閑話 鈍感な相棒①
遅くなってすみませんm(_ _)m
雄一 視点
俺はこの学校に通って、もうすぐ4年になる。ここだと、今まで現世で習えなかった魔法とかあってすげぇ楽しい!異世界転生もののライトノベルとか好きで沢山集めて読んでたなぁ。俺が死んだ後、誰がそれ等を片してくれたのか考えたくもない。
現世では、まだ30代の独身だった。川で溺れてる子を助けて、代わりに俺が溺れて亡くなった。助けた子は無事だったと、ここに来て閻魔大王に教えてもらったから、心残りは一部を除いて無くなった。あぁ、絶対母さんが片しに来たよな……。
まぁ、忘れよう。最近……と言っても、もう1年前だけど、面白い奴が入って来た。だから毎日がより楽しい!本当は体術を極めた3年で、この学校を出ようと思ってたんだけど、格闘科に入って3日目の新人が、手合わせをしていた先輩を倒していたので、気になって声をかけた。名前は猪俣よし子と言うらしい。
それがキッカケで、何度も組み手や手合わせをして、お互いに技術を高めていった。性格矯正施設では、タッグを組んでやってみた。俺はあまり好きじゃないけど、猪俣とだと楽しく感じる。
しかも以心伝心?って言うのか、戦闘していて、ここをフォローして欲しいと思う所に来てくれるし、二人だと無双出来て爽快だ。ただ、猪俣は熱くなりすぎると突っ込み気味になるので、そうなると俺がフォローしてやってる。何だかんだで、息は合ってると思う。
コロシアムで共闘したり、魔法を勉強したりとそんなんで、あっという間に1年が経ってた。気づいたら一緒につるむ仲間も増えていた。猪俣は人を惹き付ける何かがあるのかもな。
ここには、5年まで居られるから俺は後1年だな。猪俣も後もう1年は最低居なきゃだから、お互いに後1年はこうしてつるんで居られる貴重な時間だ。最近は何故だか目が猪俣を追ってしまう。
ほら、今日もすぐに見つけた。いつも一緒につるんでる仲間と歩いてる。俺もすぐに声をかけて、この後どこに行くのか皆と話していたら・・・。
「やっと会えましたね」
っと、イケメンの外国人が猪俣に話しかけてきた。あいつ誰だ?台詞までキザでなんかムカツク。この辺じゃ見た事ないな。
「ん?誰かの知り合い?」
あれ?猪俣に話しかけてると思ったけど、知らない奴だったのか?俺は知らないけど、他の奴らは……。やっぱり誰も知らないみたいだ。誰だコイツ!
「全く君って人は……。全然変わってないね。なに、とぼけているのですか?あなたに話しかけています。猪俣よし子さ……ん?」
なんだやっぱり猪俣の知り合いだったのか。猪俣の名前を呼ばれた瞬間に、彼女は動き出していた。
ゴッ……ゴッ……ドカッ………!!
右、左と顔に綺麗に殴りが決まり、最後に蹴りを腹に食らわしていた。しかも、当たる直前に魔法による身体強化でパワーアップしたやつをだ。
男は吹っ飛………ばずにその場で全て受け止めたらしい。ノーダメージって訳ではなく、かなりの痛みに、目の前でうずくまっている。
(あれ全て受け止めないで、多少でも吹っ飛んで衝撃を逃がせばいいのに……)
「さぁ、みんな行こうか。誰も知り合いじゃないみたいだし、楽しい実戦が待ってる!」
「いや、知り合いじゃないって今この人、お前の名前呼んでただろう?」
「えっ!私この人知らないよ」
(あれ?知り合いじゃない?それ嘘だろう、名前まで呼ばれて、猪俣もボコボコにしてたのに?何か訳ありか?ちょっとムカムカする)
「酷いなぁ。僕の事覚えてないの?」
「誰?」
「ウィズホルンだよ」
「誰?」
「あれ?本当に忘れちゃったの?じゃあなんでさっき、いきなり殴ったの?」
「あの声がそうだとしたら、確か了承はされてた筈……」
「覚えてるじゃん!そうだね。了承はしたよでも、それは確か2発だけだったよね?なんで1発増えてるの?しかも強化された蹴りで!」
「貴方を知らないのは本当だよ。あの時、頼み事だけして、一切名乗らずさっさと居なくなったからね。勝手に……そっちが!だから次に会ったら、1発増やそうとあの時思い、いま実行~」
