8話 銀狼のダンジョン物語 至福
『うっほぉぉぉぉぉ!』
俺は嬉しさに声を上げながら目の前に現れた魔物をバッタバッタと斬り裂いて走り進む
ガイアマンティスやらトロールやら閻魔蠍などが俺の行く手を遮るが一振り斬り裂いて突き進んだ
息がある魔物もいたが無視して進んだ
ちょっと楽しい、手ごろな奴らがゴロゴロいるからである
暗くても見える!魔物もゴロゴロいる!暇はしない
『おっ!』
するとどうやら好敵手かもしれない者に出会った
『パァァァァァァァァ!』
お前そんな鳴き声だった?鬼パンダ君
彼の胸部は鬼の様な黒い模様があり筋肉質な巨躯のパンダ、ざっと全長は5メートルか
熊帝と殴り合う度胸がある魔物だし油断しないようにしよう、とはいってもこいつと戦うのは人生2度目
奥に階段が見えるけども通せんぼしているようだ
あの階段を登れば一際強い奴がいる、気配が分かる
洞窟といっても広い、十分にハルバートを振るには丁度いい広さである、鬼パンダは目の前に俺を敵を認知したようであり両拳を握ってファイティングポーズをとっている
格闘家としては一級品であるこいつと俺は戦う事に決めた
『始めるか鬼パンダ』
『パァァァァァァァ!』
鬼パンダは素早く俺に接近すると自身の両手を掴んでそのまま叩きつけて来たが俺は当たる瞬間に懐に飛び込んだ、先ほどまで俺がいた場所は奴の攻撃によって大きな音をたてて地面を深く陥没させているが強力な攻撃だ、力は凄まじい
回避して鬼パンダの顔に跳躍してみせるとそのまま左手を使いぶん殴る
『パォ!?』
殴られた鬼パンダはヨロヨロと頬を抑えながら後ろに数歩下がるが倒れないか、タフだな
奴は俺を睨みつけると牙を剥き出しにしながら地面を右手で抉り、色々な物を俺に飛ばしてきた
土や小石が高速で俺に飛んでくるが自力銀閃眼の散弾といって良いだろう
(こいつこんな芸当もできるのか?)
俺にとっては新しい発見だ、自然を使った攻撃方法は知識の高さを意味する
ハルバートを高速回転させてそれを防いでいるとその隙に鬼パンダはドスドスと地面を走り近付き、右ストレートを俺にお見舞いしてくる
綺麗なストレートだ、俺は真上に跳躍して避けるがそれと同時に奴の右手の甲をハルバートで斬るが深くは斬れなかった様だ
『パウ!』
『!?』
そのかわされた右手を止めると今後はそのまま上に跳躍した俺に向けて腕を半回転させて手の平の面で振り上げてくる、叩く気だ・・・跳躍した俺を下から
俺は直ぐにハルバートを下に向けて串刺しにするために待ち構えたが刺さる寸前で鬼パンダはそれを止めて体を回転させ回し蹴りをしてきたがフェイントの様だ
攻撃されるとわかって切り替えたのかもしれんが判断能力も高い
流石に避けれないと思ったから銀彗星で真横に避けてから銀彗星で鬼パンダの足元に移動して奴の右足のアキレス腱を深く斬って通過した
『パガァァァァァァ!』
すると鬼パンダはは苦痛を叫びに変えて後方に倒れて来たので俺は避けながらもすかさず頭部のてっぺんにハルバートを全力で突き刺した
一瞬鬼パンダの体がピンッと伸びるとそのままゆっくりパタリと動かなくなったんだ
そりゃそうだろう・・・脳天突き刺したんだし死ぬだろうな
ハルバートを抜くと軽く振って血を飛ばす
この層にはAも普通に出てくるようだな、退屈しないがゼリフタルに無いのが悔しい
グスタフなら毎日ここに来そう・・・好きそうだしなぁあいつ、でもここまで辿り着くのが大変だろう
一応鬼パンダの剥ぎ取り部位は牙だと覚えていたので彼の犬歯2つを自力で引き抜いて腰の小さいポシェットに入れるけどそれだけで半分スペースがなくなる
魔物の部位は強い奴だけにしとこう・・・うん
振り返り階段に顔を向けると俺はそのまま歩いて登った
上まで行くと少し広めの空間に辿り着く、ドーム状の空間だが50mくらいの広さだしどうみても主がいますよってわかりやすい奥には戻る為の扉が見えるがあそこが地上に続く道か
その部屋に体が全て入ると階段に続く道が光で閉ざされたんだ、少し触れるとバチンと電撃が走るがどうやら通行止めってことね、俺が向かいたい奥の扉も光っているしここの主を倒さないと駄目らしい
『キィィィィィィィィ!』
真上からドスンと2体の魔物が現れたが閻魔蠍である
黒く硬い装甲をもった大きな蠍、頭部の白い模様は怒りをかたどっている・・・しかも大きい!
