66話 友達ゲット
『それは・・・ほん・・とうか?』
驚いた・・・生きてるなんてな、久しぶりに何も考えずに戦ったがあの距離での散弾を直撃して爆散せずしかも今口を開いたことに驚くよ
だが許すことは出来ん、お前は確実に殺す
お前は俺の一部を奪ったから直ぐには殺さないグスタフが藻掻いた分は苦しんでもらうぞ
そのまま黒豹っぽい彼に近付くと彼はゴロンと体を回転させて仰向けボロボロの天井を見上げ始めた
体中ボロボロだな、俺もだけどもこいつは遥かに血だらけである
殺す前にさっきの言葉が気になるから聞いておくか
『なんだ?まだ喋れるのか』
『殺す前に教えろ、その話は何だ?』
『・・・・俺の名はゾゲット・カルロスだ』
『!?』
驚いたな、嘘をついている様にも思えないが本当なのか?
うろ覚えだけども昔母さん呼んでもらった本の主人公にゾゲット・カルロスはいた
口調が独特だったけども人と仲良くなりたくて頑張っていた黒豹の物語がな、その結末だと最後まで彼は孤独で人に矢を撃たれて死んだという話だけどもこれは実話なのか?
息も絶え絶えな彼は視線だけをこちらに見せるが彼の体を見てるだけで居たそうだ
この部屋みたいにボロボロすぎる、なんだか王宮の玉座っぽい場所だけども暴れまくったしただの廃屋にしか見えない
『教えろ、それはどういう話だ』
『人間と仲良くなりたかった黒豹の騎士ゾゲット・カルロスの物語さ、昔母さんに呼んでもらったが・・・』
俺は彼にその絵本の全てを聞かせて見ると彼は途中で左腕で顔を隠し始めた
何をしているのかと話しながら警戒しようとすると俺は気づいたんだ、こいつ泣いてる
俺は物語の死ぬゾゲットの言葉を言いながら彼に色々と聞いてみた
『大事な者を信じることを諦めるな、そうすればお前の道は後悔の念で進むこととなる・・・とお前は本物ならばそれを最後に死んでるんだが』
『それは人の村で俺が決め台詞でいつも言っていた言葉だ、誰かが俺を見てくれていたのか』
『見てくれなきゃ絵本にならなかったけどもお前がゾゲット本人ならばお前は見るべきものを見ずに勝手に多種を否定して勝手に引きこもった馬鹿垂れだぞ?』
『絵本があるとは知らなかったが誰かのおかげで俺は消えずにいたと言うのか』
彼の物語は語り継がれていた、それを今知ったゾゲットは長い時間の後悔を胸に抱いて泣いていた
そんな彼に躊躇いもなく俺はズバズバと口を開くんだが・・・
『自分で決め台詞言っといて自分で全部失ってるじゃないか、諦めたのはお前だよ』
『グスタフにも言われたぞ、てめぇが諦めたから無駄になったんだ…勝手に他人のせいにしてるんじゃねぇ、男なら最後までやり通せ…諦めずにいればかけがえのない1歩を認める野郎がいたはずだ・・とな』
『あいつらしいがお前は見てほしくて頑張ってたんだろう?俺の親友は一番お前を見ていたからお前に口を叩けたことを気付けなかったのか?』
『ぐ・・・』
友達欲しさに暗黒面に落ちた騎士って事か、まぁ気持ちはわかるがそれはお前の心の弱さだ
咳込むゾゲットは口から血を噴き出すがいつ死んでも可笑しくなさそうだ、このまま死ぬのを待ってるのもいいかもしれないが最後は俺がトドメを刺さないと気が済まん
こいつは俺の親友を殺した
『あとで・・・グスタフに行っておけ銀狼、馬鹿は死ぬ前に治るんだな・・とな』
『はっ?』
俺はわけがわからずに首を傾げる、会えるのはお前だろう?馬鹿にしているのか
まぁ地獄に落ちれば会えないだろうがあの世なんてわからん
