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【完結済】槍の新兵は夢を見ない  作者: 牛乳太子
14章 ディロア大決戦 涙を流す勇者に黒騎士は決意し、少女は想う
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42話 教会本部信仰戦 さよなら父さん

オーズーは













魔石でこのディロア王国より遥か南にある自分が生まれ育った村の母親に連絡をした

高価な連絡魔石を何故持っているか?彼はオーズー第6将校であり四魔将まであと少し迄の高みにまで迫った下級魔族からの出身であった

彼ほどの地位であれば高価な魔石は手にしているであろう、それを彼は故郷の母に片方を渡していたのである

ではなぜ彼がこんな大事な大戦争で母に連絡をしたのか?彼は薄暗く埃臭い部屋の中の机の下で母に向かって話し始めたのだ


『母さん』


『オーズー?どうしたの?怪我してないの?』


息子を労わる親の声が愛おしいと感じながらも彼は話した


『裏切り者の父さんを知っている人間と戦った』



















その昔

オーズー・ライオットは魔族の田舎村と言われるグルト村に生まれた

父の名はリクセン・ライオット

母の名はエンヴィー・ライオット

貧しい生活ではあったがそれでも彼らは小さな幸せを噛みしめて暮らし、家で生まれた我が子を胸に抱きしめてリクセンは誓ったのだ。

ここは彼らの寝室でありベットには母であるエンヴィー、そしてベットの横には助産師である魔族の中年女性が2名微笑みながら赤子を見ていた


『よく頑張ったエンヴィー、この子を気高き男の子に育てよう』


『そうねリクセン』


その子の名は直ぐにオーズーと命名されることとなるがそれは生まれる前から決めていた事

遥か太古の神の名前でオーズという者がいた、意味は激情

彼らはそれからというものの、二人三脚で大泣きする小さきオーズをゆっくりと育て上げていく

特に夜泣きが凄い子であり、疲れて寝るまで泣き止まないくらい彼らを困らせる程の者であった

だが昼になると夜とは違ってとても静かに昼寝をする子でもあった、スヤスヤと眠る我が子を撫でるとリクセンは村の村長でもあるため、早朝は村の倉庫に仕舞っている魔王のシンボルである鋭い目つきをした刺繍を施された旗を竹籠から取り出してから村の中心部である高台につけるのである

村には魔族兵が巡回の為に警備をしているが当時は癖の強いキャスバル魔将軍の兵達であり、職務はいつも体たらく


巡回をするというよりかはそこらで休みながらダラダラと仲間同士会話しているだけであった

オーズーがすくすく育つと4歳の時には運動が好きな事なり、よく家の周りを走って虫を追いかけていたのだ

庭の畑で栽培していたトマトを籠に入れながら母親のエンヴィーは元気な我が子の姿を見ながら口を開いたのだ


『オーズー、転ばないでね?』


『大丈夫だよ母さん!』


そう言いながらオーズーはカブト虫を必死に追いかけていた

リクセンは彼女の隣にて同じくトマトを籠に入れていたのだが彼の顔は少し嫌そうであり、それに気づいたエンヴィーは笑いながらも彼に言い放ったのだ


『ごめんねリクセン、あなたトマト嫌いでしょ』



リクセンはトマトが大嫌いである、だがエンヴィーの体を労わろうとすれば嫌でもトマトも手に掴んで加護に入れなければいけない

庭には他にも様々な野菜があったが今日はトマトの採集日、リクセンは溜息を漏らして答えたのだ


『今日さえ耐えれれば』


『でもオーズーはトマトジュース好きだから家の中でもトマトに会えるわよ?』


『ぐぬぬ』


リクセンはトマトが大嫌い

オーズーはトマトが大好きなのだ

ここでカールがインダストリアルで聞いたリクセンの言葉に矛盾が生まれた


【大事な魔王の旗にトマトジュースをこぼして汚してしまった】


そうである、カールの言葉でオーズーだけがその時にまさかと答えが目の前まで見えていたのだ

だからこそ彼はトマトジュースという言葉に驚愕を顔に浮かべたのである

オーズーが6歳になった時にはリクセンから変わった絵本をプレゼントされたが当時の村では絵本というのはかなり手に入りにくい貴重な本とされていたがオーズーはその父からの誕生日プレゼントに本を両手で持ち上げて大きく喜びを見せる


