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【完結済】槍の新兵は夢を見ない  作者: 牛乳太子
14章 ディロア大決戦 涙を流す勇者に黒騎士は決意し、少女は想う
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37話 教会本部信仰戦 進軍

時刻にして10時過ぎ、グスタフとルルカにカールにミミリーは馬に乗って後方を追従するディロア精鋭騎馬隊5千と共に信仰都市ヴェルミストに侵攻を開始していた

他には5千の歩兵騎士が後から援軍として合流する予定ではあるが予定よりも早めに目的の街の前まで辿り着いた彼らは橋の手前で一度その足を止める


馬に乗ると言ってもグスタフの馬だけは影馬のブレヴァリという漆黒の馬

彼の馬だけ一際大きく立派な馬と周りの馬と比べてもそう感じるであろう

中心都市ザイルポルドの東側から行ける教会の本部があるこの街の入り口には教団兵は見当たらずまるで入ってくださいと言っているかのような雰囲気を漂わせている


『奴らもきっと来ることを想定している、我らは1万の教団兵の予測を立てているがそれ以上の兵がいたとなるとそれほどまでにここは重要な拠点という事だ』


カールが馬上から腕を組んでヴェルミストに入る橋の奥を見据えて言い放つ

確かに予想以上の兵士が待ち構えていたらそれほどまでにここを落とす重要さが増す

後方の騎馬兵達も辺りを見渡して警戒をしているがそんな最中カールの声に反応をしたのはルルカであった


『道は私が作るわ、掃討するのは得意なの』


『流石あの方の娘だなルルカ』


『当たり前でしょカール、親の七光りっていったらデネブインパクトゼロ距離から放つわよ?』


『ぐっ・・・』


口をへの字にするカールを見たグスタフとミミリーは笑いをこらえてクスクスしている

性格も何となくスカーレットに近い気がするなと感じたカールは苦笑いを浮かべて軽く手を上げると気持ちを切り替えて橋を奥を再び見る

止まった理由は簡単に言うと小休憩である、十分に休んでから一気に突破するからだがその作戦はカールが考えたのだ


いちいち雑魚にかまっていれば時間が勿体ないと思い、そういった敵がいれば後方の精鋭騎馬兵に回した方が良いと考えたのだ

あとから騎士達も自らの足で来るので処理し終えたら合流すればいい


『あの虫並みにヤバいのいないよねぇ~?』


ミミリーがそう言い放った瞬間、カールとルルカそしてグスタフは同時に答えたのだ


『ないな』

『ねぇ』

『ないわ』


数分してカールの号令と共に一気に橋を渡り切るとそのままヴェルミストの街を通し繰りで前だけを見る、不気味なほどに敵はおらず国民すら歩いていない

ここには避難勧告が届いているかも怪しいが僅かに両脇の建物の1階や2階の窓から顔を半分出してこちらを見ている人影が何人か見受けられる

彼らはここに住んでいるのだがここに住む者は全て信仰を持った者達であり教団側の国民という事になる


出来れば争いたくないと言う一心で一気に過ぎ去ろうとしたのだ数分大通りを東に進むとまた橋が現れる、下には北にある山から流れる川があるのだが肝心な橋が墜とされている

老化ではない、明らかに何者かが破壊したかのように破壊されているのだ

面倒だと思いながらカールは後ろの騎士達に道を聞いてみるが以外にも面倒過ぎる言葉を貰う


『この橋を渡れないとなると迂回するのですが一度後ろに戻り北に向かう大通りを数十分馬で走らせれば広場につきます・・・そこから再び西方面に道を進み、橋の無い大通りから教会本部にいくしかありません』


