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【完結済】槍の新兵は夢を見ない  作者: 牛乳太子
13章 番外編 それぞれの生活
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50話 始まる旅の前に

『何事じゃぁぁぁぁぁぁぁっぁ!』


俺とナッツは王室の前を暢気に護衛していると突如として巨大な気配を大食堂で感じた

ありえない事だが起きてしまった以上驚いてられない


先ほどの声はデカい魔物の咆哮を聞いて王室から寝間着姿でゼリフタル国王が飛び出してきたのだ

息を切らしながら慌てた様子で俺やナッツそして先ほどの獣の咆哮で驚いてしまった騎士達をキョロキョロと見回しながらもう一度俺達に顔を向けて国王はあたふたしながら声をかけて来た


『何が起きたのじゃジャムルフィン!?』


寝間着姿で王室の廊下、国王は似合わない姿で俺に質問をしてきた


『先輩、感じた気から予想を聞かせてください』


真剣な顔をしたナッツもそう俺に言葉を投げてくる

そういうのは俺苦手なんだけども仕方がない、一息ついてから今起きた出来事を俺は言われた通り予想でその場の者達に伝えることにした


『大食堂に向かってグスタフとルルカそして騎士達が向かったがいきなり大食堂に熊帝の気配が現れたんだ、多分召喚士がいたか違うなら不思議な道具を使って呼んだかだが方向で熊帝というのはわかるな?』


俺の言葉に騎士やナッツは頷く、国王も真剣な面持ちで頷いた

そういえばこのゼリフタル国王、王族の癖に元冒険者であり熊帝とも戦った事があるらしい

だから皆あの恐ろしい方向が熊帝の声だと気づいたのである、大食堂にその強力な魔物が現れた


騎士達は国王に顔を向けて指示を待っている様だが肝心の国王は俺達にそのまま話を続け出す


『ジャムルフィンは落ち着いている様だが何故だ?』


首を傾げて話しかけた言葉に俺は直ぐに微笑みながら答えたんだよ


『グスタフがいれば大丈夫だ、んで熊帝が現れた隙にサザンドラと思わしき気配が厨房裏から逃げ出したけどもルルカと騎士達数名が待ち受けているから逃げれないし熊帝はそのうち死ぬが大食堂は滅茶苦茶になるのは避けられないだろうな・・・俺のチームの熊は多分久しぶりの好敵手に楽しんでいそうだし近付くと逆に危ないので俺達はここで遠くの状況がおさまるまで貴方を守ることが最善だと思います』


『ですね先輩』


ナッツも納得し、笑顔で頷いてくれた

国王は大食堂がハチャメチャになる事は残念だと言うがこの事件の粛清には致し方ないと諦めてくれた


『にしてもだ、熊帝に単独で挑むと言うのは聞いたことが無いぞ?』


『それが可能なのがグスタフのイビルディザスターです国王、あの方の天位職は魔物に対して絶対の力を発揮する魔物キラーですから』


俺の代わりにナッツが答え始める


『・・・詳細は聞いてはいるがそこまで凄いのか』


『そうですゼリフタル国王陛下、他の天位職でもランクAの魔物を単独で撃破は可能でしょうがグスタフさんの職はどの天位職よりもそれが容易に出来る特殊な天位職なのです』


『本当に凄い傑物達がジャムルフィンのチームにはおるのだな・・・銀狼に千剣そしてパンドラという不可思議な天術を使うスカーレット大公の娘ルルカ嬢に悪魔職と言われているイビルディザスターか』


