三話
まだまだ続くよ連続投稿、作者モチベ高い状態だからもう少し連続で出せそう(内容は速度に対し比例しない)
さて、結構な道のりを歩いて無事に街の前に辿り着けた。がしかし、そこには予想していなかった難関がオレ達を待ち受けていた。
「すみませんが街に入るには行商手形か冒険者カードを見せてください」
門番さんに提示しろと言われた身分証明書、当然そんなものは持っていない。一応胸ポケットには学生証は入っているがそういう事を言っているわけではないだろう。
「えーっと…すみません!昼寝をしていたら盗まれてしまったようで」
「そうなんですか、じゃあ仮の証明書を発行しますからついてきてください」
咄嗟に嘘をついてしまった。ダメだとは思うが多分いい方に話は転がったんだから良しとしよう。むしろここで転生者だ、なんて言ったほうが危なかったかもしれない。ここで転生者がどう思われてるかわからないからな。
「そういえば発行ってなにをするんですか?」
無言で進むのも何か気まずいので話を振る。今は門の裏側に回り進んでいる。仮眠室とか食堂など結構多くの施設が併設しているようだ。
「採血してカードにそれを染み込ませて個人情報を記録します。そうする事で絶対コピーされないんです、けれど盗まれちゃったらコピーも何もないですけどね」
「うっ、すみません…」
そう話しているとカード発行室と書かれたプレートの貼りついたドアの前に着く。ドアを開けるとそこには注射器と真っ白なカードが置かれた机と椅子しかない部屋があった。
「はい、じゃあパパッとやっちゃいましょう。あ、兜とっても良いですか?暑いし手元が狂うんですよね」
「大丈夫です、というかとってください!不安になるようなワード勘弁して!」
「へへへ、冗談ですよ冗談」
よいしょ、と兜を取り外す門番さん。そこには長い青の髪をローポニーで纏めている女の人の顔があった。
「…女の人なのに門番やってるんですか?」
「あ、驚きました?この門を担当している人の六、七割は女ですよ。採血しますんで腕出してください」
「お願いします、できれば痛くないように」
「へへへ、善処します。行きますよー」
ブスリと容赦なく注射器を刺される。躊躇なく。勢いよく。
「いったああああ!?」
「あれ?刺すとこ間違えました?…やば、ここ最近オーク種の人ばっか来てたからその癖でやっちゃった」
「やっちゃったじゃないって…押さえとけばいいか。ここからオレは何かやることはありますか?」
「ごめんなさい…えと、発行の方ですね。やることはないです。こちらで全て作成させてもらいます。だいたい五分くらいですね」
じゃあ少し暇になるのか。暇つぶしには外の景色を眺めるのが一番だ、その持論に従い窓に目をやる。
家は石造りのものが多く、噴水やら街灯のようなものも見える。行き交う人々は耳の長い人、猪のような顔をした人、鱗で覆われた人などいろんな種族がいるようだ。
全体的に見れば一般的な中世ヨーロッパのイメージのそれが一番近いのだろう。所々技術革新が起こっているが。
「あ、そうそう。あなた異世界人ですか?」
「そうですそうで…えぇ!?なんでわかったんですか!?」
「わかりやすかったですよ、ほらここ見てください」
そう言ってカードを突き出してくる門番さん。そこにはHPやら攻撃力やら色々な数字が書かれていた。
「この『魔力適正値』って所が凄い低いでしょう?それが判断材料になったんです。この世界の魔力にまだ馴染んでいない証拠ですからね、一発で判断できました」
「お、お見事…まあ黒髪黒目だしわかりやすいってのもあったか」
「?貴方白髪に赤い目をしてますけど…」
「えっ?…鏡ってありますか?」
はい、と言ってどこからか鏡を差し出してくる。そこには見慣れた顔の配置に対して見慣れない色の髪と目が確かにあった。衝撃で言葉が出ない。
「てことはこの街の事は何もわからないですよね、案内しましょうか?あと働く所とかも紹介できるかもしれませんし」
「本当ですか、じゃあお願いします!」
「はい!といっても今日は日も暮れています、仮眠室を貸しますので明日一緒に行きましょう?」
「そうですね、じゃあ明日はよろしくお願いします、えっと…」
「名前ですか?私はセシル・サーヴェインです。あなたは?」
「飛鳥。了義飛鳥です。」
「飛鳥君ですね、わかりました!仮眠室へ案内します、ついてきてください」
「はい!」
こうして無事に今日の寝床は確保できた。明日はその職場に何としても就職して衣食の事をどうにかしないとな…。