全長は6mほどありそうだがランクB+2体か
両手の鋏をガチガチを閉じたり開いたりして威嚇しているが俺は笑顔で閻魔蠍に口を開いたんだ
『銀超乱』
天井スレスレに銀狼100頭出現させるとそのまま閻魔蠍2体に指を指す
隕石の様に次々と閻魔蠍に突っ込むがあいつらが反応できる速度じゃない、物体が高速で落ちる速度というのはそれほどまでに速い
『ギュイィィィィっ!』
叫ぶ閻魔蠍は突っ込んで爆発した銀狼によって爆発に巻き込まれていく
俺の狼気で繰り出した技は無属性、なので耐性というものが殆ど存在しないから直撃すれば普通に喰らうだけだ
砂煙が消えていくとボロボロになって動かない
『おっ?』
すると奥の扉の発光が消えたのである、閻魔蠍が死んだ瞬間に封印が解けたが本当に倒せば通れるんだな、だけども地下に潜るわけじゃないのでこれから先は敵が弱くなるのが残念でもある
この魔物も剥ぎ取ろうかと迷ったけどもやめたんだ、そもそもどこ剥ぎ取るかわからない
『進むか』
仕方無く先に進むことにしよう
扉を開けると先ほどの部屋よりも半分ほどの広さの空間に出るがここはなんだか感じが違う、明るいんだよ
『発光石か』
天井を見上げると青白い石が沢山つらなっている
どうやらあの石が微力な光を放ちここを照らしてくれてるのだろう、なんだか主の部屋の前のこの部屋で休憩できそうな気がしなくもない
そんな暇もないので奥に進むが部屋を抜けると直ぐに真っ暗だ
枝分かれした道を順番に入って正解を探すがその間魔物とかなり戦ったが技を使うことなく攻撃してきたら避けてハルバートで切り裂くという戦法をとりつつ歩み始めた
魔物のランクはBとCが多いが一度だけ阿修羅猪が現れたときは驚いたのだ、遠くからの気配でわかってはいたがこんな洞窟にいるはずないと思ってたんだよ
似た気配かなぁと予想したら案の定、阿修羅猪だったが突進される前に俺は銀彗星で通過しながら側面を深く切り裂きながら通過し、背後から即座に振り向いたタイミングを見計らって顔面にハルバートを突き刺して倒したんだ
手頃な相手で退屈しないが戻らないとな
階段を見つけると登り、その層をくまなく走ってまた階段を探しての繰り返しを続けること2時間経過したろうか
ようやく30層の主だったゴブリンキング3体を素手でボコボコに殴って倒すと29層に向かうため階段を登り始めた
ここの魔物は物足りない、ランクはC多目のDが少々といったところだ
グランドパンサーがわんさかいて大群で襲ってきたんだ
30体で俺を追いかけ回すが俺は逃げてるんだよな、理由としては一気に倒したいだけ
一本道に差し掛かると俺は振り返ってハルバートを突いてシルバーダンスで全長4メートル級の大きな銀狼を出現させる
いきなり表れた銀狼にグランドパンサーの大群は驚いて数歩後ろに交代したが銀狼には突進するように指示をすると吠えながらグランドパンサーに突っ込んで轢き殺していく、質量の差が圧倒的に違うので突進に当たればどこかしら骨が砕けて吹き飛ぶ
『一網打尽!』
小さくガッツポーズした、グランドパンサーはシルバーダンスの銀によって即座に戦闘不能となるが息をしている奴も少数いる、ハルバートでとどめを刺しつつ先に向かう事にしたのだが地図が欲しいと思い始める
一応順調に上に登ってはいるのだがそれでも行き止まりで引き返したり道を間違えたりとしてるので効率的というには乏しい
23層辺りで俺は微かに人間の気配を感じ取る事が出来た、魔物だらけのこの地下ダンジョンに埋もれた感じで今迄気づかなかったがどうやら21層辺りにいるらしいな、誰だろうか
『ギャギャ!』
曲がり角で出待ちしていたゴブリン1体が錆びた剣を振り回しながら襲い掛かってきたけども最初からバレてますよ
『そら』
『ギャフ』
真っ二つにして終わらせるとその気配に向けて歩き始めたんだ
この気は感じた事はあるぞ?タツタカの友達さんだ、3人と・・・あと5人はわからんがタツヤとリキヤそしてマイよりも気が桁外れに大きいのが1人いるがファウスト副将じゃないな
てか南の防衛都市ステンラルからここは近いのだろうか?彼らがいるということはそういう事かな
(もしかして特訓か?)