腕を組んで寝間着姿の国王はそう口にする

そうしていると廊下の奥から別の寝間着の者が泣きながら走って来た、その者の後方には焦った様子で追いかける騎士達が数名


『いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!』


テルミナ王女だ、遠くから聞こえる熊帝の叫び声に驚いて飛び起きたんだろうな

ナッツが王族揃って寝間着という事態に顔を隠して笑いを堪えているが俺は苦笑いで向かえることにした


『テルミナ!?女性なのだから着替えるくらいせぬか!』


『そんな事言ったってぇぇぇぇぇぇ!』


国王に抱き着きながらもテルミナは体を震わせて口を開いていた

直ぐに後を追いかけてきた騎士達が息を切らして王室の前に辿り着くと彼らは何事なのか聞いてきたので先ほどの俺の予想を彼らに聞かせると目を見開いて驚きを見せた

勿論テルミナ王女も驚きすぎて時間が止まったかのように動かなくなる、少し面白いなと思い俺は彼女に声をかけてみた


『お前が倒しに行こうとした熊帝だぞ?ランクAの頂点と言われる最強だが倒しに行くか?』


『無理無理無理無理ぃぃぃぃぃこんなん無理よぉぉぉぉぉおおおおお!』


懐かしき初対面を思い出させる言葉を聞かせると即座に否定される

一応安心させるために俺のチームの者が討伐する事を伝えてもテルミナは信じてくれない


『そんな人間いるわけないでしょ!』


『俺達ランクS倒してるんだけど・・・』


小さい声で俺はそう囁くが聞いてもらえないだろう

国王にはテルミナと共に王室で静かにしててくださいと言うと国王はテルミナの頭を叩いてから大人しくして共に王室に入っていった

一旦この場も静かになったかと思い騎士達も安堵を浮かべた瞬間、地震が起きた


『地震か!?』


少し大きい、しかも時たま熊帝の咆哮がこの城内に響き渡るが流石の声量である

その度に王室を守る騎士達は体を強張らせるが怯えた様子は見せない、流石王室を守る側近だ


『久しぶりに熊帝の叫びを聞いたが・・・これは苦しがっている様だな』


騎士の1人が口を開くとナッツが興味を示して話しかけたんだ


『わかるのですか?』


『我らは国王の側近騎士、熊帝にも立ち向かった事はあるが怒りと苦しみが混じった様な感じがするってだけですよナッツ殿』


『それでも場数をお持ちという事なんですね』


『有難いお言葉です』


騎士は微笑ましい顔を浮かべてナッツに頭を下げる

そうしているとグスタフと熊帝が激しくぶつかり合う気配を感じるけど俺の感知も中々に卑怯だな

大食堂で起きている出来事が手に取るようにわかる

騎士達は遠くの廊下から響き渡る大きな音などを聞いて反応を見せるが冷静に王室の扉だけを守ってくれている


言われた指示には素直に従うのは良い事だ

俺とナッツは床に座って遠くの戦いの状況を見守ることにしたが俺が口からその状況を伝えるだけの簡単な仕事である


『グスタフの気配が大きくなったからトドメを刺す気だぞ』


『本物の熊に倒されるんですね』


『本人の前で言ってみ?』


『無理です』


無表情で答えるナッツは絶対言わないだろう

そうしていると熊帝の気配が消えてサザンドラと言われる物の気配は小さくなったがきっと手負いになった、近くにはルルカだが確実に彼女が打ち倒したのだろうと俺は確信した

騎士達にもそのことを伝えるとようやくおさまるのかと口々にする

それにしてもグスタフの奴は・・・少し楽しんだろ?影犬使ってワン!でボコ殴りで良いじゃないか

あの影犬は1匹触れるだけで約5秒ほどの金縛りにあうと言うとても卑怯な技である、これがあったから俺達は黒龍にも勝てたと言っても過言じゃない


可愛い犬なのにもかかわらずこの子犬は邪悪すぎる

喰らえば5秒という時間はとても永く、勝敗を決するには十分すぎるほどの時間であるからだ


『では私達が大食堂に向かい被害状況を確認しますので!』


テルミナの騎士である5名は直ぐに廊下の奥に走り去る

グスタフとルルカの気配はどうやら・・・あれ?客室に向かってる?


(あいつら寝る気だな・・・ったく)


頭を掻いてみせる

ナッツは俺の様子に首を傾げているけども説明したら笑ってくれた


『彼らは頑張ってんですから寝かせましょう、というか先輩譲ったんですよね?』


俺の顔を覗き込めながらニヤニヤしてくる

ああそうだよ、グスタフも最近暇してると思ったから譲ったんだよ

でも確実にあいつは満足だろうな、熊帝とサシて勝負で来たんだしこれで不満なら俺がボコボコに!

