35話 南大門第防衛戦 魔天狼の力
『天銀』
走り出してきた魔族軍100m上空からその最悪な技を俺は落とした
直ちにディロア兵士達は姿勢をその場にしゃがみ始めるが魔族軍は何が起きたのかわからずに堕ちてくる銀色の球体を眺めてしまう
俺の天銀が地面に激突した瞬間、強烈は衝撃波が巻き起こり大爆発が発生する
付近の魔族は即死当然、生きていたとしてもいずれ死ぬ
幾多の敵の兵士が風に煽られる枯れ葉のように容易く吹き飛んだり飛んできた石など硬い物資ににぶつかって致命傷を負ったりと俺に向かってきた敵側は陣を崩してしまう、魚鱗の陣の後方は全滅と言ってもいいだろう
凄まじい衝撃波は当然こちら迄届き、多少後ろにいた兵士達が吹き飛びそうになりながらも必死に地面を掴んでいる
俺もナッツも立ち膝の状態で衝撃波を耐えるがゴロゴロと魔族の兵が俺を通過して後ろに飛んでいく
その悲惨な技は数秒でおさまると直ぐに立ち上がり慌てふためく魔族軍に向かって銀超乱を空に展開し100匹の爆発属性の銀狼を隕石のように敵陣に素早く打ち込んでいく
銀狼は地面に触れたと同時に爆発を起こすので周囲にいた敵は吹き飛んだり致命傷を負ったりと無事では済まないがその爆発が連射のように起き、敵の前線をことごとく粉砕していく
それでもまだ一角であり俺の正面の奴らだけ、左右にはまだ沢山の魔族がいる
だが顔を真っ青にしている
『メッサーシーセン!』
ジャキンと金属音を鳴らしたナッツの操る剣30本が半々に左右に剣先を向けて紫色の光線を撃ち出す
敵は30mの無い場所で隊列を正そうと必死になるがそうさせない
ナッツがそれを読み取り左右の敵に向かって光線を撃ち出すと命中した魔族はそのまま押し込まれる形で後ろに吹き飛ぶが1人だけじゃない、1つの光線が何人も巻き込みながら後ろに吹き飛ばしている
物理的な攻撃の為、貫通はしないがなかなかの押し込みだ
俺が引き連れている後方のディロア兵士は四つん這いのままポカンとした顔をしているがそうしている暇はない
俺は彼らに向けて大声で叫んだ
『立て!敵の魚鱗は崩れかけだぞ!押し込め!正面の奴らは俺がやる!!』
隣のネロ大将軍は既に魔族と衝突した後、左翼である彼らの救援をするために押し込まなければならないがここでようやく当初の目的を果たすために俺達は動ける
『化け物ぉ!!』
『こんなに強いのかよ十天は!』
前方の魔族兵の声だが無視だ、我を取り戻したディロア兵士が予想外のやる気を顔に浮かべて大声を出し、武器を力強く握りしめて立ち上がると一斉に走り始めた
五月蠅いと注意したくなるほどのこちらの怒号だがそれでいい、俺はナッツと共に前に出ると正面でピンピンしている一際立派そうな鎧の魔族兵に近付いていく
『左右頼むぞナッツ!』
『はい!!!!』
こいつがいるから俺は正面にいる強者を倒すことに専念できる
『この化け物めがぁ!!こい!』
手に持っている剣鳥羽別に腰から剣をまた抜いて2刀流となるが少し格好いいと思ってしまう
彼の周りには魔族重騎兵、俺が近づく前に彼を守るために前に躍り出るがデカい癖に意外と行動が早い
左右はきっと大丈夫だ、強い奴は俺の目の前の奴しかいない
彼と同じくらい強い奴がネロ大将軍側である左翼からも感知できるが暫く耐えてくれ
ハルバートを左手で握りしめると俺は敵隊長格を隠した魔族重騎兵数百の波に突っ込んだ
