19話 犠牲
※前回の話でザントマ国王に名乗ったナッツの紹介が天位職となってましたが上位職です、修正済みです
朝食後はタツヤとリキヤそしてマイによって会議室に案内されるけどもこの国の偉い者達が集まる会議でもあるので多少は緊張する
歩いている時には皆口を開かずに無表情でただただついていくだけであったが俺も何故口を開かないのだろうと思いつつも皆の色に合わせて口を閉じる事にしたんだ
辿り着いた部屋の扉は赤く大きく、そこを開くと玉座の間の様なただっぴろい空間が奥まで伸びている
勿論壁際には国王の側近の騎士達がびっしりと待機してる
それに合わせてとても長いテーブルも視界に映るがテーブルを囲んで話し合う場であろう、一番奥の立派そうな椅子にはザントマ国王が既に座っており両脇には見るからに国の上層部ですと服でわかるくらの者達が鎮座してこちらを見ているがタツヤ達の指示で速やかに手前の椅子に皆で座る
私服から鎧に着替えていたネロ大将軍はそのままザントマ国王のそのにいくと彼の背後で待機するかのように仁王立ちで周りを見渡し始める
『なんでここにあたしもこなきゃなんないのよ・・・』
リルラが少し愚痴をこぼすけどもここまで来てしまったのは君がついて来たからだ
今は諦めて混ざるしかない
あまり驚きを顔に見せない上層部連中だがどうやらザントマ国王が自前に客を呼んでいると伝えていたらしく思うような反応を見せてはいないけども多少目を細めて怪しげにこちらを観察しているのはわかる
『ザントマ国王様、こやつらは一体?』
文官と思われる者がザントマに口を開いたが答えもせずに彼は俺に視線を向けて来たんだ
まるで自ら挨拶しろといわんばかりのタイミングにしか見えないけどもゾロアもこちらを横目で見ている事も気づいている、ということは初めていいという事だ
『噛むなよ?』
『噛まねぇよ』
グスタフが茶化してくるけども俺はハルバートを持って立ち上がった
武器を持ったことによって数人は警戒をして表情を硬くするが騎士達はそんな警戒をしなかった
昨夜俺達と出会っている騎士だと直ぐにわかると安心してそのまま俺はやることを始めることにしたんだ
周りを見渡し、真剣な顔つきになった皆に会釈をしてから口を開く
『レリックという十天10位の出来損ないがいるダメ人間の集まりであるペテン教ですが・・・』
そこまで話し続けるとやはり敵意が俺に向けられてくる、4人・・騎士にはいない!
ザントマ国王の手前の文官2名
中央付近の将校らしき者2名
俺はその気を感じたまま最後まで話を言い続けることにした
『会議の前にその一味を殺しておきます、そこの将校2人とザントマ国王手前のそこの2名は申し訳ないがこちらで殺す』
その言葉でディロア国の者全員が目を見開いて驚くが俺に指を指されて指定された4人は慌てた様子を見せながらも椅子から立ち上がる
俺はハルバートを持って突っ込もうとした時には既にゾロアが奥側の将校に向かってテーブルを滑走と走り抜けて腰の刀を抜いていたのだ、となると俺は手前の将校だな
直ぐに目の前まで迫ると敵意を殺意に変えて腰の片手剣を抜こうとしていたけども遅すぎる
将校が抜いた時には既に彼の首は飛んでいた、勿論ゾロアが狙った将校もである
(奥は・・・)
問題なかった、ナッツが浮遊させた剣を1つ飛ばして文官の胸部に突き刺し
ネロ大将軍がザントマ国王から近い文官1名を斬りつけていた、ネロもわかっていたのだろうな
ここにも教団の手先がいる事も、そしてそれを排除するであろうと俺達が思っていた事もだ
その考えは会議の場が血で染め上げられて溜息をつくザントマ国王の口からわかった
