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厄災との戦いー1ー

「よう、昨日は寝れたか?」

「当たり前だ。過去最高の快眠だったよ」


邪神討伐戦当日。魔術師として志願したはずが何故か前線にぶっこまれ、今はカズマの隣で配置についている。どうしてこうなった。


「本職が後衛だから期待しねぇ…なんて事するつもりはないからな。俺の獲物だった異世界人殺した腕、見せてもらうぜ」

「お前騎士の人と一緒にあの森にいたのか?」

「いんや。むしろ森に行ったら騎士に止められたわ」


笑って肩をバシバシ叩きながらそう言うカズマ。多分目をつけてた獲物だった的な意味なのだろう。


「…で、カズマ。なんかコツとかってあるのかこの戦い」

「強いて言うなら死ぬまで殺し続けろ、だな」

「脳筋すぎないかお前」


談笑をしながらどちらも目線は迫り来る魚人の群れに向いている。自分でもわかるくらいに表情は獰猛な笑顔を浮かべながらだ。

それにしても今日はなんだか体が軽い。全身を巡る魔力が活発な気もするし、これも神殺しの権能の能力か?


「前線の方全員に通達します、まもなく敵が作戦開始ラインに到達しますので準備を。

…健闘を祈ります」


ルクスさんからの伝令だ。それを聞き全員が武器を構え闘気を滾らせる。

最後に声色が暗くなったのはどうしてなのか気になるがそんな事考える余裕はない。オレは仕事を果たすだけだ。




「作戦、開始ィッ!」



指揮官から怒声にも似た号令が放たれとうとう戦争が始まった。人は咆哮を、異形は奇声を上げて激突する。


「なぁカズマ、ッこいつらそんなには強くなくない、かッ!」

「そんなもんだ、序盤の雑兵だしな。そんなに力まなくて大丈夫だぞ」


降りかかる鋭利な爪を躱して目の前の異形にクレイヴを叩きつけ両断する。言われた通り全然手応えはなく動きも緩慢だ。これなら手を緩めて後々に魔力を温存できそうだ。

そして少し離れた所にいるカズマは片手で軽々と身長の七割ほどある大をぶん回し飛びついてくる異形の群れを解体している。強い。まるで暴力の化身だ。


「前衛は一時後退!後衛の一掃魔術の準備が整った!」


アルベスさんの指示が飛び前線はそれに従い少し下がる。具体的な時間の指示がないのが辛いところだが贅沢は言えない、急いで下がればいいだけの話だ。


「魔術隊、ってーー!」


号令と共に背後から火と雷の雨が過ぎていって相手に降り注ぐ。それの効果は覿面で断末魔の群れと共に異形たちは体を崩壊させ消えていく。なかなかにSAN値の削れる光景だ。


「はははっ、いいぞ!この調子で行けば勝てる!前衛は突撃だ!」


嬉々とした声色の指令が飛び再度オレたちは異形と対面する。先程と違う点は五体満足でいる個体が少ないことか。


「こんな楽なもんなのか討伐戦ってのは?」

「いや…ここからが本番だ」


カズマの発言の数瞬後、突如敵の後方にある海が爆発し、巨大な水飛沫が上がる。それの中には何か恐ろしいものの影が潜んでいる。


「…カズマ、あれは?」

「さあな、あんなの以前の討伐戦には一回たりとも出てきた事はないからわからねぇ。ただあれが敵の親玉だって事くらいならわかるぜ」


その水柱は不思議といつまでも収まらなかった。

出現から3分が経ち、敵が少し強くなったと感じるようになった今もそれは継続している。

それどころか敵の強さに比例して水の勢いも増しているようだ。


「それにしても退却指示でねぇな、そろそろ魔力の補給とかしたいんだけど」

「ほんとだよなッ!全くなん、で!なんだかな!退かせろっての!」


硬い鱗を引き裂きながら愚痴を吐くオレとカズマ。開戦からほぼずっと戦いっぱなしで魔力もだいぶ残量が少ないし当然ダメージも結構もらっている。それは他の冒険者も同じようで、最初の頃の動きのキレは無くなってきていた。

カズマはピンピンしているが。


「前線は後退しろ!それと…ええと、後衛は支援に当たれ!早く!」


指示が一気に曖昧なものに変化する。

何があったのかを確かめるべく、八幡星の閃光レイオブフォーマルハウトを低出力で発射し眼前の敵を薙ぎ払う。そうして発生した少しの猶予時間で後方へ振り返りクトゥグアの眼を借りる。

そこには明らかに動揺した様子のアルベスさんと豪華な黒い鎧に身を包んだ壮年の男性がいた。周りには同様に黒い鎧を着て槍を構える人が大勢いる事から国のお偉いさん…しかも相当上位の人だと判断する。

そしてアルベスさんの顔。あれは緊張も含まれているが恐怖の色もうかがえる。親だったりするのだろうか?

そして最大の異変に気付いたタイミングで猶予は終わった。


「カズマ、ヤバイぞ!裏で指示を出す予定だったルクスさんがいない!」

「げっ、マジかよ!?」


昨日の説明会で話していたのはほとんどルクスさんで、今日も最初はこの場に彼はいて、その時のアルベスさんの指揮は覇気のあるものだった。

しかし今彼は忽然と姿を消し、指揮は明確なものが出せていない状況にある。


「くそっ、保たねぇぞ!」


流石のカズマでも声に焦燥の色が見え始める。剣筋にはまだ余裕があるからその言葉は他の冒険者に向けられたものだろう。

そこでオレは賭けになるが一つの作戦を実行することにした。


「カズマ、悪い。ここを頼んでもいいか?」

「はあ!?お前何を言って…」


作戦とはオレが神殺しの権能をフルに使って異形を一人で受け、他の人を補給に向かわせるというものだった。ちなみに今は権能は温存していてほとんどオフの状態だ。

有無を言わせず頼みを飲ませるためにすでにブースターは起動しており、限界まで溜め込んだ熱量が今にも暴走しほうになっている。


「ダメだ、って言っても聞かなそうだな。

いいぜ、行ってこい!ここは俺に任せろ!」

「ありがとよ!」


最後に戦っていた異形の顔面を蹴り抜き行動不能にしてその反動で一気に飛び出す。まずは一番補給部隊に近い右端の援護に行こう。

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