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【完結済】槍の新兵は夢を見ない  作者: 牛乳太子
13章 番外編 それぞれの生活
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32話 マルス編 超絶アイドル爆誕

夜食はギルドにて軽く済ませたのだが夜のアポスを全員で歩いていると自然を小腹が空き始める

アビゲイルが屋台で軽く何か腹に入れましょうと話すとアレンは嬉しそうに賛成をし、他の者達はそれに雪崩の様に賛同した

アポスの商店街の奥にある屋台通りにてアリスのご希望である肉巻きおにぎり1つ銀貨1枚というリッチなおにぎりを全員で食べることにしたのである

拳ほどの大きさはあるサイズの肉巻きおにぎり、祭りの様に両脇に展開されている屋台から食欲をそそる匂いが立ち込めていても今彼らの最優先といえば屋台のおばちゃんが紙袋につめている肉巻きおにぎりである


全員受け取ると近くに2人用のベンチ2つが丁度空いていたのでマルスとアビゲイル、アレンとアリスというペアで座って熱々な肉巻きおにぎりを嬉しそうに皆頬張り始めた


『肉汁!肉汁!』


『落ち着いて食べなさいよアレン』


子供の様にはしゃぐアレンを見てアリスが母親の様に注意をしていた


『本当に仲いいですよねマルスさん』


『ああ、見てて面白いけどもこういった光景もずっと見れるように俺達は強くならないとな』


『そうですね・・・そういえば僕のあだ名はアビで固定なんですか?』


『うむ』


小声で話すアビゲイルとマルス、アビゲイルの愛称はアルなのだがしょっぱなマルスがアビと言ってしまったせいなのか他の2人もアビという名で呼ぶようになった

アビゲイル本人は気にはしてないけどもどことなく距離が縮まった様な気がして内心嬉しい気持ちになっている


目の前を街の人達が屋台で買ったであろう食べ物を手にして歩いている姿を見ながらマルスは隣にいるアビゲイルと楽しく談話をしていたけどもふと黒いローブを羽織りフードを深く被り顔を隠している性別不明な者が目の前で立ち止まるとマルスとアビゲイルを見つめ始めた


マルスとアビゲイルは何だろうと首を傾げるが顔はフードによって見えない

見えないけれどもあちらはこっちを見ているという事ぐらいアビゲイルにもわかっている

だが両手だけは見えていた、綺麗な白い肌でありその右手には弓矢が握られていた


(弓矢とか珍しい武器を使うんだな、冒険者だろうか?綺麗な手をしているし女性か)


身長は低い方だとも思える、マルスは女性だろうかと考えているとおもむろに右手に持っていた肉巻きおにぎりを食べ始めた

するとどうだろうか、こちらを見る謎のフードマンが肉巻きおにぎりに視線を移動させたのである


(ん?)


マルスは意地悪な実験をした

紙袋に包んで食べていた残りの肉巻きおにぎりを上にかざしたのだが読み通り目の前のフードマンは視線を上に上げた

確実に食べたいのだろうとわかった彼は小さく微笑むと静かに立ち上がり数メートル先にいるフードマンに声をかけたのである


『食べたいなら奢ってあげるよ、今日の成果はあまりなくて困ってたんだろう?』


『!?』


何度も首を縦に揺る、反応が分かりやすい

ようやくアレンとアリスもこのやり取りに気付いたらしく横のベンチで他人に成りすまして様子を伺っているけども何故他人の振りをするのかこの時アビゲイルは関係のない考えをし始めていた

マルスは一度アビゲイルに食べ終わったら3人で宿に戻るように指示をしてから目の前のフードマンを連れて先ほど肉巻きおにぎりを買った屋台に向かったのだ


(一定の距離を保つか)


マルスの後方、距離にして2メートルくらいであろう

その感覚を保ったままローブマンはマルスについてきている

だが不思議な事ではない、冒険者は成果が出なかった日など星の数ほど体験するからこういった光景を見るのはマルス自身慣れている


依頼失敗だろうなと思うマルスだがあえて詳しい理由は聞かない事にした

それは女性という予想もあり変にプライドを刺激してしまったら面倒かもしれないという考えもあったからである


(それにしてもこの距離からでもフードちゃんの腹の虫が聞こえる)


クーーーーー!