『1人で何が出来る!!』
『1人で色々出来るんだよタコ助!』
身構える重騎兵の言葉に返事をしつつもハルバートを横から降った
彼は最初両手の剣で防ごうとしたのだろうが残念なことにその頑丈そうな剣は豆腐のように簡単に斬り裂いてしまい魔族重騎兵諸共一気に斬り飛ばした
そのまま阿鼻叫喚な声を発する魔族重騎兵はガードした筈なのに容易く斬られる仲間の剣を見てから自身の左手に握っている盾を見る、無駄だと理解したんだろう
彼らは後ろに下がり始めた
(守る奴が下がればそれはもう意味は無い)
重騎兵なのに自分たちの装甲が役に立たないと知るや否や突如として下がりながら腰に装着していた大剣を向けてくるが形だけの威嚇であり彼らの手荷物武器も意味が無い事は承知の筈だ
一瞬左右を見渡すが天銀によって崩れた敵の陣形の乱れが幸いし、味方のディロア兵が箇所個所で敵と交戦し始めた
1人の兵が敵に蹴られて転倒して刺されそうになっていたので俺は銀閃眼でトドメを刺そうとしていた魔族の胸部を通常弾で撃ち抜いてから助けると直ぐ正面を見て散弾を銀色の右目から撃ち出した
炸裂音が正面から発生すると小さな弾が一気に正面の放出され、重騎兵と言えどもその重い体重が後方数メートル吹き飛んで道が少し出来たので俺は前に進むと後ろのナッツがついてきてくれる
枯れ葉左右の重騎兵の鎧の付いていない関節部分に浮遊させた剣を突き刺して転倒させ、攻撃してきた重騎兵の振り下ろす大剣を5本の剣を使い受け止めつつも手の握るデュリトリオンという立派な剣を敵の膝関節に突き刺してから転倒させ、真上から顔面に向けて数本の剣を隙間から突き刺していた
順調だと思いながら向かってくる重騎兵を一振りで斬って倒していくが数が多い
シルバーダンスで押し込めるのかもしれないと思った俺はすぐさまハルバートをついて5メートル級の銀狼を出現させると前方に突っ込ませた、面白いほどに魔族達は質量差によってどんどん吹き飛ばされていくし銀狼が道を作ってくれるので俺とナッツは楽に奥まで進んでしまう、だが銀狼は数秒程度で消えてしまうがもう少し持続時間延ばしとけばよかったな
『狼!?!?』
『構えろ!師団長を守れ!』
魔族の重騎兵が焦りを見せるかのような声で俺の正面を再び固めるけどもどうやら師団長だったんだな魚鱗の陣の先頭の奴は、あいつだけ上手く味方が壁になってダメージが少なかったのだろうがいきてるんだな、よしよし
となるとそいつを倒せば俺ガイル右翼側の魚鱗の陣は無駄に終わる筈だ
『敵はSランクの魔物だと思え!普通の人間じゃないぞ!』
酷い、人間である
溜息を漏らしつつも後ろにいるナッツは交戦していたが一度顔を見合わせると互いに頷いてから同時に前に走り出した
『スピード勝負ですよ!敵陣の中ですから長居すればど『知ってる!!!』』
言われなくともわかるよナッツ、抜け出すのが厳しくなるけども俺だけならばいい
だが今俺の後ろにはナッツ、彼は逃げるのは難しいのだ
俺の様なスピードを持っているわけでもなくそれは普通の考えだ、敵陣に突っ込んで無傷で買えること事態可笑しいからな
『銀超乱』
俺は左右の兵士達が押し込みやすいように彼らの前の方に半々ずつ爆発属性の銀狼を頭上から撃って敵の陣を更に崩す、折角再構築した魚鱗の陣の横側の列も俺の攻撃によって穴をあけた