『そうすれば本部に着く時間はどのくらいだ?』


『早くて5時間です』


ミミリーが嫌そうな顔をする、予定では3時間で行ける筈が大きく迂回する事によって5時間となるのだ

それだけでも痛手過ぎる


『考えている暇はねぇ、相手もそうさせていだろうし罠もきっとあるがここは一旦あいつらの思い通りにうごくしかねぇんじゃねぇかカール』


『どうだな、その程度の罠を突破できぬのならば本部についてもきっと太刀打ちできん』


『決まりだぜぇ』


グスタフとカールの会話で話がつくと直ぐに反転させて道を戻り始めた

騎士の言う通り数十分ほどで北に向かう通りを見つけて馬を走らせる

静か過ぎる街が本当に不気味であり生活音すら聞こえない事に騎士達も不安を募らせ始める


(くっせぇな)


グスタフはそう思いながらもカールと並んで先頭を走るがふと街の構造が可笑しい事に気付いた

道が単純すぎる事である、今まで通って来た道は殆どが二手に分かれる道ばかり

信仰都市というもんだから4方面の道なども勿論あると思っていたが未だに見つからないのだ

そのことを彼はカールに伝えると彼もそれが妙で考えていたという

数十分走らせるとカールは一先ず馬の体力を気にして歩かせて進ませることにしたが馬たちが少し興奮を覚え始めている


その場の者達はそれがどういう意味かは悟りきっているが動物という生き物は危険を察知するのが予想以上に鋭い、草食動物は殺気を放たれると酷く怯えるのだが馬たちの興奮はその怯えから来るものだと誰もが感じた時、進んでいた道の奥に教団兵の姿を捉えた


『盾兵でぎっしりか』


カールが呟いた、道いっぱいに大きな盾を構えている者が多数おりその後ろには重騎兵がいる

黒い色が教団の兵士の特徴だが彼らはローブを羽織っているわけではなく鎧の腰部分に黒い花のマークを赤色で刺繍した黒いマントをつけている

何の花なのかは誰も知らないがそれはトゥルーゲン教のシンボルマークだ

赤い花はバラが有名ではあるが他に何がある?誰も知らないのだ

カールの囁いた言葉にミミリーは答えた


『あの道こじ開けれる人いるぅ?』


『いってきま~す』


ルルカが馬を走らせて先頭を走り出した

カールやミミリーは多少唐突な彼女の行動に驚き手を伸ばすけどもグスタフがやらせればいいと言いながら止めるのを止めさせる

グスタフ達も後ろの騎馬兵達も馬を軽めに走らせてルルカの後を追うが彼女はニコニコ笑いながら前方をがっちりと固める教団兵のてっお駅の部隊に近付いていく


『敵が来たぞ!ここを通すな!』


『銀狼はいない!時間を稼げ!』


明らかに敵役の言葉を守りを固めた教団兵が口にする

となると戦争の排除対象として確定された事でルルカは直ぐに魔力を前に出した右腕に込め始めた


『そういえばグスタフよ、デネブインパクトとは?』


『見てりゃわかる』


『ん?』


グスタフの返答に首を傾げたカールは正面を向き直すと同時にルルカが天術を放った

デネブインパクトである、彼女の回りに青色の拳サイズの球体が多数現れるとそれは一瞬で守りを固めていた教団兵の頭上に移動したのだ

盾を前にして姿勢を低くしていた教団兵や重機兵は突如として現れた近くの9体に目を奪われて上を見上げたと同時にルルカは前に出した右手をギュッと握って言い放つ


『さよなら』


その瞬間に爆発が教団兵を包んだ

両脇は家や花屋などどこにでも見られる町の風景なのだがそれらの窓を破壊し、壁に亀裂が走るほどの強烈な爆発である

当然囲まれていた教団兵に逃げ場もなく叫ぶ時間すら与えずに敵の前線は暴散し先頭不能となるが多少後ろにいた重機兵はまだ少数ではあるが倒れた状態から立ち上がろうと床に手をつけて上体を起こし始めていた