どこぞの妖精でも鳴いているのだろうかと思いたくなるほど甲高い腹の音

その音が鳴る度、フードマンは俯く


(恥ずかしいんだろうな)


正解である


直ぐに先ほどの屋台で肉巻きおにぎりを買ってあげると先ほどの距離がどこに行ったのか、マルスの目の前まで接近してぴょんぴょん飛び跳ねながらまだかまだかと待ちわびている姿を見せていた

流石にマルスは笑いたくなったが我慢して紙袋に包んだ肉巻きおにぎりを差し出すとローブマンは綺麗な白い手で受け取りフードの奥底で食べ始めた


がっつきからして相当お腹が空いていたのだろうと頬杖をついて予想をするマルス

ものの数秒で肉巻きおにぎりは全てフードの中に消えてしまったが平らげたのだろう、早い

少し足りないのかなと思ったマルスはまだ食べるか聞くと再び頷いたのでもう一つ買って食べさせた

この出費は彼の自腹なのでチームの資金からは出していない


2つめも直ぐに食べ終わるとローブマンは顔を隠している筈なのに満足そうな様子を見せている

何者なのかまったく未知数な人物だけどもこういった感じの変わった者は見慣れていたマルスは冗談半分でその者に聞いて見たのだ


『もし困ってるならうちのチーム来ない?顔は隠しててもいいんだけども1人遠距離特化した冒険者が欲しくてさ・・・腕は無くてもこれから強くなればいいし寝床も食べ物も保証するよ?』


悩むことなくそのローブマンは元気よく何度も何度も何度も首を縦に振った

正体不明な者をチームに入れるのは博打に近い事ではあるけれども冒険者にとってこの程度の博打痛くもかゆくもない

裏切る要素はないとマルスは予想した


『せめて名前だけでも聞きたいな、俺はマルス・シャルドレだ!このアポスを拠点にしているカレジリージョンという冒険者チームのリーダーをしている』


そういって彼は笑顔で手を差し伸べて握手を求めた

ローブマンは一度自分の綺麗な手を暫く見てからマルスに手を伸ばして握手してあげた

今日話したことが今日達成できたと実感できることが起きて幸先がいいとも言える

マルスにとって良い事が沢山起きる最中、本人は決して失わない様に皆を守ることを心で誓ったと同時に目の前の女性は口を開いた


『私はアルセリア・リース・ヴェルミナント』


身長は低いにも関わらず透き通るような声、確実に女性である

姿を隠すには理由があると思いそのことには触れない様にマルスは決めた

互いに手を離すと彼は言う


『あんま話すのが嫌なら首を振って反応すればいいさ、んで・・・宿が無いなら提供するよ』


彼女は無言で何度も頷いた


(多分野宿とかしてたんだろうなぁ)