ハルバートをゾゲットの顔の近くに突きつけてトドメを刺そうかと思っていると後ろからタツタカの声が聞こえたんだ、俺は一応戦うことなど到底無理そうなゾゲットから警戒を緩めずに振り返るとやはりそこには汗まみれの息切れしているタツタカが走って近付いて来たんだ、後ろからはエイミーもいるけども大丈夫だろうか
テレポート使えるのに何で肩で息しているのかが不思議だけどもあっちで色々多忙だったのだろうと思いながら要件を聞いて見ると驚きたくなる事を彼が言ったんだ
グスタフは生きてるとな
それをタツタカが口にすると当然俺は驚くがゾゲットは笑い始めた
(こいつ・・・さっきの言葉の意味はもしや)
死んでいないと知っていて俺に言ったんだな?あとでグスタフに言えってな
でが俺が見たグスタフは確かに立ったまま死んでいた、心臓も止まっていたから間違ってはいない
ただあいつの腹部に刺さっている見た事のない大剣だけは気になっていたけども何故だか感覚で俺はその大剣をグスタフの腹部から抜かなかった
俺は再びタツタカからゾゲットに視線を向けると彼は顔を隠すのをやめて無気力に天井を眺める
息をするのも大変そうだけども何故こいつは生きていると言わなかったのだろうかと疑問に思っているとその答えは意外とゾゲットの口から聞く事が出来た
『あいつは言ったのだ、諦めねぇから思いは続く、1人のお前じゃ絶対ぇわかんねぇだろうがお前は死ぬ、俺の悪友になと・・・丁度そこのヘルトが他の者を連れて逃げたのだがもしそれが本当ならばグスタフを助けにその悪友がくると思った・・・死に芸してもらうためにギリオンカリバーをグスタフが手にしていたので大鎌でトドメを刺すよりギリオンカリバーで体の生命を止めることを選んだ』
『砕いて言え、何故グスタフは生きているんだ』
『あいつが持っていた武器は残剣ギリオンカリバー、俺が地下ダンジョンのどこかに落としたコレクションの武器であったがあれは貫いた対象の生命を仮死状態にするという扱いにくい武器でな・・・あいつは絶対しぶといからどうせ死なないと思った』
『・・・お前の求める答えが知りたくて出汁に使ったか』
『まぁな、さぁ殺せ・・・・俺はスッキリした』
『なんか釈然としないなぁ』
こいつも武人染みた奴だから命乞いはしないだろうな
まぁグスタフが生きてるっていう顔に似合う悪運が働いたことによって怒りも半減したが消えたわけではない
ゾゲットの表情は口で言った通りなんだかスッキリしているようだったが彼は試したんだ
グスタフの言った人間が来るのだろうかってな、だからあの大鎌で完全に殺さずにギリオンガリバーを知っていたこいつはそれをトドメにしたフリをしたんだ、殺す気はなかったのだな
致命傷でも助かると見込んだ事はこいつもグスタフをちゃんと見ていたから行動にできたのだろうかまその必死さを最初から出せばよかったものを…
『死ぬのゾゲット?』
ふと後ろからエイミーが歩み寄ってきた
危ないぞと言っても彼女はゾゲットだから大丈夫だとわからない理由を俺に口にしながら彼のもとに歩み寄ったのだがタツタカも心配そうに俺の横に歩いてきた
彼女は悲しそうな顔をしてゾゲットの前でしゃがむと彼を見つめた
そんなエイミーに視線を向けたゾゲットは口を開いた
『レディー、怪我は無いようだな』
『ないよ、あなたが狙わなかったから…ミミリーさんもでしょう?彼女には衝撃波で吹き飛ばすくらいしかしなかったもの、女性だから気を使ったんでしょ?』