彼らの後ろは普通の教団兵。黒いローブを羽織って玩具の仮面を被る剣兵と槍兵が前方での予想外な光景に慌てている

確かにガッチリと固めた道をことごとく吹き飛ばすといった光景は驚くしかない

重機兵の近くにいたが指揮をとるものももはやいない、先程のデネブインパクトにて重機兵や盾兵もろとも吹き飛んだのだろう


『私とミミリーは後方に行く』


カールはそう告げるとミミリーを連れて後ろに移動し始めたがグスタフはそれを無言で頷いてよしとした

何故か、今自分達は一本道に近い場所におり左右は建物という壁である

挟み撃ちを危惧してのカールの行動を熊は理解したのだ


『押し込め!』


後ろに控えていた騎馬兵にそう告げるとグスタフは大剣を右手首を使い器用に回しながら馬を走らせ突っ込んだ

正面の守りは既に瓦解しており剣兵や槍兵達が再度守りを固めはじめる前の慌てている隙に突破を狙う


ルルカはグスタフ達が騎馬兵を連れて近づくのを待つと共に馬で駆け出し、教団兵と白兵戦が始まった

だがしかし烏合の衆と化した教団兵に押す力はない

グスタフの斬撃やダークボムでの影系爆発術にてドンドン前に進み始めたのだ

ルルカは教団兵と武器を交わらせ、弾き返して斬りつけるとグスタフを横目で見て口を開く


『時間稼ぎ岳が目的っぽいわね』


グスタフは横にいた教団兵を馬上から顔面を蹴って吹き飛ばすと彼女に答えたのだ


『だろうなぁ、多分本部までまだいやがるぞ?』


『となると多そうね』


『だな』


この場を突破するのに数十分かかったがなんとか壊滅させてから馬で走りはじめるが騎士達の情報だと予想通り後方からも教団兵が挟撃目的で民家からワラワラ出てきたらしいがカールとミミリーが大部分を処理したので大丈夫だと報告がグスタフの耳にはいる


『馬の速度を抑えながら進むぞ』


グスタフの言葉に騎馬兵は頷き返事をした

一本道をまっすぐ進み、道なりに緩やかに右方向に進むと再び道いっぱいに固めたトゥルーゲン教の重機兵が千の数で待ち構えるがルルカが直ぐにデネブインパクトにて敵の前線を爆散させると隙を見て皆が突っ込んだ


(戦いなれてねぇ感じだが何度もこられちゃ面倒だな)


馬上から重機兵を斬りつけながら奥の道に視線を移す

ジャムルフィンは狼気だが彼のように技を連発は出来ない

格下相手でも量で何度も待ち構えるられては技も使わざるおえない

時間稼ぎとじり貧という嫌な策にグスタフは舌打ちをする

この場も難なく殲滅すると熊は馬を歩かせて進むよう皆に指示を出す

何度も殺気を放たれて馬が興奮しては疲労も溜まるだろうと危惧したのである


『面倒ですねグスタフ殿』


騎馬兵が口を開くとグスタフは溜め息を漏らして話し始めた


『一万全てでくるべきだったな』


『しかし他の騎馬兵は各所の街に…』


『わぁってるさ、ルルカの術も乱発出来ねぇから次は自力で行くぞ』


『了解しました』


その会話を聞いていたルルカは自身の赤く長い髪を左手でいじりながら口を開く


『本部で撃つ分残したいわ』


『だろうなぁ』


鼻で笑い、グスタフが返事をして彼女と並びながら先頭を馬で歩いた

その後のは同じような出待ちが二度とあったがそれはグスタフのダークボムで敵の前線に黒い球体を落として吹き飛ばしてから突っ込んだがルルカのデネブインパクトと比べると威力に欠ける

