神様のお願い
ウィズはそう言いながら、席を立ち近くにあった飲み物を二人分持って戻ってきて、私の前に一つ置いて席に着いた。
「ありがとう」
「どういたしまして。まずは、君に選んでもらおうかな。経緯説明を全て飛ばして、君のやる事だけ話すか、こうなった経緯とか聞いてから本題に入るか。どっちがいい?」
「うーん。どっちでもいいけど、ここで聞かなかったとして、後で聞く機会あるの?つまり転生後にウィズと会話出来るの?」
「そこは、なんとかなったから出来なくは無いよ。ただ今の僕は、力を殆ど失っているから、そんなしょっちゅうは無理だけど……」
「なるほど。その力が戻ってきたら、ある程度は会話出来るのね?」
「そうなるね。君の頑張り次第になるけど……」
「なら急いでるみたいだし、経緯省いて話して、気になったら改めて聞くから、その時によろしく!」
「そうか……」
用件だけ教えてと伝えたら自分で言ったくせに、ウィズが残念そうな顔をした。
(多分、早く行ってほしいけど、話しも聞いて欲しかったんだろうな。仕方ないなぁ)
「分かったってば今度、聞いた時に愚痴も聞いてあげるから、今は本題をよろしく」
「約束だよ!絶対聞いてね!話す事沢山あるからさ」
「うわー、まぁ~話す友達が居ないみたいだし、しょうが無いから私が聞いてあげるよ」
「・・・なんで、独りぼっちの可哀想な子みたいな扱いになっているの?色々と言いたい事があるけど、もう愚痴を聞いてくれるなら、何でもいいや」
話を聞くと言ってるのに、何故だか肩を落として疲れた顔をしていた。
(全然話が進まないけど、急いでいるんじゃなかったの?私も早く、未知の世界に行きたいんだけど)
「君には、とりあえず僕の世界の調査と信者を増やして欲しい」
「はい?」
「よし、理解してくれたみたいだね。じゃあ後は頼んだよ」
「そのやり取り、前にもやったからもういいよ。意味が分からないから!私は布教の為にそこへ行かせられるの?」
「細かいの省いて、大まかに言えばそうなるね」
「もう少し噛み砕いてくれると助かるんだけど……」
「え~と、僕みたいな神様は、慕われると力が出るんだ。だから人を助けて信者を増やして欲しい。何が起こっているのか分からないんだけど、僕の力が殆ど無いんだよね。僕が創った世界なのに……。だから、何が起こっているのかの調査も頼むね」
「了解。その代わり私には自由を頂戴ね」
「分かってる。それと僕の世界では高レベルになると、寿命が伸びて外見や筋力は、若くて1番良い時の状態が続く仕様だから」
「それ、どうなってるの?」
「わりと最近出来た仕様で、寝てる間に、使ってない魔力を使って補填してる感じ。ただし、魔力の質とか量が関係してくるから、高レベルからになっちゃうんだけどね」
「最近出来た?なんで?」
「僕の部下がね、僕が管理する世界を乗っ取ろうとしたらしく、知らない間に魔物の強さが上がっていたんだよ。なんか若い冒険者が育つ前に死ぬのが多いと不思議に思い、発覚したんだけど、魔物は次々と増えるから定期的に狩らないといけない、だからってもう引退した年配の冒険者じゃあ、体力的に無理がある、だからこういう仕様になったんだ」
「解決した後、魔物の強さを戻せば良かったんじゃない?」
「そうすると、人間側が増え過ぎちゃうんだよ。今、生き残ってる人間は前より強くなってるから魔物も強くして少し減らさないと……。人間が増えるとそこのトップは直ぐに戦争を始めるから、常に身近に魔物という脅威を置いとかないとね」
「だから、最近出来た仕様なのね」
「そういうこと、また何か聞きたくなったら、サファリスタって街の教会にある僕の像を直してくれたら連絡とれるから、ただ連絡とる時はMPごっそり取るから気を付けてね」
「私のMPって初めはどうなってるの?」