『じゃあ仲間を紹介するよ、ついてきて』




という事で彼女をカレジリージョンが泊まっている宿に案内して1階フロントの休憩所に皆を集めてマルスが代わりに彼女の紹介をしたのだ

正体がわからない事をアレンとアビゲイルは首を傾げながら彼女の周りをグルグルまわり始めるとアリスが目を細めて口を開く


『不安がるでしょ2人共、やめなさいよ・・・』


『でもアリス格好いいぞ!正体不明の弓使い!何かが始まりそうだぞ!』


『なんだか勝手に興奮してきました!弓使いは初めてですけどもアルセリアさんどうぞよろしくお願いします!』


アレンとアビゲイルは問題なく彼女の加入を歓迎したが勿論アリスもである

マルスは少し紹介にどことなく不安な気持ちはあったのだが今となってはそんなこと微塵もない

そうして彼女の部屋を銀貨4枚で用意して部屋に案内するとまた先ほどの様にぴょんぴょん飛び跳ねながら喜びを体で表現している


不思議な行動をとる人だと思いながらアリスはドアを開けて部屋の中を走り回るアルセリアを見ていた


『アルセリア、今日はゆっくり休め・・・明日は朝の8時に起床してみんなで冒険者としての1日を過ごすぞ?起きなかったらアリスが起こしに来る』


『わかりましたー、アルセリアちゃんよろしくね!』


アリスがマルスに変死をしてから途中でアルセリアに体を向けて話し始めていた

するとどうだろうか、彼女はプルプル震えているのだがその理由はわからず全員首を傾げるがその理由が今日誰もわからないだろう

全員その場で解散となりその日を宿のベットで過ごし次の日を迎えるのだが早速問題が発生した

些細な事ではあるが初日で分かった事がある



アルセリアは朝が苦手であり起きて来たのが朝の8時過ぎであったがフードを被ったまま寝ていた事に起こしに行ったアリスが一番驚いていた

そこまでして姿を見せたくないのには理由があるのだとアリスも思い始めてそこには触れないでおこうと彼女も決める


起きて来たアルセリアを宿の横に隣接された軽食店にて皆が迎えると彼女はローブ越しに頭をポリポリしながら小さく頭を上げていた


『初日から決めて来たなアルセリア!クールだぜ!』


アレンの言葉はいいとして一先ず全員で朝食をとり冒険者ギルドにて依頼を2つ受けることにした

戦い方の練習用のゴブリン3頭の討伐に昨日で会えなかったタイラーグリズリーの討伐の2つ

全員のやる気は十分でありその様子をマルスは眺めながらも森に出かけた

歩いている途中でアルセリアはローブの中から筒状の箱を取り出して背中に賭けるのだが矢が沢山入っている、


(今迄ローブの中に隠していたか、最初は弓があっても矢が無いなと不思議に思っていたが)


『アルセリア、干し肉食うか?』


マルスは懐から干し肉を出すと反応を見せずに素早くマルスの手から素早くその干し肉を奪い、フードの中にその肉は消えた

食ったのだろう


(食いしん坊なのかぁ)


(食うのが好きなんだなぁ)


(食べるの好きなのかしら)


アビゲイルとアレンそして最後にアリスが心の中でそう思った


(なんだかナッツ君を見てる気分)


マルスは3人とは違った考えを浮かばせていた

そうして森に辿り着いてから彼らは彼女の有能性を知ってしまう、最初はゴブリンの集団5体が正面に現れるとマルスは指示をして前衛であるマルスとアレンが2体を速攻で切り倒して近くのゴブリンを倒そうとした時にアレンが小石につまずいて膝をついてしまった、その隙に目の前のゴブリンが錆びた剣を振り上げて襲い掛かろうとしたのだがアリスは既にサポートする準備は出来ていたため術を放って助けようとしていたのだがそこで変わったことが起きる


問題ないと思われたその状況でアリスのファイアショットよりも先に弓矢が2発同時に飛んでいき、アレンを狙ったゴブリンを含め2体のゴブリンの額に命中させたのである


(上手い!)


マルスがそう思っているとアリスはその状況で瞬時に判断を変えて残り1体のゴブリンにファイアバレットを放って吹き飛ばした


『ギャギャ!』


火傷を負いながらも吹き飛ばされたゴブリンにアルセリアは直ぐに矢を補充して撃ち出すと転がっていたゴブリンの額に矢を命中させた

吹き飛んでいるというのに地面を転がる回転に合わせて額を打つという芸当に全員が驚いた


『凄いぜアルセリア!クールだぜ!』


アレンが目が輝かせてはしゃぐと彼女は照れているのだろうか、ローブ越しに頭をポリポリしていた

只者じゃないと誰もが彼女の評価を上げた、弓使いも珍しいけどもそれは扱いが難しいからでありソロでの冒険は困難だからだが今の一戦を見るとどうみてもソロでも全然問題ない様子だった