一先ずそれで味方は数分頑張ってもらいたい
んで正面にいる重騎兵をハルバートでバッタバッタと斬り飛ばしながら前に進んでいくがナッツは闘気温存の為先ほどのメッサーシーセンから技を発動していない、てかこいつは技無しでも30本の剣を操るだけでも鬼畜なんだし強敵用にとっておいていいだろうな
『先輩!もうすぐです』
ナッツが正面の先を指差すと重騎兵のすぐ後ろに師団長らしき者がいるが鎧でわかりやすい
黒いだけじゃなく赤いストライプが着いている、重騎兵の後ろの為全貌は見えないけどもこいつらしいな
『こやつを倒せば一生楽して暮らせるぞ!魔族の誇りをかけて打ち倒せ!囲んで四方から攻撃せよ!』
怒号に似た声がその師団長から言い放たれた
悪いけどもそうさせる時間を与える訳にはいかない、俺は正面の重騎兵に向かって走り出すと彼が前に出した大きな盾ごとハルバートで突き刺して貫通させて体に風穴を開けた
盾なのに貫通するって普通考えないよね、ガードは無駄だとわかっていても永年の経験という呪いが今開花し、彼らは無駄でもガードしてしまう癖が出てしまったのだ
『ぐっ、ぐぞ・・・』
目を見開いた重騎兵は腹部から流れる血を見ながら後方にバタンと倒れるとようやく前線の師団長に出会えた
顔もメットで見えないがそこそこ強い奴だ
彼の背中には大斧が装着されているが珍しいな、だがその武器を使う熊を俺も知ってるけどもあいつ今何してんのかな?あいつも協力してほしかったな・・・
『貴様が銀狼か』
師団長である赤いストライプが入った黒い鎧の男が俺に話しかけてきた
『ああそうだぞ?』
『俺は左翼師団長アルラドだ、流石の十天でもこの数を相手に出来まい?』
『どうだろう、わかからんな』
『ここで仕留めてやろうぞ!』
やる気だなコイツ
俺がここまで来たと言う事で師団長の側近騎士は剣をこちらに向けて構えたり術士は魔力を伸ばした右腕に込めて待機している
直ぐに攻撃はしてこないんだな、だが正面には師団長を守る騎士はいないけども大丈夫だろうか
ナッツは30本の剣を頭上で旋回させるけどもあれのせいで敵は迂闊に攻撃できないのだろう
見ていないといつ空をグルグルと円を描いて飛んでいる剣が襲ってくるかわからんしな
互いに睨み合う時間は無い
『ナッツ!』
『わかってます!』
俺の声でナッツは10本の剣を正面に飛ばす
その光景に目を奪われるだろう、読み通りに魔族騎士達はナッツの操る剣に奪われて俺から視線を外すが一瞬だけでも十分すぎる、流石前線マンだなナッツ
その間に俺は銀彗星で一気に間合いを詰めて騎士達をすり抜けて師団長の真正面に移動する
いきなり現れた俺に師団長と呼ばれる男は驚きを仕草で表しながらも右手を後ろに回して背中に装着している大斧を取り出そうとしているが武器は最初から抜いとけ馬鹿
『なっ!?!?』
驚いた声を出してももう遅い!
ハルバートを下から斜め上に切り上げると師団長と言われている魔族の鎧を砕いて胸部を深く斬りつけた
赤い鮮血が宙を舞うとようやくナッツの剣から師団長に視線を戻す側近騎士達は口を大きく開いて彼の名前を叫んで近付いてくる
俺は直ぐに下がり師団長に集まる彼ら諸共、銀閃眼の連射弾で撃ちまくった
辺りに炸裂音が鳴り響くと俺の視界にいる魔族兵達が俺の銀閃眼に次々と倒れていくが俺も反動で倒れそうに・・・ならない!