でもあいつとの特訓は激痛との勝負過ぎていつも俺がヒヤヒヤしてしまうんだよな

殴られるだけで痛覚耐性無視して泣く


俺迄魔物扱いとか世の中間違ってる

騎士の1人が王室をノックして中に入るがきっと状況報告をしているのだろう

俺達は立ち上がるとナッツは欠伸をした、とても眠そうなので彼には客席に向かって寝ることを推進してみると目を輝かせて走り去っていく


俺は冗談で言ったんだけども嬉しい笑みを浮かべて走り去る後輩の背中を見ながら手を伸ばして遠くに消え去るナッツを見届けてしまう

俺だけ・・・俺だけ・・・・


『千剣殿は食い意地と睡眠をこよなく愛すると言われてますが本当なんですね』


騎士が苦笑いしながら俺に話しかけると俺は答えた


『この状況で普通素直に受け止めるかぁ・・・俺の冗談を』


『まぁ・・・いう相手が悪かったんですね』


『ぐ・・そうだった』


騎士達が小さく笑うが否定できない

ナッツに食べ物や寝ることに関しての冗談はやめておこう

行ってしまったが俺は諦めてハルバートを肩に担いで後の事は騎士達に任せようとした

理由は簡単であり後処理が俺は超苦手、俺達が自信を持って出来る事は武力行使のみ!他の事を期待されても無理という事である


『すまんが後は頼む、明日の護衛は普通にこなすから大丈夫だが一応ギリギリまで今日は起きて警戒は俺もしとくよ』


『後処理迄奪われたら私達のプライドがありません、ここはお任せを!何かありましたら直ぐにでも!』


『助かる』


そう言い残して王室前の廊下から俺は歩いて客室に戻ることにした

静か過ぎる廊下に俺の足音だけが響くが先ほどの騒音に比べて居心地は良くなっている

歩いているとやはり騎士が最低でも3人一組で歩いている、1人で歩くと言うのはあり得ないからな

見つけたのが俺とナッツで良かった


他の騎士達にも見つかれば駄目だが上手く逃げ回っていたのだろう

ダグマ最後の生き残りのサザンドラか、話では上位職の剣人らしいがそれじゃルルカニは勝てない

死地という数が違うだろう


人相手に俺達はそろそろ苦戦という言葉を忘れてきている気がしている

それもそうだが俺達の相手は人じゃない、だから苦戦しないと言う言葉に悩みはない

客室まで辿り着くと俺は直ぐに部屋に入りハルバートを壁に立てかけてベットに横になった

城内の気配を意識を集中させて探るが怪しそうな感じは一切しない、大食堂ではサザンドラ以外にも4人の気配は感じたがそれはグスタフが一気に掻き消したし死んだのだろう


生き残ったサザンドラは騎士だと思われる気配と共にどこかに運ばれているが捕まってるな完璧

寝返りをうって天井を見上げるが明かりを消そうと一度起き上がった時に誰かが入口の前に立っていることに気付いた


赤いローブを羽織った男、ナラ村で見た十天大2位の者である

俺はびっくりして体をビクンと反応させるが本当に気づかなかったぞ?いつの間にこいつが?

それになんで俺の部屋にいるんだ?変態か?


『驚きすぎだよ、おめでとう・・・魔天狼になれたんだね、魔族がそろそろ動き出すからきっとタツタカ君も動くだろう』


赤いローブの正面には天という文字が描かれている

彼は笑い声を見えないフードの奥から出しながらそう言う


『何しに来た?』


『リヴィはディロアの件まで動けないよ?だから襲われることは無いさ』


『どういうことだ?』


『僕が少しお仕置きしといたからね、怪我が治るまで相当かかるよ・・・多分2か月かな』


こいつがあのリヴィを!?そんな馬鹿な!

そこまでこいつは強いと言うのか、だが十天の2位であることは事実であり今のリヴィに一番近い存在だが肝心のこいつは平気そうな感じだ

怪我をすることもなく怪我を負わせて時間を稼いだという事か?何故だ・・・


『僕からの手土産さ、だから君はタツタカ君の為に全力で動いてあげな・・・そうしないと彼は真実を知る事は無い』


『どういうことだ!お前は一体何者なんだ』


『それは知りたくなくても・・・多分君なら直ぐに辿り着けるさ、君達だけが苦労している訳じゃないんだよ・・・それじゃ後の事は頼むよ2代目魔天狼さん、初代の彼が生きている姿を僕にも見せてよ』


