表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結済】槍の新兵は夢を見ない  作者: 牛乳太子
13章 番外編 それぞれの生活
403/757

33話 マルス編 聖弓姫アルセリア

帰ってきたカレジリージョン一同は頑張った?アルセリアの為にマルスの奢りで盛大に良い物を食べさせた

肉料理が豊富な、飯屋に入るとフードを隠すことを諦めてフードを脱いだアルセリアと共に店のテーブルに座るがやはり彼女の容姿に誰もが顎が外れそうなくらいに口を開けて見惚れていた


テーブルの上に並べられた王牛のステーキに皆が目を輝かせている

アルセリアはそうする暇もなく誰よりも早くその高級料理を口に運び始めて美味しそうに鳴きながら食べ始めていた


(飯食うの好きなんだなアルセリア)


そう思いながら見ていると他のメンバーも嬉しそうな顔をしながら食べ始めたのである

彼らの様子を見てから最後にマルスが食べ始める

どうみてもエルフ族、街に戻りながら話せるだけの事情は聞いたのだがどうやらこのアルセリアというエルフの女性はなんとトランテスタ大陸からやって来たらしいのだ、不吉な大陸とも言われたその地にはエルフ族再興のために種族の繁栄を願い数を増やしているが彼女が何故ムルド大陸に来たかは秘密だという


『私はエルフ族の中でも最強の弓士だ、多分この国でも!あとアリス!私は88歳っ!ちゃん付けの歳ではなーい!』


アルセリアはそう言っていたけども彼女がプルプル震えていた理由はそれだったのかとマルスが分かると何故か心の中がスッキリした

今こうして皆で上手い料理を囲んでいるが別に容姿を隠す理由はあまりないらしくあるといえば面倒ごとに巻き込まれたくはなかったのだという


(今更絶滅したエルフと出会っても直ぐ慣れちゃうなぁ、だって在りえない事が起き過ぎて・・・ははは)


『アルセリアちゃん!美味しいね!』


目を輝かせてステーキをナイフで切ってからフォークを使い、口に運ぶアリスがそう言うけども肝心のアルセリアは遠い目を彼女に向けて答える


『だから私年上・・・』


もう訂正は無理であろう、身長がアリスと同じなのだから

ふとマルスは軽く周りを見るがやはりアルセリアが気になるのか、他の客も彼女を見て驚いている

確かにそういった反応は仕方ないと誰もが思う

人はエルフ族が絶滅したと思っていたのに今視界に映っているとなると驚くしかないだろう

そんな視線をモノともせずにエルフ族のアルセリアはハムスターの様に頬を膨らましながらお高い肉料理を食べている


『それにしてもクールだぜ!強いし美女だしエルフ!流石だぜ!』


アレンの言葉にアリスは少しムッとしているが彼の言葉にアルセリアは一度口に含んだ肉を飲み込み話し始めた


『私の美貌は罪だからな』


清々しい顔で言う彼女の言葉に誰もが遠い目をしたがそれは近くのお客さんもだ

自分から自身が美しいと言ってのけた、事実だがハッキリと笑みを浮かべて言われると流石に驚きを見せる者達でも引き攣った面持ちを見せるほかない


『流石天使!』


アビゲイルはもう駄目だろう

マルスはアルセリアに色々聞いて見ることにした



『アルセリアは天位職を目指せるんじゃないかな?』


『勿論だとも、半分はそのために来たようなもんだし・・・弓職の良さを知ってもらいたいし』


彼女の言葉にアリスは聞いて見る


『チャリオットから何になる気なの?』


『アポカリプス』


全員頭に【?】を浮かべている

それもその筈、天位職の情報が知れ渡っていても誰も弓職の欄をちゃんと見てなかったのだ

聞いておいてそれは無いと言いたくなる理由でもあるが流れで聞いてしまった自分を誰もが攻めている


(わからん!)


