55話 帰りたい 帰れない 勇者は嘆く
ゾロアのルシエラ斬輝という技で縦に両断された粘龍ウパル・パールはそのまま左右に倒れた
とうとう倒したかと思ったタツタカは俺の隣で小さくガッツポーズしながら俺に行きましょうと言いながら彼は先にゾロアの元に走るので俺も彼の後ろをついていくようにして走り出した
先ほどまでこの辺りを覆いつくしていた凄まじい殺気と威圧は消えているので確実に倒したのだ
だがしかしゾロアは倒れたウパル・パールにまだ警戒している様子であり、それに気づいた俺とタツタカは念のためにいつでも戦えるようにして歩み寄る、魔物Sランクなのだから最後の最後まで警戒しないといけないのだ
こいつは規格外のランクにいる龍種であり、自分たちの憶測で動くと油断を招く事となる
ならばまだ生きていると思うしかない、ありえないと思うがその考えは現実となる
【俺は虫神と獣神のいない時代で天下を取るつもりであったがそれも無駄の様だったか】
念術が飛んできたがまだ生きてるのかよ!!??
一番驚いているのはタツタカでありいきなり聞こえたウパル・パールの声に尻もちをついてしまう
失笑気味に笑うウパル・パールの声が頭に響くとゾロアは刀を担いだまま彼の近くまで歩いて近付くと顔の前でしゃがみ込んで話し始める
『残念ながら俺達が怯えたゼファーは生きているし虫神は全盛期の強さを保ったままいつもの島でのんびりしているぞ?』
【そんな馬鹿な・・・虫神はいいとしてゼーブル・ファーは獣神でも狼種だぞ?千年すれば死ぬはずだ】
『だが生きている、全盛期の半分程度しか力は感じないがそれでもあ奴の前に立つと本当に寿命で死ぬ前の神なのかわからぬほどに昔を思い出させる気迫を放つぞ?』
【くははは、最後まであの時代から俺は逃げ切れなかったか・・・そしてそれに負けじと新たな強気存在がいるとはな、その銀色の闘気を放った人間の小僧だが確かに動きが不慣れ・・それだけならまだいいが尻もちついているそこの臆病な人間も底知れぬ魔力を感じておったわ、流石にそんな存在が3人もいるとなるとな・・・十天の気配は俺でも感じ取れるが第4位と6位そして7位か】
『どうだポーラ・ローランド、今の時代の十天も強いだろう?』
【そのようだ、我が酒池肉林の夢はその方らの求める未来以下だったということか・・・認めよう】
『認めることは強くなる為の最高の材料だ、死ぬ前に教えるがお前が虐めていたリュシパーズールは今年お前が油断したそこの銀の男に負けたぞ?』
【あの堅物をこやつが!?くふふ、もっと生きて面白い時代を見たかったが・・・となるとゼーブル・ファーの言う事も納得できる、そしてそこの臆病な人間の男はヘルトだな】
『そうだが死ぬ前に何かヘルトにまつわる情報があるならば教えてくれ、頼む』
そこまで話すとタツタカは真剣な顔をして立ち上がり、死ぬ耐えるであろう粘龍ウパル・パールに深く頭を下げた
両断された体の目がタツタカに向けられると粘龍ウパル・パールは念術で彼に知っていることを話した
【小僧、ヘルトは死んだ者にしかなれぬ存在・・・死期が近い者でもそうであるがそこまではわかるか?】
『わかりますが僕は死んでません、友達と遊んでいたら突然光に包まれて違う世界に来たんです』
【悪いが現実は変えられぬ、!いずれわかる筈だ、これは俺の予想ではあるが聞くか?後悔する事になるやもしれぬ】
何かヒントになる事を知っている様な素振りにタツタカは小さく息を飲み込んだ
真実ではないにしろ近い情報を聞くのが恐ろしく怖いのである、彼の耳に入る情報は全て悪い意味が多い
帰れるという良い言葉が一切ないんだよ、となれば目の前で朽ち果てようとしている粘龍ウパル・パールの口からも同じ言葉が出る筈だと彼自身気づいている
それでも効かなければいけないタツタカは何回も深呼吸すると小さく頷いた
ウパル・パールはそれを受理したと思い、飽く迄の憶測を口にした
【人の肉体は一度消滅してしまうと生命魔力となるのだ、そこから前世の記憶を消して新しい人生を人は歩みだすのだが転移という失われた太古の術もそれを利用した術である、別次元の生命を運ぶ時に肉体のままでは無理だ、だから一度肉体を強制的に生命魔力に戻して運ぶのだが・・・】
次に放たれた言葉は俺でも驚いてしまったんだ