この地下ダンジョンがディロアのどこにあるのか、彼ら3人の気配を察するに予想としては城に近い場所であると思われる
直ぐ考えればわかる事である、彼らは強くなるために手ごろな訓練場といっても実践稽古じゃなく本番が好ましい
俺の予想は当たっているだろう、ここは城の近くであり彼らは今護衛と教官をつけて戦いに来ているのだ
『あと2層上か、多分あっちの誰かも俺の気配に気づいてそうだな、マイとか』
俺はただ上から感じる魔物の気配に埋もれてて気づかなかっただけだが俺の場所はあらかた魔物は倒してるんだし気配感知【大】がいるならばハッキリ感じている筈
そして1つ疑問が残る、魔物は倒してもきっと何かの原理で増えるのだとな
レリックとか今までの者達がここを訪れたのにもかかわらず魔物は沢山いる、倒して進んでいるならばスカスカなんだよな・・・
『どうやって増えてるんだ魔物?』
首を傾げて考えるが答えは出ない、俺の頭ではなおさらだ
23層を駆け抜け30分後ようやく階段を見つけて登るが22層になった
60層までノンストップで来た事もあり少し疲れたので俺は適度な場所に手腰を下ろして地面にゴロンと寝ころんだ
魔物が来る危険性はまだない、近くても100m先であり俺に気付いていないので止まったまま
3体の気配はゴブリンキング1体とゴブリン2体だな
俺は横になりながら今迄の層の主を思い出してみたんだ
主
30層→ゴブリンキング3体
40層→特殊ガイアマンティス
50層→阿修羅猪1頭、赤猪15頭
60層→閻魔蠍2体
出現する魔物ランク
21層~30層(魔物ランクD多め)
31層~40層(魔物ランクDとC均等)
41層~50層(魔物ランクC多め)
51層~60層(魔物ランクBとC均等)
61層~70層(魔物ランクB多め、稀にA)
飽く迄倒しながら進んだ俺の感覚だ
一見優しそうに見えてそこまで辿り着くのにかなりの体力を浪費するため地下迄潜り続けるのは至難であると思われる
森の中で特殊個体のガイアマンティス1体に出会うならば他の冒険者でも慎重に戦えば行ける
だがしかしここは地下ダンジョン、削れた体力で疲労を背負ったまま戦うのだから普段と気の持ちようが違い過ぎる
(格段に強く感じるだろうなぁ)
疲れている時にゴブリンキング3頭なんて少し嫌になるだろうね
それよりも50層の阿修羅猪に加え赤猪が多分鬼畜だ、あいつら一斉に走り回るからヤバイ
阿修羅猪だけに意識を向け過ぎると赤猪の突進を受けてしまうしその隙に阿修羅が突っ込んでくるんじゃないかな
あそこは鬼門だがレリック頑張ったな
『タツヤ達に気配が魔物と戦っているがこれはハイゴブリン5体か・・・楽勝だろう』
普通に考えても楽な魔物だが地下にもぐった疲労付きではどうだろうか
いつもより強く感じるかもな、それでも魔物ランクDだし問題はない筈だ
彼らが強くなるには40層あたりがいいかもしれない
俺は30分くらい仮眠しようと決めて目を閉じた、敵が近づけばわかるからな
それにしても今何時だ?いつだろうか・・・焦らずいかないと、だから仮眠をするんだ
俺の耳に入る音は僅かに聞こえる遠くからの魔物の鳴き声と天井から地面にしたたる水滴、完全に真っ暗闇な洞窟の中だ
意外と静かな空間なので俺はすこやかに眠る事が出来た
『おっ?』
目が覚めると上体を起こして背伸びをしてみる
状況は変わらず俺は地下ダンジョンと思われる洞窟の中だがきっとレリックの手先達は俺が死んだのだろうと嘲笑っているに違いない、のちほど手下にはお仕置きが必要だな!
