40話 教会本部信仰戦 息子
教団本部の中心部らしき前の扉を守る教団兵500、こちらの精鋭騎馬兵とグスタフ達の奮闘にてその数は徐々に減らしているがその中でのリーダー格である魔族の男の名はオーズー・ライオット
微かにカールはその名に聞き覚えを感じた。
周りで乱戦が繰り広げられている最中でカールとオーズーは両者真剣な顔を浮かべて武器を構えている
彼らの周りの音など気にしていないだろう
爆発が近くで起きるがきっとルルカのデネブインパクトだとカールは見なくても悟った、彼から見てもあの天術という不可解な術はとてつもないと感じていた
ダークマターのスカーレットとは別の道を進んだ彼女だがそれでもあの霊軍に近付く資格を有しているルルカが現在の状態でもゼリフタルでは既に上位陣の1人に堂々と君臨していると彼は認めていた
それはグスタフもナッツもジャムルフィンもしかりである
シルバーバレット全員が国の上位を総なめしていればそれは確実に国で一番と言われても可笑しくはないだろう
『真空斬!』
オーズーはいきなり動いた、剣を素早く振ると彼の正面から斬撃がカールに飛んでいく
周りの味方に当たると懸念したカールはそれを避けることを良しとせず、自らの右手に持った剣でそれを弾き飛ばす
それが囮の技だとカールは悟っている、真空斬を弾くと目の前に既に彼がおり剣を顔面に向けて低い姿勢から突き出してくる
(鋭い!)
カールはその剣撃を弾いてから真下にいるオーズーの顔面に膝蹴りを放つ
だがオーズーは顔を下げて頭部で俺を受け止めるがそれでもダメージはあるだろう、少し苦痛の声を出しながらも彼は頭部で置け止めたカールの膝蹴りを払い飛ばしてバランスを崩した彼を左手でどついて後方に転倒させた
剣以外での攻撃方法もそれなりに持っていることにカールは少し本気を出すことにして後方によろめきながらも無言でヴィスターフィンを放つ
カールの背中から赤と青の色の腕が伸びると追い打ちをかけようと襲い掛かってきていたオーズーに一直線に遅いかかる
『なっ!?』
不可解な技に歩みを止めて防御の構えをするオーズーは2つの剣を撃墜しようと剣を振る
青い腕は両断するとそれは分裂して青い腕が2つとなり増殖したのだ、斬れば増える技に彼は驚きを顔に浮かべながら自分が3本の腕に囲まれたことを悟るが腕の先じゃなく茎の部分を斬って2つとなった青い腕の1つを消すが時すでに遅く、斬ったと同時に腹部に鈍痛が走る
『ハベッ!?』
体をくの字にしたオーズーはそのまま赤と青の腕に腹部を殴られたまま押し込まれてしまい後方の大きな扉迄吹き飛ばされ背中を強く打ったのだ
カールは姿勢を正すと直ぐにその場で斬る動作をするがそれは断罪という技をするための動作であるがオーズーはそれを読み取り、咳込みながらも彼の動きに合わせて立ち膝の状態から剣を向けて防いだ
扉の前でヨロヨロと立ち上がるオーズー、彼は左手を伸ばすとヘルファイアを放つ
カールはすれすれで避けるが後方の騎馬兵に当たってしまい彼は悲鳴を上げながらも燃え盛ったまま落馬して動かなくなっていく
強いというよりかは対応能力が優秀であるために攻撃してもギリギリ対処してくる男にカールは目を細めて彼を見つめた
(1発であれだけ疲弊しているということは実力はさほどか、だが)
だがしかし彼の強みをカールは知った、努力で培った力だと言う事をだ
普通にカールが天罰能力を使ってごり押せば容易く倒せるであろう、だが節約しなければいけない
それでも彼に節約は通用しない、ずっと彼の名を聞いた時に引っかかっていたカールはふと思い出したのだ
まさか・・・そんな筈がないと思いながらも彼は念のために聞くことにしたのである