【お主はきっとこちらに来るときに死んだ、この世界に来る前に貴様の生命魔力が移動に耐え切れず一度死んだと予想している、となるとお前はこの世界にこの世界の人間として生まれたのだ・・・死んだ場所は元の世界ではなく死んだ場所から一番近いこの世界で新しく生まれ変わったのだ、お主は人の腹から生まれたのではなく、神の作った職によって偶然生まれた誰の子でもない存在・・・貴様は自慢の魔力無限を使ってテレポートで転移し、元の世界に帰れないのは何故だ?】
タツタカは何をいえず目を見開いたまま固まっていた、反応すら見せない彼に向かって粘龍ウパル・パールのは間髪入れずに話し続ける
【太古の転移術は確かに召喚した人間を数年間の期限付きで呼ぶことが出来る、時が来れば強制的に元の世界の戻れるが貴様は無理だ・・・この世界の住人として生まれたお前がどこかに飛ばされるような類の強大な術は神でも使えぬ!テレポートで行けぬならば時間軸がまったく違うという証拠!時間という懸念は神ですら覆せぬ絶対的な存在なのだ!】
それでもタツタカは無表情でジッと粘龍ウパル・パールを見続けた
傍らではギュスターヴ・ハデスの姿をしたゾロアは何となく悲しそうな面持ちで彼を見ている様にも思える
前にもシルバが俺の頭に話しかけてきた言葉でもヘルトは帰れないと言っていたな
(つまりテレポートで変えれないならば単純に時代が違う世界から来たわけか)
一度はタツタカも試したはずだよ絶対、でも彼はここにいる
タツヤとリキヤそしてマイはその時代に戻る道をマーキングした状態で来たから彼らは召喚扱いなのだ、召喚術は一定時間魔物を呼んで戦わせる術だが長時間は無理なのだ、死ねはその場で死ぬし一定の時間が来れば強制的に送還されるが3人はそれと同じ
ただ呼び出すために巨大な魔力を使って召喚されたためにこの世界じゃない別の次元まで召喚の信号が彼らの世界まで届いて呼び出されたんだろう
だがしかし、タツタカはその移動の最中に生命魔力が耐えきれず死んだ
3人が帰っても彼だけ残ればウパル・パールの言葉にも真実味が増す
『嘘です』
タツタカがようやく口にした言葉は弱々しい
口に力を入れて彼は体を小さく震わせると一度深呼吸をし、再びウパル・パールに言ったんだよ
『僕は帰ります、父さんや母さんそして妹がいる…あっちに家族がいるんだ』
その言葉にゾロアは俯いた
タツタカはウパル・パールを睨むようにして見つめているが決して彼は認めないだろうな、誰でもそうだ
家族の元に帰れないと今俺が言われたら発狂しそうになりさ
父さんや母さんそしてルッカに会えないとなれば死んだ方がマシ
ナッツの食い意地もグスタフの脳筋も見れないしルルカがグスタフに見せる好意アピールを見ることもだ
生きている意味を失いたくなると同時に俺は無性に家族や好きな人に会いたくなる
【認めよヘルト、魔力無限の貴様が出来ぬならば誰もできないのだ…俺も帰れたヘルトは今まで聞いたことがない】
『こっそり帰ったんですよ』
【あり得ぬ、ヘルトとは世界が意識する人間の勇者だぞ?隠居しながら帰るなど到底無駄…帰れたというヘルトなど我は聞いた事が無いぞ】
『きっと帰ったんですよ!!!』
強めに彼は叫んだ、藁をもつかむ思いとはこの事なのか
僅かな希望を一代目であるヘルトに託すがそれは一瞬で砕け散ったのだ
【一代目ヘルトのビビはまだ生きてこの世界にいる、となると誰一人もな…ヘルト最強であるあのビビがだ】
ゾロアとタツタカは大きく驚きを顔に浮かべる
生きているのを初めて知ったからだろうが俺はまだ言っていない
それなのにこの粘龍ウパル・パールは俺の反応を見て直ぐに勘づいた事を口走り出した
【そこの銀の人間は知っているようだな?今奴は何をしている?】
バレたのだ、頭が悪い龍でも何故かこんなタイミングではよく俺を見ているな
タツタカとゾロアは共に強い目を向けてこちらに振り向くがゾロアが怖い、ハデスのまま睨まれた俺は多少鳥肌が立つが話さないと話が進まないしタツタカが求める次の目標が出来ると思って俺は話したんだ
『赤い死神エレドラ、ルーカストアの国が存亡の危機に直面すると現れる国の最終兵器に俺は出会ったが十天の第2位だったし彼が羽織っている赤いローブにはタツタカの世界の文字で天と漢字で刺繍されていた』