「初めから高くなってるよ、それと、身体能力とかは上がっているけど、死なない訳じゃないから気を付けて」
「不老はあるけど、不死は無いのね。了解でーす」
「インベントリは後で渡すから……。魔物がちょっと強いハードな世界だけど、言語・鑑定・看破は使えるから安心してそれと、自分の状態を見るのにステータスも付けとくから上手く使ってね。他に質問がなければそろそろ行こうか」
「そうだね。今は特に無いかな、あったらサファリパークだっけ?そこで聞くよ」
「サファリスタだよ!君は覚えが良いんだから、わざと間違えなくてもいいじゃん」
「いやー、言ってみたかっただけ」
「全く……。さぁ行くよ」
「やっとか」
(無駄話は、誰のせいか……)
かなり睨まれ小言を貰いながら立ち上がり、私はそれに気付かない振りをして、二人で部屋を出て行く。そのまま役所みたいな所に連れて行かれ、必要な書類を書いて、ゆうり君と会った部屋に連れて行かれた。
「ここでちょっと待ってて、渡すもの持って来るから」
そう言って30分が経過……。やっと戻ってきたウィズはニコニコとしていた。
「何か嬉しい事でもあったの?」
「いやー、僕のファンがくれた物を加工してたらちょっと時間かかっちゃった。待たせてごめんよ。はいこれ」
渡されたのは腕輪だった。シンプルでちょっと格好いいと思うデザインだった。
「それを付けて君の魔力を認識させれば君専用のインベントリになるから」
「へー、どれどれ」
私は早速装着して、魔力を流してみた。そうしたら、少し大きかった腕輪もピッタリサイズになった。
「おぉ、サイズ調節機能って言うんだっけ?そんなのも付いてるんだ」
「それと僕の加護も付けといたから」
「その効果は?もしかして加護という名目だけ?」
「ちゃんと効果はあるよ。神によって違うけど、僕の得意分野は『回復』だから、君の魔力は使うけど自然治癒力が上がるよ」
「えっ!それって加護なの?私の魔力使うなら自給自足じゃ・・「媒体を作ってくれれば、君が増やした信者にもその効果を少し反映できるよ。僕の力が戻ってきた量に応じて、追加特典も付けるから!やる気出るでしょ?だから頑張ってね」
「今、無理矢理話しを被せてきたような……。まぁいいけど、祈る媒体を作ればいいのね」
「物があったほうが祈りやすいからね。それと今回は転移と言うよりは、転生みたいな感じになるから、改めて腕輪も後で付けとくよ。それとこれも」
ウィズの手の中にはモモンガが居た。
「ん?この子は?」
「これも腕輪の機能の1つだよ。君の魔力で作ったものだから、実際には生き物じゃない。だから餌は要らないよ。君の魔力から得てるからね。それとインベントリの機能もあるから、取りに行かせればインベントリに入れて帰ってくるよ」
モモンガは、ウィズの手の中から私の肩に飛び乗ってきて、毛づくろいをしていた。見た目は本物の動物みたいなのに不思議だ。
「便利だね。ありがとう!動きが素速いから『サスケ』って呼ぼう。でもなんでモモンガ?」
「君がモモンガが良いって言ったんじゃん!なんで忘れてるのさ全く……」
「あぁ、あの時に聞かれた!」
「……そうだよ。とにかくこれで、渡す物も渡せたから準備はOKだね。これでやっと送り出せる。後は頼んだよ。いってらっしゃい」
「えっ、あっ、ちょっと」
ウィズはそれだけ言うと、私の背中を押して、光の中に押し込んだ。色々と言いたい事があるけど、新しい世界が楽しみすぎて、さっきの事は水に流すことにした。
(どんな世界か楽しみだなー、ウィズの頼みごとは気長にやるか)
光の中に押し込まれた私は暫くすると、気が遠くなり、目が覚めたらそこは森だった。
次は雄一とムカつく鬼の別視点を挟みます!
更新は一週間後です!
別視点どうでもいい人は20話まで飛んでください!
本編になります。
別視点、暇だったら見ていって下さい!