そこまで言うと彼は唐突に俺の目の前から消えた、言いたい事を言って消えるとか勘弁してくれ

深い溜息を漏らしながらも壁に受けこまれた輝魔石に布を被せて部屋を暗くしてベットに戻った


『・・・多分あいつは、シルバの時代の』


既に答えは出ているが確証はない

だがリヴィが5千年も前から生きている羊がいるんだ、ならばあいつが生きていても不思議じゃないか

この世界に予想外という言葉は考えを鈍らせる

そしてアザクタールも帝国の北部の森にて生きているという情報もある、一応俺もあれから色々考えて答えを導き出そうとしていたがアザクタールの事は全然わからない


だがしかし、先ほどの赤いローブの子供の存在に対し俺は間違いないと言われる答えを導き出した

それはタツタカの職の性能を知っているからである


『きっと赤いローブの子供はジ・ハードの職を複写したから不老不死でいるんだ、そうだろうビビ』


きっと合っている

そう思いながらも俺は変化が訪れない深夜を警戒したがその後に何事も起きないと思い俺は寝た


次の日のポートレアの祭りでは何事も起きず俺たちは王族が乗る凱旋用の馬車に乗り後ろで護衛というなの見世物をした

ナッツやグスタフそしてルルカ、ルルカは慣れた様子で国民に笑顔を見せているがグスタフは怖い顔をしながら腕を組んで正面を見るのみ


少しは笑え


ナッツは苦笑いしてるがありゃ緊張してるだけだな

そして初めて見たレイチェル女王は綺麗な方でありどうやら北の街タンカーにて職務をこなしていたらしいが朝方にポートレアにギリギリ到着といったところ


久しぶりの母にテルミナもご満悦そうにして馬車の上から大通りの国民に手を振っている

両脇には屋台がずらりと立ち並び祭り騒ぎだ

国王も昨夜の出来事から解放されたと思い気楽に国民に向かって元気よく手を振る


『いつも助かってます銀狼殿』


レイチェル女王が後ろを振り返り俺に口を開いた

多分チームの話も情報も彼女の耳に筒抜けだろうな

今後はポートレアに身を置くらしく家族揃って城に入れるなら心配はない


『たいしたことしておりません』


遠慮した言葉を送ると女王は微笑みながら前を向き直す

王族の馬車の前にはノートン大将軍が馬に乗り精鋭と思われる騎士を50人ほど馬に乗せて先導しており、勿論王族の後ろには他の将校達も馬に乗って王族の馬車に追従する形となっている