『どうした人間ナイト!俺に何かついてるか?』
『・・・お前に父はいるのか?』
オーズーは少し目を丸くしてカールの言葉を耳に入れる
だが直ぐに真剣な顔に戻ると彼は一気に突っ込んできながらも口を開いた
『知らんな!!!』
互いの剣をぶつけて鍔迫り合い、カールは彼の目を見た
真剣なはずなのにどことなく憤怒を放つ彼はカールの質問が気に障った様であり先ほどまでの変わった口調が嘘の如く消え去ったのである
両者で一度後ろに下がると数回剣でぶつけ合いながらオーズーは口を開いた
『身内事情など何の意味がある!説得しようとでもしたのかカール!?』
オーズの口調の変わりようにカールは驚きはしたが小さく口元に笑みを浮かべた
カールは話し続けながら彼と剣をぶつけ合う
『インダストリアルの魔族を知っているか?』
『!?』
オーズーの素早い剣撃が少し鈍った、その隙にカールは彼の剣を真上に弾いてから体を回転させて左手で裏拳を顔面にぶつけるとオーズーは顔を抑えながら後ろに下がる
悔しそうな声を出す彼に追撃と言わんばかりにカールは走り出すが顔を手で覆い隠しながらも彼は腕を前に出して魔力を直ぐに込めるとファイアバレットを放つ
(勘が鋭い奴だ)
カールは追撃を止めてそのファイアバレットを剣で斬って掻き消す
明らかに多少でもカールの言葉に多少驚きを見せると言う事は何かしらあると言う事であり、カールの憶測が正しければ無暗に殺せない者だと彼は考えた
ジャムルフィンからこの事実は聞いていないこの場の者達、オーズーライオットという男はきっとあの男の息子なのだろうとカールは予想した
誰もフルネームは知らなかったのだろうがカールだけは唯一知っていたことが救いであろう
カールは正面で立ちはだかる男に向かってあえて揺さぶる言葉を彼に送る
『島流しにあった魔族があの島に行きつくと言う事はあの島の魔族に聞いたが興味は無いのか?』
『知らんな、俺の父は死んでいるからな・・・あの島で生きていける筈がない』
『リクセン・ライオットはまだ生きているぞ?我々が助けた』
『!?!?』
これまで以上に彼は驚きを顔に見せるがカール相手にそれは悪手を言える
直ぐに目の前に彼が姿勢を低くした状態から一気に間合いを詰める
流石にオーズーでさえも我に返ったと同時に目の前のカールに剣を向けようとするがそれよりも先にカールは言葉を発しながら彼の頭部側面に剣の腹をぶつけて吹き飛ばす
『弱者を守り続けた父が悲しむぞ!オーズー!!!』
『ガッペ!!!』
変な声を発したオーズーは間抜けな顔を浮かべながら横に吹き飛ぶと壁にぶつかって気を失って倒れたのだ
追い打ちはせずとも暫く起きぬだろうと思ったカールは倒れる彼から視線を逸らし周りを見渡すとどうやら敵の教団兵をあらかた片付けた後の様で最後の1人をグスタフが扉に向けて全力で投げ飛ばすとその勢いで扉は強引に奥に開いたのだ
此方の被害としては通路での戦いが多い事から犠牲は少なくまだ4千ほどの味方が生存している
全員静まっと同時にホッと胸をなでおろすがグスタフはカールの肩を叩きながら気絶している魔族の男を見つめたのだ
『こいつぁ・・・』
『きっとリクセンの息子だが情が移った、今は殺すのはよそう』
『悪手になるかもしれねぇぞ?』
『その時は私が仕留める』
『・・・ケッ!行くぞ』
敵を見逃すと言うのは後から自分たちに降りかかる火の粉になりやすい
だからグスタフ達はたとえディロア国民だとしても信仰を信じる者達に手をだした
それよりも動きやすい魔族を無視すると言う事は危険な行為に近いがカールはそれでも微かな希望をもって彼を見逃そうと言ったのだ