『やはりおったのだな、皆の者動揺するな・・・こやつらは味方である、私が紹介したいので騎士は即刻死体を運び出してくれ』
彼の言葉で騎士達が死体の片づけをするがいきなりの光景に驚きまくったザントマ国王側の将校や文官は彼の頃場でようやく落ち着いたようで静かになっていく、数人驚きすぎて立ち上がってはいたが申し訳ない
聞かれたくない内容ばかりだからな
そうしてザントマ国王が細かく俺達の事情を説明すると予想以上に皆驚いた顔をして何度も俺達に顔を向けていたんだ、信じられないというようにな
そしてタツタカから聞いていたであろう、転生後レリックに捉えられて牢屋で聞いた内容もこの場で話すと更に文官や将校の皆は驚き、口々にこういっていたのだ
『あのジジィ、やはりこの国を』
『前から無駄な勢力拡大をして国王に差し迫っていたが国を落とす為か』
『ヘルトが怖くて殺そうとしたのか、偽りの罪を被せてまでとは手の込んだ奴だ』
憤怒を感じるがまぁいいか
国王の話は数分続いたがその内容の最後に彼の今の心境を話していた
『私の優しさは今この危機に必要ない、心にも剣を持つのならばこちらも覚悟を決めねばならん、我らだけでは到底国を救えぬ・・・無能であった我のせいで助ける事が出来なかったイガラシも今戻った、今の期間だけではあるが他国からありえない戦力が揃ったのである・・・国民が教団者である以上・・・皆は部下にこう伝えてくれ、もう国民じゃない・・・自分たちの家族や国を守るために人の形をした悪魔・・いや・・・魔族を斬れ!とな』
無言の頷きが周りから見える、するとその中の1人である文官が立ち上がり口を開いたのだ
『国王様の言葉で理解が出来ます、今年からトゥルーゲン教の正装が顔まで隠すようになったことは魔族を中に入れているからで間違いありません、ギルド内の教団の襲撃で魔族がいたという事実はそういうことでしかないでしょう』
『その通りだエンゲル文官長』
『であるならば国王様、教団を斬る方針に私個人としては賛成です・・・もしこの場でも捕縛というのでしたら反論する覚悟をしておりましたので』
『うむ、私が最近まで甘かった、死地を知っている客人の言葉で俺は国を滅亡させる考えであると気付いたのだが遅すぎた・・・エンゲル文官長よ、今から私自ら策をお主等に言い渡す!意見があるならば言い終わった後に言うが良い』
『ははっ!』
エンゲル文官長か、どえらい人だな
彼は満足した様でザントマ国王に頭を一度下げると椅子に座り直したんだ
ザントマのその後の話では南大門前をネロ大将軍の兵に英雄3傑と俺とナッツを交えて編成を考えて欲しと口にすると直ぐに国内状況について話し始めたのである
『国中で教団の者が騒ぎを起こすが各所に一定数の兵を派遣させるが多くはしない!狙いの無いただの騒ぎ程度、ならば彼らが本当に狙いたい地点を重点的に戦力を置く!少ない街には冒険者との連携で時間を稼いでもらう、中心都市ザイルポルトには北の街ドライセンに潜む教団連中に備え2万の兵にて城の防衛をさせる・・・ただちに城下町のギルドに協力要請を送るよう手配し襲い掛かる敵を撃て、信仰都市ヴェルミストには2万の兵で取り囲み早急に落とすのだ!大門前は時間との勝負、ならば教団の本部を落とせば教団の士気も落ちよう、制圧後直ぐに南に大移動して素早く大門前に兵を送るようにせねばならぬ』
各所の教団の騒ぎは国王の言う通りただの騒ぎでしかない、本来教団は城を落としたい
それはゾロアがいるのだから大丈夫だと俺は思うがそれと同時に何としてでも早急に本部を落とさなければ国内の兵士は大門に援軍に行けないのである
ザントマ国王がここにいる上層部に次々と指示をしてその配分を決めていく
