寝てる間に、使ってない魔力を使って補填してる感じ。ただし、魔力の質とか量が関係してくるから、高レベルからになっちゃうんだけどね」
「最近出来た?なんで?」
「僕の部下がね、僕が管理する世界を乗っ取ろうとしたらしく、知らない間に魔物の強さが上がっていたんだよ。なんか若い冒険者が育つ前に死ぬのが多いと不思議に思い、発覚したんだけど、魔物は次々と増えるから定期的に狩らないといけない、だからってもう引退した年配の冒険者じゃあ、体力的に無理がある、だからこういう仕様になったんだ」
(あの時は大変だったな。緊急措置だったが上手くいった)
「解決した後、魔物の強さを戻せば良かったんじゃない?」
「そうすると、人間側が増え過ぎちゃうんだよ。今、生き残ってる人間は前より強くなってるから魔物も強くして少し減らさないと……。人間が増えるとそこのトップは直ぐに戦争を始めるから、常に身近に魔物という脅威を置いとかないとね」
(あいつ、本当に面倒な事をしてくれたよ)
「だから、最近出来た仕様なのね」
「そういうこと、また何か聞きたくなったら、サファリスタって街の教会にある僕の像を直してくれたら連絡とれるから、ただ連絡とる時はMPごっそり取るから気を付けてね」
「私のMPって初めはどうなってるの?」
「初めから高くなってるよ、それと、身体能力とかは上がっているけど、死なない訳じゃないから気を付けて」
「不老はあるけど、不死は無いのね。了解でーす」
「インベントリは後で渡すから……。魔物がちょっと強いハードな世界だけど、言語・鑑定・看破は使えるから安心してそれと、自分の状態を見るのにステータスも付けとくから上手く使ってね。他に質問がなければそろそろ行こうか」
「そうだね。今は特に無いかな、あったらサファリパークだっけ?そこで聞くよ」
「サファリスタだよ!君は覚えが良いんだから、わざと間違えなくてもいいじゃん」
「いやー、言ってみたかっただけ」
「全く……。さぁ行くよ」
「やっとか」
(無駄話は、誰のせいか……。やっと話が進んだよ)
二人で部屋を出て、転生する手続きをする為に役所へ向かった。そこで必要な書類を書いて貰ってる間、僕は一年も予定より早く転生させるための賄賂もとい、手土産をどうするかで悩んでいた。
手続きが終わり、後は送り出すだけになったので、大事なものを取りに行く。
「ここでちょっと待ってて、渡すもの持って来るから」
僕は、10分ぐらい歩いて荷物を預けている係りの所に行き、ペットとしてあの娘にあげる、モモンガと腕輪を受け取った。
(生き物じゃないけど、このモモンガ意外に可愛い、良い仕事したね。僕。さて、時間も無いし戻るか)
そう思って踵を返し、来た道を戻ろうとしたら、鬼に声をかけられた。
「あのー、もしかしてウィズホルン様でしょうか?あの『世界の運営ランキング』でトップ10に入る!」
顔は怖いけど、話し方とかは丁寧な鬼がそこに居た。
「ん?そうだよ!最近はちょっとランキング落ちちゃったけどね」
(今抱えてる、問題のせいで年間順位が少しづつ、下がっていってるんだよな。僕の世界で何が起こってるのか)
「そうだったんですね。頑張って下さい。あっ!だから優秀な猪俣さんをスカウトに来てたんですね!」
「ん?どうしてそれを?」
「それは……、先程一緒にいる所をお見かけしましたし彼女は何かと有名で……」
「何かと有名って……。いったいあの娘は、何をやらかしてるんだか」
「ウィズホルン様も大変ですね」
僕の疲れた顔を見て、労ってくれる優しい僕のファン(多分)。でも、応援してくれている人が居ると知って、やる気が出てきた。
「ウィズホルン様、よかったらこれをどうぞ!」
僕のファンが出したのは、何かの液体の小瓶だった。
「これは?栄養ドリンク?」
「いえ、これはウィズホルン様を楽にしてくれる薬です」
「え!ドラッグ?それとも死ぬって事?」
「ちっ、違いますよ!これは、猪俣さんの身につけてる物か何かに付けるんですよ!」