大通りから手を振る者も入れば建物の窓からもといった感じ

以外と国王を目の前にするのは武人祭を除けばあまりないだろう


『剣すげー!沢山浮いてる!』


『千剣ってすげー!』


簡単に言うとやはりナッツが一番子供たちに超人気だった

ナッツはそんな声が聞こえる度に浮遊する30本の剣を回転させたり空中飛行させたりとサービス精神全力でだすと子供の目が輝く

驚きの声も聞こえるがなんだか羨ましい


グスタフは変わらんな

馬車の上で堂々と腕を組んでいる熊を見る国民は息を飲んで小さく俺の耳にその声が聞こえる


『首狩りだ…』


『目があえば首が飛ぶぞ』


『今朝の掲示板で書いてあったが城に現れた熊帝を単独撃破したらしいぞ』


『本物はこっちかぁ』


面白い、グスタフもそんな声が聞こえるらしくなんだが我慢している

プルプルしているけども大人だな、俺は声を上げるかと思ったけどな

俺はハルバートを担いで無表情でいるけども俺の視界に映る貴族たちの目がハルバートを見て輝いている


金貨2億枚、いやそれ以上の価値のある武器だし俺の知る武器の中では最強かもしれないけども

それでもシルバの記憶から見たあいつの武器、あれはヤバイ代物だと思う

同等かそれ以上・・・俺のハルバートよりも大きめだったな

俺の地獄耳はこういう時役に立つ、それを知ってとある声が聞こえた


『2日後村に向かいますよジャムルフィンさん』


声の方向に顔を向けるとそこには黒い仮面の悪魔と言われているタツタカが屋台の前に立っていた

俺は真剣な表情を浮かべて彼に向けて小さく頷いた、隣にはゾロア・ス・ターク

彼は魔物ランクSのギュスターヴ・ハデスとなり強力な力を得ているタツタカに付き従う十天大4位の者、漆黒の鎧が黒光りしているがその本人の表情は微笑んでいる


俺は口に出さずにシルバシルヴァを発動させて体に銀色の狼気を循環させ、風を巻き起こした

溢れんばかりの狼気が天まで昇るようにして伸びると周りの国民からは大歓声が沸き起こる

俺は国民に見せる訳じゃなくタツタカに見せるためにこうした、俺達の準備は万全だと


『待ってるぞタツタカ!』


彼に聞こえるように口を開く、俺達の馬車は彼が立っていた屋台の近くを通り過ぎるが最後まで俺達に視線を向けてくれていた

その一部始終を国王やシルバーバレットの者達も驚いたように見ていたが状況をいち早く理解したナッツが俺に声をかける


『いましたね、あの2人』


『ああ』


するとグスタフが不敵な笑みを浮かべて会話に混ざって来た


『楽しみだぜ!また死地っつぅもんを拝みに行くか』


『あら?私も今回は頑張るわよ?』


ルルカも元気よく答える

全員万全だろう、ナッツはまだ上位職だがそれでもこいつの職は異質な能力なので全然不安はない

ましてや天位職で向かえると言う事に贅沢なものを感じるよ

よくここまで皆強くなったと心の中で褒め称えた


シルバシルヴァを解いてからいつも通り馬車の上で王族を警護し、今日という日を俺達は終えることにした

国王は今日くらい城に止まっても良いといってくれたがディロアの件で動くことになるから帰ることを伝えると少し残念そうな顔をしたが仕方がないと切り替えて帰りの馬車を用意してくれる

時間は夕刻、城の門の近くで馬車に乗り込もうとした時に近くにはなんとブール公爵がいた

いつも通りニコニコしている彼に頭を下げてから俺は話しかけることにしたんだ


『ディロアの件で一か月は外出します、何かありましたらマ『君がいない間はバニアルド君のチームに頼んだから大丈夫さ』』


『?』


俺は首を傾げた、その様子にブール公爵は小さく笑いを見せてから続けて話す


『君は一人じゃない、君は全ての者の前を行く者となったんだ・・・私は止められなかったなぁ、彼らも覚悟を決めたらしい』


どういう意味かはこの時知らなかった

その後の公爵の話ではバニアルドは新婚生活を安定させてから冒険者活動を開始するつもりらしく

本当は俺のこの旅に参加する気ではあったが自分の身の回りをまず最優先しなければと断念したんだと聞く、いい判断だ


『ブール公爵?止めれなかったとは?』


俺の言葉でブール公爵は苦笑いしながら答える


『そのうちわかるさ、君は無謀だと怒るかもしれない・・・だけども彼らも君に魅了されたんだ、上という存在をその決死の状況下で見たいのだろう、無下な言葉は慎むんだよ?ジャムルフィン君』


そう言いながら俺に背を向けて手を上げると彼はどこかに歩いて行ってしまった

なんだか意味が深そうな言葉に俺は薄々気づいて来たけども、もしや!?マジ?大丈夫!?


(・・・早過ぎないか、いやでも・・・)


『ジャフィン行くぞ?』


馬車の扉から顔を出すグスタフの声に返事をして俺達は馬車に乗った

ここからはナッツもルルカも2日後に来るタツタカに備えて村で待機する事となった

いよいよこの時がきたか、そう思うと体が緊張した時の様にキンキンしてくるがこの感覚は他に人に言っても伝わりにくいだろうな


馭者が1人に馬2頭にひかせる大きめの馬車だが護衛は騎士、ナッツがまだ乗ってきていないけども何をしているんだろうと思っていたら慌てた様子を見せながら馬車に入って来た


『すいません、もう大丈夫です』


『なら行くか』


俺が口にすると正面の窓から馭者が馬を歩かせてようやく出発した

村に着く迄の会話ではナッツはガウガロに行った時のことを話したのだがとんでもないことを口にしたんだ


『ノアさんに会いましたよ!!可愛い女王ですねぇ!先輩が魔天狼になれば復活するとは聞いてましたけども僕忘れてて見た瞬間叫びましたよ』


ナッツはすでに出会った、俺達もそのうち顔を見せなければいけない

ディロアが終わればチームで行こうと言うと全員即答で了承してくれた

詳しくナッツから話を聞いて見るとノアはシュウザーの護衛でティクティカ遺跡の地下に出向いたらしく無事シルバに会えたらしいけどもやはり彼女での開放する方法は知らないのだとか

やはり鬼火島にあるなんとかチップを使うしかないか、あそこには異常なくらい強い魔物が多いと聞いているから最初は不安でしかなかったが今のチームならばきっといけると思っている