気持ちはわからんでもないとグスタフでも彼の言うセリフに言い返さずにそのまま皆で馬で駆けだす
全員が扉の先に侵入するとそこは何のために作られたのか理解できない場所になっていた
ドーム状となるこの空間はまるでゼリフタル総合闘技場の様な広さを誇るがまるで戦闘訓練でもするかのような場所に近いと皆は感じ始める
床は土であり観客席すらなく頭上の天井がステンドグラスの円形の窓があった、壁にかけたれた松明がこの空間を照らしているがこの奥にグスタフが感じていた気配が小さな椅子に足を組んで待っていたのである
(なんだありゃ・・・)
グスタフは微かな寒気を感じた、只者じゃないと
見た目はミイラの様な包帯でグルグル巻きにされた人型の者だが両腕の先からは数メートル包帯が伸びておりそれらがフワフワと浮いている
頭部両側面には小さくねじ曲がった赤い角が生えていり後頭部からは青色の長い髪が腰部分まで垂れ下がっていた
手先は鋭利な魔物の爪をしており顔は当然包帯で見えないが口元だけは赤く血の様な色で滲んでいるかのようだ
それを見た騎馬兵達は動く事も出来ずにその場で固まるがそれは軽い金縛りに近い状態でありグスタフ達も体にビリビリ伝わるその気迫に負けじと興奮する自身の馬を降りて前に進み始める
カールやミミリーそしてルルカも馬を降りると遠くの存在はクスクスと笑うかのように口元を手で押さえて肩を揺らし始める
『グスタフ・・・』
熊の隣で歩くカールが横目て彼の名を言うと熊は答えた
『ヤバイ野郎だ、ここで全部出す気で行くぞ』
『体中ピリピリするわぁ、帝虫カブトロンと出会ったと気みたいな感覚』
ルルカの言葉で皆のモヤモヤは吹き飛んだ、彼女の言う通りこの感じはインダストリアルでの帝虫カブトロンや王虫クワトロンに出会った時と同じだからである
となると4人の考えていることはここで一致する
この者はそれと同じ強者であるという事だったからだ
ここを守る主としては相応すぎる実力を保持する化け物が目の前にいる、人間でも魔族でもない存在
大きな訓練場の様な場所を中心部まで4人は武器を手にして歩くとその者はようやく彼らに向けて口を開いたのである
『もうバレているならば顔を隠す意味ないですから、トゥルーゲン教が敵だとバレているのは既にわかってましたよ・・・でもなんでかなぁ、あのレリックは保身に走ってしまった様でここを固めたのですが私はヘルトの者が来ると思ってた筈が興醒めです』
『どういうことかはっきり言いなさいボロ雑巾』
カールやグスタフそしてミミリーはなんてことを言うんだと言わんばかりの表情でルルカに顔を向けた
相手を刺激するような言葉に驚くがさほど奥の者は気にしてない模様であり彼はそれを称賛するかの如く拍手をすると静かに答え始めた
『度胸は褒めましょうお嬢さん、私も先ほど来たばかりでしたが銀狼の相手は流石にね・・・ヘルトはどうやらここに来た形跡はありますが既に逃げ出したようですし何をしに来たのでしょう、まぁ国内にあいつが居なければ問題ないですがまだ君達は何かを隠しているのでしょ?銀狼を外にして国内を疎かにするはずは無いですけどもここまで来た実力となれば私が居なければ確実にここは陥落確定、となるとあなた方が国内の切り札と思われますが城にもいる筈ですよね?』
グスタフ達はその言葉に反応を顔に出さずポーカーフェイスを決めていた
それを包帯のミイラの様な者は都合の良い解釈をすることとなる
『うんうんわかります、無言は正解という事だとお見受けしますが残念・・・あそこにはエンビシャが向かっているので無理ですよ?彼は馬鹿ですが力は魔物Sランクに近い力を有してますからザントマ国王が死ぬのも時間の問題です・・・エンビシャ以外にも我々のもとには十天が最も強かったと言われる十天全盛期時代の元十天が国内にいることをご存じないようで?』