マルスはそう思った


『でもこのチームに入って正解だった、野宿当たり前に森の魔物を倒して焼いて食ってお腹痛くしての毎日だったしこうして美味しい料理食べれて寝床もきちんと提供してくれるんだもん、もう中毒よ中毒・・・』


美貌に合わなさすぎる生活にどことなく同情をした全員、だがこうしてちゃんと生活しているので問題はない

そして今日の報酬は金貨12枚と多めだったので1人ずつに金貨2枚を渡して残った2枚はチーム資金にすることで全員一致した

容姿を見られて生きにくくなるのではないかと内心心配していたがそれは大丈夫だろう

彼女は予想外にも堂々としているのだから


『チームにいてくれれば食べ物もあるし寝る場所もあるから安心してよ、満足するまでここに居てくれればいい』


マルスがステーキを頬張りながら言うと彼女が直ぐに答えた


『早くても10年か、エルフは時間間隔は人間と違うから安心しなさい・・・私が戻る事にはこのチームも国で最強になっているでしょうし・・それよりも帰る気は今無いけども』


全員ホッと胸を撫でおろした、アルセリアがいつ故郷に帰るのか不安だったが当分は帰らないと聞いて再び笑みを浮かべる

彼女の口からも国最強のチームという言葉が出てマルスは嬉しかった

壁は大きい、マルスの友人であるジャムルフィンという国最強の冒険者がいるのだからだがその人物について知っているか彼女に聞いて見ると知らないらしい


まぁ彼女は黒龍戦後に海を渡って来たのだからここの情報は疎いのである

マルスの口から現在の国で最強と誰もが認めているシルバーバレットの事を話すとアルセリアが胸を張って答えた


『そんな化け物いるはずないだろう、Sランクの龍を手負いとはいえ倒すのは夢でも見ているのではないか?てか龍とか絵本の魔物だろう?マルスは幻でも見たのか?』


信じてくれなかった

でも銀狼だけはそのうち見せようとマルスは企てた、遅かれ早かれこのチームにはジャムルフィンを見せておきたいと思っていたので理由が増えて行きやすくなった

皆王牛のステーキを食べ終わると満足そうな笑みを見せながら明日の予定を話し終えると今日は皆実家に帰るという事でまとまった、全員アポスに住んでいるのだ


アルセリアはマルスの実家の近所にある宿に泊まると嬉しそうな顔を見せてくれた

そうして今日は解散となる、時刻は18時過ぎと丁度いいだろう

飯屋の入り口でアビゲイルとアレンそしてアリスと別れるとマルスはアルセリアを連れて街の中を歩いて帰る事となる


そこで彼女のステータスを見せてもらったのだがマルスは驚いた


・・・・・・・・・・・


アルセリア・リース・ヴェルミナント(エルス族88歳)チャリオット『弓上位職』


☆戦術スキル

弓術 【7】 弓の熟練度、恩恵により攻撃速度と速射速度が大アップ

体術 【5】 体術熟練度、恩恵により耐久力と素早さが中アップ

魔術 【4】 魔術熟練度、恩恵により魔力量を中アップし・詠唱時間を中短縮

溜め短縮 技や術の発動までの溜め時間を半減させる

魔力ボトル 魔力量を中アップさせる


☆補助スキル

超感知  超範囲で生物の気配を察知、種類まで確実に特定する

魔術盾  魔術攻撃のダメージ半減  

分身   自身の分身を作り出す事が可能

着地術  高い所からでも着地が可能になる

毒無効  毒が効かない

美食  【大】好物に限り体力を大回復

自動回復【中】 体力・魔力が少し回復していく

魔力感知【中】体内の魔力の流れを感じとることが出来る

痛覚耐性【中】痛覚を少し軽減する

集中  【中】術や技の構築時間を少し短縮する

体力  【中】少し疲労しにくくなり自身の体力を中アップ

忍耐  【中】少し物理耐性が上がる

運   【中】少し運がいい


☆称号スキル

喧嘩師   技スキル以外の攻撃力を大アップ

魔物キラー 全魔物に対して攻撃力が上がる

シューター 命中精度が大アップ 

生還者【大】素早さが大アップ

孤独の加護 悲劇を迎えた者は苦難を超える為、歩みを止めない

  

☆技スキル

??????

グラン・チャリオット


    

・・・・・・・・・・・


(強い!!!!)