この話を聞いて、他のみんなは呆れた顔をしていた。俺はなんだかんだと親しいやり取りに更にムカついていた……。
「あれ?名乗ってなかったっけ?ごめんごめん。改めて、平和な世界と言われている〈アーヴァーウィズ〉の主神ウィズホルンって言います。ウィズでもいいよ。これから宜しくね」
「猪俣、こいつ誰?結局知り合いだったの?」
俺は二人のやり取りに我慢出来ずに聞いた。ムカついていたので、かなり不機嫌な聞き方をしてしまった。
「うん、知り合いだったわ。この神様が、私に頼みごとがあるらしい、例の件だよね?ウィズ?」
「そうだよ。個室借りたから、確認したい事とか色々あるしついてきて欲しいな」
(例の件?それに個室で二人っきりって・・・)
俺がモヤモヤと考えてるうちに二人の話はどんどん進んでいく。
「痛い、何するのさ。いま一緒に、歩いて行く流れだったよね?」
「流れとか知らないし……。ちゃんと相手の意思を確認してから動きなさいよ。これだから神様は、はぁ~自分勝手というか……」
「神様の僕をここまで雑に扱うのは君だけだよ。まぁいいけど、それで?この後、何かあるの?」
「ちょっとこの後、私が楽しみにしている実戦があるから、それに参加した後、話を聞くよ」
「できれば早く事情を説明して送り出したいんだけど、君の機嫌を損ねた方が大変だからなぁ。仕方ない、行くのはいいけど、早く終わらせて欲しいなー」
「了解でーす。じゃあ、そういう訳だから皆また後でねー」
(早く送り出すって、まさかここで別れたらもうお別れかよ!)
この後、猪俣はどうしてもコロシアムに行きたいらしい。それなら俺もついていけるので、他の予定を変更して行く事にした。
「……俺も今日それやるわ」
「お!雄一も参加なんて珍しいね。あれ?でも他のやるって言ってなかった?」
「あれは、また今度でいいや。今、すげぇ暴れたい気分だからさ」
「オーケー。なら今日は一緒にタッグ組んでやろうよ!」
「いいねぇ。ただ、久し振りなんだから、お手柔らかにしてくれよ。間違って俺ごとやるなよ」
「善処します」
「頼むぜ、マジで!」
ウィズホルンそっちのけで、賑やかに二人で話していたら、あっという間に目的の場所についた。
「ここが……行きたかった場所ですか?なんかこの辺り空気が重いのですし、この建物から嫌な感じの雰囲気が出てるのですが……。何をする所でしょうか?」
俺とはほぼ初対面なのに、なんで俺に聞いてくるだろう?
「ここは体術を極めた人が入れて、見学も希望した人はOKですよ」
「一体何をするんで…「ねぇ。時間無いんでしょ?ウィズホルンは、ここで待っててもいいし、なんなら見学して行きなよ。そうしたら、ここが何か分かるからさ。雄一早く行こう!」
「おい。ちょっと待てよ!」
猪俣は早くコロシアムに行きたかったのか、ウィズホルンと俺を置いて行った。
(おいおい、まじかよ。仕方ないな、聞きたい事もあるし俺が案内するか)
「えーと、ウィズホルン様、見学なさるんですよね?それでしたらこちらに、観戦スペースがありますので付いてきて下さい」
俺の後を付いて来ながら、ずっと疑問だったのだろう。質問してきた。
「ここで何するの?」
「ここは性格矯正施設と言いまして、前世で下らない理由で殺人をした者が連れて来られ、ここで自分が何度も殺され、二度とそんな気を起こさせない様にする所です」
「そうなんだ。君達も更生させる役をやるの大変だよね。お疲れ様」
「いえいえ、俺はたまにしか来ないですが、猪俣は嬉々として、かなり通ってるみたいですよ。ここの犯罪者は許せないそうで……」
「彼女ならそう言いそうだね」
そんな話をしていたら、観戦席に着いた。どこかの世界の神様みたいだから、VIP席に連れて行った。扉近くにあった接待する人を呼び出すボタンを押して待つ事に……。
次回は一週間後に更新します!