75話 地下の悪夢
地下から弱い人間の気配が多数感じるとルドルガ男爵にボソッと伝えると彼は目を大きく開いて驚いていた
直ぐに切り替えたようで今まで不機嫌な顔が信じられない程の真剣な眼差しへと変貌すると俺に確認を催促してきたんだ、本当なのかと
俺は直ぐに頷くとルドルガ男爵は舌打ちする
なんだか厄介な事になりそうだが彼は玄関にいるデルタ伯爵と騎士四人に顔を向ける前に俺に告げたのである
『動ける準備しておけ、夜は永い…こいつらのな』
意味はわかる、俺は担いだハルバートの刃先を一度上に上げる動作を共に来た冒険者に見てたがこれは合図でもある
最悪の場合、やりあう事になるぞというな
冒険者の二人は溜め息を漏らすが正直何事もなく護衛して報酬を受けとりたかったのだろうが気持ちはわかる
だがそうなりそうにもないかもしれん
ルドルガ男爵は俺たちのやり取りとは関係無しにデルタ伯爵に質問をしたのだ
『地下がないのかお前の館は』
『ありませんよ?』
デルタ伯爵は微笑むが焦る様子もない
隠している感じもしないしますますわからんな
するとルドルガ男爵はとんでもないことを口にしたのだが再び館の一階を案内しろと言い出したのだが伯爵は狼狽えることなく直ぐに了承すると俺達はまた館に足を踏み入れたんだ
帰れると思ったがまだのようだがルドルガは何かあると思ってしぶとく調べようとしたのだろう
『何もございませんのでご愛顧を』
デルタ伯爵がそう口にしながら着衣室や食堂そして調理場や客室など一階の全てを見せてきたよ、一階には倉庫らしき場所もあったがルドルガ男爵はきっと地下にいく道を探しているのだと思うけどあるとは限らない
だがしかし俺たちの真下から人の気配が確かに感じるんだよ、しかも動こうとしない弱った気だ
普通の関知スキルじゃ真下の気配はとらえきれないが俺の狼職だからこそ関知出来ている
デルタ伯爵を先頭にルドルガ男爵の隣を歩く俺は彼に色々と伝えたよ
調理場の真下に気配が固まっていると
するとルドルガは少し考えた様子を見せたあと直ぐに館の外回りを見たいと言ったがその言葉でデルタ伯爵の瞳孔が僅かに開いたのだ
少し影が見えたな、だがデルタ伯爵は微笑むと言われた通りに館の外回りを案内してくれた
館の壁を沿うようにして歩く最中にルドルガ男爵は真剣な顔で辺りを見回している
どうして外を見たいと彼は口にしたのか俺にも検討はつかないが無計画をするほど彼は馬鹿じゃないと俺はわかってる
とある場所まで進むと俺はルドルガの外を見たいと言った意味が何となく理解した
調理場は館を正面にして右側であり窓もあったが丁度調理場付近の窓が見えると換気扇とその近くに焼却炉が壁に設置されていたのである
調理場の近くに換気扇は普通だし焼却炉があるのも不思議じゃない、しかも近くには調理場の裏口と思われる扉だが残飯をここで燃やす為に扉が近くにあるのだろう
普通であるがルドルガ男爵の顔を見ると何やら口元に笑みを浮かべていたんだ
少し風が強い、花壇には冬に咲く白い花が一面に咲いているがその美しさに興味を持たずしてルドルガ男爵は焼却炉に近付いていくと中を開いたのだ
俺も一緒に除いてみると何かを焼いた後があり、灰が溜まっているが直ぐ下についている小さな鉄扉から灰を掻き出して取り除くのだろうし変わった様子はない
『変わったご趣味ですねルドルガ男爵』
嫌みのようにデルタ伯爵が口を開くがルドルガは気にしない
焼却炉の中を除くと次には調理場の裏口に視線を向けた、扉
は普通に鍵がかけられているが変わった様子はない
それでもルドルガ男爵は諦めきれない面持ちを見せるがここでとうとう俺が話した内容を暴露したんだ
厨房付近の真下から人の気配がするという事実だ、多分だがデルタ伯爵の反応を見たいためにルドルガは口にしたのだろうが予想とは違ったデルタ伯爵の言葉が投げられたのだ
『それはありえないことですよ、この屋敷は確かに構造的に地下を作らずに深掘りして耐震に備えた屈強な我が館、あれでしたらこの館の見取り図も見せますよ?もしルドルガ男爵の言うことが正しいのならば私としても非常な事態ですが』
嘘をついているようには思えない、ルドルガもそれは気づいただろう
俺達は一度中に入れてもらい、4階にあるデルタ伯爵の部屋に保管している館の見取り図を見に行ったが彼の部屋は壁に本棚がぎっしりだ
さまざまな難しい本が並んでおり、奥には高価な机と椅子
絨毯は赤い、デルタ伯爵は机の下の引出しから見取り図をだすと机に広げたのだ、確かに地下の明記はなく、地中深くまで柱を伸ばして耐震用に地盤を固めていたのだ
ますますわからないぞ?ルドルガも首を傾げる
デルタ伯爵は見取り図を見せてはくれたが彼自身も気になるらしく俺に話しかけてきたのだ
銀狼殿、本当なのかな?』
『悪いが確かに下から感じるんだ』
『ふむ…貴殿が人の気配も獣のように関知するのは私も存じてるがちと不安になるぞ?』
苦笑いするデルタ伯爵だが黒ではない感じしかない
何も知らなかった反応なのだ、どういうことだ?