だが落ちた場所を中心に敵は吹き飛び前線は半壊はするのでグスタフを先頭に突破を開始する


進むこと三時間経過してからだ、街の建物の上から教会の本部が見え始めた


『あらま、大きな教会』


口に手を当ててルルカが驚く

あんな大きな教会があるのかと言うくらいの驚き方だがゼリフタルにある一番大きな教会の何倍かも測定はできない

特徴的な教会のステンドグラスも大きく、財を見せつけるかのような建物に近いがその後ろにも大きな施設と見られる建物が見え隠れしていた


『お布施で建てたトゥルーゲン教会本部です、あそこの前の広場はとても広いのできっと教団兵はそこを守っているかと』 


騎馬兵の言葉にルルカは質問をする


『どのくらい広いなのかしら』  


『およそ1万が余裕をもっておさまるくらいです』


『わお』


ワザとらしく驚くルルカ

そうして後ろの状況報告も度々グスタフの耳に入る、どうやら後ろからの敵が多いらしいけども問題ないとグスタフに伝えよと伝言が届く

グスタフはその言葉を信じてひたすら近くの騎馬兵の言葉に従い道を進む

時間にして3時間は馬で進んだであろうか、グスタフ達は敵地のど真ん中だと言うのに堂々と休憩を取ることにしたのである

場所は左右の建物を身てばすぐに商店街の通りだとわかるが人は誰もいない、だが見られている気配はするのだ


『ケッ!』


グスタフは建物の2階窓からカーテン越しにこちらを見ている街の人を発見した

明らかに煙たそうな顔をした彼らは教団側の国民、彼ら迄も牙をむく事はないと思いたいが一応の警戒は必要だと指示を出す、最後尾も敵をあらかた倒したらしく落ち着いたという事でようやく馬を降り始めるグスタフだがそれと同時に他の者も馬を降りて水をあげはじめる


ルルカは降りると背伸びをして辺りを見回して微笑むがそれでも内心きっと警戒は怠ってはいないだろう

皆昼を過ぎたという事で配られたおにぎり2つを口に運ぶが誰も口を発しようとはしない

緊張の連続なのだ、いつ襲われても可笑しくはない場所であり本部迄は約2時間の位置


『慣れてますねグスタフ殿にルルカ殿』


騎馬兵の1人が彼らを見てそう告げるとルルカが笑顔で答えたのだ


『緊張すると死ぬわよ?体を硬くして良い事なんてないもの』


『それはわかってますが・・・』


確かにそれはわかっているがそれでもここまで慣れていることに騎馬兵達はグスタフ達を羨ましそうに見つめる

明らかに自分たちよりも死地を抜けて来た者達の堂々たる雰囲気なのだろうと頷ける様子に騎馬兵は急いでおにぎりを食べ終わると小休憩終わりまで周りの警戒をし始めた

静か過ぎる街に不気味さを覚え始める一行はどうしてこんなに死んだ街の様になっているのか不思議に思っていた


敵が攻めてくるとわかりきったかのような状態でもあると捉える事は可能だがその思惑は時期尚早なのかもしれない


(でも敵はいなさそうねぇ)


ルルカは懐から干し肉を取り出して齧るとそう思いながらも向かうべき道の奥に視線を向けた

先ほどまで連続して邪魔をしていた教団兵がまったく現れないのだ

小休憩になった途端である


『止まっていればあっちからはこねぇか、というか決められた配置から動かねぇのか』


『多分時間稼ぎ目的なら刺激するより黙って待っている方を選んだんじゃないかしら』


『なら十分に休ませてもらうぜぇ』


欠伸をするグスタフはなんと建物の壁を使って仮眠し始めたのだ

この場でそこまで出来る事に騎馬兵は目を開いて驚くと口々に言う


『おい・・寝たぞ・・・』


『マジか』


『何をしてきたらそんな事できるんだ』


その言葉たちにルルカは小さく笑う、熊が寝た事でルルカは代わりにグスタフを守るようにして周りを見回すが彼女は彼の行動は正しいと思っていた

本部に辿り着けば一番動くのはグスタフであろうと考えているからである、強敵を倒す者はカールとグスタフの2人だろうと感じ、それまで十分に休ませてあげようと何も言わずに仮眠させたのだ