そこで話終えるがまだ耳を傾けている、話し続けろということか
『俺は彼と話したんだがビビと同じ口調だし体つきもまだ幼かったよ、ローブを羽織ってフードを深く被っていたがそれでもわかる…奴はルーカストアにいる』
魔王の側近がいることは彼らには教えていたが俺はそれがビビらしき人物からとちゃんと話していなかったらしい
話したと思ったんだけども勘違いだったか、
頭を掻いているとウパル・パールが最後に話し出したのだ、その声に皆再び龍に顔を向けた
【なるほど、ならば小さきヘルトよ…わかるな?】
タツタカはその言葉に小さく頷くが会うと決めたんだな
最後の頼みの綱である彼にだ
だけども俺はエレドラが口にした言葉が心配だった
彼と会うと彼は悲しむ
ナラ村で遭遇した時にはタツタカとの接触を遠回しに拒んでいたんだ
だとすればウパル・パールの予測とエレドラの話がなんとなく繋がる
最悪な事実を知ることになるからだ
中間に挟まれた感覚に俺は歯痒さを感じる、だが俺はこの時悪い選択を選んだ
エレドラがタツタカに会いたがっていない事を黙ること
それはゾロアならば直ぐにわかるだろうな、エレドラがビビだと俺は強い予測を口にしたがその存在がタツタカに会いたがっていないし会えば悲しむと知ればきっと良い答えが返ってこないと直ぐにバレる
それならばせめてその探す時間だけでも僅かな希望を持って欲しいと心に秘めた
(俺は最悪だな)
居たたまれない、タツタカはこの世界での友人なのに知る情報を全て言うのが怖い
彼は普通の人間であり俺たちと違って戦いを知らない状態でこの世界に来た
なんて言葉を送れば良いのか?外野からしてみれば話しても良いのではないのかと思うだろうが俺は外野じゃない
誰にも伝わらない悩みが俺の心を埋め尽くすがそんな不安を顔に浮かべると視線を感じて俺は顔を上げた、気づかないうちに俯いていたんだな俺は
顔を上げた先には目を細めてこちらを見るゾロアだ
俺は酷く緊張した、見透かされていると思い息を飲むとゾロアはそのままウパル・パールに視線を向けた
【もう俺も終わる、行くがいい…良い時を見た…その希望を死ぬまで消さないからこそ見出だせるやもしれん、ゾロア…ついてやれ】
『言われずともそうするわ馬鹿め』
【くふふ…楽しかった】
最後にそう念を飛ばしたウパル・パールから気配が消えた
死んだのだ、呆気ない言葉を残したが未練は無いようだ
タツタカは首を回しながらも深呼吸すると俺に向けて真剣な眼差しを送る
何を思っているのか、考えるのも非常に億劫だがそれでも彼はどんな情報でも手にする覚悟を持っているのだろうな
ゾロアは刀を地面に指すと腕を組んで此方に顔を向ける
二人からの視線が俺に緊張をさせてくる
『ルーカストアの守護神的な人が赤い死神エレドラで間違いないのですね?』
タツタカが悪ふざけのない真剣な口調で話しかけてきたがその情報はゼリフタル国王からこっそり聞いた事でもある
『ルーカストアの王族しか知らない極秘裏な情報だよ、あの国が存亡の危機に直面した時に現れるらしいがそれとは別にナラ村にあいつは現れた、このディロア王国の事に助言したのが彼だ』
『魔王の側近二人を教えてくれた事ですね?』
『そうだ』
俺は気難しい顔をして会話をしているとタツタカがふと口許に微笑みを浮かべた、このタイミングでその表情の意味がわからない俺は軽く首を傾げたがそんな俺を見てタツタカが近くの瓦礫に座り、話し始めたのだ
『本当に貴女と出会えて僕は良かった、ゼリフタルと関係のない頼みだというのに貴方は仲間までも連れてきてくれた…彼らがいなければじり貧です、いくら僕がテレポート出来ても体は一つ…ゾロアさんもしかりです』
『……俺は友人として頼みを聞いただけだぞ』
『それですよ、あなたは身内に優しい…誰かのために死ぬか生きるかよりも動く事をやめれない人だ、そして隠し事が下手です』
『何が言いたいタツタカ』
『言いたくない事まだ隠してますね?顔に出過ぎですよ…ここまでしてくれた、あなたはまだ僕たちの事を考えて悩んでいる、大丈夫です…あなたは背負わなくても良い、僕が背負う問題です』
バレていたか、隠し事が下手とはルッカにもよく言われたな