『まぁな、武人の女性であったがあれが限界だ…さぁ男のもとに戻るがいい、俺はようやく終わる』
『諦めるの?絵本沢山読んだよ?諦めないゾゲット格好良かったよ?誰よりも平和を願った思いを諦めるの?』
『やめ…ろ』
ゾゲットは再び左腕で顔を隠した
大丈夫そうだしここは一先ず様子を見ることにしようか
タツタカも同じ考えらしく、俺と目が合うと彼は無言で頷いた
『まだあのときの夢が残ってるからグスタフも殺さなかったんでしょ?ちゃんと見てくれるってどんな感覚かわからなかったんでしょ?小さいときにずっと絵本見て会ってみたいなって馬鹿らしい事考えたけども今でもダンスしようぜも決め台詞で言えるならまだ戻れるよゾゲット』
『やめてくれ…頼む』
『友達が欲しかったんだよね?存在を認めて貰えても自分が思う存在を認めて欲しかったんだよね?』
『何を言いたいレディー』
『お友達になるからみんなに謝ろ?私も一緒に謝るから』
この言葉は死ぬことよりもきっと辛い幸福な言葉だろうな
どうやら俺がハルバートを振り落とす隙がない、今さらグスタフを苛めた恨みでぶった斬れば悪者は俺だな
俺は途中で来た身だから話の全貌はわからなかったため、泣きまくるゾゲットを無視してタツタカに説明を求めたんだが
なるほどな、昔から他種族と手を取り合おうとした奴がいたということか
人間と魔族そして同種である獣族からも差し伸べた手を叩かれたんだってな
一人でやる事にしては苦難過ぎるが仲良くなりたいという感情が勝って無意識に行動してしまったのだろう
(こいつ不器用か)
交流が下手だと予想しとこう、どんな他人でも付き合い方はある
それが出来なかったから彼は病んでダークになって不貞腐れ騎士として地下ダンジョンに引きこもったとまとめると馬鹿な俺はわかりやすい
『私レディーじゃなくてエイミーよゾゲット、ちゃんとあのイライラ狼は私から説得しとくから』
ゾゲットにそう話しかけてるエイミーに俺は言った
『もういいよ、好きにしてくれ』
タツタカがホッと胸を撫で下ろすと同時にエイミーはゾゲットにハイヒールを唱えたのだがお前使えるのかよ!?それ結構良い治癒術ぞ?
当然ゾゲットの傷は治り始めるが半分といった所か、それでも死ぬ手前ほどの重症であったし完全回復は難しい
エイミーは2回ハイヒールを仰向けに倒れるゾゲットにかけると彼はゆっくりと上体を持ち上げて周りをキョロキョロと見始める
『宝はいらないのよゾゲット、ただそれを壊さないとまた戦争が起きちゃいそうだから壊したいの』
するとゾゲットはエイミーに話したのだ
既にその宝である兵器は壊したと、理由をタツタカが聞き始めるのだがどうやらあると必ず良い方面で使われはしないと悟って鉄屑にしたんだとさ
どうやらグスタフ達は2組目の到達者だったらしく初の到達者の言葉で壊すことにしたらしい
欲を出す平気さえ壊せば欲を剥き出しにする者は引き下がるから君の見たい世界が見やすくなると言うとその赤いローブの男はテレポートで消えて言ったんだと言うけどもどう考えてもエレドラという名前で正体を隠しているビビだと俺とタツタカは感じた
ゾゲットも戦う前に転移されたので拍子抜けしたと口にするが彼に勝てる相手なのだろうか
確かにこの男は尋常じゃないくらい強すぎた
俺は感情的に立ち向かって無意識な全力を出して彼と戦ったんだけども摩天狼状態のシルバ・シルヴァとやり合うとか今考えるとちょっとこいつ可笑しい
ここまで強い獣族がいるんだな
