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【完結済】槍の新兵は夢を見ない  作者: 牛乳太子
14章 ディロア大決戦 涙を流す勇者に黒騎士は決意し、少女は想う
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53わ きみはきらーい


『僕は龍で君らは人間、ならばどう足掻いても勝てないよ?』


丸い瞳を鋭く細くしながらそう俺達に囁いた

タツタカも俺もその言葉に気難しい顔を浮かべるが確かに俺達は人間でありこいつは龍、それも俺が知る限り一番完成された龍

だが魔物ランクA+の黒龍であった昔のゾロアはこのSランクの粘龍ウパル・パールに勝って十天の第4位に君臨しているという事になるがそれは彼が知能を使って下剋上の様に格上のこいつに勝ったんだと思う


知能以外は粘龍が上だとゾロアは先ほど俺達に言っていた

これが完成されたSの龍、納得いく強靭な体に殺傷能力が高い攻撃を持っているが龍の中での防御力は無い方というのも龍の中ではという意味で捉えると本当に龍種はとんでもない化け物だ

ビタンビタンと尻尾を地面に叩きつけながら獲物を狙う獣の様に姿勢を低くしているがいつ突っ込んくるかわからない

ハルバートを構えながら警戒心を高めると隣にいるタツタカが足を震わせながら話しかけて来た


『Sは久しぶりですが慣れない威圧放ってきますねぇ』


『他に戦ったのかお前?』


『虫神に遊ばれました』


『・・・』


深く聞かないでおこう、お前でもあいつは駄目だったか・・・

まぁいいか、俺達とウパル・パールの距離は50m先であり周りの状況としては辺り一面建物が崩壊して更地に近い状態と化しているが先ほどの酸の雨でかなり酷く溶けている

何でも溶かすのは流石に逃げるしかあるまい、タツタカと構えをとっているとウパル・パールの背後からゾロアがゆっくり歩いて近付いてくるがそれを感知したウパル・パールは軽く後ろに視線を向けて彼に話しかけたんだ


『人間はいいけどさ、君は厄介だね』


口から舌を出すがとても長い、5mあるその下で自身の顔を舐めまわしてゾロアを横目気味に捉える

俺達に油断している証拠でもある言葉だがそれでも大半は事実に近い事が悔しい

するとゾロアは首を傾げて龍に答え出す


『厄介だと?ふざけるな馬鹿龍が・・・死の精霊神を舐めるな!!!』


ゾロアは肩に刀を担いだままウパル・パールに走り出したが俺でもその速度はギリギリ反応できるかどうかの世界、それでもSランクの龍は普通に反応できるのである


『僕の方がまだ早いお』


粘龍ウパル・パールは地面をニュルリと這うようにしてゾロアに襲い掛かる

一瞬で2人は互いに目の前に捉えると先に動いたのはウパル・パールだ、ゾロアの目の前で体を半回転させてご自慢の尻尾を水平に振りつける鞭のように大きくしなるその尻尾は軽く音速を超えているし常人に反応できる速度とは思えない、どんな攻撃も規格外な速さだ

だがしかし相手はゾロア


彼は肩に担いでいた刀を真下に振り下ろして襲い掛かる尻尾を刀の刃の部分でぶつけて地面に叩きつけたが彼の刀でも容易にその尻尾は切断できないらしく物理攻撃と化す

振り下ろした勢いを活かして前方に縦回転したゾロアはそのまま回転が終わると同時にウパル・パールの頭部に全力でかかと落としをした


『へぶっ!』


間抜けな顔をあげる粘龍はズドンとゾロアのかかと落としを頭部に受けてしまうも堪えながら両手を使って蚊を叩く様な感じで彼を押しつぶそうとしたがその前にゾロアは直ぐ違う足でウパルパールの顔面を蹴って後方に飛び退いて離脱したんだ

ウパル・パールの攻撃が空振りに終わるが奴はそのまま口から絶対零度ブレスを即座にゾロアに放った、こちら迄その凍てつく寒さを感じる程に強力なそのブレスは宙に浮いているゾロアを捉える

