20話 【アバドン】その③ 何が・・・
ルッカ『私空気?』
『・・・道・・・か?』
暫く進むと目の前に昔は整備されていた様な道に辿り着く
邪魔する木々はほとんどない感じだ
さっきまでは半分獣道だったし助かる
俺たちは・・・いや俺は感覚的にそこからまっすぐ行くことにした
ルッカが俺に近付いてきて口を開く
『ここってその初めて出会った場所よね多分、だってさ・・・ここからガウガロ凄い近いよ?』
『確かに俺もそう思う、トーマさんの話や銀の意思の最後の話とかを組み合わせると・・・』
『そうよね、何かはあるわね・・・』
俺とルッカは会話しながら進んでいく
皆も周りを警戒しながら進んでいるが魔物がでてこない
道を見つけて30分くらいか
あんだけボンボン現れた敵がパタリと止まった
俺以外もそれを感じている様だ
『薄気味悪いですね逆に出てこないのも、ケイン君?なんか変化ある』
ナッツが少し苦い感じの顔つきでケインに話しかけるが
ケインはずっと地面を向いて嗅いでいる
呼ばれてからナッツを向いて返事をした
『・・・全然生き物の匂いがしなくなったんです』
その言葉に俺たちはガウガロに抜けてしまったんだろうかと考えてしまう
グスタフがそれを否定した
『それはねぇな、ガウガロならこのまま歩くとあと4時間かかる筈だ』
『わかるのか?』
俺はその言葉に反応する、グスタフが即答した
『ああ、勘で悪いが俺たちの歩くスピードがこの森に入って遅くなってるんだ、警戒しながらだからだがな、多分今は中心部かもな』
『確かにそうかもしれん』
俺もその意見には納得した
ルルカもだ
『ここが出会った場所でお墓があるならこれじゃわかりずらいの!小さい墓なら大変!』
『確かにそうよね、ポツンとある感じのお墓なら探すの苦労するわね』
ルッカはため息を吐いて気持ちを表す
小さい墓なら本当に面倒だ、探すのが
『・・・うんん?』
ケインがいきなり前方を見る、俺たちも一瞬で前を向き
素早く武器を構えた
だが何も現れない、ケインがずっと前を向いて不思議そうな顔をしている
俺はケインに近付き声をかけてみる
『ケイン?どうした?』
『・・・何かいます、100m先でしょうか・・・この匂いの濃さ、これ・・・なんだろ?』
ケインがクンクンと強く嗅いでいた
俺たちはその何かがわからない
ナッツが周りを警戒し始める、ルルカは後方を警戒していた
ケインは俺の腕を引く
『ん?ケイン』
ケインの目が細くなり遠くを見つめる様な感じになっている
様子がおかしい、こんな反応どういう意味なのだ
『・・ジャフィンさん』
俺は返事をして続きを聞こうとケインを見て待つ
ケインはまだ前をずっと見る
『・・・わからない匂いです、判別できません・・・嗅いだことが多分無い匂いです』
『・・・嗅いだ事が・・・?』
俺がそう言うとケインは
その瞬間
ビクンッと体が反応して
いっきに震えだす、そしてかすれた声で俺を呼ぶ
『ジャフィン・・・さん・・・』
ケインが前方の異変に気づいてから彼は少しずつ後ろに下がっている
それは何を意味するのか
俺は皆に目配りをして頷いて合図する
皆も頷いた、そして聞きたくない事を俺は聞いた
『ケイン、何を考えている』
ケインが囁くように、だが皆に聞こえる様に小さく答えた
『思い出した・・・これは・・・マーキングの匂いです』
『ケイン落ち着け、わかりやすく言うんだ』
グスタフがケインの近づき両肩を叩いて口を開いた
そうするとケインは震えた声で言ったのだ
『縄張りを・・・主張できる匂い、ここで・・・マーキングできるくらいの強さ・・・』
俺たちは声を聴きながら前方だけを見る
ケインの声は続く
『僕は・・・ランクAまでの匂いは・・ヒッ・・わか・・わかるつもりですが・・』
ケインは泣いていた
だがその言葉の意味を完全に知りたくて全員黙っている
『グスタ・・フさん・・僕・・ランクA+以上は匂いが・・知りません・・・』
グスタフは・・・
俺の知らないグスタフの顔になった
その眼光は前方だけ見つめる
冷たい雰囲気を感じさせ、冷酷な瞳をしていた
グスタフがゆっくりケインを手で後ろに下がらせる
そして俺はそれを見て
前方に歩きながら呼ぶ
『グスタフ』
俺の声に頷きもせず一緒にゆっくりと一歩ずつ歩く
一歩の重みを俺は感じながらグスタフと歩く
ナッツは中衛、ルルカは後衛にした
俺たちに会話はない、ルッカも身を小さくしてケインと抱き寄せて後ろからゆっくりついてくる
霧が気持ち晴れている気がした、いつの間に
それでも20mより少し見えるかなくらい
ケインの震えが大きくなる、ルッカが落ち着かせようとなだめている
俺とグスタムも無言でジリジリと進む
ケインは呟いた
『うう・・気づいてる・・・こっちにワザと匂いを送ってる・・うぅぇ・・・』
ケインがエづいた、ルルカもそれを見て背中をさする
何がいるんだ?なんなんだ?わからない
グスタフが前を見ながら俺に言葉をかける
『気配が感じねぇ、でもいるなら俺も気づいてる筈だ』
『・・・』
俺は反応できなかった
そしてケインは
腰を抜かし倒れながら皆に言った
『近付いてきます・・・あと・うぅ・・・30m・・』
ケインが四つん這いでうずくまった
俺たちも立ち止まる
想定外過ぎた、ランクAも匂いがわかるケインだ
嗅げない存在・・・
俺たちの覚悟は決まっていた
そして霧の中から歩く音が聞こえてきた
大地を踏みしめる音がでかい
そして薄く影が見え始めた
歩いている、何かがいる
その影は
体長10メートルはあるだろう
前方の何かは立ち止まる
俺とグスタフはその場で固まった
霧で影だけしか見えない何かは口を開いた
『人間がここに何をしに来た、墓荒しか?』
ケイン『僕わぁ帰りたい(´;ω;`)』
ナッツ『僕もだよケイン君』