23話 【アバドン】その⑥ 誰かを待つ墓
ルルカ『ここも大事なの!』
ゼーブル『そうなのか?』
『ルルカという化け物の娘よ、あいつに我に付きまとうなと言ってはくれぬだろうか?』
困った顔でゼーブルという大きい狼はルルカに頼み込む
確定だった、ルルカの母親
そう、スカーレットさんが追い詰めた十天のテンス
このゼーブル・ファー・テンスの事だった
ルルカは手を上げてゼーブルに返事を言う
『手紙で伝えておくの!大丈夫なの狼の親分さん!』
『感謝する、2日間も追いかけまわされて地獄を見たぞ』
ゼーブルは俯いているが多分その光景を思い出しているのだろう
『そんなにヤバイ人だったんですか?』
俺が質問するとゼーブルが即答してきた
『あれが人族とは認めんぞ、奴ならセブンスまでいけるだろうな・・・着いたぞ』
予想以上に強いらしい、俺はあの人を崇めようと思う
そして着いたのだ、目的の場所だ
霧は晴れていた、今はもう薄い感じしかない
そこは50m四方の草地だった、周りには曲がりくねった木で覆われている空間だ
上を見上げるととてつもなく大きな大樹がこの空間を屋根の様に覆っている
霧でこの大樹は見えなかったな
不思議な感じだ、この草地には霧がほとんどないが
外側の木の奥には濃い霧が見える
この空間だけ無いような状態だ
その草地の奥に平らな石が立っていた、あれが・・・墓?
だが奥にあるその石の周りだけ花が咲いていた
色とりどりの多彩な種類の花だ
『ここが我のテリトリーの家だ、奥のあれが墓だ・・近づけばわかる』
俺たちはゼーブルと共に歩いた
本当に静かな森だ、ここだけは多少安心できる気もするが
『ねぇジャン?書いてるかな・・・石に唄が』
ルッカが不安そうな顔をして俺に言う
俺は多少は心配だが最悪の場合でも情報くらいはあると思っている
『なかったら残念だけど、その時は違う手掛かり探すさ』
『旅人はいいのぅ、お望みの物があれば良いのだがな』
ゼーブルが会話に入ってきた
ルッカは唐突にゼーブルに聞いてみた
『ゼーブルさん、不思議な力ってどんな感じなんですか?』
ゼーブルが少し考えてからルッカを見て答えた
『導き手の力に若干だが似ている』
『導き手?』
ルッカが頭を傾げる
『そうだ、遥か昔の道の者だ』
その言葉を聞く前に石の前に着いた
それは墓だった、だが普通じゃなかった
遠くから見た通りに周りには花が色々咲いていた
墓もそれなりに劣化していない、何故だろう
墓の高さは1メートル、横幅30センチとコンパクトな感じだ
そして墓には文字が書いていた、俺とルッカそれをマジマジと見る
『・・・なんの言語かわかるか?』
ゼーブルも気になっているらしい
俺もよーく目を凝らして見ているが
『・・・わからない』
『ジャン・・・ちょっとこれ聞いたことない言語よ?てかゼーブルさんでもわかんないってかなり昔の言語よ?』
『我も物知りのつもりなのだがなぁ』
『とりあえず・・・情報がほしいゼーブルさん』
『どうした小僧?』
俺はゼーブルさんを向き、先ほどの気になる会話を質問した
『導き手について教えてください』
俺は頭を下げてゼーブルに頼み込む
そうすると彼はフッと軽く笑いかけ口を開く
『昔は導き手によって道が開かれていたのだ・・・今で言うと道は職スキルの事だろう』
『導き手・・・あれ・・?』
俺はその言葉にひっかかり考えていると
先にルッカが気づいたらしく質問した
『唄人と言う存在ですか!?』
それだルッカ、それを聞きたかったのだ
ゼーブルの返答次第ではもしかしたら繋がるのだ
彼は答えた、俺たちの求めている言葉を
『昔、人族は導き手を唄人と言っていたな、正解だ番の娘よ』
『つ・・・つがい?』
『あぁすまぬな、人族は夫婦と言うらしいな』
ルッカがこちらをチラチラ見て顔を赤くしている
おいやめろ!今はまだだめだ!