『よっこらせ』
小さく囁くようにして口にすると立ち上がる
ハルバートを持つのを忘れた事に気付いて一旦しゃがんでからみだり手に握り再び立ち上がるとタツヤ達の気配が下に降りているので22層だろう、歩みが早い分道を知っているのだろうと予測する
トボトボと歩いて前に進んでいると道のど真ん中に手ブラックパンサーが2体座り込んで寝ているのが20m先に見えてくる、俺には気づいていないし暢気なもんだな
真っ黒な毛並みはこういうところで真価を発揮するだろうけども寝ていては意味がない、多分地上波夜だと思う・・・こいつ夜ちゃんと寝るしさ
(夜行性ならばランク1つアップしてそうなのになぁ)
日中に真っ黒い毛並みは目立ちすぎるからだ
特徴を活かせない魔物には同情する、そう思いながらも俺は寝ている隙に2体のブラックパンサーの首を斬り飛ばすが鳴き声すら出す時間も与えない、叫ばれると仲間呼びそうだし
俺の腰のポシェットはパンパンであり少し気になる、でも売れば金貨50枚はいくんじゃないかと少しウキウキしている
『てか1人で60層から生還って普通なのかな?タツヤ達と出会ってもどう反応されるか』
口にした通りここはきっとチームで協力して挑むダンジョン、1人で入るとこじゃない
だがそれが楽しい、うん
彼らにあったら30層くらいまで降りて引き返したと言っておこう、61層いましたとか話すと多分彼らの周りの騎士らしき護衛に何言われるかわからん
また先に進みながら敵を倒し俺は22層から21層に向かう為の登り階段を見つけたが上の層にいる彼らの気配も近い
本当に俺に気付いているのか疑問だがマイならば気づくだろう、俺の気配って小動物並みに小さいから気づけないとグスタフからも聞いている
『少し岩陰に隠れるか』
何故か俺は面倒ごとを極力起こさないという事を意識してしまい近くの岩場の後ろに身を潜めた
別にタツタカの友人だし大丈夫だと思うけども念のためだ
寂しく隠れながらも待つこと数十分、階段を降りる音が耳に入る
『本当に可笑しな気を感じたのかマイ』
『本当よ!?てか本当に降りるの?下層の気配は走り回ってたけども近くの魔物の気が一瞬で消えたのよ?本当に小さい気だったけども隠密スキルよあれ、この人数でも到底無理だと思うけど降りるのは得策じゃないわ』
先に聞こえた男の声はわからないが一番強い気の持ち主だ、最後の声はマイだな
そのまま聞き耳を立てるか
『小さい気配がそれ以上の気配を圧倒しながら縦横無尽に移動してるって事だろ?確かに今までこの下層では出会った事は無いが誰かがいるんじゃないか?』
『誰かが入った記録無いでしょ?魔物よきっと・・・あんだけ急ピッチでこの層を難なく移動とかありえないのよ』
リキヤとマイの声だな、すると強い気の男が口を開いたのである
『私がいるから大丈夫だ、危険な時はしんがりを務めよう』
『ネロ大将軍それは危険すぎます、いつもと違う状況でしたらこっから退く事も視野に入れないと』
ネロ大将軍か!?この声がかぁ
んでタツヤの声だな最後は、すると階段を降り切ったらしく明かりが壁に照らされているけども松明持ちだな
岩陰から少し顔を出して除くと騎士2人が松明を持って辺りを照らしている
タツタカの友人3人に大将軍ネロそして残りの4人は大将軍の側近騎士だろうな
俺の気配を不気味な魔物だと勘違いしていたらしく俺が倒しまくっていた時にも気配を感知していたのである、結構レベルの高い感知能力だが【大】は確実だな
『戦争も近い、できるだけ早く50層を越えれるほどの力をお主等もつけないと教皇殿の企みを阻止する事も難しいだろうな』