「そうすると何かあるの?」
「猪俣さんは、やる気にムラがあると思うのですよ。それを多少はマシにしてくれます。要するに、これを付けると少しはやる気になってくれるのです。そうしたら、ウィズホルン様の心配事も多少は和らぎますよね」
その言葉に僕は、涙を流し感謝した。早速、渡す予定だった。腕輪に付けて効果を見てみた。なんか軽い呪いみたいなのが付いた。
「なんか呪いが付いたんだけど、これ大丈夫?」
「それは呪いに見せかけた、ただのやる気ゲージなので大丈夫ですよ。これで、ウィズホルン様の心配事が早く解決しますよ」
ファンの子はニコニコとして、僕の事を気遣ってくれるので、これは大丈夫だと確信した。
「ありがとう!これからも僕の事を応援してね。君の事は忘れないよ。また会おうね」
時間がかかってしまったので、僕は急いであの娘の元に戻った。その間、先程の事が頭をよぎる。
(なんて親切な鬼だろう。僕の親友にしてもいいぐらいだ。相談にも乗ってくれたし、僕の不安も多少は取り除いてくれた)
「何か嬉しい事でもあったの?」
「いやー、何か親切な人がくれた物を加工してたらちょっと時間かかっちゃった。待たせてごめんよ。はいこれ」
僕は、先程の彼と同じく笑顔で戻ってきたらしい。あの娘は呆れながらも、納得してくれた。そんな事より、この腕輪を渡さないと……。
「それを付けて君の魔力を認識させれば君専用のインベントリになるから」
「へー、どれどれ」
一目見てデザインを気に入ってくれたみたい。凄い喜んでいるのが顔で分かる。腕輪がちょっと大きいけど、その点も大丈夫。結構拘って作ったから、喜んでもらえて僕も嬉しい。
「おぉ、サイズ調節機能って言うんだっけ?そんなのも付いてるんだ」
「それと僕の加護も付けといたから」
「その効果は?もしかして加護という名目だけ?」
(名目だけとか失礼な!ちゃんと、回復付けたし!)
「ちゃんと効果はあるよ。神によって違うけど、僕の得意分野は『回復』だから、君の魔力は使うけど自然治癒力が上がるよ」
「えっ!それって加護なの?私の魔力使うなら自給自足じゃ・・「媒体を作ってくれれば、君が増やした信者にもその効果を少し反映できるよ。僕の力が戻ってきた量に応じて、追加特典も付けるから!やる気出るでしょ?だから頑張ってね」
(まさか、そこにツッコまれるとは思わなかった。特典も特に考えて無かったけど、誤魔化すために言っちゃったから、何か考えないと)
「今、無理矢理話しを被せてきたような……。まぁいいけど、祈る媒体を作ればいいのね」
「物があったほうが祈りやすいからね。それと今回は転移と言うよりは、転生みたいな感じになるから、改めて腕輪も後で付けとくよ。それとこれも」
手の中のモモンガを見せた。
「ん?この子は?」
「これも腕輪の機能の1つだよ。君の魔力で作ったものだから、実際には生き物じゃない。だから餌は要らないよ。君の魔力から得てるからね。それとインベントリの機能もあるから、取りに行かせればインベントリに入れて帰ってくるよ」
(ふふん……どうだ、このハイスペックモモンガは?機能を付けるよりモモンガの性態や動きを真似るのが大変だった。あんまり、見た事ない動物だし・・・)
「便利だね。ありがとう!動きが素速いから『サスケ』って呼ぼう。でもなんでモモンガ?」
「君がモモンガが良いって言ったんじゃん!なんで忘れてるのさ全く……」
(僕が希望に応えて頑張って作ったのに、本人が忘れてるとか、あり得ない!流石にイラッと来た。もういいから送り出しちゃお)
「あぁ、あの時に聞かれた時か!」
「……そうだよ。とにかくこれで、渡す物も渡せたから準備はOKだね。これでやっと送り出せる。後は頼んだよ。いってらっしゃい」
「えっ、あっ、ちょっと」
(こんな調子じゃ、これからどうなる事やら・・・僕の願いはいつ叶うのやら・・・あの液体の効果に期待するかな)
暫く、送り出した装置を眺め、約束していた人達に会いに向かった。
次回は2週間後に更新します!