グスタフ達は驚愕の事実を聞いた、ランクA+の強さ以外にもゼファーの時代の十天が魔族側についている事実にだ
流石に不味いと思っても今からではとても間に合わない、いやそうじゃないのだ
ランクA+のエンビシャよりもその元十天が最も危ない存在でありそれを防ぐ者は誰もいない
ゾロアもどこにいるのか誰も知らない事から大きく不安を募らせるとミイラの様な男は静かに椅子を立って首を回しながら両腕から伸びていた浮遊する包帯の先をピンッと硬くして長剣の様にしてのけた
『てめぇをさっさと倒して城に向かう』
『ははっ!首狩りだったか、無理だよ?今から向かったとしても半日かかるし今日の夕刻にはこちらのエンビシャが既に城に向けて動いている筈だから瞬間移動でもしなければ駄目だよ』
『誰が俺達が城を助けに行くと言った?』
グスタフは不敵な笑みを浮かべて正面のミイラにそう告げた
熊の言葉に多少隠している何かを彼は悟って小さく薄ら笑いを浮かべると直ぐに話し始める
『なるほど、奥の手は城にいる・・・か、でも無理だねぇ・・・十天クラスが2人さ、んで君達もここで終わり』
更に両腕の刃物をジャキンと伸ばした、その長さは2mを超えそうな勢いでありその男は馬鹿にする牢に彼らを笑いながら自身を名乗り出す
『マミーキングの道化パブロフと言います、では死んでください』
その言葉を言い終わったと同時にパブロフは両手の刃を使ってその場で×の字に斬るとその斬撃はグスタフ達に向かってくるとともに徐々に大きさを増していく
4人は間一髪その技を避けると正面の上空を見上げた、パブロフが高く跳躍したからである
彼の天に掲げる刃の先には2mサイズの白い球体が構築されておりそれをパブロフがグスタフ達に向けて投げ飛ばすと中間距離地点で爆発する、何故当たる前に四散したのかと4人は警戒を顔に浮かべるが答えは直ぐ目の前で起きた
ミイラの様な物体がその爆発の中から多数出現したのである、ただのミイラじゃなく彼らの手には盾と剣が握られており革という軽装備も見受けられるがまるで冒険者のミイラの様でもある
それが約数十といった数でグスタフ達に押し寄せて来たのだ
『防げます?』
笑いながらそう言い放つパブロフは着地をすると傍観しようと両腕を広げ始める
『お前ぇら触れるな!銀超乱と同じだ!』
その言葉を瞬時の他の3人は理解した、上空から突っ込んでくる無数の冒険者の風貌をしたミイラたちは触れると爆発を巻き起こすと言う事だ、グスタフは道化パブロフの心を読んだのだ
防げますか?はあえてそうさせようとした誘導に近い、避けさせるよりかは効果を知らない彼らに有効な技だと目論んで言い放ったのであるがグスタフの言葉にパブロフは首を傾げて舌打ちをする
『避ける程度ならば!』
『よっ!!』
カールとミミリーは衝突するギリギリで横に飛んで逃げるとルルカもグスタフも縦横無尽に逃げまわる、このパブロフの技は直線的でしか飛んでいかない為良ければ当たる事は無い
だが地面に触れるとそのミイラたちは爆発して衝撃波を辺り一面に放つ、足を踏ん張り砂煙の中を耐えるグスタフだがそんな彼の前にパブロフの気配を感じてしゃがみ込んだ
するとどうだろうか、砂煙で見えない正面から長い刃がグスタフの顔面目掛けて跳んできたのだ
避けていなければ首が飛んでいた、グスタフはしかめっ面でその刃を大剣で弾こうと剣を振ろうとするとすぐにもう一つの刃が煙の向こうから跳んでくるので一度後ろに下がった