『でもきっとあの糞ジジイよりも強い奴はいるぜネロさん』
『うむ・・・かなり厳しい戦いになるだろうがそれまでにできる事は強くなることだ』
ネロ大将軍とリキヤが話している、俺は通り過ぎる彼らと距離50mほど保ってついていく
2人の会話は続いていた
『それにしても前回の防衛戦でおぞましい活躍を見せた謎の冒険者だが何も知らないのか?調べたことろ名はレナウスといいハルバートで魔族兵を容易く斬り倒していたと聞くしレリック教皇の教団の者に夜襲を受けて返り討ちにしたと色々密偵から話しが来たのだが』
『わ・・私は知りませんね!2人も知らないでしょう?』
『おう!』
『知らないなぁ!』
マイが慌てた様子で言うが隠すのが下手である
リキヤとタツヤが後に続いて知らないと答えるがネロ大将軍は溜息を漏らして彼らに言い放ったのだ
『どうやら顕示欲の持たぬ冒険者がこの国にいた様だが我らとしても戦争のために協力を要請したいのだ、君達が何かを隠している事はわかるが私にも話してくれてもいいだろう?国王に何を伝えたのだ?』
『それは私達とザントマ国王だけの秘密です』
『それは残念だがもしかしたらレリック教皇を倒せる切り札になるかもしれんのに』
『あの糞ジジイはそんなに強いんですかネロ大将軍』
『十天の者だぞ?この地下ダンジョンの到達点は私の50層が最高だと思うのだがきっとレリックはその先に行っている筈だ、あいつは国で最強の存在なのだが悔しいな・・・私は大将軍だというのに』
『でも飽く迄この国では?ですよね』
『まぁ確かにそうだが・・・マイは何か秘策でもあるのか?』
そんな話を聞きながら忍び足でついていく
確かにマイの言う通りレリックはこのディロア王国では無類の強さと言われても良いだろうな
だが世界は広いのである
聞き耳を立てているとどうやら魔物と出くわしたらしく戦闘をしているがタツヤとリキヤがそれを直ぐに切り倒して終わらせていたが気配から察するにハイゴブリン2体だ
剣を鞘にしまうような音を聞くと彼らは再び歩き始める、俺は無視して上に戻る事も可能だがなんだか気になるので仕方なくそのまま追いかけることにしたんだ
バレない様に距離を保って彼らの声を聞きながら
出会った魔物を倒しながら進む彼らは25層迄あっという間に辿り着くがどうやらネロ大将軍が道を覚えているらしく迷わず迅速に降りていく
ふと25層攻略中、マイが立ち止まった
その様子に皆も立ち止まると俺も足を止めた、彼女が口を開いたのだ
『僅かな気配だけどもずっと私達をついてきてるわ、下の下層から感じた小さくて強力な感じの動きが消えているけども・・・見られている気がする』
ご名答!君は凄い、ノア王女と同じ賢者職とは微弱な気配も鮮明に感知するのだろうな
これで確定だ、彼女は特殊な感知能力を持ってる・・・普通気づかない
慌ただしい感じが奥から雰囲気でわかる
(全員の気が高まったが警戒されたか)
だが1人だけ可笑しい気がある、皆敵意を俺に向けているのだけども松明を持つ騎士の1人だけがチラチラとタツヤ達に視線を送っているのが分かる、ここは丁度真っすぐの道であり俺は千里眼スキルと夜目が利く事も相まって彼らの様子もはっきり見えるが肝心の彼らは松明を頼りにしないと視界を確保できないでいる
その騎士はなにやら松明を持っていない左手で懐に手を入れると何かを取り出していた
周りの者達は後ろにいる暗闇の中にいる50m先の俺に意識を向けているけどもその隙にマイの後ろに忍び寄りながらも何をこの騎士は動いているんだ?