ケーキなんてない、食卓に並ぶのは猪の肉ステーキにポテトサラダそして庭でとれた野菜炒め

平凡な料理であったがそれでもオーズーは嬉しかった


『ありがとう父さん!僕大切にするよ!』


我が子の喜ぶ姿に2人は大いに微笑んだ

彼は暇があればずっと絵本を読んでいた、絵本の物語はとある獣の戦士のお話であり彼の絵本での口調は今のオーズーと瓜二つであった


絵本の獣の戦士の名はゾゲット・カルロス

豹の様な風貌の体が人間より多少大きな彼の物語はハッピーエンドとは言えない物語であった

人間と友達になりたい彼は汚い口調を治すために色々な言葉を覚えて触れ合おうとした、見た目が凶暴さを剥き出しにした容姿である彼は近づくだけで人が逃げ出す程の強面だと物語では描かれていた


『俺の名は超ナイトであるゾゲットである!さぁ人間のレディー!迷子ならば俺がタウンまでゴーしよう!』


『何言ってるかわかんないぃぃぃぃぃぃ!』


そんな彼の間違った努力の物語である

人と仲良くなりたいがためにどんな方法でも試した彼はとある日、人族が魔物の魔滝によって村が危ない状態になっていた事に気付いて助けに行ったのだ

村の入り口の扉を破ろうと扉を叩く色んな種類の魔物、そして防壁の上から術や弓を放って応戦する人族

ゾゲットは後ろから魔物を倒しまくった


『このゾゲットが来たからには一安心だぞ!さぁモンスター諸君!俺とダンスしようぜ!』


武には自信がある彼は後方から敵をドンドン倒していく

だがしかに彼の生涯はそこで決まる事となるのだ、防壁の上から弓を放っていた人族の矢がゾゲットの胸部を深く突き刺して重傷を負ってしまったのだ

矢で射貫かれた瞬間、ゾゲットは目を見開いて防壁の上に目を向けた


『来るな魔物め!!』


ゾゲットは今はまだわかり合えないのだとこの時知った、だがそれは彼らがそう思っているだけでありゾゲットは胸部の傷を抑えながら森に撤退しながら考えたのだ


(あちらも必死なのだ、仕方ない事だ・・・・信じることを忘れる事は大事な心を失う事である、ジーザス)


彼は人族を憎めないでいた、皆怖いからゾゲットも同じように見てしまったのだろうと強めに自身に言い聞かせた

森の中を流れる川辺まで行くと彼は近くで横たわりながら死ぬ最後にこう口を開いたのだ


『大事な者を信じることを諦めるな、そうすればお前の道は後悔の念で進むこととなる』


彼はそのまま死んだのだと言う

いつまでの希望を捨てない戦士にオーズーは彼を好きになり、口調もそれに似た形に徐々に変わっていった、


トマトジュースを片手に村を歩きながら仲がいい隣人と話したりする時もそうであった


『デイモンさんおはようございます、今日もエレガントな日ですね!』


『快晴って意味ね、そうだねぇ』


変わった口調の彼は周りの者にもそれなりによくしてもらっていた

そんな彼が7歳になった時にとあることが起きたのである、いつもの様にオーズーは母からトマトジュースをグラスに入れてもらうとそれを持ったまま外に出かけたのだ

いつも外に出る時、彼は飲み物を手に村を歩くがこの時彼は村の探検という名目であまり近づかない倉庫に足を踏み入れたのである、固く閉ざされた様な大きめの倉庫だが鍵が開いていた






何が入っているのかどんな倉庫なのか知らない彼は迷いもなく興味本位でその中に足を踏み入れる

埃臭い倉庫の中は奥まで15mほど続いている、両脇の棚には緊急時に使う鎧や防具が置いてあり

奥の壁には剣が何本も立てかけられていた


(すっげぇ!ナイトじゃん!グッド!)