そうして彼には外の状況というか世界の状態を伝えたんだ、予想通り彼は驚いていたよ
彼の知る獣族は人間と距離を置いて同種同士を睨み合う時代だったと思うが今は人と手を取り合う貴重な技術を秘めた種族として人族からは大事にされていると言うと彼は目を大きく開いて驚いたまま固まっていた
その様子にエイミーはクスクスと小さく笑っている
タツタカは追加でゾゲットに話したんだ
『ついでに魔族とも僕達仲がいいですよ?この国の南にいる本土の魔族とは流石に敵同士ですが遠い地には争いを好まない魔族もいるんですよ?』
『あ・・・ありえぬ、そんな馬鹿な』
『外に何年出ていないかわからないんでしょ?見てみたらいいじゃないですか』
ゾゲットはヨロヨロと立ち上がると頬杖をついて考え始めた
今更信じれないなんて思わないだろうが多分どう動いていいかわからないのであろう
彼なりに今更外に出るのが少し億劫なのかもしれない、まぁグスタフを虐めたんだし少し怖がらせてやろうと思って声をかけようとするとゾゲットは近くの床を足で踏んだんだ、するとその床がガコンと音を出して沈むと玉座があった場所から地下が現れたのである
そこは誰が見ても地下階層の最終地点に行く道となる階段だとわかるだろう
『一先ず、降りて確認せよ・・・騙しはせぬ・・・俺は負けたんだ』
ほんの少し警戒してしまうけどもエイミーが直ぐに隠し階段の先に向かおうと歩き出した
だがゾゲットは一旦それを引き留めて彼が先頭を歩くと言い放ったのだ、それは俺達が完全に信じていないと言う事を悟って自らが前に出る事で多少楽にしようとしたんだと思うけども何か下手に動いたらすぐにハルバートで首を跳ね飛ばす準備はしとこう
『行こうか』
そう俺が言うとゾゲットはついてこいと言い、下に降りた
この先は単純すぎる道であった、101階層には部屋が1つしかなかったんだ
もう迷路とかそういう次元じゃなく小さな個室を通って先にある階段を再び降りるだけだったのである
だがその部屋の中には宝箱がいくつかあった、その中の1つを開けたゾゲットはそれをエイミーに渡した
見た目は涙というか水滴というかそんな感じのワッペンだがゾゲットの説明では魔力の消費量を半減する効果を持つアクセサリーと聞いたエイミーは目を輝かせてそれを直ぐに髪につけ始めた
ゾゲットは嬉しそうにしている彼女を見てなんだかこいつも嬉しそうに微笑んでいる
『ありがとうゾゲット!』
『友達へのプレゼントだ』
ゾゲットはエイミーに言うと直ぐに下に降りていく
他にも宝箱があるが俺達には必要ではない物だと告げてそのまま進むととうとう110階層に降りたのだ
そこはそれなりに広い空間の洞窟って感じだが奥には祭壇の様な者があり、まわりには松明が壁に張り付いていて明かりがある
壁には様々な武器が飾られているがどれもかなり良さそうな武器だ
そしてこの部屋ないの中央には祭壇がありそこに兵器と呼ばれる代物が置いてあったが大きい
3mほどの物体だがあるのはただのガラクタにしか見えない鉄屑であり、グシャグシャになっているが見た感じ大きな瓶の先に羽が生えた鉄のようなものだ
これが平気なのかと俺とエイミーが首を傾げているとゾゲットも気難しそうな顔を見せながらも口を開いたんだ
『これが1つの国を容易く葬り、Sランクの魔物を吹き飛ばす驚異と聞いていたが俺にはそうは見えんのだが』
ただの鉄の塊だからな、そう考えても兵器という言葉には当てはまりにくい