石?それに赤い石だがあれは・・・あっ
(爆石!)
石にも色々ある、使い切りではあるが転移できる転移席もあれば今騎士が懐から隠すように取り出した爆石という中規模な爆発を引き起こす石も存在するがその騎士は俺に敵意を向けるよりまるでマイに向けているように思える、魔力を石に込め始めたらそれはスパイ認定で決まりだが教団の者に違いない
爆石は魔力を一定量込めると起爆する仕組みだが注ぎ込むまで数秒かかる
それだけ時間があれば俺は対処できるしな
『俺が先に前に出る』
ネロ大将軍がそう言いながら立派な剣をこちらに向けて歩き出した瞬間にそれは置きた
マイの後ろにいた松明を持つ騎士が爆石に魔力を注ぎ始めたのである、このタイミングで注ぐ意味はない
仲間が爆発に巻き込まれるが近くのマイは直撃をくらうし重傷を負う事は確実だ
しかし不完全な天位職となるともしかしたら死ぬかもしれない、復活術は無い
なるべく英雄3人を排除すべく自爆覚悟で行った教団の作戦だろうな
(ここは仕方ない!)
俺は直ぐに銀閃眼の狙撃弾を右目から撃ち放った
洞窟内に大きな炸裂音が響き渡るとその弾道は綺麗にネロ大将軍の顔スレスレで通過し
爆石に魔力を込め始めた騎士の顔面を直撃し爆散したのである
当然風穴というわけではなく頭部が吹き飛ぶという惨事ではあるがすまないなお前ら
1人の騎士が死んだという事実に皆背中から倒れていく首のない騎士に目を向ける
ネロ大将軍も非常に驚いた顔で倒れる騎士に目を向けているとマイが叫んだ
『キャァァァァァァ!!』
女性が見るには耐えれない光景だろうが我慢してくれ
マイは直ぐに頭が吹き飛んだ騎士に背を向けてしゃがむとタツヤが駆け寄って背中をさすっている
しかしリキヤは更に気を高めて最大限の警戒をしてきたのである
ネロ大将軍もこちらに無理向くと驚くくらい強い気を放ってくるがそれと同時に威圧を飛ばしてきた
心地よくで風が涼しい、威圧【大】だとわかるがそこまでの高みにいった大将軍か
クズリに近い存在がいるのだなここにも、でもやっぱクズリが強い
俺はハルバートを担いだまま後ろに下がる、戦う必要は何もないし俺は退くしかないようだ
彼らは真実は知らなくてもいいだろう・・・そのうちわかる筈である
『何が起きた・・・奥から何も感じぬのに馬鹿げた威力の弾が飛んできたぞ!?』
ネロ大将軍が凄みを見えない俺に向けながらそう口にすると無残な姿となって息絶えた騎士に近付いた他の騎士2人が驚いた様子で口を開く
『ネロ大将軍!ルイスの持ち物から教団の本が!!!』
『何!?』
ネロは振り返り死んだ側近に近付くと騎士の持ち物から出て来たトゥルーゲン教の信仰を唱える本が出て来たのである
『これはレリックの教団者しか持てない本だぞ!まさかルイスお前・・・』
ネロ大将軍は残念そうな顔つきで頭部のないルイスという騎士の遺体を眺めた
すると騎士が彼の横で話し出したのである
『しかも爆石を左手で強く握ってます、魔力が少量注ぎ込まれた形跡を確認しました』
死んでも話さなかった左手に持つ爆石に騎士は気づきネロ大将軍に教えたのだ
全員ありえないと言わんばかりの顔を浮かべ続ける、あまりに予想外な事でもリキヤとタツヤは後方の俺に向かって警戒を解かないでいる
暗くて助かった、俺は見えるがそこで謎解きしてくれると助かる
そうして薄暗い洞窟の奥で俺は彼らの様子を見届ける事にした