大門前の話に戻ったのだがどう考えても敵の多さで考えれば昼夜とわず攻めてくる可能性もあるのでこちらの少ない戦力でやりくりしなければいけない、防衛だとしても敵が攻めてきているという事実は決めないので慣れてない兵士は寝れないだろう
『そちらはネロ大将軍と今は防衛都市ステンラルで特別警戒している副将ファウストに指揮を任命する、本部突入にはイグニット第3将校と兵2万を動員し、助っ人の者達と攻めるのだ』
『わかりました国王陛下』
イグニット第3将校といわれる目つきが鋭い男が返事をしている
ちなみに教団の手先だった将校は第2と第5でありこの国の将校は第8までいる
第1将校がネロ大将軍であり彼は南大門の総大将を務める
第3将校のイグニットは教団の本部がある信仰都市ヴェルミストに2万で攻める
第4将校のスタックは太っちょだけども防衛都市ステンラルの背後から大門解放を狙う教団を迎え撃つ為に1万の兵で背中を守る
第6将校ララバイは中心都市ザイルポルトにて1万の兵を連れて城の正面門を守りながら街の教団を迎え家らしい
第7将校のハルトレクスは直ちに兵を2万総動員しレパルドル国境沿いの警戒に向かうとのことだったがゾロアがレパルドルは気にしなくてもいいと強めに言った事で渋々ながら納得し、最終的に国の西側方面の街を鎮めて回ることになった
第8将校のナトリーは城内警備に1万を動員し最大限の警戒を行うという事で将校はまとまる
そして文官の話し合いとなったが全員が共通して理解していることが分かった
敵がどうしても墜としたいと思う地点、南大門と城である
こちら側がまず先にどうしても墜としたい場所は本部がある信仰都市ヴェルミストである
双方の落としたい場所は次の日に大きく左右される場所でもある
此方が教団本部を落とせば国内の教団兵もメンバーも失意するであろう、であれば一定数の兵を置いて国内メイン戦力を南に移せばいい
それまで南大門の防衛は5日間は絶対条件だとゾロアも強めに皆に説明したのだがその考えにはディロア王国文官達も納得し頷いてくれる
『本部メンバーは止まることなくだ、単純なゴリ押しでいくしかあるまい』
『本部には1万程度であろうな・・・教団戦力は5万弱、教団上層部連中が本部陥落を気にしなくても下の者達は本部を落とされたという事実さえあればこっちとしても対応は楽じゃ』
幹部たちはきっと落とされても問題ないと思っているんだと文官達は口をそろえて言う
だがしかしその下についている教団兵となればどうだろうか?と彼らは疑問を持ちかけたんだ
本拠地であることにはかわらない、落とされれば彼らが安心できる町など国内でどこにもない
それは絶望でしかないのである
教団の逃げ場を早急に墜とすしかないんだ
ゾロアが口を開く
『ディロア王国には数で押してもらいたい、そして我ら他勢力は力で押す・・・互いの役目がそういうことであるからして今此方も配置を伝える、南大門の大戦争が始まれば国内でも変化が訪れるだろう・・・始まった際こちらとしてタツタカは教会本部の内部に極秘侵入し転移関係者の重要人物の救出、その後各街の制圧に協力・・・グスタフとルルカにカールとミミリーは本部に正面突破で強者を撃て!数だけのゴミは将校の軍に任せよ!そしてカレジリージョンの者は城下町であるザイルポルトにて五月蠅い教団兵を撃て・・俺は城の周りを散歩している』
座ったまま口を開いた彼は静かに立ち上がると続けて言ったんだ
『敵側の強者は魔族軍と合わせればレリック教皇にグリード魔将軍・ガルドミラ大魔将軍・魔王ノヴァエラ、そして魔王の側近2名後エンビシャと道化パブロフだが計7名が我らの力で押し潰す対象である』
彼が口にした名が俺たちが戦うであろう敵だ