そして10分後、小休憩が終わると同時にグスタフが目を覚ます

人間時計という言葉が似あう熊は起き上がると思いっきり背伸びをしてから馬に近付き乗る

それを見た者達は無言で馬に乗り始めると準備が出来次第進みだす

馬を走らせ1時間経過した頃だろうか、奥に目を向けた先頭の者達は目を疑った

誰もが口を開けてそれは夢だと何度も言い聞かせた、橋が見えるがその橋の奥でこの街の国民であろう者達が道を塞いでいたのだ


武器は持っていない


『そりゃするわよね』


ルルカは苦笑いしつつも首を傾げる

対するグスタフは目を細めて真剣な顔を橋の向こうに向けていた、橋の幅は約10mと普通であり下には道が交差するように通っている

馬を歩かせて進み、橋の中央付近まで行くとグスタフ達は足を止める

騎馬兵は困惑していた、国民が道を塞いで自分たちの邪魔をしているからだ

こうなると騎士達は立場上弱い、確かに教団兵という元仲間の敵に剣を振るのは致し方なしといったところだが国民となると話が違う


守るべき存在が邪魔をしているからである


『グスタフ殿・・・』


『黙ってろ』


騎馬兵の言葉を遮るようにして1人前に歩き出すとルルカも馬を歩かせてついてくる

彼女も笑っていない、無表情に近いだろうが彼と共に橋の終わり付近にいる国民に近付くとその者達は声を上げ始めたのだ


『信仰を脅かす者め!仲間である教団を殺めるとは何事だ!』


『平和を重んずるといいつつ武力を使うなんて!恥を知りなさい!』


『きっとこの歴史はディロア歴史上一番の悪魔的な所業だと語り継がれるぞ!!』


グスタフは溜息を漏らした、軽く後ろを見ると困惑している騎馬兵達が見える

そのまま正面に顔を戻すと首をゴキゴキと鳴らしながらルルカに話しかけたのだ













『悪ぃなルルカ、俺だけでいい・・・お前は何もするな』


その言葉が何を意味するか彼女は直ぐに悟る

だがしかし彼女は頷く事は無かった、ただ凍てついた表情を橋の奥で邪魔をする教団側の国民を数秒見つめる

そうしてルルカは気付かない程度の笑みを口に浮かべてこう答えたのだ


『私も半分背負ってあげるわ、勝手にグスタフの中で私を作らないで?』


グスタフはハッ!と笑った

頭を掻きながら横目で彼女を見るとそこでようやくルルカは笑ったのだ

勝手に作るなと言われた事に彼は恥じらった、考えてもいなかった事だが彼は彼の中でのルルカがいる

だがそれは本人に近いけれども一番大事なものを見ていない、それを彼は知った

ずっと旅をしてきた、何をするにしてもチームと共にある事を思い出したグスタフは大剣を右手で握ると左手を頭より少し上まで上げた


すると正面の国民の頭上に黒い球体が現れた、直径2メートルほどの大きな球体だ

彼ができる一番大きいダームボムである


『な・・・何をする気だ!』


『おぞましい術!国民に手を出すのか!』


そんな声は熊に入らない

つまらなそうな顔を浮かべたグスタフは小さく呟きながら優しく左手を振り落とした


『ダームボム』


落ちる黒い球体に正面を塞ぐ国民は顔を真っ青にして逃げ始めたが既に遅かった

グスタフ達に背中を向けて地面を踏みしめたと同時にその球体は彼らの近くに落ちて爆発を起こす

黒い煙が爆風によってビュンと辺りに舞い散ると人が宙を舞っていく

その術の近くにいた国民は確実に息絶えたであろう、生き延びたとしても重傷になるのは間違いないほどの威力である


爆発がおさまると同時に奥にいた国民たちが腰を落として絶望を顔に浮かべている

戦意喪失というよりかは予想外過ぎて感情が迷子になっているのに近い

それでも奥にはまだ国民がいる、大半が背中を向けて逃げ出すがその場に留まり強気を見せる奴もいた

彼らは立ち上がると肩を震わせながら口を開く