ケインが珍しくゼーブルに質問をした
『すみません、導き手の犠牲によって唄が作られると聞きました・・・このお墓の人の知り合いが言っていたんですが、犠牲とは何ですか?』
隠れた重要な疑問を投げかけるケイン
意外といいとこ攻めるんだよねケインって
ゼーブルが欲しい情報を答えてくれる
『犠牲とは己の身を捧げて唄に道の力を込める事だ、込めたら最後・・・死ぬことも出来ずにその唄に祈りを捧げるような存在になる』
『・・・詳しく聞きたいですゼーブルさん』
『よかろう、我も暫く1人で寂しかったのでな・・座るがよいぞ』
皆で草地に座りゼーブルは話をしてくれた
『おぬしらの為に唄人と言っておこう・・・・唄に道を作る力を込めるのは唄人だ、まず・・・それは理解したか?』
『はい』
俺は返事をしてゼーブルは続けて説明する
『唄を作る事もあるらしいはそれはよく知らぬ、だが唄に道を作る為、いや・・・道を埋め込むと言っておこうか、その力を使うと魂がその唄に捧げられるのだ、まぁ命を代償に道の完成だ』
ゼーブルの尻尾がたまにパタパタしていて意識がそっちにたまにいく
『当然肉体から魂が無い状態であるから死んだと言った方がいいか、だが魂は唄に宿っている状態だ』
俺は言葉を遮り質問をしてみた
『あなたが墓に感じてる力は唄に宿った魂じゃないでしょうか?』
全員が俺の言葉で真剣になる、大事な事なのだ
ゼーブルが暫く考えて口を開いた
『我は唄の力を感じた事がないが先ほども言った様に唄人の力に若干似ている、小僧は唄を探していると言ったな?』
『はい』
『仮説だが』
ゼーブルファーは立ち上がり口を開いた
『唄に捧げられた魂が形を変えて我が感じているのだろう、唄はここにある、そしてこの墓は唄人の墓だろう』
『おー』
何故かナッツが声を出す、少し俺も安心した
ゼーブルはその昔の事は知ってるけど道にたずさわることも無いので唄の道の力やその魂を感じたことがないらしい
ただ唄人とは会ったことがある為その力を知っていて似ていると思っているのだ
『じゃぁどこかに唄が書いてるの?』
ルルカが言うがゼーブルがそれに答える
『多分この文字だろうが読めぬのだ・・・、だが・・多分だが・・・』
『何でしょうゼーブルさん?』
ゼーブルは深く考える、多分昔の記憶を思い出しているのだろう
俺たちは素直に待った
『・・・我が昔に良く話をした唄人に聞いた事があるのだが』
ゼーブルは墓に近付いて刻まれた文字を見つめ始め
横目で隣にいた俺を見て口を開いた
『お主等の話を聞く限りこの言語が本当に唄ならば唄の1節でもわかっていれば魂は唄全体に宿っているだから反応はするらしいぞ』
『うん?』
俺は変な声が出たがゼーブルが言葉をつづけた
『だがその道を歩んでなければ効果がないらしい、それ以外は我は詳しくは知らぬな・・・この言語だと我でも唄とも思わんのでな・・まぁ最初の1節が鍵になるとかなんとかあやつ言っていたな・・』
ゼーブルは何やら独り言を開始した、昔の知り合いを思い出しているのか
どうやらゼーブルは唄とかは知っているけど知らない言語で唄だと気づかなかったらしい
でも唄ならば昔の唄人から解放の仕方は偶然聞いていたとか
『あの・・・ゼーブルさん・・・』
『どうした?』
俺は試しに許可を貰う
『1節知っています、俺はこの道を進んでるものです、唄を歌っていいですか?』
そうするとゼーブルは目を開いて驚きつつ言う
『お主!歩む前じゃなくて既にもういるのだな!?道を歩む者と言ったが認識のすれ違いか・・すまぬな』
『はい、もう最初の道にいます』
『墓を正面に・・・目を閉じて唄うが良い・・・進む時はそうすると聞く』
『感謝しますゼーブルさん』
『かまわん』
軽くゼーブルがどいてくれた
俺はゆっくり触れる距離まで近づき
唄を囁いた・・・・
銀色の丘で犬が泣く
何を願って吠えるのか
何に向かって歌うのか
どこまでも続くその咆哮
十年百年千年と
時代を超えて届く声
未来に乗せて吠えるのさ
貴方の想いは大地へと
私と共に眠るけど
あなたを照らしてくれるでしょう
銀色の犬が立ち上がる
お前の為に敵を討つ
唄い終わると俺は
聞き覚えの無い女性の優しい声が聞こえたのだ
『始まりの場所で彼を待つ』
俺はびっくりして目を開けたのだが
周りはあの時の様に暗かった
ゼーブル『歳をとると同じ事を何回もいうのでな』
ルルカ『学校長なの!』
ゼーブル『なんぞそれ?』