俺達は祭壇の周りを歩いて観察しているけども1人だけ立ち止まったままの者がいる
タツタカであるが彼は知って良そうな驚きっぷりをしているがその表情はゾゲットもエイミーも気づいており誰もが彼ならば知っているとわかったろう
『ヘルトの者、教えよ・・・これが人を狂わせる最悪な武器なのか?』
『・・・・いつの時代もこれで大量の人が死んでますよ、これはこの時代に絶対に入れない殺戮平気です』
知っているらしい
エイミーがどういう者なのか聞くと彼は静かに話したんだ
水素爆弾、その言葉を聞いても俺達はピンとこないがどうやらこれをゼリフタルに落とせば一瞬で国の領土全てを吹き飛ばせるほどの威力をこの質量におさめているらしいのだ
それを真剣に言うもんだからエイミーもビビッて祭壇から下がり始めるしゾゲットは構えだすしと意表を突かれた言葉に変わった行動を2人はしている
今は起爆する恐れはないらしいけどもこれはタツタカの時代の戦争の兵器として使われた核兵器なるものだってさ
わからんが凄いんだろうな・・・
タツタカの口からもこう告げられたんだ
『これは人に見せることもどんな兵器なのかも教えてはいけない物なんですよ、知られたらきっと悪用する人が出る筈ですから壊して正解です・・・確かにゾゲットさんの言う通り強力な力に恐怖を抱くのは間違いないです、強い武器にはより強い武器をぶつけるってのが僕の世界の戦争でもあります』
『その頂点がこれなのだなヘルト』
『そうです、物理で壊せば爆発しませんので運がいいですねゾゲットさん・・・火術とか使ってたらいくらあなたでも痛みを感じずにあの世です』
『そ・・・そうか』
ゾゲットはホッと胸を撫でおろしているが彼でも少し驚いただろうな、どうやら大鎌で壊したみたいな様子だが火術使ってればここだけじゃなくディロア王国も危なかったと俺は思う
タツタカは祭壇の上で壊れている水素爆弾を眺めているとゾゲットが祭壇の下部を探り始めた
何をしているのだと思い彼を見ているとどうやら隠れた引き出しがあったらしく、そこからなにやら青い液体の入った小瓶を2つ出して俺とエイミーに投げて渡したんだ、彼女は落としそうになるがなんとかキャッチするとそれを見たゾゲットは小さく鼻で笑った後にそのアイテムについて話してくれたんだ
『魔力完全回復剤という超超超凄いアイテムだぞ?他には致命傷でも傷口を塞ぐ完全傷薬という緑色の液体の小瓶があるがグスタフに使えばいい』
ゾゲットはそう言いながらまた引き出しを漁るとその完全傷薬を俺に投げて来た
難なくキャッチすると俺はその小瓶を眺めた、確かにこれは傷用の回復剤の色だし毒が入っている様には見えない
今更毒を盛る必要なんてないけどさ
『いいのか?』
『いい、他にもあるが必要ならば使え・・・というか魔力完全回復剤はお前は飲め銀狼』
『何故だ?』
『魔王が近づいてきている、お前が元気でいれば何も起きない』
俺とタツタカとエイミーは驚いて目を開いた
そういえばそうだった、こいつとの戦いでその存在を忘れていたが俺の特殊な超感知には気配が全然感じないんだよ、それをゾゲットにいうとどうやら魔王は周りの気配に同化することが出来る為に感知系統は意味が無いんだと口にしたんだ
今は地下階層108階層まで降りてきているから早く飲めを言われて俺は焦りながらも飲み干した
だが凄い不味い、吐きそうになりながら飲み干すとゾゲットは腹を抱えて笑い出すが腹部の傷も完全に塞がっていない為、笑った瞬間痛がっていた
ざまぁないぜ!
