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【完結済】槍の新兵は夢を見ない  作者: 牛乳太子
14章 ディロア大決戦 涙を流す勇者に黒騎士は決意し、少女は想う
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16話 強敵

ゾロアの登場でリルラと私服のネロ大将軍は俺のベッドに座って話を聞いている

俺は机に座りながらも立って話すゾロアに意識を向けるが当初通り作成は変わらずらしい


『大門前は銀狼と千剣を置くから軍を2つに分けよ、左右でだ』


『千剣もいるのか…』


ネロ大将軍が驚いてたよ、ナッツの名はここまで広がっていたか

やっぱ冒険者の情報網は予想外である、どこの国にどんな冒険者がいるかとか俺は考えたことが無かったけども他国の事情は最低限気になるんだなと気付いた


直ぐにゾロアはネロ大将軍に答える


『そうだ、半分は貴殿が前に立ち…味方を鼓舞して武勇を遺憾無く発揮せよ、タツヤとリキヤそしてマイを気にしながらだ…奴らは狙われやすいから気を付けろ』


『わかった』


『副将なる者は兵1万と冒険者を使い、防衛都市ステンラルの防衛に当たらせろ…信仰都市ヴェルミストだが戦争が始まったら早急に兵1万で囲み正面から本部を叩け、こちらの天位職連中を派遣するから攻めやすくなる』


『城はどうする?』


『警備を倍増やせ、直接ザントマを叩くあっちがわの強者がくるだろうがドライセンにレリックがいる情報は入手したがあいつが攻めるにしても物足りなさがあるからきっと他にもいる、俺が近くにいるから絶対大丈夫だ』 


俺もそうだがリルラとネロ大将軍も自然と彼の言う『絶対大丈夫』に不思議と信頼を置いてしまう

彼が無理なら誰がやっても無理だからだ

こいつは今べらぼうに強いんだよな、俺でも勝てるのだろうかわからん


ゾロアは腕を組んだままリルラに顔を向けると彼女にはこの街で暴れる教団を冒険者ギルドと結託し手当たり次第に倒していれば問題ないと伝えた


『話を戻すが大門前は銀狼と千剣を軸に戦う軍そしてネロ大将軍を軸に戦う軍の2つで大門の先1㎞奥で戦え、両脇の山には魔術師を配置しとけば問題なかろうが敵もそれなりの対策をする・・・まぁ俺が魔族側の人間ならば2つの山を攻撃して落石を狙うがそうさせぬように山には全力で術壁を展開しとけ』


山を崩して落石狙いか、大きな岩が背後からきたら敵わんからな

まぁ戦争ではネロ大将軍の話だと計25万の兵力で立ち向かうらしく他はゾロアに言われた通り兵を各街に配備すると言うのである

対する魔族の戦力とは不明だとネロ大将軍が困った様子で口にするがなんとゾロアがそれに関して調べはついていると言うのだ


魔族軍100万、守りきれると思えないくらいの大群にネロ大将軍は頭を悩ませるが

こちらがわには規格外が1人いるので問題はないと涼しい顔で言ってのけたがその規格外という言葉でチラリと俺を見たのはそう言う意味なのだろうか

窓もない宿の一室にて俺達はそんな真剣な話をしているが本来こんなところでするべき話じゃない、だがしかし国にこちらから接触したとしても先ほどいった様に警戒されて話を通してもらえないだろう


俺は意外といい仕事をしたんだな

リルラは背伸びしながらそのまま後ろに倒れて俺が寝る筈のベットに寝転がる

緊張感が無いかと思えばそうでもない、彼女は無表情で天井を見つめながらも口を開いたんだ


『綺麗ごとは戦争に必要ない、勝つために一番良い手を使うしかないんだよね』


誰に向けられた言葉か、一番その台詞に渋い顔をするネロ大将軍であろう

理想と現実は本当に違う、ザントマ国王の顔色を伺って動くなどきっとうまくいかないのだからネロ大将軍は国の一番の思想を無視してでも動かなければいけないのだ

そんな彼がゆっくりと口を開いた


『教団も国民、あの方は剣を向けることを躊躇い・・・捕縛を求めているが』


その言葉に直ぐゾロアは眉を潜めて反論したのだ


『人を笑わせる才が国王にはあるのだな、ならば国と共に死ねばいい・・・お前がそいつの意志と共に歩むというならば我らはタツタカの友人だけを救出して恩も何もないディロアを見捨てる』