ディロア王国にとって有難いと思う、敵の重要人物を討ってくれるというのだ
戦争では一番大事な功績であり、倒せばそれだけ互いの状況を変わるのだ
『そちらは任せる、ではあとの話は補給部隊の編成と輸送隊の準備になる…客人は迫る三日後に向けて宜しく頼む』
ザントマの言葉で俺たちは一度部屋の外に出ることにしたんだ
あとの話は俺たちにはあまり関係のない事だがゾロアとタツタカは残ったようだな
『もうあんな堅苦しい場所嫌だわ』
リルラが疲労した顔をしながら溜息を漏らす、彼女はこの国では一番強い冒険者として今も君臨しているが彼女でも国の最上位の身分の者との対談には慣れていない様である
ただでさえ俺の仲間の面子に驚いていたくらいだし仕方が無いのかもしれない
『これから起きる事はもっと楽しいぜぇ?』
グスタフが怯えさせるかのように不敵な笑みを浮かべてリルラにいうと彼女は引き攣った笑みを浮かべて反応しているがそれが精一杯みたいだ
『グスタフいじめちゃ駄目よぉ?』
『虐めてねぇよ』
ルルカに言われると熊は大人しくなる、リルラは逃げるかのように俺の近くに移動するがグスタフに苦手意識を持ったのだろう
そうして俺達は客室に戻るんだけどの歩いている途中でカールが口にしていた
俺とリルラ以外は外に出る事は出来ない、考えればわかる事でもある
今彼らは密かに城の内部に居る身でもあり敵に知られては不味い事でもある為、迂闊に外に出ることは出来ないのだ
城内でも特別な接待室での朝食そして会議室に向かう際でも少し時間をかけて向かった事
ルートを変えて向かっていたのだ、本来のルートで向かえば城の者と沢山である
できるだけ教団の者に存在を知られてはいけないので今日は外に出ることは出来ない、一応話し合う事もあるらしいのでこの後は皆で会議するとの事だが俺は街に赴いてギルドに行く予定でもあったためリルラを連れて街に足を運ぶことになった
ザイルポルトの冒険者ギルドに近付くけども変わった気配は感じない
だがしかし周りからは少数の敵意が向けられている事だけはわかる
大通りを歩けばそんな奴もいるが俺達を襲い掛かる様子もない、勝てない事を知っているのだろう
冒険者らしき気配はないがただの国民なのだからだ、そんな国民は戦争では斬ることになる
俺じゃなく別の者達がだ
『?』
ふと大通りを歩いている筈なのに敵意じゃなく殺気が背後から感じた、だがしかし気配は俺の感知のギリギリの距離でありそれは1㎞距離
どこからそんな気配を俺に向けたのだろうか、目ているのか?桁違いの視力である
歩いている時に俺は立ち止まると隣を歩くリルラが不思議そうな顔をしたのだが俺は気にせず振り返り大通りの奥に見える高い建物に目を向けた
俺の千里眼で人とは桁外れな視力を使い、理由もなく遠くの建物の頂上付近を見たのだがそこには黒いローブを羽織る教団の者と思われる奴が立っているのがわかった
『どうしたの?レナウス』
人前ではレナウスと名を言ってくれるのは有難い、それを感じつつ俺は遠くの者に目を細めながら首を傾げると変わった動作が見えた
右手をこちらに向けて人差し指で指していた、しかもその人差し指の先端には何か小さな物体が浮いている、俺はこの瞬間何者かを直ぐに予想で悟った
あれは俺を撃ち抜く為の技であると、そんなこと今迄出来た者は1人しかいない
リルラの宿に来た教団の中に神といわれる信仰の№1がいたがそいつだろうと
そこまで考えていると遠くの建物からこちらを指差す彼が何かを撃ち放った、撃ち出す前には予見スキルで俺の顔面が始め飛びそうな感じが脳に浮かび上がったためハルバートを振ってタイミングよく飛んできた小さな物体を弾き飛ばした
