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閑話 鈍感な相棒②

今回も雄一視点です。

「ありがとう、助かったよ。これから君も行くんだよね?頑張ってね」


「はい・・・」


「ん?どうかしたの?」


 いつまでも行かない俺に何かあったのかと、ウィズホルンが心配していた。代わりの人が来るまでここに居なきゃいけないし、何にしろ俺にはこの人に聞きたい事があった。


「あのー、ちょっと聞きたいことがあるのですが、猪俣はこのまま直ぐに、貴方の世界に行っちゃうのですか?」


「そうだね。只でさえ少し遅れ気味だから、この後少し話したら、直ぐに送るつもりだよ」


 それを聞いた俺は、いてもたっても居られなくて、気づいたらウィズホルンに頼んでいた。


「ウィズホルン様にお願いがあります!俺も、猪俣と同じ世界に行きたいです!」


「君が?うーん……」


「お願いします!」


「正規の方法なら2~3人なら行けるか?その前に、いくつか僕の質問に答えてくれる?」


「はい、何でも聞いてください!」


「君は何が出来る?成績は?」


「猪俣と同じ位い体術は極めてます!後は魔法が少し……。魔法による身体強化が出来ます」


「なるほど、それぐらい出来れば十分かな。体術はこの後の戦いでみせて貰うよ」


「はい!頑張ります!」


「あぁそれと、さっきから気になってたんだけど、首に何か魔道具付けてる?」


「魔道具?これですかね?」


 俺は猪俣に貰った。親友の証のネックレスを服から取り出して見せた。


「ふーん、それ結構色んな加護が付いてる特別な物だね。それどうしたの?」


「そんな凄いものだったんですか!?いや、猪俣が友達の証にとくれたんです」


「彼女がね~……。それは君だけが持ってるの?」


「……いえ、後二人いますよ。初めに会ったメンバーの中にいました」


 そうなんだよ。初めは俺だけ貰って凄く喜んでたけど、後から二人も貰ったと聞いて落ちこんだ。でも、みんなとお揃いだったからそれはそれで、嬉しかった。俺の一番の宝物だ!


「じゃあさ、彼女を送り出した後に、その二人も紹介してくれるかな?よろしくね!君の能力を聞いただけでも十分有用だから、君を彼女と同じ世界に連れて行くことにするよ」


「本当ですか!ありがとうございます!あっ、そうだ!このネックレスも持って行きたいのですが……」


「出来なくは無いけど、向こうでは転生扱いだからね。1から人生を始めるんだよ?彼女とは手続きが違うから、ここでの記憶とか一切無い感じで始まるけど、それでも持って行くの?それ」


「記憶になくても俺には大事な物だから……お願いします」


「まぁ、面白そうだからいいけど」


「面白そう?」


「こっちの話だから気にしないで、彼女を送り出した後にまた会おうね。じゃあ戦闘頑張ってね」


 丁度、係りの者が来たので、そう言って別れた。思ったより時間がかかってしまい、かなり急いだ。身体能力を活かして、階段を一飛びで降りて脚力を強化して走った。


(面白そうと言う言葉に最後ちょっと引っ掛かったけど、猪俣と同じ所に行けるなら何でもいいや。感謝を込めて、ちゃんと様付けして呼ぼう)



 俺は嬉しさを隠せず扉を開けたみたいだ。猪俣に怪訝な顔をされながら、遅いと小言を言われた。


「ごめん、ごめん。ウィズホルン様を観戦室に案内してた。観戦して行くらしいよ」


「ふーん、そうなんだ。あっ!受付しといたから」


(ウィズホルン様の扱い軽いな)


「お!サンキュー、それで?今日はどのくらい?」


「雄一とタッグで殺ると言ったら、いつもの4倍だってさ。だから20人だね。世の中物騒になってきたよね」


「20!マジか!?時間は?」


「えっと、3時間ぐらいだね」


「20人で3時間……。どんだけ酷い事をしたんだよ」


「こいつら、かなり酷いよ」


「げっ!もう、軽くスイッチ入ってるじゃん。はぁ……気合い入れていくか」


「うん・・・・」


(大体いつも一人5分ぐらいが標準なんだけど、余程酷い事をしたのかな?猪俣も殺る気が既に漏れてるし、俺も集中してやるか)


 俺は集中させる為に目を瞑り自分に『奴らは敵!倒さなきゃいけない敵!俺達を殺りに来る敵!』と、暗示をかけていった。


 しばらくして、係りの者が俺達を呼びに来た。猪俣の方は資料を読んでかなり怒っていた。


(あいつ、キレると目が据わって笑ってるからかなり、怖いんだよな。ホラーで出てくるような狂気纏ってるみたいなやつになる……)


 闘技場に着いて、チラッとウィズホルン様を見る。この戦いも審査対象だと、自分に言い聞かせ更に集中力を上げる。


 奴らも殺る気満々で、みんな色んな武器を持っている。全体の半分の人達は銃を選んだらしい。猪俣、銃相手だと更に酷い目に合わせるからなー。ご愁傷さまです。 


 開始の合図と共に猪俣と走り出し、次々と倒していった。やっぱり猪俣とのタッグは楽しい。キレて突っ込み気味の猪俣をフォローしながら二人で無双していく。


 やっぱり銃を持ってる奴には、集中的にかなりいたぶってるな。前に理由を聞いたら『人の命を指一本、引き金を引くだけで奪うなんて、許せない』と言っていた。俺もそう思うので、猪俣のやり方に口は出さない。


 あっという間に、3時間は終わり矯正時間は終了した。結果は俺らのボロ勝ち。何十回と死を経験したせいか、みんな隅の方で怯えて固まってる。


 『よし、終了』と思い帰ろうとしたら猪俣が動かない。何をするのかみていたら……。


「二度とくだらない理由で人を殺さないように!じゃないと……」


 猪俣は手を前に出し、皆に見える様にしてから、ナイフでゆっくりと自分の手のひらを切った。


 俺はその光景をみて、衝動的に止めに行こうとした身体を何とか止めた。


「痛みと死のおかわりを持って行くからね」


 やつらはそれを見て、ガクガクと震えていた。いくら再犯させない為とはいえ、やり過ぎだろう。俺は早く控え室に戻り、後から入ってきた猪俣に怒りをぶつけた。


「自然に治るからって、自分を傷つける必要なかったんじゃない?あいつ等の足に一発づつナイフでも当てれば済んだじゃん」


(せっかく、怪我をあまりさせないようにしたのに……)


「ごめん、雄一。ちょっと自分への戒め(いましめ)もあったからさ」


「戒め?自分を切ることが?」


「うん。ここでは何をやっても死なないし、私達は戦いに慣れてるから、どうしても圧勝しちゃうじゃん。こんな特異な場所で、大した怪我もせず、あんなに殺ってたら、人の命が軽いと認識しそうだから、痛みで違うという事をちゃんと認識しないとと思って」


 俺は呆れた。そういう所は猪俣らしいけど、怪我はして欲しくない。それを伝えても、猪俣は猪俣だから変わらないだろうから言うのは止めておこう。


 着替えて、ウィズホルン様に会いに行くと言うのでここで別れた。更衣室に向かう猪俣の後ろ姿を見ながら俺は・・・。


(さようなら猪俣。今までありがとう。とても楽しい一年だったよ。次会う時は、記憶が無いらしいから今言っとくよ。直接言うのは恥ずかしくて出来ないからさ)


「じゃあな、猪俣。また会おう」




次回は一週間後です!

ウィズホルン視点を入れます。

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