『にしてもよぉ、どういう感じで動くつもりだ?ジャフィン』


『グスタフとルルカは国内で動いてくれた方が良い、俺とナッツは魔族との戦争でタツタカの友人たちが死なない様に見ながら戦う』


『てことは当初の言った通り俺がペテン師教皇を倒すこともありえるってか』


『そうだ、きっとゾロアと共に動くはずだ・・・タツタカはエイミーを救うために単独駆動が一番いい』


『僕もそれには賛成です』


『私もよ』


ナッツとルルカが俺の意見に賛同してくれた

ナラ村に向かう馬車の中で出来うる問題についてずっと話し合った

強敵がどこにいるかなどだ、俺は仲間には魔王の右腕と左腕と言われる2人がいる事を入念に伝えた

どちらもきっとランクAの実力は確実に超えているという事を話すとグスタフが嬉しそうに微笑む出す


『道化パブロフとエンビシャか・・・まぁ無理だと思ったら一度引く事も考えとくさ』


賢い、だがゾロアもいるから大丈夫そうだがもしかしたら近くにいない場合

そういう考えも必要という事だ


『あなた方が旅の間は村に騎士を一定数駐在させますのでご安心を』


俺達の他に乗っていた3名の騎士のうちの1人がそう口にする

有難くその行為を受け取ることにして返事をした


『助かる』


そう答えてから他愛のない話を皆でし、村に着いたのだ

時間は21時であり直ぐに俺達を乗せた馬車はポートレアに戻るために折り返し馬を走らせた

村の入り口でルルカが背伸びをすると笑顔で口を開いた


『今回も予想外な想定外って奴が押し寄せるのよねぇ?楽しみだわ』


『ルルカさん?僕は嫌ですよ?』


『あらナッツ、もう逃げれないわよ?』


『あはは・・ですね』


ルルカは以外のも度胸があり過ぎる

スカーレットさんの娘だと思うと何故か納得するのがなんだかなぁと思う

彼女はグスタフの家に今日は泊まるらしくナッツは俺の家だ

別れる際に俺は今日最後の言葉をチームの者に送ることにした


『皆、ルルカが言った通り予想外が沢山押し寄せると思う・・・死ぬな、乗り越えよう』


『勿論です先輩』


『ケッ!虫神や龍以上なんざいても別にいいぜぇ?』


『やっと天術を満足にブッパできるのねぇ!』


いつものチームに俺は微笑んだ

大丈夫だ、きっと乗り越えられる

今回は俺達が主役という訳ではなくこれはタツタカの為の旅であるからだ

それでも彼らが動きやすいように一定数の強者とも戦う事は予想される


2日後にタツタカとゾロアが俺達の元に来る

その日までいつも通り特訓をしながら彼らを待つことにしようか





一国と魔族の歴史が変わるであろうその大いなる戦いに向けて



番外編章 完

・・・・・・・・・・・






『忌まわしきディロアの王族を根絶やしにする時がきた、国に潜んだ者達の準備も万全であるな?』


どこかはわからぬ漆黒の玉座にてとある者がそう告げた、明かりは両脇の壁にかけられた松明のみであり玉座に座る者を照らすには程遠い光である

玉座に続く階段の前にて1人、黒く汚れた包帯をグルグル巻きにして体中を隠す者が玉座に座る者に膝をつきながら先ほどの言葉に答え始めた


『エンビシャとレリックが上手く動いてくれてます、レパルドルの協力は駄目になりましたが想定内ですのでこのまま行きましょう魔王様』


声を発する者の姿が本当に異質過ぎた

人間を包帯巻きにしたかのような姿でありその包帯は薄汚れている

彼の足元にはバトルアックスという巨大な斧が置かれていた


『頼むぞ道化パブロフ、転移者が完成する前に討たねば厄介な存在となろう・・・そしてきっと奴もくる』


玉座に座っていた者が立ち上がると拳を握りしめて最後に口を開いた


『ヘルトの生き残りであるあのガキも』









次回   14章 ディロア大決戦 涙を流す勇者に黒騎士は決意し、少女は想う

バニアルド『長いのがきたぞぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!』


ナッツ『今回新婚優先ですか!?』


バニアルド『まぁ嫁と毎日夜はセッ!『やめてっ!(アナベル)』』

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新作ですがこの小説を見てる人ならわかる部分が多い内容になってます 勇者ですが指名手配されたので逃亡ライフをはじめます
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