白く綺麗なブレスがゾロアに向けて口から放たれると粘龍はニヤついた様な目をしながら彼に言った


『浮けば無理お』


『誰が避けるといった?』


ゾロアは直ぐに返事をすると目の前まで迫った絶対零度ブレスを刀でたたっ斬った

するとその斬撃によって龍のブレスは二つに割れてしまいゾロアの左右を通過するようにして奥に飛んでいく

流石にウパル・パールも予想外だったらしく目を見開いているがその隙にゾロアは刀の剣先を彼に向けて着地すると技を放った


『絶技・鬼享楽』


刀の先から両手に大剣を持った鬼が現れたが俺は本以外で姿を見たのは初めてだ

灰色の筋骨隆々とした3mもある2体の鬼だが手足の爪が鋭く頭部には小さな2つの角が生えている

ウパル・パールに襲い掛かるその鬼2体は粘龍に近付いて両手の持った大剣を×の字を書くようにして同時に攻撃を仕掛けるが龍は直ぐにブレス攻撃を止めて口からあの紫色の弾を2つ飛ばしたんだ

鬼の攻撃が当たる前にその紫色の弾は鬼2体の体に当たるとガラスが割れたかのように破裂し、内部の紫色の液体が飛び散る


これは強力な酸の液体であり鬼2体は直ぐにドロドロに溶けて姿を消してしまうがあまりにも溶けるのが早い、まるで雪にお湯をかけたかのようにである

しかしそれはフェイクの攻撃でありゾロアは直ぐ後ろから龍の体を斬りつけるために追従しており、刀を振って攻撃を仕掛けたがウパル・パールも彼がいる事は知っていたため尻尾で体をガードする

尻尾にも粘膜の様な液体がついており、斬ると言うよりは滑るようにしてゾロアの刀はズルリと外に受け流されるが彼の真上からは水掻きの様な手でウパル・パールが叩きつけようと手を振り下ろす


『小癪な!』


ゾロアはその叩きつけを刀を両手で持って上に向けて受け止めた、彼の足場が少し沈んでいるがそれほどまでに重たい攻撃なのだ

変わった鍔迫り合いとなるがゾロアはそのまま奴の手にもついている粘膜を利用して横に滑らせてから横から迫る尻尾に刀の剣先を向けた、するとそこでようやく奴にダメージらしき攻撃が入ったのだ


鍔迫り合いの際に尻尾で薙ぎ払おうとした粘龍ウパル・パールだったが尻尾の払う攻撃を利用されてしまい待ち構えていたゾロアの刀に深く突き刺さったんだ、刺さった場所から青い血が流れるがこいつの血が青いから外見が綺麗な青色であるとこの時俺はわかった


『馬鹿めが!昔と変わらんな!』


ゾロアは刀を抜くと直ぐにその場から離れる

ウパル・パールが苦痛を顔に浮かべてゾロアがいた場所に紫色の弾を数発口から飛ばしていたからだ

残念ながらそこにゾロアは既におらず、ただ地面が容易く溶ける光景だけである

ウパル・パールは痛そうな面持ちを見せながら貫かれた尻尾を下で嘗めながら俺達の前まで退いたゾロアを見つめて口を開いた


『痛いお!』


そりゃよかったが俺も結構痛い、ガルドミラの爆発する連続の突き攻撃の酷いやけどがまだ顔半分を覆っているし先ほどの空気の圧縮弾を受けてしまってかなりのダメージが入ってしまったんだ

あれをもう一度と直撃すればきっと動けない、体の状態も急激なダメージのよる震えがおさまっているから俺も動けそうだ


『ちゃんと動け銀狼』


ゾロアは刀をウパル・パールに向けながら後ろ歩きで俺達の近くまで歩み寄るとそう口を開いた

だが視線は決してあの化け物からは話していない、敵も刺されたことによって警戒を高めて直ぐに襲ってはこないらしいがそれを知ってゾロアは俺に話しかけてきたのだ、俺はわけがわからずハルバートを構えたまま首を傾げると彼は俺が気づいていなかったある事を口にしたのだ


『貴様は予見スキル持ちだろう!見てから避けるな!来るとわかって身構えるのならば意味は無いぞ、来ると感じるから強引な先手が取れることを忘れるな!それが予見の真骨頂・・・先ほどから敵の攻撃を見てから回避しているが宝の持ち腐れだぞ、動く前に動け!さきほどから後手後手ではないか!だからあのような単純な攻撃で貴様は吹き飛ぶんだぞ』