そう思いながら彼は奥まで進んだ、小さい天窓が天井にありそこから光が流れ込んでくるのだが薄汚れている為に十分な明かりが倉庫の中に入ってきていない


『足元にも色々落ちてる』


彼は床に意識を向けると縄やら木の板など使いにくい道具が散乱していることに気付いた

転ばない様に奥まで進むと天窓からの光が届かない場所まで進んでしまう、この時彼は足元の何かに引っかかり転んでしまったのだ

自然と手に持ったトマトジュースを離してしまい、ドサリと前方に倒れると彼は痛がりながらも起き上がる

割れたグラスを見つめて不味いと思ってその場から逃げ出したのだ


『やっべ!今すぐエスケープしないと』


そのまま彼は倉庫から走って逃げたのだ、薄暗くで奥が見えなかった彼は気づかなかったと思うが彼が手から離したトマトジュースは手前にあった机の上に置いてあった竹籠にかかっていたのだ

何が入っていたかもそこに何があったかも彼は知らないまま


家に帰ってから彼はグラスを無くしたというと母であるエンヴィーにこっぴどく怒られてその日は部屋に閉じこもりゾゲットの絵本を読んでいた

その日はそのまま終わるかと思っていた彼らだが夕刻に予期せぬ事態に見舞われることとなる

リクセンが丁度外出していた時の事だったが村の者が焦った様子でオーズーの家に来ると何度も強く玄関を叩いたのだ

その音にオーズーも気になって下に降りると母親が玄関を開けて村人と話をしている最中であったが普通の会話に聞こえなかった


『そんな・・・リクセンがそんなことする筈』


『いいからエンヴィーさんも来て!不味いよこれ!』


母親と共に村の中心部に向かった先で見たのは馬の上から兵士を手に持ち、その先には後方には縛られた父が引っ張られていたのだ

何が起きているのかわからないオーズーはただただ見世物にされている父を追いかける母を見て後を追った

その時に彼は周りの声を耳に入れたのだ


『この者は魔王様に逆らう行為を働いた!やってはいけない事であるよって貴様等は最悪死罪となる事を覚悟しておけ!』


驚きの言葉を口から発するキャスバル兵にオーズーは驚いた、彼だけじゃなく騒ぎを聞きつけた村人たちもである

オーズーは縛られて馬に轢きづられている父を見た、彼の眼はとても悲しそうであり追いかける母にぼそぼそと何かを話している様にもみえていた

だが彼にわかる事は1つあった、父が駄目な事をして村を危ない目に合わせたという事


『そんな・・嘘だ』


あれは父はそんなことしない人だと信じていた、だが今父は犯してはいけない事をして大衆にさらされながらも馬の後ろから縛られた状態で歩いているのだ

母が泣きながら父を追いかける

その光景は夜中の23時まで続くと村の広場で彼の無罪を主張する者がキャスバル兵によって斬られた

彼はそれを目の当たりにして驚いた


『抵抗は同族と見なす!他にリクセンを庇う者はおるか?』


誰も何も言えなかった、母のエンヴィーは息子のオーズーを抱きしめながらも父であるリクセンを見守る

そんなリクセンがその時に言い放ったのだ

自身を島流しにして許してくれと、それを面白がったキャスバル兵士達はそれを良しとして騒ぎを鎮めてくれたのである


その日のうちに馬車に乗せられていく父親を見てオーズーは彼と最後の会話をしたのだ

悲しそうな顔をずっとする父に向かって彼は聞いたのだ


『父さん、やってないよね?』


だがしかし自身を育てて来た父は否定をせず俯いたまま馬車の中にキャスバル兵と共に入って言ったのだ

返事をしてくれなかった父に対してオーズーは何かを奪われた気分になってしまう

どういった状況なのかは村の者は誰も知らない、だがしかし父は駄目な事をしたと思うには十分な父の反応である


それからというもののエンヴィーとオーズーは村の人の目を気にして生活する羽目になった

嫌がらせは無かったものの、周りを気にする2人の性格上では同じ村に住んでいても口を開いて話すことが殆ど無くなったのだ

オーズーは学び舎に行っても孤独であったがそれは彼なりに対して苦じゃなかった

だが友達が欲しいという気持ちがあり多少は複雑さを表に出していつも家に帰っていたのである

運動だけが取り柄の彼は残された1人として母の為に親孝行しようと学び舎を卒業後は兵に志望したのだ、実戦試験のみであったがなんと彼は主席で合格してのけることとなった


十数年後、丁度彼が大人の様な体にまで成長した時にはキャスバルはインダストリアルに異動された後であり、オーズーは自身の村で護衛兵として働きながら母を養っていったがその頃から兵士からの陰湿ないじめが多々あった