ネロ大将軍には直球過ぎる言葉だがこれはかなり効くだろうな

項垂れている、だがこの場で一番現実を見て一番必要な言葉を口に出来るのはゾロアという男だけだと俺は思ってる、彼は一息ついて間を開けると続けて話したのである


『どの国よりも国ではない、優しさが繁栄をもたらす筈が無かろう?国を語りたいならば生き残ってから勝手に口にしてろ・・・だがお前はこれから起きる最悪に正面から向き合うと言ったな?』


『ああ・・・』


『ならばお前が行動で示せ、強者は守るだけではない・・・示す為にいる事が一番重要だという事を忘れるな、今からお前はそれを取り戻すのだ』


『わかっている』


肩を落としながらネロ大将軍は答える、ゾロアは言う事はもう無いようでありそのまま彼の姿を見て小さく笑みを浮かべると彼に背中を向けて部屋の入り口に歩いて行った

どうやらこっちの状態は固まった様であり、あとは待機している俺の仲間達に指示を出すだけの様だ

上体を起こしたリルラは部屋を去っていく彼の様子を静かに眺めるがふとゾロアはそれに気づいたのか軽く振り返ると彼女に言ったんだ


『汚い事も正義でもある、たとえ同族殺しでもだ・・・綺麗ごとを正義というのは子供の遊びだけにしとけよ?』


言い終わると彼はドアを開けて俺達の前から去っていった

もしかしたら俺はこの問題が終わるまで仲間とは接触できないかもな、だってほぼずっと戦争で魔族と戦うんだろ?国内の状況何てわかんないよ


(グスタフ達ならば大丈夫)