するとルドルガ男爵がとんでもないことを俺に言い放ったんだよ
厨房下をハルバートでくり貫けという馬鹿げた命令だがこれにはデルタ伯爵や彼の騎士四人そして俺や冒険者二人もビックリして固まったさ
直ぐにルドルガは補修費は請け負うというとデルタ伯爵は苦笑いしながら了承したのである
大胆なた作戦だが俺のハルバートで切り抜けるだろうか
『本当にやるのかルドルガ?』
『やれ犬、責任は俺が持つ』
ルドルガがそう言うならばやるしかない
全員で薄暗い厨房に向かうが当然誰もいない、デルタ伯爵の騎士は輝魔石で辺りを照らしながら先頭を歩くが俺は気配が感じる場所に近付くと立ち止まる、皆も俺が止まったことによって視線を向けるが正直やったことないし可能かはわからない
冒険者二人は固唾を飲んで見守る中、ルドルガはやれと俺にゴーサインを口にするのでハルバートを全力で振って床を切り刻んだのである
やはりインダストリアルゴールドだな、床を斬るときにあまり抵抗を感じなかったんだ
世界で一番硬い物質で作ったハルバートだが切り刻んだ場所を刃の反対にある石突で軽く押すとなんと地面が真下に落ちていったのだ
流石に驚くよ、断面を見ると約1メートルほどの厚さしかなかったんだが見取り図では2メートルの筈だし空洞になっていない
落ちた地面から砂煙が上がってくるとデルタ伯爵は穴に顔を除きこみながら口を開いた
『ありえん…ありえぬ、ゼリフタル随一である夢工房が作った館だぞ…』
夢工房とは家作りのプロの大工企業だが彼は非常に驚いているがルドルガはそれを見て彼に話したんだ
『お前、カモフラージュにされたな』
『なんのだ』
『いけばわかる、いくぞ犬』
ルドルガ男爵は砂煙が消えて下が見えると騎士から輝魔石を取って落下した床に放り込んだ、下は4メートルの深さだがルドルガはピョンと跳んで下に降りたのだ、続けて俺も降りるが
(これ洞窟か?)
岩場だらけだ、まるで横穴だが奥にはなんだか扉が見える
デルタ伯爵は上から様子を見ていたが直ぐに騎士たちに警備兵を呼べと口にすると騎士二人はどこかに走っていった、勿論残ったデルタ伯爵と騎士二人も下におりるとルドルガが宿った冒険者2人も降りてきたのだ
横幅は二メートルほどの穴だがここにはどこから入るのだろうか、ルドルガは冒険者二人に反対方向に歩いて入口を見つけろと命令すると彼らは懐から輝魔石を取り出して灯りをつけて小走りに入口を探しだしたのだ
『なんだここは』
一番驚いているのはデルタ伯爵
彼は前に歩いていくと10メートル先にあった扉に触れた
鍵は閉まっているようだが抉じ開けるのは得意だぞ?