リクセンの息子か、その言葉が徐々に心に突き刺さっていく

数回耳に入れる程度ならば誰でも我慢はする、だがそれをしつこいくらいに口に出されたらそれを呪いの言葉となり生涯で一番嫌いな言葉になるのである


彼は村の護衛兵から実績を重ね、誰よりも早く兵長となると小隊長から中隊長と駆け抜ける様に功績を残して旅団長へと数年かけて登り詰めたのだ


その頃にはリクセンという言葉の呪いは怒りを生む言葉となっていた

父が自分の道を邪魔した者であると思い込んで今迄頑張って来た彼はカールが口にするリクセンという言葉にも大きく反応を見せたのである


だがしかしオーズーは密かに調べていたのだ、真実が何なのかだ

村の詰め所にはその記録は何故か残っておらず、兵舎に長期間滞在した時にも村のその惨事を知る者は殆ど少なかった

誰もあの村の事を知る者がいないに等しい、彼は調べることを諦めて兵舎棟から村に帰郷するころに彼はいつも通り笑顔で迎えてくれた母にトマトジュースを作ってもらい、椅子に寛いでいた

台所からほのかな香りが小さいリビングニ漂ってくるとオーズーは直ぐに野菜スープだとわかり久しぶりの母の味に歓喜した


『本当にあんたは親孝行者だよ、リクセンもきっと喜んでるわ』


『母さんは何故あいつの事を信じるんだ』


『父さんにあいつなんていっちゃいけません、なんで信じれないのオーズー』


『でも・・・あいつは村を危なくしたんだよ、言い訳を言わずに僕の言った事にも答えないでさ』


『それでもあなたは今まであの人の笑顔を捨てる言葉を言うの?』

 

母の言葉に彼は頬杖をついて考えた

確かにその事態が起きるまでは最高の父であり、いつもオーズーを大事にしてくれていた

それなのに突如として父という存在は村に牙をむく行為をしたとして家からいなくなってしまったのだ

それでも自分の道がそのせいで苦難を増やしたことに変わりは無く、彼は苛立ちを覚えた矛先が全て父になっていた事に気付かないでいた


『言わなきゃわかんないよ』


『・・・そうよね』


母は完成した野菜スープをリビングのテーブルに置くとオーズーに言ったのだ


『あなたが絵本のゾゲットのような大人になったらその話をまたしましょ』


『もうゾゲットと同じ大人だよ母さん』


『まだですよ、どんどん持ってくるから食べなさい』


そうして彼は魔王都市インビジブルに移動となり数年後、彼は必死で努力をして実戦稽古にてその力を評価され第6将校へと登り詰める事となる

それから一度も家に帰らずに仕送りの金貨だけを彼は家に送り続けた、その時に連絡魔石も部下に頼んで母に渡す様に言ったのである

そうして彼らはディロア王国を落とすために派遣されて今、ここに居る















『俺は戻れない母さん、多分俺は死ぬだろうけども最後に聞かせて欲しい』


『何を言ってるのオーズー、戦争が終わったら村に帰って野菜スープを食べに帰って来るっていったでしょ?』


『無理なんだよ母さん!!!!・・・・国内潜入組の俺達は作戦失敗したんだよ、周りは敵だらけだ・・・だから死ぬ前に知っていることを話してくれ!あの時父に何を聞いたんだ母さん』


彼は埃臭い倉庫の中で大昔母しか知らない話を聞こうと魔石で聞き始めた

オーズーは母に父が生きていることを伝えるとおおきく驚いた声を上げてから泣いてしまう

カールという人族の男と対峙しているときのその人族がリクセンと仲がいいという話を聞いて彼が生きていると知った事も全て母に話した


そしてカールの口から聞いた言葉を母に教えたのだ


『トマトジュースをこぼして魔王様の旗を汚したと人族の男はインダストリアルで生きている父さんから聞いたと言っていたがどういうことだ母さん!父さんはトマトジュース嫌いなはずだ!何か知っているんだろう』


彼が声を荒げて言うと母は魔石の向こうで泣きながら我が息子に答えたのである


『あなたも薄々気づいているのでしょう?』


母が口にした言葉にオーズーは体をフルフルと震わせた

ありえないと何度も自分に言い聞かせている彼はその答えをほぼ知っている、カールの口から聞いた言葉で知りたかった真実が知りたくもない恐怖の答えとなって押し寄せてくると感じていたのだ