俺は確かに彼の言葉に言い返すことは出来ない

来るとわかっていつも身構えていたんだ、予見があるから避ける準備ができると勘違いしていたんだな

攻撃してくるとわかってて待ち構えて避けるのであれば予見が無くても出来るからだ

気持ちの準備のために俺は使っていた、それくらい警戒をしていれば予見じゃなくても問題ないのである

予見スキルというレアなスキルをどうやら穿き違えていたんだな俺は

避けるための最高峰の予見スキルは他にも使えることをゾロアは口を開いて教えてくれた


『予見とはカウンターの極意だ!避けることに特化してるのではないぞ馬鹿が!今目の前にいるこいつみたいに決して隙を見せない化け物相手に隙を意図的に作りだす・・・・今それを覚えろ!じゃないと倒せんぞ!!!俺だけでは無理だ!!!』


少し苛立ちを威圧に乗せて俺やタツタカに飛ばしてくるが十分にその気迫は体に伝わってくる

俺の体がビリビリとゾロアの威圧によって小刻みに震えているんだよ、こいつも堂々としたSランクの魔物だからな・・・お前でも手に余る相手だと言うのか


『ジャフィンさん、頼みますね』


タツタカが足を震わせながら小さく会釈をしてきた、すると彼はパッとその場から消えてウパル・パールの上空に現れたがいきなり消えたタツタカに龍は驚いて辺りを見回すが残念ながら真上である


『それなんだお!?』


龍はわけがわからずそのまま体から唐突に衝撃波を飛ばすが空にいるタツタカには届かない

だが俺やゾロアには届くが前にいるゾロアがその衝撃波を斬り裂いて守ってくれた、こいつ凄いな

俺は助かったが周りの瓦礫は容易く吹き飛んでいき更にこの場は更地に近い状態となる


テレポートしたタツタカは浮遊が出来ないので何度も近くをテレポートして落下しない様にするとそのまま真下の龍に向かってヘルファイアを雨の様に降らす

それによってウパル・パールも上にいると魔力感知で気づき、翼を広げてそれをガードに使うと同時にヘルファイアの雨が降り始めた、だがしかし彼の体の粘膜のせいなのかどうかは定かではないがタツタカの振らせるヘルファイアは蒸発した音を出して火が消えてしまうのだ、フレアよりも威力が低い事もあり流石にダメージが通らないようだがその隙に俺は銀彗星で一直線に飛び出した

行こうと思ったわけじゃないが今しかないと勝手に体が反応したのだろう


ヘルファイアの雨を振っているというのにわざわざその雨に飛び込んでいく


『知ってるお』


翼で真上をガードしていたウパル・パールはこちらに視線を向けた

その瞬間予見が発動して尻尾で薙ぎ払われると感じて顔を龍に向けたまま尻尾を俺は捉えた

まだ振ってこないがそれよりも先に俺はタツタカのヘルファイアの雨を掻い潜りながらウパルパールの目の前に辿り着く前にハルバートを右側に振ったんだ

するとどうだろうか、ジャストなタイミングで俺の右方向から奴の尻尾が襲い掛かってきてハルバートと衝突する図になったんだ

避ける為の予見スキルかと思ってはいたがそうではないんだな、敵が攻撃してくるならばそれを先手に使えとゾロアは言った、避けるために使うとそれは後手になる


後出しじゃんけんで勝つことが出来るから予見スキルとは恐れられているのだ

その意味を今俺は知る


『えっ!?』


俺がハルバートを振るのと尻尾が来るのはほぼ同時となればこの勝負は俺の武器次第となる

確かにこいつの皮膚は頑丈だ、というよりかはぬるぬるしてて滑るといった方が納得も良く

でもハルバートはインダストリアルゴールドだけで作られた最強の戟でありこれに斬れない物質は存在しない筈なんだよ

途中で止めれない尻尾に向かって俺は全力でハルバートをぶつけた


『ぬぉぉぉぉぉぉ!!!』


大声が口から出るが俺は本気なんだ、じゃないと死ぬ

答えは直ぐに目の前で起きた、尻尾の先ではあるが俺はこいつの尻尾を切断する事が出来た

切断された部分から青い血が飛び散る、それによって赤子の様な高い声で叫び出すウパル・パールだが痛みを感じながらも次の奴の攻撃が俺の頭をよぎる、大口を開けてくるがこれは絶対零度ブレスだ