常識的にこの世界でのスキルレベル7以上は国でも確実に名が出るくらいの実力者であるが彼女はまだ前のタツタカ同様、無名状態であったが有名になるのも時間の問題であろう

江古族という真実も相まっているしこの事実は数日で国中に知れ渡る筈だとマルスは予想する


無名なのに強い事を知った彼は隠れて汗をかきながらアルセリアと歩く、ステータスに驚きすぎて今更技も見たいなどと言い難い

見なくても強い事に変わりはないが彼女の称号スキルにある孤独の加護そして生還者が大という点に深い意味がありそうだなと思うがそれはアルセリアから無理やり聞くような事じゃない

誰でも言いたくない事はある


立ち寄った屋台で焼きおにぎりを買って美味しそうに食べるアルセリアを横目にマルスはすれ違いながらもアルセリアを見て驚いた顔をする街人を見て苦笑いする


『この国には弓職が少ないらしいですね、便利なのだけども』


『仕方ないさ、まだ弓職の知識が僕も含めて乏しいから』


『ふむ、ならば私が弓の道をこの国で作るとしましょうか』


前向きな彼女は胸を張りながらそう誓う

新生カレジリージョン、マルスにアレンにアリスにアビゲイルそしてアルセリア

予想外な速さでそのチームは目標に向かって雷の如く歩み始めた、この時点で既に街での名が出ても可笑しくはない強さの者が2人いるがアレン達が完成したらきっと国でも確実に名が上がるほどのチームへと変貌を遂げるであろう


『僕はこのチームを前のリーダーの意志を受け継いで国一番にするよ』


『ならば同時進行といこうか』


『よろしく頼む』


マルスは彼女を宿に送り届けると家に帰り、シャルロットと部屋で冒険者の話をしたのである

するとエルフの話で少しは驚くが思い当たることがあった彼女は思いだしたのだ、あの時の黒いローブの子がマルスの言うエルフの子だったとわかったからだ


だがちょっとした不安もある、変な気を起こした人間がアルセリアを捕まえたりしないのかとシャルロットが不安そうに言うがマルスはその可能性は低いと言ったのだ


『大丈夫さ、目立ちすぎて難しいし誘拐は足が必ずつくからね』


歩くだけで目立つアルセリアだからこそそうした心配は余りないが念のため用心はしているつもりのマルス

部屋の明かりを消してシャルロットと寄り添って眠りについた彼らは朝になると予想外な展開をむかえる事となった


『なんで?』


『凄い綺麗な…エルフ!?』


マルスの実家のリビングには彼の母親が作ったであろうベーコンエッグを屠りながら椅子に座るアルセリアがいたのだ

彼女の両隣にはニコニコしながらマルスの父と母が彼女に声をかけていた


『エルフとはうちの息子のチームにようこそ、寝る場所に宿なんてお金が勿体ないからこの家の客室を使うといいさ』


マルスの父が笑顔でそう告げるとアルセリアは満面の笑みで即答した


『お世話になりますわ』


(なんでこうなった…)


状況が読めないマルスとシャルロットはアルセリアと共に朝食をとりながら理由を聞いたのだが変な冒険者が夜に忍び込んできたからボコボコにして逃げてきたらしい

そういえばマルスは忘れていた、冒険者にも馬鹿が多い事を

後先考えない奴は変な行動を起こすこともあるがその懸念を完全版忘れていたのだ


『エルフって初めて見たわ』


『シャルロット、彼女が僕のチームのアルセリアだ』


とりあえずマルスの口から軽い自己紹介を始めた

今更宿に帰れなんて言えない、深すぎる溜め息を漏らす

朝食を終えるとシャルロットはソファーにてアルセリアと楽しそうに話し始めており不思議と意気投合している

当分はここに居ることが何故か勝手に決まってしまいマルスはこれからどうなるんだと乾いた笑みを浮かべる

壁の隅の椅子に座り、楽しそうに話す2人を見ていたマルスは頬杖をついてその様子を観察したがなんだか上手くやっていけそうな気もしなくもない

流れがきているのだろうと考えるしかないのかと考えをよぎる


(流れに乗るか)