俺も近くの瓦礫に腰をおろした、口にするのが怖い
だが、彼は背負わなくても良いと言うのだ
果たして良いのだろうかと思っているとゾロアが口を開く
『銀狼よ、全て顔に書いてるぞ?何をエレドラと話した?タツタカに話しにくい事を言われたんだろうがそれは間違った優しさだ』
『間違った?』
『こやつは背負う覚悟を持っている、もう子供ではないのだ…こやつを思うならば先に進むためにお主から言え』
俺は一息つくとタツタカに視線を向けた
彼の体は震えていたがそれを俺はトドメをさした
『エレドラは確実にビビだと思う、そんな彼はタツタカに会いたがっていない、悲しむだけだからと俺に言ったがそれはきっとお前が元の世界に帰りたがっているのを知っているからだが……お前は帰れないタツタカ』
彼を見続けるのが辛いがそれとは予測外にもタツタカは深呼吸すると背伸びし始める
そのまま真っ暗な空を眺めている、そんな静寂が永く感じるが実際は数秒程度
俺には数分と勘違いしたくなるほどに、タツタカは小さな声で話し始めたのだ
『帝国でナッツさんの実家で飲み食いしましたね、その時ジャフィンさんとゾロアさんが席を外して外で話していた内容を僕は聞いていたんです、この黒いローブは隠密スキル付与なんであのときの二人は気づかなかったでしょうね』
※第9章 ベルテット帝国平定戦 19話 人族の繁栄を背負った者
驚いた、確かに覚えている
話し終えた後にタツタカに会話したときの反応も少し可笑しかったがお前は聞いていたと言うのが、どうやらその事はゾロアも初耳のようだ
彼の真っ白な目が大きく開いているからだ、ゾロアはどうしようも出来ずにそのままうつむく
依然としてタツタカは静かに話し続けた
『僕は死んでる死んでると何回も言われると流石にそうなのかなと思いたくなります、でも帰りたいんです…家族に会えない辛さがわかりますか?いきなり訳のわからない世界に呼ばれたら急に国に裏切られる気持ちがわかりますか?』
タツタカは
小さく蹲っていた、座ったまま両膝に顔を埋めた彼は震えながらも言いたいことを疲れるまで言い出したんだよ
『孤独って未来が無くなるんですよね、この国から逃げてから僕はエイミーが近くにいてくれたから自我を保ってたんだと思います…彼女は誰かがそばにいるという温もりをこの世界で教えてくれた、そしてゾロアさんが何故か取り柄のない僕についてきてくれた、剣術の訓練は辛かったけどそれでも生き抜くために僕にこの世界の生き方と覚悟を教えてくれました…どちらも当たり前な感情があれば持っているものを僕はこの世界に来ていつの間にか失っていた、それをまた教えてくれました』
『タツタカ』
ゾロアは小さく囁いたが彼の顔は今までには見た事もないくらいに悲しそうな顔をしていた
元黒龍から転移し、ディラハンからトーリスリッターそしてギュスターヴ・ハデスという絶望の固まりというか神になった彼が悲しみを顔に浮かべているのが俺は一番頭に強く残るだろうな
人に対する感情なんて魔物にはない、ある者は愛嬌があるという動物を見るような目だと俺は思っていたが彼の反応は全く違うのだ
タツタカは瓦礫に座った状態で両膝に顔を埋めて話し続ける
『ゾロアさんがなんで僕なんかについてくるのか意味が分かりませんでした、だって右も左もわからない人間をなんで世話をしようとしたのか僕はわからなかったけども僕はそれをずっと単なる気まぐれだと思ってたんです』
『違う・・・俺はお『知ってますよ、大丈夫です』』
ゾロアが否定しようとするとタツタカが言葉で遮る
彼は深呼吸を2回するとずっと話し続けた、俺達は聞いているしかないのだろう
ならば聞こう
彼の話し相手になれると言うのは大きい事だ
『抜けている僕をまるで弟の様に接してくれました、世話焼きなんですよこの人』
ゾロアは少し微笑みながらその場に胡座をかいて座る
こいつは俺でもわかるよ、こいつも色々苦労する側の人間であり今回のディロア大戦争では興味のない者達の為に先の事を考えて魔族側の主力を殆ど倒すような作戦を考えてくれたんだ
人族など彼は全然興味ない筈なのにだよ
タツタカとゾロアは本当に良い関係なんだと俺は深く感じる事となる、彼とタツタカがいるから出来ることが増えたがそれをくれたのは紛れもなくゾロアである