いきなり武器を振ったという光景に町の人も驚いてはいたがリルラが一番驚いたであろう
だって振った俺のハルバートに当たりそうになったんだから無理もない
カンッと甲高い音を立てたのちに飛んできた物体は何だったのかわかった、鉄だ
軽鉄の音である
(あそこから狙撃できるのか、鉄ならばもっと硬いのを使えばもしや)
厄介な奴だと感じる、近づかなくても敵を仕留めることが出来るのだから
俺は周りの視線など気にもせずに遠くで弾かれた事に首を傾げる教団の者に向かって馬鹿にするような笑みを浮かべて口を開いたんだ
『臆病者が』
『ちょっとぉ!?何が起きたか説明しなさいって』
リルラが口にした時には俺の見ている遠くの視界に教団はいなくなっていた
嫌がらせ?かな
殺意も消えているのでどこかに逃げたのか・・・まぁいい
そのままリルラと共に歩きながら説明したのだが1㎞先から狙撃行為が出来る事にとても彼女は驚いていた
教団の№1である神が戦う鵜方は誰も見た事が無いからだ
『強さを知るのはレリック教皇だけらしくてさ、凄い距離から攻撃してきたのね』
『バレているのに撃つってアホだぞ、狙撃はバレない時に撃つから意味がある』
『それあんただけだと思うんだけどねぇ』
『そうか・・』
『えぇそうよ』
真顔で言われると複雑だ、確かに俺の感覚は今可笑しいかもな
頑張れば素手で掴めたと思うけども痛そうだし嫌だ、最悪手が吹き飛ぶけどもグレンツェントヒールで再生できても痛いのは痛い
そう考えながらも俺達はギルドに向かった
中に入るとどうやら冒険者はごそって森に出かけたらしく今日を休暇にのんびりしている冒険者各位していない様子だが俺達が来ただけでなんだか元気よく立ち上がり挨拶してきた
軽く微笑みながらも反応を示して変わりないか聞いて見ることにした
『教団の馬鹿は来てないか?』
『大丈夫ですよレナウスの旦那!教団の手の冒険者は怯えてこないですよ』
『そうか、来たら俺に言えばボコボコにしてやる』
『了解です!』
元気な顔を見ると大丈夫そうだな
長テーブルには何人かの冒険者が昼間っから酒を飲んだりのんびりとテーブルに顔を埋めて昼寝をしたりしている
問題なさそうだけども俺はリルラを連れて受付に向かいギルマスのディルとの面会を頼んだら二つ返事で受付嬢は了承してくれた
直ぐに吹き抜けになっている2階に登り以前入った手前の部屋に入ると椅子が2つ用意されており俺達は座って待つことにしたんだ
数分後にディルが来たのだけれども大事な話はあるわけでもなく俺はただ彼に夜にもう一度来るから冒険者を集めておいてくれと言い直ぐに話し合いを終えてリルラの宿に走って向かった
彼女は足も速いから辿り着く迄そうそう時間はかからなかったが彼女も実家が心配らしくいつもより早いと感じる
辿り着いても変わった様子もなく、周りに警戒すべき気配もない
宿の中に入り彼らの居住しているフロント奥のドアを開けてもいつもと変わらない妹2人に弟1人そして母親が楽しそうにリンゴを口に運んで本を読んでいる様でもある
『あ!銀のお兄ちゃんだ!』
『狼のお兄ちゃん!』
俺のあだ名はそう決まっているらしい
近付く妹2人に笑顔で頭を撫でると嬉しそうにしているがそうしていると母親が昼食を作ってくれるという事で俺は甘えることにした
母親の手伝いに妹と弟はその場から走って台所に向かうと椅子に座る俺とリルラだけになる
普通の家庭の風景にしか見えない、以前までは母親が危ない様子だったんだけども今となっちゃそんな陰りもなくリルラが求めた日常がそこにはある
彼女を助けた事は大きいと思える
『聞きたいことあるんだけどさ』
リルラがふと真剣な顔で俺に話しかけてきた