ルドルガ男爵は暇しないようであり、楽しそうな笑みを浮かべながら俺に扉をぶち壊せと言ってくる
デルタ伯爵や騎士二人は後ろに下がると俺は銀閃眼の強化弾を鍵穴を狙って撃ち出すと扉は奥に開いていく、ここ先から俺が感じていた気配がするのだ
先頭の俺は真っ暗なその大きな部屋の中を見たよ、両脇に牢屋が見える
入口からはそれしか見えないが進めば真実がわかるだろう
『頼むぞジャムルフィン』
ルドルガが俺を犬と言わずに名前で呼んだことに驚くがそうしていると怒られそうだし直ぐに切り替えて俺はルドルガに答えたんだ
『ここで待ってろ、見てくる』
俺は担いだハルバートを降ろして構えながら前を歩くが床は石床でまんま牢屋にしかみえない部屋だが奥までは50メートルくらいまでビッシリなんだよ
夜目が効く俺は足を踏み入れた瞬間にとある微かな声を耳にした
『いゃ…』
嫌?人の気配だし人のはず
俺はその弱々しい人の気しか感じないことを理由に大胆な行動をとることを選択したよ
大声は必要ない、静かなこの奥まで続く牢屋の様な場所なら俺の声は響くだろう
ハルバートを肩に担ぐと俺は口を開いたよ
『誰がいる?俺は銀狼のジャムルフィンだが人の気配がしたから来た、いるなら返事をしろ』
奥まで声が響く
すると生唾を飲み込む音が聞こえたがそれは後ろにいるデルタ伯爵であるし彼の足は震えている
怖いのかよ!!こいつ白だなぁ…知らなかったのだろう
だが返事はない、見かねたルドルガ男爵は俺の横に歩み寄ると彼も口を開いたのだ
『俺はブール公爵の長男であるルドルガ男爵だ!誰かいるならば返事をしろ!救援を呼んだ!』
『助けてください』
『助けて…』
『おうちに帰れるの?』
『夢なのか?』
声が聞こえた、ルドルガ男爵は騎士からもうひとつ輝魔石を借りるとそれに灯りをつけて奥に投げ入れた
俺達は灯りで照らされた牢屋に驚きな光景を目の当たりにしたよ
牢屋は鉄格子だがそこから手を出して助けを求める幼い子供達の姿が見えたのだ
あまりの光景にデルタ伯爵は尻餅をついて何度も囁いたのだ
『馬鹿な…ありえない、私の館の下に…これはあれじゃないか』
あれ?あれとはなんだとデルタ伯爵に質問をすると彼じゃなくルドルガ男爵が答えたんだ
『仮説だが奴隷商の倉庫だ』
ルドルガが額に青筋を浮かばせながら奥に進んでいった
泣きわめく子供や奥で小さく踞る子を見て怒りを顔に浮かべているがこういった汚いのは非常に嫌いらしい
俺達も奥に歩いて両脇の牢屋に目を向けるが子供もいれば少しだけ若い女もいた
事実としては牢屋に女子供がいることのみ、デルタ伯爵と騎士二人は見回しながら愕然としているとルドルガ男爵が俺に牢屋の鍵をこじ開けろと言うので俺は子供たちに奥に下がれというと銀閃眼の通常弾の出力を抑えて鍵穴を吹き飛ばして全ての牢屋を解放したんだ
そうしている間にデルタ伯爵の騎士達はワラワラと雪崩れ込んでくるがかなりの数だし彼らもこの光景を持て騎士であることを忘れて人として驚きを顔に浮かべてその場で固まったんだ
流石の騎士達も自分たちの主の館の下にこんなのがあるなんて驚きだろう
彼等はその後子供達や若い女性を集めて事情を聴き始めたのだが普通に彼らは誘拐されてここに来たらしいのだ、組織名は誰も知らず怖い人たちに連れてこられたと言うんだけどもこの後どうなる予定だったのかというと他国に売りさばくという事だったらしいな
貴族が関係しているかルドルガは子供たちに聞くと彼らはまんまカボス伯爵の容姿を口にしたのである
『あの糞貴族が!奴隷制度を行使したものは死刑しかない国だぞ!』
ルドルガ超怒っている
奴隷制度は遥か昔に廃止となった制度、それを行っていればこの国では死刑
ムルド大陸で一番厳しい極刑である
デルタ伯爵の騎士達がパンを子供達や女性に渡すと彼らはムシャムシャと食べ始めたんだ
腹が減っていたらしいな
その後に入口を探しに行っていた冒険者2人が来るとどうやらこのアポスの川を隔てた橋の下から出るように出来ていると俺達に話してくれたんだが冒険者ギルドの近くの橋である
するとデルタ伯爵は安堵を浮かべる者達を見つめながら口を開いたのだ
『私の館の下にこんなものがあるとはな、しかしこれが私の館を作った夢工房にも問いたださねばならんな』