そうして彼はアルセリアを連れて冒険者ギルドに着いたのだがそこで他の3人を待って合流した時には外が大雨となる

ギルドの受付嬢が当分は止みそうにないと告げると森に出かけようとしていた冒険者たちは肩を落として椅子に座って呆け始めた

ギルドの入り口を外を眺めるアビゲイルが空を見上げながら口を開いた


『今日はお休みですかね、依頼と言ってもトンプソンしかないでしょうし』


『だよなぁアビ、今日は少し様子見ようぜ』


アビの後ろにいたアレンが彼の肩を叩いて元気に笑顔を見せた

テーブルにはマルスとアリスそしてアルセリアが座っており3人はグラスに入った林檎ジュースを飲んでリラックスるしているがそれは他の冒険者達もである


『マルスゥ!今更エルフが生きてるとか俺は驚かねぇぞぉ?羨ましいぜ・・ったくよー!』


『しかも話じゃ弓の上位職を極めてるとか聞いたけどもどうなんだ?』


隣のテーブルに座っていたアポスで有名な冒険者チーム、メタス所属(4人チーム)の2人はお気楽な事で有名であるが外が大雨と知るや否やマルス達のチームに話しかけたのでがその声を聞いた他の者も気になる言葉らしく耳を傾けだしている

今回は他の冒険者との慣れ合いになるかもなと思いながらギルドの入り口から戻ってくるアレンとアビゲイルを確認しながらアルセリアはメタスに口を開いた


『私はアルセリア、上位職であるチャリオットというゼリフタル国で最強の弓使いよ』


『エルフが生きてることも驚きだけども見るからに振る舞いが強そうだとわかるぜ!こりゃカレジリージョンも新しくスタートしてるんだなぁ・・レッグもあの世で喜んでるだろう』


メタスの冒険者の返事でマルスは少し微笑んだ

この街の冒険者からもレッグは親しまれていたからである、皆心の中では彼の死は悲しい事だ

楽しい会話となる最中で戻って来たアレンはマルス達が座る丸テーブルに手を置いて椅子に座るととあることを口にしたのだ


『アルセリアの二つ名みんなで決めよーぜ!』


『『『!?!?』』』


遠くの冒険者達も何故か理由はわからないがガタンと椅子を立ち上がりながらマルス達の冒険者チームに顔を向けた

肝心のマルスは周りを見渡してアルセリアを見ている他の冒険者達の変わった様子に首を傾げる

簡単に言うと見惚れていただけなのだがそんな彼女の二つ名を作ってアポスを背にする冒険者としてかかわってみたいという思念が混じっているのであろう


光の速さでアルセリアはアポスのアイドルと化し始めている


『キュートアルセリア!』


『ラブハートアルセリアちゃん!』


『キューピットアルセリアちゃん!』


そんな冒険者たちの言葉にアルセリアは遠い目で彼らを見つめた

センスの欠片もない、むしろ腐っている


『弓天使アルセリアさん!』


(アビ・・・お前ぇ)


満面の笑みで口にするアビゲイルにマルスは苦笑いしている

気付くとアルセリアの二つ名決定会という名の会議が始まり進行が冒険者チーム『メタス』のリーダーが勧め始めたがマルスとアルセリアは黙々と追加注文した味噌おにぎりを口に運ぶ


『冒険者ってたまにわからないわよねぇ』


アリスがそう言いながら椅子に座ったまま背伸びをするがそれもそうだろう

変なところでスイッチが入るのは冒険者の特徴かもしれない

カレジリージョンのメンバーはテーブルにある味噌おにぎりを食べながら挙手をして希望する二つ名を口にして懸命にアルセリアの為に為になって【褒められたい】という異常なやる気を見せる