そう思いながら不安要素をおさらいしてみた、魔王の側近2人がどこにいるかだ

教団の№1である神と言われる存在がその1人だというのは予測でしかないけども武力を持った存在なのか、それともただ祭られているだけの存在なのか

ガルドミラ大魔将軍は当然南大門を解放するために戦争で現れる筈だしそこに魔王の側近が1人いただけでこちらとしては対応が楽になる


俺が倒せばいいからな、だがしかしだ・・・

2人とも国内にいた場合ゾロアがいないと対応が厳しすぎるぞ、グスタフは魔族特攻だとしても体は1つしかないんだ

あいつ以外で対応とか酷という他ないだろう、カールも天位職だがランクA+の実力だとしたら人が足りない


そこはゾロアを信じるしかない、彼は城に隠れて潜む的に行動する様だしきっと彼の予想ではその側近の1人が城に侵入すると睨んでいるんじゃないかな

今の彼に敵う奴なんて・・・いるのか?俺はわからない


ギュスターブ・ハデスという魔物ランクSの化け物、こいつだけで戦争を終わらせれるんじゃないかと思うけどもきっとあっち側の魔王も同じくらい強い


『あんたらのご飯作って来るわ、ネロは深呼吸でもして落ち着いたら?』


彼女はそう口にすると立ち上がりドアに歩いていく


『気を使わせた、すまぬ』


ネロ大将軍が小さく囁いたが聞こえていたリルラは微かに微笑むとそのまま部屋を出て行ったんだ

静寂が部屋に流れ始める、今部屋にいるのは俺とネロ大将軍の2人だけ

彼はベットに腰かけて腕を組んだまま唸っているようだが何を考えているのだろうか

聞くのは野暮かな・・・やめとこう


『俺の知ってる他国の大将軍は綺麗じゃないぞ、時には国を想って誰もやりたがらない事に対して黒い血を流して未来を守るんだ』


『うむ、私以外おるまい』


『あんたが動けば変わるさ』


彼に近付いて肩を軽く数回叩いた

その後は話しを切り替えて色々話したけども彼はどうやら独身の様だ、勿体ない

でも少し頑固な性格がありそうだし女性への免疫が無さそうでもある

見るからに大将軍として職務をひたすら真っ当してたぞ敵な人だもん、そんな彼でも今手札には贅沢すぎる程の協力があるのは気づいている


どう考えても誰が聞いても贅沢と言うだろうな

十天の第7位に第6位そして第4位がこちら側にいる、しかも天位職が他に3人だ

グスタフのイビルディザスター、魔物特攻で魔物に対しては卑怯な強さを誇る

ルルカのパンドラー、彼女は天術という殲滅力豊富な術を保持し尚且つ剣術も中々だ

カールのネメシス、天罰者という異名を持ち全てのダメージを半減させるガチガチな奴だ

これ以上求めれる手札はこの世にいない

ネロ大将軍には俺の仲間の情報を教えると乾いた笑みを浮かべて口を開いたのだ


『夢を見ている様だがそこまでの者ならば俺とて見ない事には信じる事も難しい・・・がしかしだ、いるんだろうな』


『国内の事は気にするな、俺が信頼できる奴らだ』


『レナウ・・いや、銀狼ギンロウが言うのならばそうであろう・・・あとはこちらに任せろ、戦争開始までに動いて見せる』


頑固な性格がこう口にするとホッとできる

少ししてからリルラが肉じゃが定食を持ってやって来たんだが妹2人もいる、流石に3人分を1人で運ぶのは大変だし妹が手伝ってくれたのだろうけども言ってくれれば俺達が運んだのに

今更言っても遅いか、悪いことさせたな


『銀のお兄ちゃん今度遊んでね』


『狼のお兄ちゃん今度遊んでね』


俺は笑顔で頷くとリルラの妹2人は嬉しそうに走って部屋を出て行った

ネロ大将軍は何故か床の方が落ち着くと言い、お盆に乗った肉じゃが定食を床に置いて正座するとリルラに感謝を送ってから頂きますと口にして食べ始めた

俺も真似して床に置いてから胡座をかいて食べ始めるが正座は苦手である、何のためにある姿勢なのか未だに理解できないのだ


当然リルラは机に料理を置いて一番マシな場所で食べ始めるけども米が出来立てらしくとても美味しい

俺は褒めようとしたのだがそれよりも先にネロ大将軍がカッと目を開けて声を大にして言い放ったんだ


『美味い!美味すぎる!城内の料理よりも遥かに上手いがお前こんな才能があったのか!?』


『あんた褒め過ぎよ!』


『毎日食べたい気分だ!』


正直すぎる感想に流石のリルラも照れを見せている・・・おっ?おっ?

いや、なんでもないさ

そして今日大将軍は一番の笑顔を見せて夜食を食べているがリルラは何かを閃いたようでありニヤニヤしながらも夜食をガッつくネロに向かって言ったんだ


『毎度金貨1枚くれればいつでも作ってあげるわよ?』


どう考えても金儲けだ、この女・・・黒い!

リルラは本当に金儲けできるか考えてるのかはわからないがその作戦は彼には通用しなさそうな気がする、通用するけども通用しないって言葉は矛盾でしかないけども箸を止めて少し悩んでいるネロ大将軍の顔を見ればそう思えるんだよ

なんだか別の意味で悩んでるなこれ、険しいんじゃなく微笑んでいるんだ

彼女も彼の反応が予想と違ったのか、顔を覗かせながらも首を傾げている


『なら死ぬまで毎日金貨1枚払えばずっと食えるのだな』


こいつ力だけじゃなく根性が強い、凄いじゃなく強い

なんでそんな言葉を平気に口に出来るのかわからん!俺の口が半開きになるが彼女もである

俺の考えが間違いでなければ今ネロが言ったセリフはプロポーズに近い、そもそもこいつら前々から敵同士とはいえ戦ってお互いを知っている様でもあるし見てる分には面白い


『ばばば馬鹿じゃないの!?冗談よ冗談!』


まぁ慌てるよね普通、彼女は目を泳がせながらもそう口にするがネロは残念そうに肩を落とすと仕方ないような雰囲気を出して小さく囁いたのだ


『ならば予約でもしとくか』



諦 め て な い 






そうして食べ終わると彼女はお盆と食器を重ねて片付けに行こうとしたので手伝おうとしたんだけども母親を治してくれた恩返しだといって拒絶された、そういう事ならばご期待通りにさせよう