どうやら魔天狼になればナッツに支えてもらわなくても良いらしい
連射された銀閃眼を味方に当たらぬ様に相当しながら後ろに下がるがそこら魔族兵の死体で歩きにくいったらありゃしない
『こっち見ないでくださいね先輩!』
耳を抑えながらしゃがんで後ろに下がるナッツをチラ見で確認してから返事をしてあげた
もう俺の周りに敵がいないぐらい広々としている、こっちの魚鱗の陣は中心部分から壊滅である
ナッツの名を呼んで直ぐに後ろに下がろうかと考えたけどもそうしている間にナッツは後方であらかた魔族を片付けて前に進み始めた兵士達に向かって大声で指示をし始めたのである
『銀狼さんの位置まで前進後ここで陣を取って正面とネロ大将軍のいる左翼軍で分かれてください!正面は鉄壁の陣で数分だけ持ちこたえるように!!!』
『『『ははっ!!!』』』
いい返事が聞こえるが戦争前と違って少し活き活きとした面持ちの兵士達
意外と被害も少なそうだしグランドパンサーもさっきまで魔族と混じっていたのにいないのは多分天銀で吹き飛んだ
ナッツは後方の兵から盾兵と槍兵を呼んで正面を固めるように指示を出すと直ぐに俺に視線を向けてネロ大将軍と戦う魔族兵達に指を刺して口を開いたんだ
『銀超乱を敵の右翼軍である魚鱗の陣の中央に2回ほど撃ってください』
『うい』
後輩に言われるがまま俺は頭上高くに銀超乱を展開させた
射程距離は見えるとこまで届くからこっからでも届く、押されるかもと少し心配はしていたがどうやら全然持ちこたえている様だ
『僕の合図で敵の右翼軍強襲隊は横っ腹目掛けて攻撃を開始してください』
ナッツがそう言いながら俺に手を出すと開いた手をグーにしてくる、やれってか!
でもここはナッツの指示に従おう、こいつのほうが頭が良い
正面からは再び増援と言わんばかりに1万ほどの魔族剣兵が向かってくるが驚くことに熊帝が3体いるんだよ!!敵の前線に!
『グルァァァァァァ!』
『フシュルルルルル!』
『グァボォォォォォ!』
上位の魔物使いがいると思われる、流石にこいつ3体とか普通の人間ならば絶望的だぞ
となると早急にネロ大将軍を楽にするしかないしそれから俺は正面のあの3頭と戦えばいいのだ
展開した銀超乱をネロ大将軍の軍と戦う魔族軍の中心部に100匹を連射するようにして撃ち出すと着弾地点から爆発が起きる
爆弾の雨というような光景が敵の魚鱗の陣である中心部に起きるとその陣形は徐々に崩れ始めていく
次にネロ大将軍の前線が怪我しない程度の敵の前線に撃ってくださいと言われたから言われるがまま敵の前線にもう一度銀超乱を討つが本当に時代が違う戦争をしている気分となる
近代文明対古代文明って感じに近いモノを感じるんだけども爆発しまくりの状況で敵も流石に隊列を維持できるはずもなく一気にぐちゃぐちゃとなっていく
『こっちは100万だぞ!?なんで6万程度押せない!?』
『馬鹿野郎!十天がいるんだぞ!』
『なんの職なんだあれは』
魔族もてんやわんやだ、慌てている者がいるが部隊長が直ぐに活を入れて落ち着かせ始めるがその隙にネロ大将軍は数歩前に押し込んで行く
総大将だというのに全然で剣を振り回し魔族兵をものともせず斬りまくりな彼には圧巻だが大将軍って前に出たがるよね
まぁ見方を鼓舞するためには見せるべく勇姿を見せるためだろうけどもそれに比べて魔族側はピンとくる敵がいないだろう
『右翼強襲部隊は横から攻撃してください!先輩は熊帝頼みます!』
ナッツの大声で敵の横っ腹を攻撃する強襲部隊500人が5組
計2000は横に移動を開始、敵の崩れた魚鱗の陣を骨の髄まで飲み干す気なのだろうがあいつに任せて俺は俺の仕事をするか