『国民に手を出すことは国の終わ『ファイアバレット』』


ルルカは口を開く男に向かって火術を放つと避ける暇もなくその者は炎に焼かれて叫びながら走り回り始めた

騎馬兵達も見る事のない地獄絵図に誰も動けない、動けているのは前の2人だけ

本当にこれでいいのかと思いながらも息を飲んでそれをただひたすら見守るが額には大量の汗が流れている


国民を殺めたという事実は今まで体験したことのない騎馬兵にとって敵であっても僅かに悲しみを覚える


燃え盛る男は建物の壁に体を打ち付けながらも暴れるがグスタフは前に進むとその男を大剣で斬ってトドメを刺した

今彼の大剣には敵の血じゃなく国民の血で染められている

本当にこれが正しいのか騎馬兵達はわからなくなるがその不安は彼の冷徹な表情から放たれる言葉で多少和らぐことになる


『両手に剣を持たなくても心に剣を持っていれば敵だ、いつまでも真面目アピールしてんじゃねぇぞ・・・これは現実なんだ、夢を見たいなら帰れ・・・未来を見たいならば剣を握って進め』


彼は生き残りの国民には目もくれず橋を渡り切る


『ヒィ!?』


『悪魔め・・』


既に教団側の国民も邪魔をするという概念は消えて保身にまわっている

グスタフに道を譲ると言う事はそう言う事である


『さぁ行きましょ』


ルルカもグスタフの後ろについていくと騎馬兵達は互いに顔を見合わせて小さく頷き後に続く

騎馬兵達も理解はしている、ここで立ち往生してしまえば全ての作戦が失敗に終わる

どんな手を使ってでもトゥルーゲン教の教会本部を陥落させてから南大門進軍をしなければいけない

ここが落ちないとトゥルーゲン教は死なない


わかっていてもそうしたくはないと言う間違った感情が騎馬兵達の剣を鈍らせた

国民であっても敵だ、自分たちが進まないと国が危ないと言う事を再度理解する彼らは前を歩くグスタフとルルカを信じて馬を歩かせる

そうして不思議にも何事も起きぬまま教会本部前の大広場に辿り着いたのだ

先頭集団のグスタフはその光景に不敵な笑みを浮かべた、ルルカは面倒そうな顔つきで溜息を漏らす


『やはり・・・ここが』


騎馬兵の1人がそう呟く

今大広場には1万の教団兵が彼らを待ち受けていたかのように鉄壁の陣を敷いていた

盾兵と重騎兵が横にずらりと2列ずつ並んでおり抜ける隙間は無い、これぞネズミ一匹通さない気だと言わんばかりだろうがグスタフは肩に担いだ大剣を降ろすと振り向いて騎馬兵達に口を開いた


『覚悟決めろ、突っ込むからな?』


普通ならば無理だと言い返したくなるが彼が言う言葉には不思議と信頼感が持てる

理由はわからないが彼なら遂行する気がするのだ

騎馬兵達は剣を握ると正面に目を向ける


敵の後方は弓兵だらけ、守っている間に後方の弓で数を減らす気だろうが数は千程度

盾兵と重騎兵が多めだと見てわかったルルカは右腕に魔力を込め始めるとそれに気づいたグスタフは首を傾げて馬を前に歩かせた


『悪ぃが通るぜ?』


言い放った後に教団兵達が号令をし始める


『敵!約5千!ここでなんとしても死守しろ!』


『弓兵は構えて矢を引け!』


『盾兵は姿勢を下げてその場を守れ!奴らを止めろ!』















『やれるもんならやってみろぉぉぉぉぉぉ!!!』



大声で叫びながらグスタフは右手で大剣を握りしめながら馬を走らせた

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新作ですがこの小説を見てる人ならわかる部分が多い内容になってます 勇者ですが指名手配されたので逃亡ライフをはじめます
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