俺は少し怖いと感じている、今予見の使い方を覚えろと言われてもこいつ相手にそれは無謀と思えるからだ

一つ間違えれば即死確実な距離で間違いは絶対出来ない

だが自身の魔天狼の性能を信じて戦うしか生き残れないだろうな、ハルバートを手に入れといて正解だったとしみじみ感じるよ

俺は降りしきるヘルファイアが止まったと気付きながらもウパル・パールが顔を上げて大口を開くのを知っていたので奴が痛みを堪えて動き出すのと同時にシルバ・シルヴァを発動しながらハルバートを押し込みながらとある技を使うことにした

爆発的に身体能力が向上した状態でのこの技はたとえお前でもノーダメージなんてありえない


ましてやシルバ・シルヴァを発動した状態ならばな


『銀狼乱舞!!!』


叫んだと同時に粘龍ウパル・パールは大きく口を開いた

俺のハルバートから数えきれないほどの銀狼が前足の爪を突き立ててその大口を開けたウパル・パールに襲い掛かった

凍てつく寒さを感じるがそれだけならばまだいい、俺の技によって銀狼の群れがハルバートの先から飛び出すとそれは龍の口内を切り刻み始めた

流石に外皮ならばどうなるかわからなかったが口の中は意外とデリケートだろうな

余りの激痛に鳴き声を上げながら口を閉じるウパル・パールは口元から青い血を大量に流しながら鬼の様な形相で俺を睨みつける、尋常じゃない威圧を感じるがビビッている暇なんてどこにもない


あの衝撃波が来るとわかるとゾロアの真似が出来るのだろうかと思いながら技を止めてハルバートを盾に振ったのだがタイミングはバッチリであり、振ると同時にウパル・パールの体から先ほどの衝撃波が放たれるがそれを斬って2つに割る事が出来た


『がばば!?』


驚きを顔に浮かべているが口内がズタズタにされているために口を開くのが難しいらしい

声になっていないようだな

斬り裂いた衝撃波が俺の左右を通過するがそのまま銀閃眼の強化弾を奴の図体に向けて全力で撃つと強烈な炸裂音が辺り一面に響き渡り、俺は後方に地面を滑る様な形で吹き飛ぶが距離を取ると言う点ではこの特殊技は成果である


『ぶへっ!』


俺の銀色の右目の前から撃たれたその強化弾は見事に巨躯である粘龍ウパル・パールの胴体を撃ち抜きながらも彼は後ろにドスンと倒れる、あまりの威力に体が持っていかれたんだ

それは見せてはいけない隙だと誰でも理解できる、俺の横から即座にゾロアが通過し前に走り出す


『よくやった銀狼!!』


ゾロアが軽く称賛を口にしてくれたが素直に嬉しい

そしてタツタカも俺の横から出てくると言葉はこないが親指を立ててニコッと笑ってくれる

その間にも立ち上がろうとぐるりと体を半回転させて立ち上がるウパル・パールだが既に彼の目の前にはゾロアがおり


彼は刀を使って一瞬で奴の顔面を切り刻んだ

多くの斬撃はその外皮の粘膜によって滑ってしまったものの、数か所は偶然にも斬ることができて青い血が飛び出すと龍は顔を抑えながら翼を広げて空に舞い上がる

ようやく初めて龍らしく空を飛んだがウパル・パールは更に高く飛ぶと大きな声で不器用にも口を開いた


『ゆずばばい!ぜっだいびゆるざばい!!じべ!』


話と奴の口からビチャビチャと血が噴き出るが話すだけでも痛い筈

タツタカがテレポートでウパル・パールの更に上に現れると真下に向かってフレアを撃ち放つ

即発動できることにより魔力の流れを感じて上に視線を向けた時には既にその放火のブレスの中に粘龍は飲み込まれていくが大きく翼を羽ばたかせて何とかそれを吹き飛ばすと同時に俺はハルバートを地面でウパル・パールのの方に向けて突くと狼撃破を5頭出現させて奴に飛ばす


効かない事はわかっていたがせめてもの意識逸らしでありウパル・パールの背後には高く跳躍したゾロアが刀を振り上げて襲い掛かろうとしている

その間タツタカは俺の隣に転移して逃げてくると2人で上空を見上げる、ウパル・パールのは俺の技なんて気にもしないで背後にいたゾロアに直ぐ振り向くと右手で叩こうと腕を振る