正面から迫りくる3頭の熊帝に視線を向けるがどうやらネロ大将軍側には突っ込ませないらしく明らかにこちらを叩き潰す気で熊帝を今投下したような感じがする、しかも後方からは魔族の術士が放物線を描きながらファイアバレットが沢山こちらに振ってくる、それを見た後方のディロア兵士達は流石の火の雨に盾兵を前にして隠れ始めるがあんなの見たら隠れたくなる
『銀彗星』
癖で口を開いて加速技を言い放つけども言わなくても出来るんだ、まだ慣れないんだよな
そのまま1人だけ俺は出過ぎた真似をするがかまわずに真正面から大きな巨体を揺らして4足歩行で走ってくる熊帝の横を通過しながらハルバートで側面を深く斬り裂いく、ハルバートの刃の部分が全て隠れる程深く言った為熊帝といえども致命傷であり、走りながら顔面を地面にぶつけて戦闘不能にする
ランクAの熊帝も一撃で屠れるのは銀彗星とハルバートのおかげだ
今迄は多少倒すのに時間をかけていた筈が今ではこんなあっさり倒してしまうのだ、降りしきるファイアバレットを避けつつも右側にいる熊帝に視線を向ける、早くしないと後方で敵の攻撃を防ぐディロア兵士に衝突するからだが俺は時間節約のためにその熊帝を銀閃眼の狙撃弾を右目から勢いよく撃ち出して側面から頭部を破壊し絶命させてから銀彗星で残り1頭に走り出した
近付くまでに銀超乱を頭上に展開し、術を討ちまくる魔族の術士の隊に向かって満遍なく落としてから熊帝に側面に辿り着いた
『グルァァ!』
俺の気配に素早く気づいた熊帝は四足歩行で走っていたにもかかわらず、前足をこちらに払うようにして攻撃してきた
だがしかしただの物理攻撃は簡単に回避は出来る、軽く跳躍して奴の頭上に移動するとそのまま体を縦に回転させてハルバートを振って背中を斬りつける
リーチも前の紫林檎の槍に比べて多少長い為、前の感覚できると深めに敵を斬り裂く事が出来るんだけどもこいつも斬ったと同時に顔面を地面にぶつけてゴロゴロと転がりながら動きを止める
まだこいつは息はあるがいずれ死ぬ、ハルバートを肩に担いで側面に顔を向けるとどうやらネロ大将軍と交戦する魔族の魚鱗の陣の横っ腹からの攻撃に成功した様で敵はどんどん下がっていく
まぁ早く下がらないと先頭の敵がただただ無駄死にになるからその早めの判断は正しい
(速すぎるな、あっちの師団長はまだ生きているか)
先ほどまで感じていた周りよりも強めの気配はまだ生きている、敵の前線にいる様だけどもネロ大将軍とも距離は近い
だが深追いは出来ない為にこのまま敵が下がっても追う事はせず、さらに守りを固めるためにディロア盾兵を前線に並べ始めている、3列迄全て盾兵であり流石にあの壁は抜けるには熊帝を使った方が良かったと俺は思うけども敵は厄介な俺を倒すために3頭同時に襲い掛かって来たのかもしれん
こっちが担当している兵士達も俺がいるところまでは勿論来ない、後方100m先にて左翼軍と同じく盾兵を3列に並べてその4列5列目には弓兵を展開させ始めているがこれは俺とナッツの指示じゃなく近くにいる部隊長らしき騎士の指示だと思える
前線にいた剣兵や騎士はあらかた周りの魔族兵を片付けると冷静に一度後ろに探し始めたのだ
それでいい
『これ以上進まず一度下がれ!息を整えよ!』
『『『はっ!』』』
騎士風の男が剣を上に上げて大声で皆に指示を出していた
此方の被害は予想よりも最小限だと思われるが辺りを見回すと倒れた魔族兵に紛れてディロア兵も倒れているが息をしていない
敵の術士のファイアバレットにやられて死んだ者や普通に白兵戦で斬られて倒れた者などが地面に転がっているが彼らのために黙祷などしている暇もない、終わったとに散った兵士達の為に感謝を込めて祈るしかない