『大丈夫ゾゲット?』
『大丈夫だエイミー、お前はヘルトの傍にいた方がいい』
エイミーはタツタカの背中に隠れるが抱き着き過ぎである
少しタツタカが気まずそうな表情を浮かべているが俺は既に来た道である階段に視線を向けている
ゾゲットは壁から先ほどの大鎌ど比べるとグレードは下がるが立派な大鎌を左手に持つとそれを構えて階段を見始めるが魔王が来ているならば早めに言ってほしかった、まだグレンツェントヒール一回分使える狼気があったんだけどさ・・・できるならばゾゲットにグレンツェントヒール使って魔力観戦回復剤を飲みたかったが今更愚痴を口に出せない
しかしこの場合戦力は欲しいので俺はゾゲットに左手を伸ばすとグレンツェントヒールを発動して緑色に彼は包まれると切断した右腕が再生し始めて体中の大きな傷も完全に言えたのである
その術に彼は驚きはした者の昔の者でもある為術の存在は知っている様だ
大鎌を右手に持ち帰るとそれを肩に担いで俺に口を開いた
『働かなくてはいけなくなったな』
『帰ったらグスタフに謝れよ?』
『ぐ・・・わかっている』
よし、今は仲間にしてやろう
悔しいけども心強い、あのゾロアをボコボコにしたんだからな
しかもグスタフとルルカそしてタツタカとミミリーやカールがいてもこいつは力を押し付ける実力を持っているんだし使わない手はない筈だ
『すみませんが頼みますね2人共』
『魔王とか絵本でしか知らない!どうなんだろー!』
タツタカの言葉とは違ってエイミーは緊張感はない、ずっと屋内で済んでいたから死ぬと言う恐怖をあまりどう感じていいかわからないんだと思うけどもそれもある意味肝が据わっている
109階層まで来たとゾゲットは言うけども彼が何故消えている気配に気づいているか僅かな時間で聞くと彼は気配消失系統のスキルは無効で感じ取る事が出来るんだってさ
色々と強い奴って補助スキルをいかに押し付けれるかってのもあると思うけどゾゲットのは結構良いスキルを保持して良そうだし後で聞いて見よう
ここは肌寒い、俺は冷気や熱気の耐性があるがそれでも少しだけ寒いなと感じてしまう
ということはタツタカとエイミーはもっと寒い筈、彼等をチラッと見て見るとその口元からは白い吐息を出している
その時に階段を静かに降りる音が俺にも聞こえた、俺の地獄耳であるが確かに誰かが階段を降りている音で間違いないが堂々過ぎる
忍び足って感じじゃ無さそうだがあちらも気づいているだろうな
ゾゲットは首を回して余裕そうにしているが対して俺やタツタカは真剣だ
だって魔王とは初めて出会うんだから警戒をしないわけにはいかない、なぜそこまでこの黒豹は余裕を見せれるのだ?
魔族の王となれば流石に強い筈だ
『さぁ来るぞ?銀狼やタツタカの言う事が正しければ今から現れるうつけを葬れば魔族とも俺は友達が作れると言う事になるな』
まぁあながち間違いではないけどもその道も生まれてくるってだけだ
それを彼に言うと彼はわかっていると口をへの字にして不貞腐れていたがこいつ意外と子供っぽいところがあるぞ?
俺は階段のを見ながらハルバートを構えて待つとその正体が俺達の目の前に現れたのである
『読みが外れたか』
両手にクローという腕にはめ込む鋭利な爪の武器をはめ、上半身は裸だがどの魔族よりも黒い感じの灰色、その胸部付近は紫色の線が稲妻の様に体を駆け巡っていて筋肉質
髪は真っ黒で腰まで伸びており少し浮いている感じもする、下半身の装備は黒いマントに鉄の甲冑
目が鋭くまるで獰猛な獣の様な瞳で俺達を見ているがこいつが魔王なのか?
彼の体からはビリビリと紫色で放電しているがこれは溢れる闘気の摩擦で起きる現象に近いな
こいつも闘気の量が桁外れな存在だったか、ゾゲットを回復させて正解である
階段を降りたその魔族は直ぐに立ち止まると余裕を見せながら周りを見渡し始めた
タツタカの体にも力が入っている、俺は不思議と落ち着いているしゾゲットも涼し気な顔をしている
だがしかし、祭壇に乗っている破壊された兵器を見るとその魔族は舌打ちをして再び俺達を睨みつけて口を開いたのである
『破壊兵器を壊したか、だが直せばいいだけだ』
直せるのか?それは不味いな
だがこれはタツタカの世界の兵器だし直せる者がこの時代にいるとは思えない、だがもし本当に治せるとなると少し厄介だ
諦めてくれないからな
『少しだけ強くなったようだな魔王ノヴァエラ』
ゾゲットが我が物顔でその魔族に話しかけたがやはり魔族の王か
その言葉にノヴァエラは首を傾げながらゾゲットに話しかけた
『貴様・・・なぜ傷一つない?』
『踊ってくれたら教えてやろう、青二才めが』
ゾゲットが闘気を一気に放出すると目にも止まらぬ速さでノヴァエラに襲い掛かった