『伯爵いたが致しますか?』
騎士が彼から指示を貰おうと話しかけるとデルタ伯爵は直ぐに答えた
『警備兵を呼んではいるが一先ずこの子らも弱っている、今日は館で休ませて明日引き渡しするようにしよう・・・この牢屋のような場所にもいずれ誘拐に携わった者らがいずれ来る、カボスだけじゃないだろうが警備兵と結託しお前らは待ち伏せして取り抑えよ!』
『はっ!』
どうやら警備兵が来たら彼の騎士と共にここで待ち伏せするということだ
子供たちは9人、若い女性は4人の計13名だが本当はもっといた、その元人間をルドルガは奥で見ていたんだよ
一番奥の牢屋だが既に息絶えている3人子供が各牢屋の中で蹲って動かないが手遅れ
俺はルドルガの隣に行くとその亡骸を見た
(餓死か)
ガリガリに痩せた子供、それを見ていると俺でも居た堪れないよ
それよりもルドルガは体をフルフルと震わせて怒りを見せているが叫んだりはしないようだ
デルタ伯爵は子供や女性を厨房の穴から脱出させてコックを無理やり起こして胃に優しいスープを作らせると言いながらも多くの騎士を連れて一度引き上げたのだ、子供たちの顔も活気が戻りつつある
全員連れて行ったわけじゃなく、まだ弱っていない女性を1人ここに置いているが色々聞く為である
名前はビビアンという15歳の女の子だが地元はバッジだという
1週間前に誘拐されて無理やりここにきたけども毎日来ていた食事を運ぶ男が来なくなって2日経過で生きることを諦めかけていた時に俺達が来たんだとさ
彼女の服はボロボロなのでルドルガは暖かそうな自身の高価な服を着せて上げるがそんな気遣いもこいつできるのだな
というかルドルガは問題児というよりも素直じゃないだけなんだよ、だから初対面で俺とぶつかったしな
わかってるぞぉ?
『ありがとうございますルドルガ男爵様』
女性が彼に頭を下げるとルドルガは気にする事もなく俺とビビアンで廊下をしらみつぶしに調べ出した
ビビアンも怖くないのかと聞いて見るけども銀狼様がいるならば全然大丈夫ですと言われて責任がのしかかる
本当にこの部屋は両脇の牢屋のみ、引き戸らしきタンスも無ければ戸棚もない
人を閉じ込めるだけの部屋だが壁には火が灯されていない松明が2本あるのみ
カボス伯爵は足を切断しただけで生きているので後ほど警部兵達がきつく尋問する筈だし口を割らないならばここに居た者からの証言で引き合わせれば直ぐにわかるだろうな
冒険者2名はこじ開けた扉付近で待機しているが問題無しとの事
彼等もこの場所にビビッているらしく、ずっと横穴を見ながら剣を構えている
(凄いビビッてんな・・・)
『犬、気配はあるか』
『えっ!?』
唐突に鋭い目を向けられて俺に話しかけるルドルガに一瞬隙をつかれたよ
変な声出たけどもビビアンも呼び方に引き攣った笑みを浮かべているがリラックスしていて嬉しいよ、俺は悲しいよ
言われるがまま横穴の先に意識を向けるが1キロ先にも気配はない、というかあるのは厨房付近での騎士達の気配のみでその奥からなどなんも感じないのである
無いと伝えると溜息も漏らすルドルガ
彼は一度帰るぞと口を開いて一旦この場を出ることにしたんだ、冒険者達もホッと胸を撫でおろして先頭を歩き、厨房の床下まで皆で移動した
ハシゴが垂れ下がっておりそれでみんな登って厨房に出ると既にコックが起こされて眠そうな顔のまま鍋でシチューを作っている様であったがそこには警備兵も10人以上いたんだ
デルタ伯爵が事情を説明している様だがそうしている間、子供たちは広めの食堂の椅子に座り遅めの夜食を待っている
ビビアンも椅子に座ると警備兵長である者が皆の顔を見回して指示を出したのだ
『驚くこと以外感情が出ぬ、奴隷どは誠に信じがたいが・・・5名は下に降りて牢屋内の調査!5名は朝にやってくる増援が来るまで寝ずに子供たちの護衛だ!3名はこの穴の監視で私と残りの3名は入口まで歩き調査だ!』
『『『はっ!』』』
数人床下に降りていく、警備兵も動き出した様だがどうやら増援は50人もくるらしいがかなり多い
それほどまでに深刻な事が起きているからだ
まだこの光景の流れが掴めないがそれはカボス伯爵に尋問すればわかる筈だ、今わかる事には限界がある
ルドルガは冒険者に金貨10枚ずつやるから穴の監視をしろと金を渡しながら命ずると2人は超高速で首を縦に何度も振った、速い・・・