たらふく食った様でネロ大将軍は正座したまま腕を組んで心地よい顔をして天井隅を眺めている

本当に美味しかったらしいけども俺も美味しいと思う


(・・・!?)


やれやれ、食い終わってからタイミングよく俺の超感知が敵意を察知したよ

腹も膨れて体が重いというのにいい具合で来るんだな


『ネロ大将軍、敵意を持った人間が900m先から真っすぐこっちにきている』


俺の言葉で彼は真剣な顔つきに変わり直ぐに立ち上がるどうやら武器は置いて来たらしいが腰に手を伸ばす動作をしてからアッとした表情を見せると俺に視線を向けて苦笑いをし始める

ったく・・・俺は冒険者だからいつでも持ってるけどもお前も持っとけよ


『数は?』


『100ちょいだが1人だけ強い奴がいる、もし戦闘になったらそいつを俺がやるから一度ここを出ようネロ大将軍』


『ここじゃ迷惑になるからな!よし行こうか!』


彼は胸を強く叩くと俺より先に部屋を出て行く、ハルバートを握ると俺も彼の後を追うが丁度フロントでリルラが部屋に来る途中だったらしく鉢合わせになったのだが彼女には事情を説明して一先ず家を守っていてくれと言い俺達2人は外にようと入口に歩き出すと彼女がフロント裏からゴソゴソと何かを漁りだして片手剣をネロ大将軍に投げて渡していた


『飯やら剣やら助かる!』


『ご飯は忘れなさい!』


念のために宿の周りも警戒しとくさ、面倒な事が起きてる間に宿が狙われましたとか洒落にならん

宿を出ると俺とネロ大将軍は少し前に歩いてその場に待機する事にしたが空は既に暗い

色々話しこんだり夜食を取ったりしていたらあっという間に時刻は19時になっていたんだ

夜目が利く俺は問題ないが彼は大丈夫だろうか?聞いて見たところ夜でも平気だと自信満々に答えるのできっと大丈夫である、大将軍なんだから慣れているのだろう


強さに不満は一切ないからな


『距離は?』


『300m先だが俺は見えてる』


『容姿は』


『シンプルに言うと黒いローブを羽織った集団』


『なるほど』


普通にトゥルーゲン教の者達だ

ここにいるのはバレてるか、しかもそうなるとリルラが此方側にいることさえもだな

そんなことはどうでもいいけども50人から100ちょいに増やしただけでいけると思っているのだろうが


(警戒はしとくか、本部に知らせはいっている筈だ)


用心に越したことはない

ネロ大将軍と互いに武器を担いだまま待っていると彼にも見えてきたらしくゾロゾロと道歩く教団の特徴でもある黒いローブを羽織った奴らが俺たちの前に来ると立ち止まったんだ