(ギリギリ反応できるが少しでも意識逸らすとやべぇな)
すると砂煙が一気に上空に舞い上がっていくがそれはカールがオータイルという無数の斬撃を頭上に放った時の風圧で空に舞い上がらせたのだ
周りの景色がようやく見えるようになったがそれと同時に遠くのパブロフの周りにはルルカのデネブインパクトの青い球体が取り囲んでいた
『終わりよボロ雑巾』
ルルカは微笑みながら言うとパブロフは首を傾げてから両手の刃を外に向けながら高速で回転し、ルルカに向かって一礼をすると同時にデネブインパクトの球体全てが空中で全て斬られて青い粒子となり天井に消えていく
今の一瞬で全ての球体を斬った事の事実にルルカだけじゃなく皆は驚いた
只者じゃ無さすぎると思った4人は誰もが帝虫カブトロンクラスの猛者だと感じ、全力を使うことにしたのだ
『天術は流石に発動されては不味いので斬らせていただきました』
ワザとらしく説明をしてくる敵にグスタフは舌打ちをしたのちに動き出す
『イビルゲート!』
彼の頭上から悪魔の様な扉が現れるとそれは直ちに開門する
真っ黒の扉の先から漆黒の短剣サイズの刃がパブロフに襲い掛かると同時にカールは走り出した
敵は無数の刃を自身の両手の刃で弾き飛ばしながらその場を凌いでいるがすぐ横からカールが来ているのを見て深い溜息を漏らす
面倒だと言わんばかりに彼は弾く手を止めて素早くその場から離れるとカールに襲い掛かり始める
『同時攻撃ですか、いいですね』
パブロフはそう言いながら襲い掛かるカールに右手の刃を横殴りに振るがカールはそれを剣で両手で振って弾き飛ばすと素早く回転させて剣を差し込む
だがその攻撃をパブロフは体を横にずらして避けるがそれと同時に彼は後方に跳躍して避けたのだ
何故ならイビルゲートが角度を変えて刃が飛んできたからでありカールの目の前にグスタフの技が飛んできたのだ
『両面見れるか・・・』
カールはそう呟きながらも後方に飛んで難を逃れると直ぐに断罪を使いその場で剣を振る
距離を取るために下がった道化のパブロフはルルカが撃ってきたヘルファイアを避けている最中であり、カールに背中を向けてしまった事から断罪の斬撃を背中に受けてしまう
『ガッ!?』
深く斬りこんだ背中の包帯がズタズタに破けるとそこから血が流れる筈の血が流れずまるでミイラの様に枯渇した肉体であった
背中を斬られたパブロフはヘルファイアを避けてからカールに向けてファイアバレットを同時に3発放つとその在りえない術の発動にカールは跳躍して間一髪避けたがパブロフは地面を思いっきり蹴ってカールに襲い掛かる
『あなたやってくれましたね?』
『ちっ!』
パブロフはカールの目の前まで迫ると両手の刃を重ねるようにしながら振り落とすがカールは剣を真上に向けて防ぐ、だがその攻撃は非常に重たくまるでグスタフに渾身の一発を喰らったかのような重さを剣に受けると彼は勢いよく落下して背中を打ち付けた
早く立ち上がらなければとカールは上体を起こすと既にパブロフは上空から目の前に迫っており
その両腕の刃を突き立ててくる、間に合わぬと思った途端横からグスタフとミミリーが援護に来てくれてパブロフの両腕の剣を代わりに防いでくれたのだ
『意外とやるとは予想外です』
パブロフはピョンピョンと2回飛び跳ねて後ろに下がるとそう口にした
まだ余裕を持っているような言い方が気にかかりながらもグスタフはカールを起こすと再びカールは断罪を放つ
『一回見たらおかわりは要りませんよ!』
容易く避けると彼はそのまま4人の周りをビュンビュンと音を立てて走り始めた
4人は背中を合せて四方に警戒をするがそうしていると何かが飛んできたのである
(うわぁ!)