こうしてコックが作った鍋いっぱいのシチューが子供達や女性に配られると皆幸せそうに食べ始めるが大半が泣きながら食べている、超久しぶりな飯だしね
先ほども地下で食わせたがパンだ、今回は貴族の家のシチューであり味は超保証できる
上手い美味いと言いながら笑顔で泣く姿に見ている俺達は複雑な気持ちとなる
『伯爵殿、夢では無いのですね』
騎士の1人が伯爵に話しかけるが帰ってくる答えは決まっていた
『夢ではない、私の館の地下に伸ばしてまで隠していたのだよ・・・恐ろし過ぎる』
厨房からシチューを食べる子供達や女性を俺達は見つめていた、近くには警備兵と一部の騎士がいるので彼らも安心して食べれるだろう
ルドルガは近くの警備兵の今後の行動がどうなっているか聞いていたが警備棟は確実に昨夜捕らえたカボス伯爵を尋問するだろうと言い放つ
『もしカボス伯爵が口を割らない場合、ここに居る保護された者から数人連れて対面させましょう・・・それで全てが分かる筈です』
『今日はどうだ?』
『弱り切っている体を動かすのは危険ですので一旦ここで回復を待つしかありません、朝には増援と馬車が数台来ますのであとはこちらで厳重に保護して国の威厳を守るために動きます』
『絶対に関係者全員捕まえろ』
『わかりました』
ルドルガは警備兵と話し終えると冒険者2人を残してこの場を一度離れることにしたんだ
冒険者には朝には勝手に解散しろと伝えると彼らは喜んで警備をすることを誓ったんだ
金貨10枚とかかなりの高収入だからな、しかも1人10枚だ
『頼むぞデルタ伯爵』
『ルドルガ男爵よ、私とてこの問題は異常過ぎると思っている・・・連絡は随時届けるよ』
『わかった』
そして俺とルドルガは乗って来た馬車に乗ってブール公爵の館に戻るが時刻はなんと次の日になっている!結構時間たってたんだな
辿り着く迄彼は一言も俺に何も話さずに何かを考えているだけであった、話しかけてはいけない感じだったから俺は黙っていたんだけどね
ルドルガと共に俺が泊まっている客室に行くがどうやら彼は送ってくれたらしい、そういう行動もしてくれるんだな
ルッカの気はすこぶる穏やかだがだがまだ起きているなこれ、ドアの前まで来ると彼女は気づいたのだろうか扉を開けて出て来たんだ、寝間着だしモフモフした服だがそれを見たルドルガは口をへの字にしていた
『あ・・・あはは』
ルッカは苦笑いしているがルドルガ男爵は咳払いして切り替えると彼女に口を開いたのだ
『今日は緊急な事態が起きて必要以上に銀狼殿をお借りしてしまったが申し訳ないなルッカ夫人、おかげで大きな問題の解決に向かえそうだがあとはこちらで動くのでもう大丈夫です、明日はゆっくりとアポスの街を堪能して村に帰られよ』
驚きだよ!どこでその口調習ったお前!?口を半開きにしている俺だがルッカは普通に彼と話し出すとルドルガは俺達に背中を向けて言い放ったんだ
『今日はご苦労であった銀狼殿、いずれまた頼む』
『・・・わかりましたルドルガ男爵様、また何かありましたらお申しつけください』
彼がルッカの前で俺を立たせてくれるならば俺だって普通に話しかけれない
こいつは馬鹿じゃない、オンオフができる奴・・・いやばメリハリが分かっている奴だったんだ
なんとなく俺の中でルドルガの評価が上がるがこいつならばこの先やっていけそうだなと思うようになってきた
廊下の奥に歩いていく彼からは小さく鼻で笑う声が俺だけに聞こえたがそれでもいいよ
お前は言葉が不器用なだけ、慣れ合うような話し方が慣れてないんだな・・・面白い
こうして客室戻り、ルッカに何があったか話すと彼女は非常に驚いていたよ
『奴隷って異常なのよ?今それが起きていたとなると関係していた人全員死刑じゃない』
『だろうな』
2人でベットでくっついて横になりながらもそういった話をしていた
この国での極刑で奴隷制度を働いた者が一番刑罰が重い、最悪肉親まで牙が飛ぶのだ
一大事であるためこれはそのうち公になれば国中が驚く事だろうな、どうなるかは俺達には予想はつかない
明日はルッカとアポスで軽く買い物をして村に戻る予定だ
あとはルドルガがいる、彼ならばきっと大丈夫である
俺は不安を感じないまま彼女と共に寝静まった