(よく頑張った)
そう心の中で言う事しか今は出来ない、終わるまでは
『先輩!左翼軍は安定してきましたがこっちも大丈夫そうですね!』
ナッツから俺は離れてしまっていた事に今気づいた、走って追いかけて来た彼は息を切らしているけども2人で一度後ろに探しながら敵軍に目を向けた
するとどうだろうか、俺の目だからこそ見えるかもしれないがグランドパンサーが3千規模で1キロ先から走り出そうと興奮している様子が見受けられる
どうやら魔物使いは充実しているらしく俺達の体力を削ってくる気だ
となると先ほどの敵の魚鱗の陣は本命じゃないわけか
『先輩の体力を削る為ですよ!熊帝3頭もこっちに襲わせるなんて可笑し過ぎます!』
『1キロ先に5千くらいの数のグランドパンサーが待機しているけどもあれも俺狙いか?』
『5千!?・・・まぁそうです!ですがグラパンならば騎士達に任せて僕らは少し後方で様子を見ましょう!』
一先ずナッツの指示に従う他ない、後ろに下がり終えると同時に直ぐにグランドパンサーが向かってくる気配を感じて再び正面を向くが走ってきている、茶色の毛並みが何故か黒いけどもあれは具練度パンサーの気だ・・・間違いない
魔物ランクCの面倒な奴だがここは味方の兵に任せるか
ナッツが直ぐに後ろで守りを固めて待機していた兵士に第2波であるグランドパンサーの波を伝えると騎士と槍兵が前線を固めていた盾兵をどかして前に出てくる、数はパッと見3千だが大丈夫だろう
数はあちらが上だけどもただぶつかるわけじゃないのは俺でもわかる
俺とナッツは前線の盾兵の後ろに下がると前で武器を構える騎士や槍兵は何かを待つように構えながら止まる
『引き付けてから撃て!合図はする!』
4列5列目の弓兵が矢を引いて空に狙いを定める
弓兵長らしき者は肉眼でグランドパンサーを捉えると目を細めて真剣な面持ちで距離を測り始めた
俺から見ても300m付近に差し迫った時、彼は大声で叫んだ
『弓兵!放て!!!』
役2千の弓兵が一斉に矢を放つと山なりに飛んでいく矢は先頭を走るグランドパンサー達に襲い掛かった
『ギャウッ!』
『ガフッ!』
『ギャッ!』
命中したグランドパンサーは悲鳴に近い鳴き声で鳴くと転倒しし始める、だが1発程度であいつらは死なない
直ぐに唸りを上げて走り出してくるがそうしている間にもこちらの弓兵は2発目の矢を撃ち出したのである
奴らが前線の騎士達に衝突するまでに何度も撃つのだろうが3発目で限界だろう
俺はオマケで銀超乱を討とうかと迷い空を見上げるとナッツが隣から肩を軽く叩いて口を開いたんだ
『この程度任せましょう、これを抑えれない様ならば何をしても彼らは防げません』
どうやら俺は心配のし過ぎだったんだな、頭を掻きながら頷いて様子を見ることにしたよ
ナッツの言う通りグランドパンサー5千程度に苦戦などしたら何をしても防げない、ここの武力は俺で補っているような感じに放っているけどもここにいる以上は兵士達も守るべく行動をしなければいけないのだ
『すまんな』
『先輩は優しいですから、彼らを信じましょう・・・彼らだってプライドはあるんで任せっきりは嫌なはずです、今任されて見せ場が出来たから僕らよりも前に堂々といるんですから』
『そうだな・・・何でもかんでも俺がやらん方がいいってことだよな』
『ですです、大事な場面で動きましょ!先輩の狼気も無限じゃないんです』
『タツタカが羨ましいよ』
『あの方が居たらきっと一方的な魔族虐殺ですよ』
見てみたいな、だが彼は今教会本部にいるエイミーを助けている筈だ