もし彼の予想通りならば、きっと彼は正常でいられなくなるだろう

それでもオーズーは息を飲み込んでから母に言ったのである


『俺はあの人族の言う言葉を信じようと思う、だから教えてくれ母さん!』


彼はカールの言う事を信じようと言い放った、彼は2度もオーズーを殺せる機会に殺さなかったのだ

それは明らかに情というには納得できる行動でありそのことに関しては彼自身もそうであろうと予想していたのだ

彼の言葉から数秒の静寂が続くと部屋の外の声が僅かに聞こえて来る


『急げ!まもなくここは爆発するぞ!!』


ディロア騎馬兵の言葉である、とうとうこの時が来たのかとオースーは苦い顔をした瞬間

母が答えたのだ





『旗は倉庫の竹籠に入ってたの、入ってたのは予備の旗だけどもそれが入っている竹籠がトマトジュースで汚れていてその近くの床に貴方がいつもジュースを汲む時に使っていた割れたグラスが落ちていたのよ』


オーズーは全ての話がそこでようやく全てが繋がったのだ、自分のせいだと言う事をだ

そんな筈はないと一瞬思いたくもなったが自身の記憶の中が鮮明にその時思い出された

彼は何かに足を取られて転んだ、そして手に持っていたトマトジュースをこぼして逃げたのである

となると流石の彼でもどういうことなのかは理解できる


『・・・昔興味本位で村の倉庫に入った、そこで俺はトマトジュースをこぼしたが何の倉庫かは知らなかったんだ・・・』


『父は貴方を庇ったのよ』


彼はその事実に今迄の生き方を全て否定された

父のせいでという呪いの言葉が一変し、自分のせいで生活が凶変したと知った彼は声にならない叫びを上げた

連絡魔石を落として頭を掻きながら小さくウズクマる彼は混乱した

彼は昔母が言った言葉を思い出した


【あなたが絵本のゾゲットのような大人になったらその話をまたしましょ】


彼は知った、信じることを恨みに変えてしまった事で大事な時間を自分自身で失わせたことを

自分はゾゲットの様な勇敢な男になりたいと願った思いは表面上だけであり、一番大事なゾゲット自身の生き様を見ていなかったのだ


父を信じることを止めた彼は大事な物を失っていたのである


『嘘だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!』


彼は現実から逃げようとしたがそれは今更それを聞いたところでどんな顔をすればわからなかったからだ

嘘であってほしいと思いながらも床に落とした魔石を掴むと声を再び荒げて母に話しかけたんだ


『なんで今まで黙ってたんだよ!なんで僕に教えてくれなかったんだよ!!』


『リクセンは貴方が罪悪感を背負ったまま生きるなんて駄目だと言ったのよ、だからそれよりも恨まれることを選んだの・・・』


『母さんは僕を恨まないのか!父さんを島流しにした張本人だぞ!』


『親は子を守るのよ、リクセンはちゃんと親の役目を務めたの・・・だから私はあの人の分まで貴方を守らないと駄目なのよ、最後にあの人にそう言われたの・・・オーズーを立派に育ててくれって、だから戻って来なさいオーズー』