ミミリーは飛んできたものを弾くとそれは人間の爪、小さい飛び道具が爪だと知ると彼女は不気味さを感じ始めた
ただの爪じゃない、まるでミイラの爪の様にヨボヨボになった爪が無数となった4人に飛んできたのだ
その小さい攻撃に彼らは武器を振って対処するが全てを捌き切ることは困難でありその爪はグスタフの太ももやカールの腕に突き刺さり、そしてルルカの頬をかすめたりと殺傷能力は低いが厄介な攻撃であった
『埒が明かねぇ』
グスタフはそう口を開くとタイミングを合わせて前に走った、そのタイミングはパブロフが自身の正面に来るからだがなんとグスタフが前に突っ込むと丁度良くパブロフが目の前に現れたのだ
驚いた様な仕草を見せる敵だがグスタフの大剣を避けると軽く跳躍してドロップキックの様に彼を蹴って後方に吹き飛ばす
砂場である為、背中で地面を滑るグスタフはそのまま壁際まで吹き飛ぶがその間にルルカのヘルファイアとミミリーのスラッシュがパブロフを襲う
赤黒い熱線と双剣のバツの字の真空斬が彼に飛んでいくとそれを避けながら距離を詰めてくる
その時にカールは断罪を使い剣を振るとパブロフは舌打ちをしながら防御の構えを取り両手で正面をガードするとカールの剣撃で足で地面を滑らせながら5メートルほど後ろに吹き飛んだ
両腕を下に降ろしたパブロフは首を軽く傾げながら武器を構える4人を見据える
彼は相手が上位職であると思っていたが今までの動きからそう思えないでいた、明らかにそれ以上の反応速度と変わった技、天術は天位職の術だと知っていたためルルカに最大の警戒をしていたが彼女だけじゃなく他の者もそれと同等に力を持っているとパブロフは見切った
ランクA+の魔物は確かに強い、だがそれは今まで上位職迄しか人間が繁栄しておらず天位職がほぼゼロに近いくらいいなかったからだがもし天位職がある程度目の前に立ちはだかった時は訳が違う
天位職の好敵手はランクA+だからだ、蛇とマングースという言葉がタツタカの世界の言葉ではあるがその天位職を知り尽くした者との闘いはまさにそれに近い
遊んでいる暇はこちらもないとパブロフは悟る
『そこのお嬢さんは天術使いだと知ってあのパンドラーだと思い警戒を高めにしましたが、あなた方もですかぁ』
彼はそう告げる、だからルルカのヘルファイアは顔を向けて対処しようとした
だからこそカールの断罪が当たったのである
パブロフが今戦っている中に天位職は3人いる、厄介な奴がいる事に彼は気づいた
先ほどとは打って変わったかのように体から威圧を放つパブロフによってグスタフ達は体がジリジリとし始める
双方ともに全力で行かなければ勝てない相手だと思いながらルルカが前に歩きながら口を開いた
『ボロ雑巾さん?悪いけど私達負ける気は無いのよ?』
『なるほど、どうやらこちらも読みが浅かったようですので・・・』
パブロフはそう言いながらルルカに向けて口からヘルファイアを放つが彼女は横に飛んでそれを回避する
後方にいたグスタフ達も危なっかしい声を出して避けるが人が使うヘルファイアなど比べ物にならないくらい高威力であり壁に当たったその術はマグマの様にドロドロと溶け始めた
何か1つでも奴の攻撃を喰らえばアウトだろうと息を飲みながらパブロフに武器を向ける
『時間かけている暇ないよ!やりましょ』
ミミリーが双剣を構えて姿勢を低くするとそう口にする、皆はそれに頷いて反応を見せるとパブロフに視線を向けて気を高める
『いいでしょう、魔王様の右腕である私がここでやられては不味いので本気で行きますよ』
するとパブロフの包帯が口元の血の滲んだ赤い場所から真っ赤に染められている
不気味な赤色の包帯と化した彼は左手の刃を包帯に戻すと右手の刃がその分太さを増した
まるで長い大剣の如く重圧感を放った異様な武器は赤色に黒い線が何本も入っており彼の姿は先ほどとは見違えるほど変貌を遂げる
一瞬の隙が死に繋がると覚悟を決めた4人は合図も無しに自然と同時に走り出す
『勢いは良しですな!!!』
パブロフもそれに負けずと彼らに向かって突っ込んでいった