そして俺はここを任された、ならば俺にもプライドがある・・・絶対に抜かせない事
前線から気合の声が聞こえるがどうやら5千のグランドパンサーと衝突した様だ、だが弓の攻撃3発で多少数は減っている
今でも4・5列目の弓兵は後方に控えるグランドパンサーに向けて矢を放っている
騎士達はグランドパンサーと戦闘を始めているけどもどうやら魔物の対応は心配ないらしい
騎士1人でグラパンを一撃で切り倒し、跳躍して襲い掛かって来た他のグランドパンサーを回し蹴りで顔面を蹴って隙を作るとそのままの勢いを使って体を回転させて大きく斬り裂いた
綺麗な連続した動きに俺は口を丸くして少し驚く、綺麗だな・・・流石騎士だ
『お前ら!今が武勇を奮う時ぞ!我らルガット旅団の力を示せ!銀狼に負けぬ戦いを見せよ!!』
あの強い騎士は旅団長のルガットか、今気づいたけども彼だけ腰から青いマントをつけている
武に自信があるようだが襲い掛かる敵を次から次へと一撃で斬り裂き、時には大口を開けて目の前まで迫るグランドパンサーの頬を全力で殴り飛ばしたりしているけども凄いなこいつ・・・
僅かに彼の声で士気が上がったらしく少しずつグランドパンサーが数を減らし始めた
好調な様子を見届けてから第3波を警戒して奥に視線を向けと徐々に近づく黒い横陣が確認できた
どうやらあっち側の騎士だが数は3万と多いぞあれ・・・精鋭ですと言わんばかりの面構えしかおらん
明らかに恐れを顔に出していないからな
『先輩、左翼軍が敵後方の弓兵によって動けていません・・・撃っちゃってください』
ん?っと思いながらネロ大将軍の軍に顔を向けた、彼らは押されておらずましてや押している側だが立ち止まっている
理由としては先ほどナッツが口にした通り前線の敵からさらに後ろにいた弓兵の雨によって盾を上に向けて耐える事に専念していたのだ、味方の前線である槍兵や剣兵はその雨に倒れ始めているけども不味いな
永く続けば少ない兵力がさらに少なくなる
言われたとおりに銀超乱を空に展開して隣奥にいる魔族弓隊に100頭を撃ち出すと弓兵はいとも簡単に爆散していき弓の攻撃もかなり抑えられたしその隙にネロ大将軍の後方に控えていた弓兵が盾兵の横から姿を現し始めて直ぐに矢を放って敵の奥に落としている
敵の弓兵はかなり少ないけども理由としては敵はここで戦う予定だと思っていないからだった
ディロア王国は敵の数が多い時、大門を固く閉ざして門の上に陣取って戦っていたのだと言う
扉は開けれぬように岩を沢山詰めて敵の雲梯や梯子といった城落としの道具を使い大門上に侵入を試みたりとした防衛戦を幾度となくこなしていたらしいけどもそうなると敵の弓兵はさほど必要じゃない、だって攻める側だからであり防衛側のディロア兵が弓が多いと知って盾兵を多く動員しなければ門を陥落する前に弓であっちが全滅するからだ
だが今は南大門の外で戦っている、敵は弓兵が少なく盾兵が多い
南大門まで問題なく辿り着けると思っていたのだ
だがしかしその考えはゾロアの予想で覆された、俺達はここで戦っている
術士は確かに多いけれども連発できないので直ぐに魔力切れを恐れて連発は控える
敵が大門陥落用に兵種で揃えて来たのならばこっちは全て白兵戦用で行けばいいだけなのだ
(予想でここまですんのかあいつ)
ゾロアは良い仕事している、俺もしないとな
『先輩、敵の精鋭が来てますが500m付近で止まりました』
『数凄いよな、3万くらいか』
『あれきっと全てこっちきますよ、ネロ大将軍側の後方はどうですか?』
『騎士3万こっちかぁ?ネロ大将軍とこには・・・あれ魔族の重騎兵だが2万いるぞ?』
『時間稼ぎですか、強い奴をこっちに寄越して体力削るらしいですね確実に』