『そうだけども人間は面白いわね』


アリスの言葉にアルセリアはそう答えた

確かに面白いから冒険者にはいい所もある、それが今なのかもしれないと皆が思っている

会議の途中で一部の冒険者がアルセリアの実力を見たいという事で彼女は仕方なく立ち上がり見せる時もあったがその時が一番盛り上がっただろう


宙に投げられた木の板5枚を落ちるまでに全て素早く撃ち抜いたのだ、手際のよい仕草に一気に冒険者たちは拳を上げて盛り上がりを見せる

威力も申し分なく撃ち抜かれたまま壁に矢が半分ほどめり込むほどだ


『すげぇ!一瞬で板の中心を狙って撃ち抜いたぜ!?初めてみたぞ』


『超美人ちゃんなのに実力もあるし名が上がるのも時間の問題だ!』


その盛り上がりを見たマルスは良い方向に向かうだろうと考えた、アルセリアが狙われる心配も起きにくくなるだろうと

弓を肩にかけたアルセリアは彼らを見渡しながら強く言い放つ


『私は国で最強の弓使いとなる、超美貌の私の為に最高の二つ名を寄越しなさい』


『『『うおおおおおおおおおお!』』』


してその話し合いは1時間かけて決まったのだが決めたのはその会議を隅で面白そうに見ていた休憩中のギルド職員の女性の言葉で決定されたのだ


聖弓姫セイキュウキアルセリアという名前が決まるとアリス達も心の中で一つの目標ができ始める

自分たちも実力をつけて認められて彼女の様に二つ名を貰えるようになりたいと

その為には無理をせずに自分たちの戦い方を固めていかなくてはいけないがカレジリージョンというチームに入ってからというもののその当面の目標も自分たちならいけると自信を持っている

急がなくてもいい、無理をしなければきっといけると


ほとぼりが一度覚めて他の冒険者達は勝手に各テーブルで祝杯を上げるのを気にせずテーブルを囲んで飲み物を飲んでいるカレジリージョンは会話し始めた


『私は中衛が一番動きやすい、アリスは後衛から一番周りを見た方が開花するし前衛にはマルスとアレンがいる、なので私とアビで前衛が動きやすく見張る方が一番危険な事が起きない』


アルセリアがそう告げるとアリスは笑顔で答えた


『アルセリアちゃんの言う通りが一番ハッキリした役割がわかるわ、そう思うでしょマルスさん?』


『私にちゃん付けをするなとあれほど・・』


ちゃん付けに反応したアルセリアには触れずにマルスはアリスの意見に賛成の意を見せた

アビゲイルもアレンもその方が自分のやるべきことをし易く特徴を伸ばしやすいという真っ当な言葉を口にしてくれて直ぐにこのチームの土台が完成する

そうしていると外の雨も小降りとなりある程度は外を歩けるようにはなったけども今から依頼に行くと言っても昼過ぎであり1件消化しても多く見積もって18時に戻ってくることはないだろう


(今日は休暇か)


そう思いながら窓を眺めているマルスの耳に受付嬢の声が聞こえた


『冒険者各位に緊急依頼です!阿修羅猪の出現が確認されました、動けるチームは直ちに受付にて参加表明の記入をして討伐に向かってください!参加報酬は金貨3枚です!』


その言葉に冒険者たちは先ほどとは違って真剣な表情を見せ始めた

アレン達もその雰囲気を見せられて同じく真剣にはなるがランクB+という未知すぎる魔物の世界に動揺を感じている、彼らはBまでならばチームプレイで倒せるであろうがその上のランクなどどんな得体の知れない強さなのかが予想が出来ないのだ


2チームほどがテーブルを立ち上がり受付に向かう様子を見てアリスとアビゲイルが口を開く


『私達にはまだ早そうね』


『僕が中位職だったらもしかしたら行けたかもなのに』


アビゲイルの言葉にアレンは元気よく答えて励まそうとした


『気にすんだよアビ、強くなったらバンバン倒せばいいじゃねーか!』


『あらアレンにしては珍しい言葉ね?』


『えぇ!?』


アリスが突っ込むとアレンが困惑する

こんな会話を聞いているのは実に面白いとマスルは微笑みながら眺めるがアルセリアは一息ついてからマルスに驚きの言葉を発する事となる


『行きましょうマルス、わかっているだろう?阿修羅猪は強いけども動きは単調であり気をつければ彼らでも回避は可能だと』


彼女の言葉に皆が驚くが答えを求められたマルスは彼女に言った


『アルセリア、確かに阿修羅猪は突進のみの魔物だが死ぬまで走り続ける脳筋でもある・・・途中で曲がる事もあまり出来ないしそうかもしれないが俺の不安要素はそれを分かって上でアレン達が足をすくませないかだ、気をつければ彼らの足でも回避は可能だ・・・だが魔物B+という彼らにとって秘境ともいえる存在を前にいつも通りが出来るかが俺は怖くてさ』


『なんのために私達がいる?』


『え?』


『冒険者は無難な道を辿ると必ず危険な道も通る、丁度上位職が2人いるし心配はいらない・・・攻撃できなくてもその景色を見せるだけでもアレンやアリスそしてアビゲイルには先を見せる為の大事な物となる』