『・・・無理だよ母さん、作戦は失敗したんだ!!!今更戻れない!!父に会う事すら出来ない!俺達はきっと人族に負ける』


『帰ってきて・・お願い』


お互いに泣きながら魔石を握りしめる最中、オーズーは机から立ち上がると心を落ち着かせて母に話したのだ


『俺のせいだったと最後に聞けて良かった、父に謝る事もできない・・・・でも』



オーズーは鼻を鳴らすと腰から剣を抜いてから母にインダストリアルに向かって父と幸せに暮らしてくれと頼み込んだ、すると魔石の向こうでただただ泣く母の声が聞こえる

父を不幸にして母をも不幸にする自分自身に彼は最後に出来ることをしようとして母に最後に彼は届かない父への最初で最後の親孝行をしようと決めたのである



『父を認めたあの人族の男を助けようと思う、・・・ざよなら・母さん・・・父ざんに・・・謝っておいでぐだざい』


『お願い待ってオー・・・』


溢れる涙を抑えながら彼は母の言葉を最後まで聞かずして魔石を床に叩きつけて割った

全ての真実を知っツあ彼の背中には今迄の人生の時間全てが重くのしかかる、今すぐ死にたい気持ちを抑えつけて今できることを彼はすると決めた

父が人族と交流を持っていることはオーズーが父から貰った絵本に登場するゾゲットの夢を叶えた者に近く、今の彼にとって父はゾゲット以上の勇敢な戦士と化す


父さんが認めた男を助けよう

届かぬ親孝行をしよう、それしか道は無いと彼は思いながらも子供の頃の父の姿を思い出しながらその部屋を出た




































パブロフと戦闘になった広大な訓練場の様な施設の中央の光が軌道した時の半分までその光を抑え始めている

残り時間あと7分と言った所だろうがその爆発魔石を停止させれる者は誰もいない

その筈であった



『くそっ!くそっ!!!!』


ルルカのジャミニブラスターで大きく開いた穴の向こうから何者かが体を引きづって出て来たのだ

それは紛れもなく道化のパウロフであり首から下はギリギリ左腕がくっついているだけの状態である

他の部分はきっと彼女の術で吹き飛んだのだろうが今の状態でも彼は動ける


彼の動くために核というのは口の中にある、それを破壊しなければ彼は死なないのだがそれをグスタフ達は知らなかった

完全再生するまでは数週間はかかる彼は残った左腕を器用に床を掴んで部屋の中央に這いながら進む


『迂闊だったですね、あれほどまでに強いとは・・・でもここが爆破されなければ外の教団は決して止まりませんねイヒヒヒヒヒ!』


息も絶え絶えにしながらも中央まで近づくと彼は残りの魔力を使って爆発魔石内に込められた魔力を打ち消した

それは起爆を阻止されたということであり、グスタフ達の作戦は失敗に終わったという事にもなる


彼はゴロンと体を回転させて天井を見ながら高笑いした


『イッヒヒヒヒヒ!自力で国内の教団兵を抑えるには最低でもあと2日かかりますよ!となれば南大門に向かう援軍も遅れてステンラルは陥落して城も今日陥落です!』


彼は死ぬ気はさらさらなかった、敵が爆発に巻き込まれないために撤退を始めたのならば今から数週間のんびり体を再生して復讐すればいいと目論んでいたのだ

道化のパブロフ、ランクA+のマミーキングというアンデット王である彼はしぶとさも力の中に入る

それを知っていた者が1人、彼の前に現れたのだ


一瞬パブロフは敵かと思ったが近づいてくる彼の姿を見てホッと胸を撫でおろす気分で彼に話しかけたのである


『丁度いい時に来ましたオーズー第6将校さん、私を奥の扉迄連れて言ってくだ・・・』


最後までパブロフは言おうとしたが近くまで歩み寄って来た彼の様子に口を止めた


『へっ!?!?!?』


歯を食いしばって剣を振り下ろすオーズーに変な声を出してしまい彼は反応が遅れた

舌打ちをしたパブロフは残った左腕を使って剣を瞬時に構築するとそれをオーズーの胸部に刺そうとしたのだが魔力も残っておらず深く突き刺すことが出来なかった、それでも多少は貫いたのだが彼の剣撃は止まらずそのまま勢いよくパブロフに向けて剣をそのまま振り落とした


『御免!!!』


『がへふっ!!』


残った体を真っ二つにされた時に彼の口元にある核も割れた

それによってパブロフは体を維持できなくなり、包帯がダラダラと体から離れていき肉体が解け始める


『そんな・・・何故・・・オーズー貴様』


オーズーは胸元を抑えながら何も言わずに彼から数歩後ろにさがりながらもパブロフの最後を見送った、最後にはドロドロと包帯を残して泥の様に液体となりその存在は無に消えていく

