38 滅びし文明の中で生き残るために
悪食王クリオネール・オヴェール、建造物を繋げる連絡通路の上からそれが見下ろしてくると餌だと言わんばかりに俺達に襲い掛かって来た
『ブハッ!』
4つに割れた口からは黒い煙が吐き出されるがあれは呪いのブレス、毒なのか麻痺なのかはわからないが俺以外がこれを吸えばひとたまりもないだろう、麻痺ならばいいけども紫色っぽいし毒だなこれ
ゾロアが刀を素早く振ると降り注ぐ煙を切り裂き、その奥にいたクリオネール・オヴェールに飛んでいくが奴は間一髪それを避け、一気に加速してくると偶然にもナッツを標的に体から棘を無数伸ばした
『なんでぇ!?』
ナッツは驚きを浮かべながらその場から飛び退くと先ほどまでいた場所がクリオネール・オヴェールの棘で地面に亀裂が走る程凄い力で突き刺さる
『おらぁ!!』
クズリがその伸びた触手の様な棘を斬り裂くと触手はクリオネール・オヴェールの戻る
カールが断罪でその場で剣を振ると奴の胸部付近に斬撃が現れ、避ける暇もなくそれは敵に当たる
『痛い痛い痛い痛い痛い食べる食べる食べる』
上空で泳ぐようにしてこちらを見ながら言葉を発する悪食王
俺達は軽く広がって陣を固めると同時にクリオネール・オヴェールは体中からおびただしい数の触手を伸ばし、全員を貫かんと攻撃してくる
『避けるくらいなら平気だよ!』
『のわぁぁぁぁぁ!』
『水の精霊王の特全変異ねぇ』
ミミリー、モリス、マルスは口を開きながらそれらを避けるがコルヴェールとゾロアは避けることなく、伸びてくる触手を切り裂きながらも上空にいるクリオネール・オヴェールに跳躍した
『グラビデル!』
グスタフが避けながらも重力術を発動し、突っ込む仲間達の援護をする
悪食王は避ける前に彼の重力に掴まるとガクンとバランスを崩すが落ちてくることは無い、流石は元精霊王と言うべきだろう
『まぁ褒めてやる人間め』
コルヴェールは飛び掛かりながら地面で口元に笑みを浮かべているグスタフを横目見るとそう告げた
直ぐに彼とゾロアは上空でバランスを崩している敵の両脇を通過しながら切り裂こうとすると悪食王は軟体さを活かし、体をグニャリと曲げてそれを避けたのだ
『雑魚の癖に変な動きをするな!』
ゾロアは上空で素早く振り返ると刀を空に掲げ、闘気を込める
再び悪食王クリオネール・オヴェールが口から毒霧を吐くために口を閉じるがそうはさせない
『『ヘルファイア!』』
ルルカとタツタカが地面から熱光線を放つと悪食王の体を貫通し、悲痛な叫びを上げながら地面にいる俺達に意識を向け、素早く体の正面に氷の刃を沢山構成するとそれを飛ばしてくる
『やべっ!避けろ!』
バニアルドは叫ぶと地面にいる俺達は攻撃避けることに専念したがそれをする必要はなかった
『穿て!』
ナッツは上空から降り注ぐ刃に指を指すと30本の黒い剣が全て氷の刃に向けて飛んでいく
それらは全て複雑な動きを見せながら氷の刃を全て打ち砕くと同時にクズリとグスタフが真空斬を放ち、上空のクリオネール・オヴェールはそれを避けようとしたが背後にいるゾロアとコルヴェールを忘れているのが不幸となる
『エックス斬り!』
悪食王の背中に深く、×の字の斬撃が当たると内部の半透明な液体を噴出させ始めた、初めてダメージと言えるダメージかもしれない
『痛い痛い痛い!』
痛みを口にしているとゾロアは首を傾げながら両足でクリオネール・オヴェールを蹴った
『ふんっ!』
ただの蹴りだ、しかしそれによって悪食王は勢いよく地面に落ちてくる