『あっちは俺達に援軍遅らせない為の重騎兵か?』
『でしょうねぇ・・・重騎兵は厄介ですが動きは遅いです、一気に敵が数で押し寄せれないのは長い遠征疲れがまだとれていないと思います、話だと魔族の済み地域がここから約500キロ南らしいですから』
1日では疲れが取れないか、ここまで来るのに色々と大変な道中だったと思われるが
だとしたら今日は削るだけ削ってくるのか、一気に攻めてくると思ったけどもあっちも案外疲労がたまってるんだな
暫くするとグランドパンサーの5千をルガット旅団が全て打ち倒す
『どうだ銀狼!我らも出来るんだぞ!!』
『・・・』
変に士気が高い彼に苦笑いで反応してあげるがネロ大将軍側も一度後ろに下がり鉄壁の陣を再度密集させ固める
その後の敵の攻撃はナッツの言う通り重騎兵と精鋭騎士の同時攻撃だった
ナッツからはネロを信じてこっちに専念してくださいと言われたのでこいつと一緒にひたすらハルバートを振りまくって敵を倒していくが先ほどの剣兵達よりも一際強く感じる、だが一撃だ
動きが多少早く感じるだけでも俺から見れば遅い
共に戦うルガット旅団も顔に苦しさを浮かべて応戦するが直ぐに味方後方から連帯が増援に気て何とか体勢を立て直したんだ
勿論俺の付近は安定、近くに騎士達はひたすら俺が撃ち漏らした魔族騎士を処理するかのように2人組で倒してくれている
その間でもこっち側の被害は4千を超えそうだ・・・時刻も何時かわからないが空が赤くなってきている
3万の敵の騎士達も残り少なくなってきたところで敵は下がると入れ違いに再び魔物の波が来た。
だがそれはルガット旅団ではなく南大門近くで待機していたサバス旅団が前に出てきてルガット旅団と交代する形でパペットナイト3千と戦ってくれた
何度も見て思うがパペットナイトは玩具にしか見えない、姿が装備が貧弱な剣士のぬいぐるみだからだ、目は服のボタンになっており口元は裁縫での並縫いといえば正解だろう
『ニーー!』
『ニーー!』
鳴き声が独特過ぎるくらい高い声だ
耐久力は皆無でも素早さはかなりのもの、油断すれば直ぐに斬られるだろうがそのパペットの3千をサバス旅団は難なく打ち倒す
『どうだ銀狼ィィィィ!』
『おおおおおおおおおおおお!!』
顎鬚がとても長い旅団長サバスが剣を持ったまま万歳したようにして吠えると彼の部下達も大声で雄叫びを上げるけども俺なんかしたかな?
ルガットといいこいつといいなんでいちいち俺の名を叫ぶのかわからんけどもそれで士気が上がるならばいっか
聞いてて面白いしな、戦闘前の強張っていた彼らが嘘のようにやる気に満ちている
すると魔族側の方から重たい笛の様な音が鳴り響き
俺の視界に移る20万の魔族兵は全て森迄下がって言ったのだ
これは初戦を終えたという事であり、生きているこちらの兵士達は大声で喜んで叫び出す
『耐えたぞぉぉぉ!!!』
そんな嬉しさを声に出す兵士達を見て俺とナッツは顔を合わせて小さく喜んだ
この段階で俺の狼気は全然減っていない事に気付く、減った感じが一切しない
天銀も撃ったし銀超乱も結構放ったんだけども完全な状態に近い
(なんだこの狼気の量は・・・)
計り知れない継続戦闘能力に今俺は気づく、ナッツでさえもそれを予測できず俺に無駄撃ちを抑えたのだろうがしていたとしてもなんら問題が無かったことに俺は驚いている
それでも万が一に備えて無駄撃ちは今後ともやめておこう
俺達はネロ大将軍の指示で倒れた味方の回収をして南大門の中に入るが息絶えた大量の魔族兵の遺体は処理する時間を取れなかったため、早急に味方の遺体だけを回収して南大門を硬く閉ざしたのだ