一瞬の出来事でも彼にとって非常に緊張を走らせる一瞬でもある、相手は虫の息でも魔王の右腕なのだ

彼が重傷じゃなければ遊び相手にもならなかったであろうと思いながらも彼は傷口から流れる血を抑えながらも爆発魔石の元に近付いた

彼は泣きそうになりながらも昔の事を愛おしく思い出していた、父と楽しく過ごしたあの日々を

絵本を読んでくれた母、共に遊びに連れて行った父の姿を何度も噛みしめていた




彼は母の言葉を思い出した


『あなたが絵本のゾゲットのような大人になったらその話をまたしましょ』


彼は父が誕生日プレゼントでくれた絵本の主人公であるゾゲットが死ぬ間際に言った言葉を思い出した


『大事な者を信じることを諦めるな、そうすればお前の道は後悔の念で進むこととなる』


2つの言葉が意味を成して彼を襲い掛かる、父を最後まで信じれなかった

全てを父のせいにして歩んできた人生が全て無駄な時間であったのだろうと

信じることを忘れた者は大事な物を失う


オーズーは父から貰った愛を信じることをやめたせいで忘れてしまっていたのである


『俺はゾゲットにはなれなかった』


彼は我慢を忘れ涙を浮かべながら停止した爆発魔石に近付く


『そして俺の父は俺を庇って俺を守った』


彼は手に握った剣を離して更に魔石に近付く


『今・・・父はゾゲットが出来なかったことをインダストリアルで叶えた、俺はずっと父を恨んで生きて来た、母を1人にした父を・・・でも父は父の役目をちゃんと果たした、俺のせいで俺の家族がバラバラになったんだ』


彼はそのまま右手を爆発魔石に触れて魔力を流し込んでいく


『今ようやくわかったんだよ父さん、僕はゾゲットにならなくたっていいんだ』


魔力を流し終えた爆発魔石は赤く光り輝くがその光はあと少しで消えると言うくらいに貧しい発光である

オーズーは起爆時間を約1分後にセットしたのである

彼が逃げる時間なんて無い、元から逃げる気なんてない

震える体を力を入れて抑えながらその場に両膝をつくと顔を下げて再び口を開いたのだ


『僕はゾゲットを超えた父さんになりたいんだ、だから父さんが信じた人族を僕も信じるよ・・・何度も僕を生かしたあの男の為に、親不孝でごめんなさい父さん』



彼は後悔で埋め尽くされた記憶を泣いて悲しんだ

出来る事ならば会って謝りたい、だがしかし今となってはそんなこと不可能に近い

目の前で弱い光を発光する爆発魔石を見つめながら彼はボロボロと泣きながら立ち上がると床に落とした剣を拾った

何度も深呼吸をして目の前の魔石の光が消えているさまを見届けながら彼は剣を真上に掲げて小さく口を開いた


『最初で最後の届かない親孝行です、父さん・・・母さんを頼みます、僕は帰れない』


不細工にも鼻水を流しながら彼は後悔の念を何度も口に出す

最後までそのままじゃいけないと気持ちを切り替えたオーズーはそのまま一息つくと彼らしい口調で最後を閉じることを決め、覚悟を言葉に乗せたのだ














『魔王軍第6将校オーズー・ライオット!超ナイトの俺様は偉大な父であるリクセン・ライオットの息子である!初めての親孝行として父の友人たる人族を助力いたす!ここで死する事無念なり!ジーーーーーザス!!!』





『もう親孝行は貰ったさオーズー』


『!?!?』


オーズーは聞き覚えのある声に横を向いたがそこには誰にもいなかった

だがしかし彼には父の声に聞こえていたが彼のその言葉でもう一つの言葉を思い出したのだ

小さき頃彼は親孝行したいと父の誕生日にリクセンに言い放った時に当時のリクセンがオーズーの頭を撫でながらこう言ったのだ


お前が無事に生まれてくれたことが最高の親孝行だ

その言葉をハッキリと思い出し彼は感謝を口にする


『とう・・・ざん・・・あなたの息子でよかったでず』


あの頃に戻りたい、僅かな希望が今まさに目の前の爆発魔石の光が消え去るとともに儚く散る

光が消えたと同時にこの部屋中を真っ赤な光が眩く照らしだすと彼は強い強風を魔石から感じ、顔を腕で隠しながらも叫んだのだ


『父さん!母さん、ごめんなさい!!!!!』


子供の頃に戻った彼の涙の叫びはその爆発魔石の大発光の中に消えた







グスタフ達が教会本部の外の広場まで行くとそこには教団兵を鎮圧したディロア歩兵5千が彼らの武装を解除させその場に座らせていたがその瞬間、教会の中心部分で大規模な大爆発が起きて全員その場に伏せ始めた


大きな爆発音に爆風そして瓦礫が無数に飛んでくるほどの高威力、全てが静かになった頃には教会の奥から大きな煙が天まで伸びていた

時刻にして夜の19時、1人の魔族の助力によって教会が爆破成功したことは誰も知る由もなかった











教会本部信仰戦 編 完




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ルルカ『爆破少し遅くなかった?』


カール『ううむ、でもだいたいだろ?15分は』


ミミリー『気にしない気にしない!』

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新作ですがこの小説を見てる人ならわかる部分が多い内容になってます 勇者ですが指名手配されたので逃亡ライフをはじめます
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