潰されそうになったヘクターはあたふたしながら避けようとしたがハッと何かを閃いた顔を見せるとニヤッと直ぐに笑い、小さな剣を構えて闘気を込めると小さく囁くように声を出した
『斬鉄剣!』
ヘクターが目にも止まらぬ速さで剣を振るとスパン!と甲高い音を響かせた
するとその軌道上にいる悪食王クリオネール・オヴェールに大きな斬撃が飛んでいき、奴の胴体を両断したのである
ゾロアとコルヴェールは地面に着地すると一息ついて両断された敵を見上げた
『流石元最強ですね』
『当たり前だろ、リヴィより強い』
ナッツにそう言っておいた、しかし両断されてもこの魔物は死なない
俺は以前にボコボコのぐちゃぐちゃにしたがそうした理由は両断しても動くからだ
『凄い痛い凄い痛い、殺す殺す殺す殺す!』
バカァっと頭部を開き、口が白く発光していくとミミリーとモリスは果敢にも落ちてくる上半身に飛び込むと頭部を斬り裂いて技をキャンセルさせる、下半身も体から幾多の触手を伸ばしてくるがそれらをアルセリアは難なく避け、マルスとバニアルドそしてカールにルルカは手に持つ武器で斬って応戦している
下半身は仲間に任せよう、上半身はまだ元気だ
ドスンと大きな音を立てて地面に叩きつけられた悪食王の2つの体、直ぐに動き出したのは上半身だ、まるで蛇のようにうねりながら俺に向かってくるが相手を間違えたな
『終わりだ』
俺は襲ってくるクリオネール・オヴェールに走り出す、触手が上半身からも伸びてくるが避けるのは容易い、それらをスレスレで避けながら真正面に向かうと素早くハルバートを口に突き刺して俺は言い放った
『狼剣斬』
ハルバートの槍部分が銀色の狼気を纏い、それが伸びると悪食王の上半身を貫いたのだ
この技は刃が伸びるというよりはハルバートに込めた狼気が伸びる感じの技だがリーチを伸ばす為の技に近い
『がっばばばば・・・』
貫かれた悪食王はジタバタと暴れるが直ぐにグスタフが伸ばした触手を切り裂き、バニアルドが飛び込んでくると暴れる悪食王の上半身に狙いを定めて右拳に闘気を込め、口を開いた
『釣りはいらねぇぞ!一生埋まってろ!バンカーバスタァァァァァ!!!』
ズドンッと音を響かせ、彼の切り札が炸裂した
頭上から殴られた悪食王は技により地面に埋まる筈が地面があまりにも頑丈の為、その場で飛び散った
体液が飛び散ると皆はそれに触れたくないので避けるが下半身にレーザーショットを放ち、トドメを刺していたアルセリアが丁度こちらを振り拭いた時に体液は彼女の顔面にベチャリとかかってしまう
『ぶわっ!!ぶっほ!』
アルセリアは少し口に入ったらしく、ペッペと唾を地面に吐いている
『糞熊!考えて技使え!』
『はっはっは!悪ぃなエルフのお嬢ちゃん、顔は初体験だったか』
『次はお前にレーザーショットを放つか?』
『ちょ・・・冗談だぜ冗談』
弓を引いて構えるアルセリアに苦笑いを浮かべるバニアルドは両手を上げて降参のポーズを取る
よくみると悪食王の下半身もバラバラだ、あれなら全然大丈夫だろう
生きている気配も感じないので倒したと思ってもいい、皆は悪食王の亡骸を見るがこの人数ならばこいつにもそれなりに対応の幅が広がるので倒しやすいな
『ルッツ、お前うまそうに見えてるのか?』
『僕は美味しくないですよぉ父さん!?』
『真っ先に狙われたじゃねぇか』
『偶然!偶然!』
親子の会話を聞きながら俺は周りの警戒をするが、非常に不味い
これにはグスタフも感じているだろうが俺よりも彼の顔色の方がそれを物語っている