そしてゾロアもタツタカから色々な物をもらった、そんな彼は帝国の件で俺に言ったんだ
タツタカの時間が許す限り自身は彼の傍にいようとな、彼の悲しみも背負うと
俺はタツタカに言葉を送ろうとしたのだがその前に彼が先に口を開いた
『でも僕は帰れないんですね、だからゾロアさんはここに居ても寂しくない様に家族の様に接してくれた・・・確かにここに居ても僕は1人じゃない、それを与えてくれたのはゾロアさんです・・・あっちの僕の家族はいますがこちらにもこんな僕の為にそうなろうと頑張ってくれてる人がいる、でも・・・・』
『タツタカ』
彼は体を大きく震わせながら先ほどまでの声よりも大きめに彼は言い放った
『いきなり呼ばれていきなり追われた僕がどんなに辛かったかわかりますか!泣きたくなればなる程に僕は帰りたくなったんですよ!嫌な事が続けば人は一番幸せな時間を思い出して誤魔化すんです!家族に何度も会いたいと思いましたよ!なんで友達が帰れて僕が帰れないんですか!生きてますよ!死人に見えますか!?』
『タツタ『家族にさよならすら言っていない、行ってきますが最後の交わした言葉ですよ』』
感情が高ぶっているのだろう、タツタカの体からは魔王でも絶対できないだろうなと思うくらいの魔力が溢れるとそれは空に昇り始める、青い魔力が山火事の煙のようにユラユラとだ
握る両手に力を入れたタツタカは顔を見せようとはしないは見たいと俺は思わない
『今は帰る手段が皆無だと僕もわかります、でもゾロアさんは旅の道中ふらりと自由行動しながら情報を探してくれていたのを僕は知ってました・・・紅茶を買いに行くと言いながら長い時間帰らない時は街の図書館で時間軸と転移に関しての書物を読み漁っていることも』
『!?』
ゾロアは目を見開いて驚いたが彼も枠な事をするんだな
密かに見えないところで誰かのために動く男ってモテるんだとなぁ
流石ゾロアだ、次第にタツタカの溢れ出す魔力も小さくなるが感情がようやく落ち着いてきたのだろう
するとゾロアは立ち上がり、刀を肩に担いでタツタカに近付いた
まるで見下ろすかのような距離まで近づいたゾロアは目の前で悲痛な叫びを口にする彼に話しかけたのだ
『今は無いだけだ、諦めるな!お前は頑張った、帰れるその時まで俺とエイミーが傍にいる・・・刺激が欲しくなったら銀狼の元に遊びに行けばいい、今の貴様を歓迎してくれる者達はいるのだぞ!それは俺のおかげじゃないぞ!お前がそこまで頑張ったからだ!ビビが帰れないとてやつも人間だ!きっと知りえない情報はこの世界に沢山ある・・・今は感情を爆発させてもいい、我々は何度でも聞いてやる・・・・だが泣いても倒れても前を見る事だけはやめるな!』
『僕もいるよぉ・・・』
ケサラがゾロアの下半身の甲冑の隙間から顔を出して口を開いているが本当にそこに入ってて怪我しなかったのだろうか?かなりの激闘を先ほどしたんだよな
まぁいいか、するとタツタカがようやく顔を持ち上げたが鼻水が凄い、伸びているけども両膝に顔を埋めていたから仕方がない
ゾロアはそれを見て不思議そうな顔を浮かべると直ぐに咳ばらいをしてしゃがんでからタツタカに言い放った
『今は帰れない・・・それは認めろ、だがそれは今だけに過ぎぬ!見つけるぞタツタカ・・・だれも全てを知っている者などいないのだ』
『そうですね』
タツタカは涙を拭い、鼻水をすすった
一時のストレス発散だったのだろう、ゾロアはスッキリしたか?とタツタカに言うと彼は笑顔で返事をしたんだ
相当彼は溜まっていたんだ、モヤモヤがずっと肩に取り付いているって感覚は俺もわかる
今の状態ではタツタカは帰れないがそれは飽く迄今である、この先ずっとなんてないのだ
俺は瓦礫から立ちたがるとゾロアも立つ、それに同調してタツタカも目を腫らしたまま立つと俺とゾロアは変わった気を感じて後ろを振り向いた
いきなり気配がしたが振り向くとそこには1人の女性が驚いた顔を浮かべてたたずんでいる
てか可愛い女性だっ!!!!水色の長い髪は肩まで伸びているし顔が小さいし服装はどこかの御姫様みたいに可愛らしい
16歳くらいだなと一応警戒をして彼女を見るとタツタカが大きな声を出したんだ
『エイミー!?!?!?』
俺とゾロアは顔を合わせて目を大きく開き、驚く