このタイミングで俺の狼撃破が奴の背中に当たるが少しバランスを崩した程度であり効いていなかった


『昔から君は僕を馬鹿にしてるお!』


『馬鹿だからな!!』


そう互いに会話をしながらゾロアは彼の腕を刀で弾くとそのまま彼も口を開けて技を撃った


『オーガブラスター!』


灰色の太いブレスがゾロアの口の前から解き放たれるとウパル・パールは顔を後ろに反って回避した

そのまま奴の尻尾が下から振り上げられると技を撃っていたゾロアは回避が遅れて真上に吹き飛ぶが直ぐに体をくるりと回転させて下に視線を向ける


俺はタツタカを共に追撃しようと決めるとともに動き出した

彼はテレポートでウパル・パールの側面につく、俺は銀彗星で背中からだが隙があるようにまみえずまるで後ろも見られているかのような感覚を覚えた

ゾロアは俺達が来たことを瞬時に悟るとそのまま真下に勢いよく落下しながらも刀を粘龍に向けて突っ込んだ


3方向と知るや否やウパル・パールはそのまま一気に地面に降りながら口を上に向けると紫色の弾を無尽蔵に口から飛ばしてきたが俺は来ることが分かっていたために撃つ前にシルバ・シルヴァを起動してから銀彗星で一気に奴の近付いて狼剣斬を発動させた

ハルバートの先が狼気で固められて剣の様に長く伸びる、リーチが長くなったがこれで容易に貫けるはず


開いた口に向かって狼剣斬でリーチが伸びたハルバートを押し込むと寸前で奴は口を閉じて真剣白刃取りの様に危機を脱した


『なっ!?!?』


驚きを顔に浮かべるとウパル・パールのはニヤニヤを俺に見せてくる

直ぐに狼剣斬を解除して口から抜くと同時に奴の背中を何かが素早く通った、ゾロアである

彼は勢いよく落下しながらウパル・パールの背中を刀で斬ったのだがそれによって奴の背中から鮮血が飛び散るとゾロアはその場から堕ちながら離れる


『もー!ぎみだぢじんで!』


奴はそのまま真上に口を向けるとあの技を再び使ってきたのだ

アシッドワールド、流石にこれは避けるしか術がないと思ったタツタカは驚きを顔に浮かべながらも空高く放たれた巨大な紫色の球体を見て直ぐに転移した、ゾロアも舌打ちをしてからその場から離れるが俺は離れなかったウパル・パールが地面に直地したんだけども疲れているんだ



(龍なのに疲労を見せるのか?)


ゼェゼェときつそうな様子を見せるが本当だろうか

もしそれが事実ならば今休めさせるのは勿体ない、俺もそのまま地面に強い音を響かせて着地するとウパル・パールは目を見開いて俺を見て来た、逃げないという予想外な行動からの顔色だと思うがそのまま奴に襲い掛かろうと地面を強く蹴ったら空高く舞い上がった紫色の球体が炸裂したんだ


『ばがはぞっじだば!!じね!』


俺はそのまま雨が降る前に奴の懐迄銀彗星で潜り込むがシルバ・シルヴァ発動中の銀彗星ならば彼も反応が遅れる様だがこれを起動できるのは残り20秒、俺はなんとか数秒残して勝つしかないと思いながらも予見で見切っていた圧縮弾を口から撃たれるタイミングと合わせて強化弾を体に撃ち込んだ

当然圧縮弾はハルバートで斬り裂いたので俺はダメージは無いが撃った瞬間に動けなかったウパル・パールは口を大きく開いて強化弾に撃ち抜かれるとそのままゴロゴロと後方に転がりながら吹き飛んだのだが彼は直ぐに地面を手で掴んで態勢を整える


『もうおぞい』


言われた言葉の意味は分かる、俺の頭上数メートルには雨が落ちようとしている

触れた瞬間に人間なんて簡単に溶かすであろう紫色の細かい雨、こんな残虐な殺し方ができる技なんて趣味が悪い

ニタニタと笑みを浮かべるSランクの魔物に対して俺は首を傾げて銀圧を放った

するとどうだろうか、銀色の美しい衝撃波によってウパル・パールの紫色の雨を全て弾き飛ばしたのであるがそれだけじゃなく、なんと蒸発したんだ


あまりにも見たことがない光景に粘龍も血だらけの口を半開きにしているが

直ぐにキリッと目つきを変えて翼を何度も強く羽ばたかせた、強風というには生温い突風が辺りを包み込むが俺はすぐにシルバ・シルヴァを発動させたまま風がマシである空に跳躍してハルバートを上に差し込んだのだ