アルセリアの言葉に不定は出来なかった

危険な事も確かにしていた、それはマルスが下位職の時に鬼パンダと相対した時に体験していた

自分は何もできなかったけども彼の目の前ではレッグやエマそしてテリーにタバサという憧れる冒険者が鬼パンダ相手に戦う姿を見てマルスには目標が固まったのだ、思った目標ではなく形となって見える目標がだ


(レッグさんもそういう道を俺に見せてくれていたな)


そう思いながら皆を見流す

なんだかいつでも行けるぞというような顔を見せつけられた彼は優しく微笑むと気持ちを切り替えて全員に指示を出した



『今回は無理に攻撃をしようとすると必ず返り討ちにされるほどの魔物だ、怖いと思ったら大きく下がれ!上の世界とはどんな戦いかしっかり見るんだ、君達が絶対に通る道だ・・・最初は足がすくむと思うが慣れるまで決して前に出過ぎるな、阿修羅猪は突っ込んでくる前に絶対に頭を地面ギリギリまで下げて両前足を曲げるからそれを見たら直ぐ回避行動に移れ!それが守れるならば行こう』


考える時間など無かった、彼らは無言で立ち上がり口を開いた


『僕は最初慣れるために近付くのはやめときます』


アビゲイルがそう言う


『Bプラスかぁ、まぁ格上だし回避行動優先の動きをすればいいか!行こうぜ』


『今回は絶対の無理は死ぬって事ね、冒険者らしいけども新米の私達には必要な感情かもね』


アレンとアリスはそう言いながら微笑んだ


『大丈夫だ、他にも冒険者もいるし私とマルスがいる・・・隙だと感じたらアリスは使える中で一番威力がある火術を頼む、阿修羅猪は火を嫌がるから動きが少し鈍る』


アルセリアの言葉にアリスは元気よく頷いた

今日の方針が決まった彼らは受付に歩いていき阿修羅狼討伐参加のサインをして森に向かう事にした

歩いている途中アビゲイルは肩を回したり深呼吸したりしていたが仕方ないだろう

相手は完全に格上なのだから緊張をほぐそうとしていることをとやかく言う事は誰にもできない


『くぅ~!きっと最初ビビるんだろうなぁ、でもようやく冒険者って感じが体に感じ始めたぜ』


『死んだら意味ないわよ?惨めでも多少は臆病な事も必要』


アレンに口を開くアリスの言葉は正解に近い、死んだらそこで終わりであり二度と強くなることも美味しいご飯を食べる事も出来ない

慎重な奴ほど長生きするのが基本の冒険者としての生き方なのだから


『私は最初前足を狙って動く、足の1本を壊すまで私としては待機していてほしい』


アルセリアがそう言いながら隣を歩くマルスに話しかけた

攻撃のタイミングは作るからそれまでアレン達の傍で警戒を怠るな、それをいいたいのだろうとマルスは悟りそれを了承する

アルセリアが頑張って部位を破壊してからマルスは動こうと決める、アリスも術士としては火術がファイアバレットが使えるので共に戦ってほしいとマルスが伝えると嬉しそうに頷いてくれた


『最初は様子見だなアビ』


『そうだねアレン』


苦笑いしながら2人はそう口にするが不満そうでは無さそうだ

この依頼にはあと2つのチームが参加しているがその中にはギルド内で盛り上がりを見せたメタスも参加していた

今日という日の足取りはいつもより何かが違っていた、今までの戦い方では決して通用しないであろう

それでも不透明な先をより確実な者にするために彼らは森の中に狼狽えずに向かう事を決意した

天候は小雨、帰ってくる頃には流石に濡れているだろうなと思いながらも進むマルスは阿修羅猪には慣れているけども他の者はそうではない、邪魔になるかもしれないけれどもそうならないようにちゃんと仲間を動かす気でいる


1時間後彼らは森の中に入った、時刻にして14時


今日彼らに今まで感じた事のない恐怖を味わう事となる


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新作ですがこの小説を見てる人ならわかる部分が多い内容になってます 勇者ですが指名手配されたので逃亡ライフをはじめます
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