大事なのだろうかと思い視線を彼女に向けるとそのままリルラは聞いてきたんだ
『龍との話、言いたくないならいいんだけども外の国じゃ中身は伝わってない、前にあんたから多少聞いたけどもどんな戦いだったのか気になって』
どこの国にも伝わっているゼリフタルの存亡をかけた激闘
ランクSの龍に国が勝ったと世界中に知れ渡ったが肝心な悲惨さというのは何故か遠き国には語られてはいない
俺は一息つくと床を見つめながらも説明したんだ
『龍の咆哮と仲間達が泣き叫ぶ声が響き渡ったさ、カレジリージョン見たか?』
『あんたの仲間でしょ?』
『リーダーのマルス以外全員死んだ』
俺の言葉でリルラは気持ち目を開いた気がした
かまわず俺は話すことにしたんだ
『メンバーのマルスだけ生き残ったんだ、皆彼の目の前で死んだ…マルスとは学園時代からの付き合いでな…眼鏡かけた勉強マンみたいな奴だったがちょっとした運命からカレジリージョンに所属して冒険者を始めたんだ…リーダーだったレッグは強くて有名でな、マルスも彼に憧れていたらしいがそんな彼の思いも龍との戦いで全てが死『もういいわ』』
俺の言葉を遮る、聞くに絶えないか
『あんたは勝つために仲間も殺したと話したけどもその時どういう気持ちになったの?』
これからどんな気持ちで戦うかを決めるために聞いているのだと悟る
彼女にはちゃんと話しておくか
『気持ちを考える暇なんてなかった、撃たないと国が滅ぶんだ…優しい感情は危機に一番必要のない悪魔の感情だ』
ザントマ国王の優しさは命取り
今はそれが無いため大丈夫なのだが心を鬼にして立ち向かわないと死ぬのが自分だと彼女に話す
死という言葉に対する責任は難しい、だがやらないといけないときはある
『優しい自分を見せて死ぬのが誉れならば死ねばいいがそんなことに意味はない』
『…躊躇ってるわけじゃないわよ、あんたはどう感じてるのかなって』
『人殺しに対して俺は何も感じない、この職になってから躊躇いが消えたんだ…殺意を向けられれば女子供かまわず殺せるが一種の呪いに近い、だけども何度も仲間達を吹き飛ばした記憶が浮かぶんだ』
そう、たまにあの記憶が蘇る
天銀を落とす直前の兵士達の言葉をだ、勝ちを確信し覚悟を決めた言葉もあればまだ死にたくないと涙を浮かべて倒れながらも此方に視線を向けた兵士達もいたからである
だが気にもせず俺は天銀を墜とした、そして殆どが死んだ
忘れることは本当の罪である
生きたかったものに対してそれは絶対あってはならない罪
互いに押し黙っているとリルラが口を開いた
『国を守るか殺すかはあんたしか決めれなかったんでしょ、仕方無いって言えば少し違うけど…誰もあんたを責める人なんていないわ、あんたしか決めれなかったんだからさ』
『そうだな、だからこそ今回の件でもリルラは躊躇わないで欲しい、情を見せればお前の家族を守れるものはいなくなる』
『そうよね』
少し決心がついたようだな
するとタイミングよく遅めの昼食が運ばれてきて俺たちは有り難くリルラの母親の手料理を頂くことにしたんだ、リビングのテーブルに座るが両脇は妹二人に挟まれてしまいずっと話しかけられていたげどもその様子を見てリルラは笑っていた
ふと面白い事が起き始めた、遠くから知ってる気配が走ってきている
丁度食べ終えた俺は笑いを堪えるが彼女は気になるようで俺の顔を覗くがあえて俺は話さなかった
『リルラ、頼むから料理作ってやってくれ』
『はぁ?』
首を傾げた彼女、そうしていると遠くの気配はようやく宿に辿り着いたみたいであり
大きな声が聞こえたんだよ
『リルラ!飯を頼む!頼む!』
ネロ大将軍の声にリルラの表情はなんとも言えない感じを浮かべていた