『やべぇぞ!さっきの偏食王がゾロゾロいるぞ!』
グスタフが叫ぶとナッツは凄い嫌そうな顔をしたまま遥か上を見上げる
すると建物の連絡通路から先ほど倒したクリオネール・オヴェールが8体も上空を飛び回っていたのだ
『餌餌餌餌!』
『美味しい美味しい美味しい餌餌人肉餌餌!』
片言の言葉を発するそれらは頭部が4つに裂け、鋭い歯を剥き出しに降り注いでくる
『戦っても意味は無い!みんな走るぞ!』
俺は叫ぶとこの超科学都市内の道を走る、後方からは仲間達が追いかけてくるが適当な隠れる場所を見つけないと駄目だ、最後尾はヘクターだし大丈夫だろう
悪食王の群れは地面に当たる寸前で角度を変え、後方から俺達を追いかけてくる
『何よあれぇ!気持ち悪いわぁ!』
『食べられたくないわねー!』
『食えない敵に興味は無い!』
ルルカ、ミミリー、アルセリアが口を開きながら走りながら後ろを見ている
ヨダレを口から垂らしながら追いかけてくるそれらをヘクターは後方で巨大な真空斬を放ちながら距離を稼いでくれているが本当に彼は頼りになる
『皆さん!地下鉄の入り口に逃げ込みましょう!』
タツタカが口を開くと全員が同じ言葉を言い返す
『『『どこ!?』』』
彼にしかわからない、タツタカはハッとした顔をしたのちに直ぐにそこを指を指す
その先には地下に降りる階段があるが俺は彼を信じ、後ろを気にしながらその場所に走ると鉄の階段を降り始めるが途中でドアを見つけた俺はドアを開けて皆をそこに誘導した、魔物の気配もないし倉庫の様な場所だ、まだ姿は見られていない
最後尾のヘクターが入ると俺はドアを閉める
誰もが息を潜めていると追いかけて来たクリオネール・オヴェールの群れは不気味な声を出しながらドアの前を通過し、階段下に飛んでいくのをドアを軽く開けて確認した
『ふぅ・・・行ったみたいだね』
マルスは小声で口を開く
ようやく一段落だが色々考えて見ると単体の悪食王だけでそれなりに体力は消耗する
誰もがそれを感じており、出来るだけ戦闘は避けるべきだと意志を口にする
『俺もそれに賛成だな、戦うのは嫌いじゃねぇが流石にあれを見ちまうとな』
グスタフはタイルの床に腰をおろしながら告げる
確かに数的にあんなのが多くいればヤバすぎる、レベルはA+は普通にあるだろう魔物だ
それが群れでいるというのは不思議と笑いたくなるな
『進むしかないが地上からだときっと敵の目につくだろうな』
『俺もゾロアの意見に賛成だ、タツタカは何となくわかりそうな道はあるか?』
俺はゾロアの言葉に反応を示した後、タツタカに意見を求めると彼はこの場所が地下鉄に似た看板があったから地下鉄だと思ったらしく、もしそうならレールの道を歩いて先に進むことが出来るというのだ
地下を進む乗り物らしいが装甲車をめっちゃ長くした乗り物って言うけど意味がわからない
『考える時間は無い、行くしかないぞ』
アルセリアが急かすがその通りだと俺は思い、ゆっくりとドアを開けて先頭を歩きながら薄暗い階段下に降りていくが下は真っ暗だ
先ほどの悪食王の群れがいる筈だから音はなるべく立てない様に進むしかない
『いった、誰足踏んだの?』
ミミリーが小声で口を開くと呼応されたかのように小さな声で会話が後ろから聞こえる
『誰だ、私の胸を揉んだ奴は』
『誰もいないよアルセリア』
『マルス、お前か?』
『違うって・・・』
『オイラ!』
『羊、あとで金貨100枚よ』
『そんなぁ・・・』
ヘクター、アルセリアに絡むなよ?