何かを口にする訳でもなくただただ俺に対して敵意を剥き出しにしているが全員ではないようだな、何人かは敵意を感じない


『何しに来た?俺の忠告を忘れたのか?』


彼らに話しかけるが無反応、俺は教団に言ったんだよ

今度絡んできたら教団を潰すってさ、恐れは無いように見えるけどもそんな筈はない

何度も返り討ちにしているんだからな

敵意はあっても動こうとしない感じに違和感を覚えるけども何に対してかは俺でも答えが出ない

取り囲むわけでもなくただ俺達2人の前で通せんぼするかのようにずっとこちらを見る時間が数秒続くと彼らの中の1人がようやく口を開く


『お前は何者だ』


知りたいのか、俺はレナウスだと口にするとそうではないと彼が違う答えを求めて来たんだ

名前を知りたいのではなく存在を知りたいのだろうが話す気は全く俺にはない

首を傾げて誤魔化すと舌打ちが聞こえるけども再びその者は質問をしてきたのである


『どこからやってきた?』


2つめの質問で俺はとあることに気付いた、俺の事が知りたいという事は流石の馬鹿でも理解は出来よう

だがしかしやる気が無いのならこんな人数でくるとは到底思えない

黒いフードで見えない彼らに向かって俺は答えてみた


『外』


『馬鹿にしているのか?』


『馬鹿にはこれが一番理解できるだろ?言葉選んだんだけど』


俺の隣でネロ大将軍が小さく鼻で笑う

それとは逆に教団の者達は殺意を膨らませ始めるけどもきっと襲い掛からないだろう

本部に知らせが言っているのならば返り討ちに合う事がわかっててこんなことしない

俺があっち側の人間なら無駄に戦力を削るだけだし、まぁしかし相手の情報を知るために犠牲を使い推し量る事も彼らならするだろうけど


不思議と周りに建物があるのに人は俺の視界に見当たらない

多分この状況を見て隠れたのだと思うが助かるな、もしここで一戦始まっても被害が最小限で抑えられるからだ


『リルラをどうした?』


我慢した様で次の質問をしてくるがそれに答えるのは不味い

治しましたと言えば遠回しに隠している実力がバレる可能性がある、だって魔力欠損症を容易く治したんだからそれが知られると異常な力を保有している事となる

今更隠し通せるとは思えないけどな、俺は無言で首を傾げると黒いローブの者達が数人互いを見合う

この仕草で教団側にはもういないという事はわかっただろう


さて・・・どうくるか、俺はいつでも戦闘が出来るように警戒を高くしている

こいつらはきっと俺が邪魔で仕方がない、教団が絡まなくても魔族戦争で猛威を奮うとわかってるんだ


だから放っては置けないと感じている

お前等じゃなく本部の幹部連中にだ、きっとレリックにも俺の存在に対しての情報が届いている

強い者には相応の力を持つ者をぶつけるしかないだろ?いるだろ・・・お前らの中にそんな奴がどこかにな

確証はないが俺はいる気がしてならないんだよ

色々考えを頭の中でよぎらせていると黒いローブの教団が静かに口を開いたのだ


『人が越えれない境地をお前は知らない、教団は人を超えた存在なのだ』


人を越えれない境地か、なるほどな

彼が言い終わると同時に激しく予見スキルが警告を打ち鳴らす、顔を狙われると感じた瞬間に姿勢を低くして避ける動作をしたんだけどもそれと同時に俺の頭上を何かが通過していくけども背後はリルラの実家である宿、その攻撃は宿の壁に激突すると何かが始めたような気がした

音的に小さい物体を高速で飛ばしたんだ、魔力や闘気の為も一切無しでやってのけた奴がこの中にいる


(当たってれば普通なら一撃か、小石程度でも顔面に当たってれば致命傷か)