次の魔物もゴブリン3体、これも正面から

距離は20m先


『ギャギャギャ!』


変わった声を出しながらマルス達を見つけたゴブリンたちは錆びた剣を振り回しながら彼らに襲い掛かろうとしたがそこでマルスはアルセリアに指示を出してみたのだ


『アルセリア!辿り着く前に何体か倒してくれ』


すると彼女はすぐに弓を引いて2発同士に放ち、ゴブリンの首を貫通させると流れるような動作で1本弓を引いて放ち

最後の1体のゴブリンの額に命中させて3頭はほぼ同時に前のめりに倒れて動かなくなった

距離は10mくらいであろう、あの一瞬で3体を倒してのけた事にマルスは彼女の肩を軽く叩いて称賛を送る


『弓使いってそこまで凄いのか?戦っている姿を見た事ないけれどもそれが普通なのか?』


あまり口を開かない彼女だと知っていてもなお聞いて見たいという感情が勝ったマルスがそう聞いてしまう

だがアルセリアはその透き通るような声で答えてくれたのだ


『私は特別、チャリオットという特殊な上位職』


『!?』


全員が驚いた、上位職であったことだからだが弓での上位職は聞いた限りだと国では数人程度しかいないからである

珍しい武器を使い貴重な上位職の者だと知り皆は喜んだ、冒険者として知識はある彼らはそのチャリオットが弓職でも極めて難しい難関職であることも熟知していた

帰ったらご飯一杯食べさせてあげるとマルスに言われたアルセリアは嬉しそうに何度も首を縦に振ってくれている


昼頃には屋台で買ったおにぎりを2つずつ皆で食べてからタイラーグリズリーを探して歩くと数十分で念願の熊と出会えたのである、場所は川辺・・・水を飲んでいるが1頭

茂みに隠れてその様子を伺うがアビゲイルが生唾を飲むと彼が小さい声でマルスに話したのだ


『マルスさん、僕アルセリアさんのサポートであれ倒してみたいです』


『ほう、一応ヘルプは入れるようにしとくから安心して挑戦すればいいよ・・・アリスも術の準備お願いね』


『はい』


『アレンは周りの警戒で、今は温存だ』


『ガッテン』


囁く様な声で方針が決まると深呼吸をしたアビゲイルはゆっくりと立ち上がり川で水を飲むタイラーグリズリーの後方から槍を構えて近づいていく、その後方をアルセリアは静かに追従していく


『アビ頑張れ』


アレンがそう小さな声で言うが肝心の本人には聞こえていないであろう

アビゲイルは今戦闘態勢に入ったのだから

槍は攻撃の際だけに握る力を強くして突くのが基本、緊張しているとずっと槍を力強く握ってしまい手に疲れを感じやすくなるからだが今のアビゲイルを見るとそんな心配はない


むしろリラックスしているようにも思える

アビゲイルはタイラーグリズリの近くまで迫ると唐突に口を開いたのだ


『お前よりも怖い熊はこの国に3人いるんだぞ』


『グロォ?』


なんだ?と思わせるような鳴き声を発しながらタイラーグリズリーが水を飲むのをやめて振り向いた

既にアビゲイルは中腰の姿勢になっていつでも突ける万全な態勢ともいえる、直ぐに熊がアビゲイルが獲物だと勘違いすると頭を上げて叫び始めるが上を向いた瞬間にアルセリアの矢が2本一気に熊の首元に命中して鮮血が飛ぶ


『ゴボッ・・・』


悲痛な声を出したタイラーグリズリー、だがその後直ぐにアビゲイルの連撃が繰り出されて心臓と頭部を貫く

その技で勝敗は直ぐに決まりタイラーグリズリーはすぐ後ろの革にドボンと音を立て倒れた

最後彼は本当に死んだのかどうか未確定だったので槍を熊に向けながら少し後ろに下がるがそれに合わせるようにしてアルセリアも後ろに下がってアビゲイルとの距離を正す


(弓は距離があるのかな?一定をキープか・・・ふむ)


『死んでるから大丈夫だな、よくやった二人とも』


マルスの声でアビゲイルは構えを解いた

下位職でもタイラーグリズリーならば場馴れさえすれば問題はない

まだアビゲイルは経験も少ない分アレンやアリスよりも少し敵を前にする必要はあったがアルセリア加入後は上手く経験が積めそうである

川を沿うようにして遠回りに街に戻る途中再びゴブリンとの戦闘があったが今回はアレンとアリスの二人で処理してもらった

回避能力が乏しいゴブリンであるからしてアリスのファイアバレットは避けれず火だるまになって1体は倒れ

残ったゴブリンはアレンに剣を弾かれて首を飛ばされていた



既にゴブリンでは練習にすらならないチームだとわかったマルスは基準をタイラーグリズリーにすることにしたが今日は一先ずは戻ることにしたのである

帰る途中またまたラッキーでありランクCのグランドパンサーという少し筋肉質な犬なのか猫なのかわからない魔物と出会うがアリスはアルセリアに何やらヒソヒソ話をしたあと直ぐにアリスがファイアショットを打ち出した


