二話
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そよそよと穏やかな風が凪ぐ。春の暖かな陽光が体を包む。薫ってくる自然の匂いからしてここは草原なんだろうか?
というかなんでオレはそんなところにいるんだ。寝てたとしても今いるはずの場所はバス…バス!?
「う、うわあああああああ!?」
「おっ、起きたか坊主。目覚めは最悪のようだな」
そうだ。オレは死んで転生とやらをしたんだった。てことはここはもう異世界?それを証明するものがないからなんとも言えない。別に近くに魔物みたいなのがいるわけでもないし。
「ああそうだ、坊主日が暮れる前に街に着くぞ。夜になると危険だからな」
「やっぱいるのか魔物…って言っても街ってどっちだよ、わかるか?」
座り木に背を預けたまま辺りを見回す。一面の原っぱと少し遠くに森、その奥に山が見えるくらいだ。これが人の寄り付かない盆地とかだったら一巻の終わりだが…
「当たり前だ。観ることに関しては俺はプロだ、信頼してくれ。この木の反対側に行くと海が見えてな、その手前に街がある。最短で一番安全なのはその街だ、行くか?」
「わかった、行ってみよう」
そんな事はなかったようだ。よいしょ、と腰を上げて言われた反対側を見てみる。
そこには絶景が広がっていた。遥かに続く草原に眩しく煌めく大洋、どちらもが前の世界では見ることができないレベルの大きさで広がっていた。
「…すげぇ」
素直な感想が自然と口から出る。こんな景色が見れるのならばこの世界に来れてよかったと思う。世界を巡って色々と見て回るのも楽しいかもしれない。やってみたいと思うことが次々と思い浮かぶ。
「おい、帰ってこい坊主…街まで大体六キロあるからそこそこ急ぐぞ」
「うぇ、ああごめん。行こう」
我に帰り歩を進める。六キロといっても結構高低差があったから実際の距離はもう少し遠いだろう。だけど足取りと気持ちは軽やかだ。太陽の位置を見るに今は大体3時くらいか、結構急がなきゃいけなさそうだ。
ーーーーーーー
歩いた距離は四キロほどかと思われるくらいになり始めてこの世界で別の存在に出会った。運命に出会う的なアレではなく…
「キュピィ!」
スライムである。液状で臓器や周りに何で沁みないのか不思議で仕方がないあのスライムである。
「あ、そうだクトゥグア。お前武器になれるみたいな事言ってたよな、今なれるか?」
「応とも!…といっても今は形と最低限の機能しか持たない武器にしかならないがな。力が枯渇しすぎている」
「そうか…現状での最高の状態で頼む」
「わかった。両腕を前に出せ」
そう言うと腕輪がいくつかの光の玉に変わり半分ずつ左右の手に集まり形を成していく。
「…完成だ。自分で言うのもなんだがオンボロすぎるな、敵がスライムでよかった」
「そうなのか?オレはかっこいいと思うけどな」
その姿は二丁のライフルの銃口の下に鉄色の刃が謎の力で固定されているいわゆる銃剣のそれだった。
「よし、ちょうど二匹いるからそれぞれ試してみるぞ、まずは魔術だ、今お前の頭に浮かんでいる詠唱を唱えてトリガーを引いてみろ、オートで発射は今はきかないがスライムなら数発で倒せるから問題ないだろう」
「え、詠唱すか…高校三年にもなって恥ずかしいけど」
「なら魔術は今後一切使えないな。この世界の魔術は基本全て詠唱あり。それに比べてこの魔術は一回唱えればずっと唱えなくても使えるのになぁ…」
「くっそ…仕方ない! 我が言葉に応え力を振るえ、ファイアオブフォーマルハウト!」
カカカッと素早くトリガーを引く。そうすると赤い銃弾が狙った通りにスライムに直撃し、キュッと断末魔をあげ変な丸い物体を残して溶けてしまう。
「アレはスライムの核だな。換金できるようだから後で拾っておいてくれ」
「わかった、次は?」
「格闘だな。切れ味と威力を試したい。詠唱はしないと切れないから頼むぞ」
「了解、えーっと…凡てを溶かし断て、セイバーオブコルヴァズ!」
そう唱えると刃が変色して赤く染まる。多分成功したのだろう、スライムに突進して双の刃を突き立てる。ぐにゃりとした感触で一瞬抵抗があったがプツリと切れるような感覚の後はスパッと切れてしまった。
「上出来上出来。とりあえずはこんなものか。それじゃあ街へ向かうとしよう。だいぶ日も傾いてきたからな」
「あれ、もうそんな時間か。ラストスパートだ」
街の方向へ左腕で輝く腕輪と共に駆け出す。無事に間に合うといいが。