銀帝次元槍である、異次元からの攻撃が可能ななんとも初見殺しな技だが今使った方がいいと感じた

俺が上に突き出すとそこから円状の通り道が出来てそこに差し込んだんだ、行く先は勿論決まっている


『がぼっ!!??』


ウパル・パールの目が飛び出そうなくらい顔がヤバイ

俺は奴の首裏に向かってハルバートの次元移動先を決めていたのだ、刃の部分が半分まで深く差し込んだとわかりそのまま直ぐに引っこ抜いて技を解除してからシルバシルヴァも解除して地面に着地するとウパル・パールは腹部と首裏そして尻尾から出る血を確認して体を真っ赤に染め上げた

明らかにキレている、刺したというのにまだここまで動けることに心の中で彼を称賛した


尻尾の先端ではあるが切断したし強化弾も2発撃ち込んだ、ゾロアも刀で差してタツタカのフレアも何度も飲み込まれているのだがそれでも多少疲れているといった様子で動いているがこれが龍である

タフ過ぎるんだよこいつは

予見が直ぐに危機を伝えて来た、襲い掛かってくる!真っすぐ突進だ


『お前ぎらい!ゾロアぼおまえぼだ!』


言葉が終わると風を斬って奴が頭を前に突き出すようにして突っ込んでくる

俺は向かってくる突進に自身も向かいながら軽く跳躍して銀の爪を右腕に出現させてすれ違いざまに3つの爪を背中に押し当てて斬り裂いた


『みぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!』


突進の勢いを押し殺さずにそのまま転がる龍だが直ぐに着地してから振り向いて強化弾を撃つと奴はそれでも意識は俺から外していない様であり、腕を振ってあらぬ方向に弾き飛ばす

ゆっくりと立ち上がった龍の背中からはダラダラと血が流れているが今は赤い、怒ると血が赤くなって体が真っ赤になるのだろうなこいつ

ゆっくりと立ち上がるウパル・パールは威圧を大きく放ちながら何度も衝撃波を体から飛ばしてくる

何度もそれを斬りながら前に走って近付くと奴は翼を一度大きく羽ばたかせて強風を起こして俺のバランスを崩した


(やっべ!)


予見が感じる、丸のみしてくるけども背筋が凍り付きそうだよその攻撃

既に強力な威圧で体が震えそうだけども大分前より慣れて来たウパル・パールはジグザクに地面を滑るようにこちらに近付いてくるがタイミングをずらすつもりなのだろう

今俺しかここにはいないが数秒でゾロアはここに辿り着くだろうしタツタカは既に空にいる

彼は俺に視線を向けるとニコッと笑みを浮かべて小さく囁いたんだ


『最強ならいけますよ』


(俺はまだそうじゃない)


だけども彼がそういうのならばその変わった宿命を背負うしかないようだ

俺にはリヴィを倒さないと生きていけないのだから最強になるしかない、今その一歩をこいつで踏み出すんだ

魔天狼の力を使ってだ

一瞬、心を落ち着かせるとウパル・パールの動きがとても遅く見えた、Sランクの魔物でもこうなるんだな

確かに俺は相手の動きはスローに見えるがそれは勝てると思っている相手のみ、こいつには発動しなかったんだが理由としてはきっと心の中ではかなり必死だったからだ、Sランクに縮こまっていたからなんだけども今は落ち着いている


Sランクなのに遅い、這いずり回った後には奴の粘膜らしき液体が残っているがまるでカタツムリみたいだなと思う時間すらある

顔は不気味にも遅く体は赤い粘龍ウパル・パール、彼は俺の近くまで迫るとそのまま翼を羽ばたかせて突風を巻き起こして俺のバランスを再び崩す


『おっと』


後ろによろめいた隙にウパル・パールの大きく開いた口が視界一杯に移ると彼の声が聞こえた



『ぐいごろず!』


細かい歯が沢山生えているが血だらけだ、元から流れた血は緑色なので口内は緑色に染まっている

俺を噛み殺すといったが細かい歯ですり潰すの間違いじゃないだろうか?

大口が少し横に角度を向けて迫りくるが俺は食われる気はサラサラない






『食うのは弾でいいか!!!!!』


直ぐにシルバシルヴァを起動してから俺は銀閃眼の散弾を狼気一杯にして撃ち出した






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新作ですがこの小説を見てる人ならわかる部分が多い内容になってます 勇者ですが指名手配されたので逃亡ライフをはじめます
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