六話
「さて、お前は異世界人だったな。一応聞くが魔術についての心得は?」
「全くありません」
「そうか。むしろあってたまるかという話だからな。では基礎の基礎から説明だな」
ガルラスさんの説明はこうだ。
まず、魔術というのは自身の中にある魔力、MPを使って起こす物だ。
発動方法は三つ。MPを行使して発動させる、空間中を漂う精霊の力を借りて発動する、魔術を刻み込んだ道具にMPまたはそれに準ずる力を加える事で発動させるのどれからしい。
そして属性もあり、火、水、風、雷、地、光、闇の六属性に大まかに分類される。それらを合体させて使う複合魔術なんてものもあるようだ。
個人適正もあるらしくようだが、壊滅的に魔術が使えない場合を除いて全属性を使える。
「…というわけだ。わかったか?」
「はい、なんとかですけど」
支給されたノートとペンでメモを取り書いたことを脳内で反芻し覚えようとする。
残念ながらオレは勉強が不得意だ。前の世界では40人のクラスメイトと共に勉学に励んでいたがせいぜい順位は20位程度。しかもそこから10位までの間は点数に大差がないから実質の30位なのだ。
しかしそんなオレでも割と理解ができるのはガルラスさんの教え方が上手いのかそれとも自分が勉強にやる気を出したか。おそらく教え方だろう。
「まあ魔術なんてのは使っていくうちに理解出来るようになる。何事も実践を積んでいけ、わかったな?」
「はい!」
「良い返事だ。じゃあ早速だが実践に入るぞ、セシル!」
「はい、そう言うと思って持ってきてありますよ」
そう言って茶色い皮の表紙の本をオレにセシルが渡してくる。厚さはそこそこあるが、まさかこれ全部暗記するのか!?
「それは魔術書、簡単に言えば説明書だね。慣れるまで使いこなせばそれがなくても魔術が使えるようになるよ。例えば…土障壁!」
セシルが体の前に手を伸ばしてそう唱えると地面が盛り上がり瞬時に壁が形成される。
「ね?これが初級の土魔術の土障壁。足場作りにもなるから重宝する魔術だよ」
「へぇー…これを読めば使えるのか?」
「うん、初級だからちょっと時間と回数をかければすぐ使えるようになるよ」
そうなのか、じゃあこれで魔術のイメージと感覚を掴んでどんどん魔術を覚えていこう。
「試しにやってみるか…土障壁!」
すると速度は遅いが壁がゆっくりと盛り上がり形になった。
「いきなり詠唱省略をして形にできるの!?凄いじゃん、それなら試験ではやってないけど後衛もできそうだね」
「適正あるのか、じゃあどっちもこなせるように両方やってみようかな」
文武両道なんて坊主にはできないだろ、とクトゥグアの心の声が聞こえてきた気がするが無視しておく。こういうのはモチベーションが高いうちにやらなきゃ大変そうだからだ。
「魔術も使えるなら文句なしだな。お前は今日から我がギルドの団員だ、改めてよろしく頼む」
「はい!よろしくお願いします!セシルもよろしくな!」
ギルドマスターと握手を交わし、その後セシルとも握手する。
「うん!…ギルマスも握手しておきますか?」
「なんでだ、そんな事する暇があるなら飛鳥にどの部屋使うかとかの説明でもしてこい!」
「人使いが荒いんだから…行こう飛鳥君」
ムスッとした顔で手を引くセシル。なんだかここにきてから相当手を引かれている気がするがまぁそれもアリだろう。今は先導を任せてそれについていこう。