下は真っ暗だがコットンの手の平から僅かな灯りが発生すると数メートル先が見えるようになるがこれが地下鉄という地下施設の構造か、奥には鉄の扉があるが押せば軽く開くが軋む音が響き渡ると俺は後ろを振り向く
みんな睨んでいるなぁ・・
『す・・すまん』
皆が頷くと俺は正面を見直し、タツタカの予想で案内をしてもらうと例の地下鉄乗り場に辿り着いた、下には鉄のレールが2本奥の洞窟内に伸びており、後方には電車と呼ばれる乗り物が無残にも乗り捨てられているが、確かに長い!アレが動くのか・・・
『よっ・・・と』
マルスがレール上に降りた瞬間に俺達の背後から不気味な声が響き渡る
『どこどこどこどこどこ』
『食べる食べる食べる食べる』
『やっべ・・・』
クズリが口を開くとマルスは皆に下に降りる様に急かす
すぐさま降りると俺達が立っていた下にはちょっとした空洞になっており、そこに隠れると一度悪食王をやり過ごそうと息を殺す
壁に背中をつけ、潜めていると悪食王の群れの気配が真上に来ている
ナッツの顔を見ると凄い今にも死にそうな顔をしているが隣にいるクズリがそれを見て笑いを堪えている
ゾロアやカールそしてグスタフはいつでも戦闘出来るように武器を手に取っているがそれは最悪の場合のみだ
『どこどこどこ?』
『いないいないいないいない』
『探す探す探す探す』
それらの声の主は俺達から離れ、階段に戻っていくがどうやら地上に戻ったようだ
『急いでいきましょ』
タツタカがそう告げると俺達は急ぎ足で電車が通る道を歩き始める
タイルの為、足音を抑えることが可能だがそれでも地下という事もあり、真上から何かが歩く音が響いてくる
『地上に魔物が沢山いる様だぜ、超やべぇ気配を感じる』
グスタフが額に汗を流しながら口を開く
俺も感じているが先ほどの悪食王に匹敵するほどの強い気配だ、地上を進まなくて正解だ
歩いていると後ろでマルスとバニアルドそしてカールが小声で会話をは閉めた
『ここで襲われたらひとたまりもないね』
『その時はその時だ、正面の敵を倒し突き進む』
『まぁそれしかねぇなー、モリスとコットンは大丈夫かー?』
『生きてます』
『まぁ灯り役出来るだけ安心だわ』
会話を聞いているとグスタフが止まれと口を開く
俺は彼に何を感じたか聞こうとすると顔色だけでそれを悟った、額から汗を流し真剣な顔をしている
ゾロアも真剣だ、それだけでどういう意味か俺達はわかるよ
『どびっきりだぜこりゃ』
『ほう、お前も気配感知は優秀だなグスタフ』
ゾロアが彼を褒めるがグスタフはあまり嬉しくは無いようだ
『仕方ない、進む…現れたら倒す』
『ジャフィン…』
『どうしたグスタフ』
『一瞬で倒せ』
『・・・わかった、出来るだけ温存したいと思ったがそうしない方が良いか?』
『するな、マジでやべぇ…』
『わかった、そのかわり後方は頼むぞ』
『ケッ…わぁってら』
俺は歩き出すと数分後、その気配を感じることが出来た
その気配に俺は再び足を止めてしまうがこれほど強い気配を飛ばす魔物がいるとはな
どんな奴なのか逆に興味が沸く
『ここは本当にとんでもないなジャムルフィン』
『カール、敵が現れたら即断罪な』
『わかっている』
『私もレーザーショットを撃とう』
『僕もやるよ』
アルセリアとマルスがやる気を見せるとナッツも俺に顔を向けて頷いた
コットンの灯りがあるというのに湾曲した洞窟内の奥がやけに明るい、俺は勇気を出し、息を飲んで前を歩き出すと次なる地下鉄乗り場なる場所のホームと呼ばれる場所に明らかに只者じゃない者が6本の腕を組みながら座っていたのだ、金色に発光を見せながらだ
『カン・・・ノウンだと…』
ゾロアが口を開いた、その姿が金色で光り輝いている
人型の魔物だが胡座を掻いて座っているが近くに刀が6本も置かれているのでアレが武器なのだろう
首周りには長い布がフワフワと浮いているがなんだか神々しいな
『金剛力士像に腕が6本みたいな奴ですね』
タツタカがそう口を開いた瞬間、ホームにいたカンノウンと言われる魔物は首をこちらに向けると目にも止まらぬ速さで床に置いた刀を全て握り、一気に突っ込んで来た