『大丈夫かレナウス!』


ネロ大将軍が驚いた様子を見せるが視線は教団に向けられている、利口だ

彼らから目を離してはいけないだろうけども避けられたことに教団の者達は少し困惑した仕草を見せてくる

姿勢を正しながら大丈夫だと彼には伝えると驚いている教団達に話しかけた


『骨のある奴がいる様だけども出て来いよ、こんだけ完成度の高い攻撃が出来るんだ・・・幹部だろ?』


少し声を大きめにして言うと彼らの何者かが口を開いたのだ


『やはり避けられるんデスね、挨拶デスよ・・・今回は帰りますが今度は仕留めマスよ』


デスとマスだけ協調した言い方が独特な奴だな、姿が見えないが目の前の奴らと同じ黒いローブを羽織っているから誰だかわからない、声の場所の特定が出来ないのである

多分教団側の強者・・・№1と言われている神なのだろうか、今の状態ではわからない

ここで深追い染みた行動はやめようか、彼らが帰るのならばそうさせるべきである

すると教団の者達は俺に体の正面を向けたまま後ろ向きで距離を取り始める、一定の距離まで離れると直ぐに背中を向けて歩いていくのだが最後に先ほどの声が聞こえたんだ


『次を楽しみにしてマスよ、人である限り私には勝てませんので』


自信たっぷりな言葉だな

次がいつになるかはわからないけどもここを襲撃される恐れはないだろう

狙いは俺だがこの宿に嫌がらせはしない筈だ、しても意味がない

俺とネロ大将軍は姿が見えなくなるまで教団の後姿を見届けているとふと隣の彼が俺に声をかけて来たんだ


『何が起きたか俺には見えなかったが背後の壁を見てようやく理解できる』


振り返った彼は宿の入り口のすぐ横の壁が砕けているのを見たんだ

貫通はしなかったが人を殺すには十分な威力だがきっと物体は石だと思う


『ネロ大将軍、すまないが宿に入って被害が無いか見て欲しい』


『わかった!』


彼は元気よく返事をすると全速力で宿に入っていくけど張り切り過ぎである

まぁ体力が有り余っているんだろうがここでそれを消費しないで欲しいな、教団の気配もかなり遠くなったので俺も宿の中に入り異常が無いか見たがなんら変わりが無いのだからホッと胸を撫でおろす


ネロ大将軍と共にフロント奥のリルラの居住部屋に向かうが暢気に妹2にんそして弟1人と一緒に本を読んであげていたのだ、母親は奥のソファーでうたた寝しているようだが余裕過ぎじゃないか?さっき危ない状況だったんだけどもとリルラに話すと彼女は苦笑いしながらも答えたんだ


『ごめんごめん、でもその様子だと動いた様ね・・・№1』


『リルラは見たことあるか?』


『誰も姿を見た事は無いわ』


なるほどな、魔族側だから見せないんだ

わかりやすい


(道化のパブロフかエンビシャのどちらかが濃厚だ)


ここにいてもたいした話をすることが出来ないので俺達は場所を変えようとしたがネロ大将軍はそろそろ城に戻る時間らしく残念そうな顔を浮かべながら宿を出ようとしたけどもリルラが突然みんなで城に行こうと馬鹿げたことを言い出したのだ

当然ネロ大将軍は呆けた表情を見せたが直ぐに真剣になると彼女の言葉になんと賛同したんだよ

俺としてはネロが同意したことに驚きだけども俺達が行く意味とは今あるのかどうかさえわからない


だがゾロアが最初悩んでいた城の者とのコンタクトが達成された今、伝言ゲームをする意味は無い

ネロ大将軍が代弁してくれるならばタツタカの友人を使ったりする手間が省ける

より明確な話し合いが出来よう、国王とである


急な展開で城に向かう事とったけども冗談半分で口にしたリルラは少し緊張しているらしい

言い出しっぺは来るべきだ、俺がそう言ったんだよ

夜も深くなる前に向かうべきだが今日宿を留守にしても大丈夫だろう

ここから城までは走って1時間か、全員身は軽いので颯爽と夜の街中を風を切るように走って向かっていく

住宅街を超えれば商店街そして冒険者ギルド、そこから北に進んでいくのだがギルドを過ぎたあたりから遠くに城らしき建物の明かりが見え始めたのだ


『あれだレナウス!ここまできたら直接会って話した方があのゾロアという男にとっても都合がいい』


ネロ大将軍の言う通り都合が良いだろう、タツタカの友人だけなら不安がありゾロアは決してそんな事口にしないと思えるが今ネロ大将軍がこちら側についたということは大きな意味となる


『私も行くの可笑しいでしょー!?』


『リルラは飯を作れ!』


『あんた絶対嫁さん貰えないわよ!?』


2人の会話を微笑みながら聞き、足早に城目指して俺達は駆け抜けた





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新作ですがこの小説を見てる人ならわかる部分が多い内容になってます 勇者ですが指名手配されたので逃亡ライフをはじめます
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