『グルォ!』


流石にCでありファイアショットのレベルの術ならば避けることも出来るが避けた先に直ぐアルセリアが矢を3本放って全て命中させるとグランドパンサーはその場に倒れた


だがしかし生きている


『ファイアバレット』


すかさずアリスはトドメの1発を放ってグランドパンサーを燃やして終わりにしたのである

アリスとアルセリアは無言のハイタッチをしているがちゃんと息の合った連携にマルスは喜んだ


『アルセリアは合わせるの上手いなぁ』


綺麗な白い手でブイサインをしてみせる彼女を皆で見ると自然と笑みが浮かぶ

それにしてもマルスは本当に運がいいともいえるだろう、弓職でここまで器用に扱える者はお目にかかる事は稀なのだからだ


あらかた予定以上の魔物も狩ってしまったので全員で街に戻りながら遭遇した魔物を倒すことになり戦闘をアリスとアレンコンビに任せてマルスとアビゲイルそしてアルセリアはすぐ後ろから追従しつつも会話する事にしたのだ


軽快は怠らず、アビゲイルは周りを見回しながら口を開いた


『上位職の弓とか僕初めて見たんですけどもどうして少ないんですか?話ではよく聞くんですけども』


『ソロが困難だからだ、それはわかるな?』


『はい』


『口は悪いが使えるようになるまでお荷物だからだ、弓が出来る事は殆ど術が出来る・・・術士の方が多様だし弓だと当分器用貧乏な技しか扱えない、メリットと言えば物理の飛び道具か』


『確かに術の方が便利ですからね』


『そうだ、確かに弓は強くなればかなり強い・・・と聞くけども御免アビ、俺もそこまで言った人見るのはアルセリアで初めてなんだ』


『・・・』


とっても遠い目でアビゲイルがマルスを見ている

だがしかし弓職の開花を知る者はほとんど知らないであろう、飛び道具の類は術士の方が遥かに上だが弓の専売特許ともいえる技が存在しているのを殆どがしらない

2人の会話にアルセリアが小さな声で答え始めた


『上位職になれば術士と違い全体攻撃が豊富でコスパも良くなるし闘気の消費が少ないから長期戦も可能だ』


彼女も言葉に先頭を歩くアレンとアリスも振り向いて聞き始める


『最初は荷物だから誘う冒険者も少ない、だから上手く成長を遂げることなくその職を手放す者が多い・・・・だが上位職になれば弓にしか出来ない動きが出来る』


口数が少ない彼女が話すのは珍しいと言わんばかりに皆が驚く

だがその会話の中でも皆が思った、弓の特徴を活かして戦ってはいない事に気付いたのだ

会話の中でアレンは何かを思いついたらしく腕を組んで彼女にお願いをする


『アルセリア!ちょっと完成された格好いい弓職の力見たいぜ!』


その言葉に便乗されたアリスとアビゲイルも声を出す


『確かに見たいわアルセリアちゃん』


『見たいですね』


何やらプルプルしているアルセリアだが何故震えているんだろうとマルスは首を傾げていると深い溜息をフードの奥から漏らした彼女が返事をしてくれたのだ


『うん』


という事で早速出会ったのがグランドパンサー2頭と森の中で出会った

場所も街の近くであり開けた場所で遭遇したのは運が良いとも思える、奇襲の恐れはないのだ

我先にとアルセリアが先頭で警戒していたアレンとアリスを追い越して2頭の魔物に弓を引きながら近付いて言った


『グルルル?』


『グル?』


警戒も見せずただ歩いてくる彼女にグランドパンサーは首を傾げる

敵意すら感じないアルセリアの歩みに少々気を散らした魔物であるが直ぐに唸り声を上げて同時に飛び込んで来た


『!?』


マルスは驚いた、グランドパンサーが動き出したと同時に彼女が動いた気がしたのだ

反応速度が早過ぎるからであり見てから動いたという訳では無さそうなのだからだが飛び出したアルセリアは動いた時には闘気を体中に込めつつも弓を1発放っており奥側のグランドパンサーの額にその矢で射貫いた


『ギャン!』


綺麗に射貫かれたグランドパンサーは苦しがってはいるがまだ地面で暴れながら生きている

しかし戦闘は出来ないだろうと判断したアルセリアは矢を込めていない弓を走ったまま飛び込んで来た残りの1頭に向けながら口を開いた


『グラン・チャリオット』


その声を聞いた瞬間激しく何かが炸裂した音が響き渡る、その轟音に皆は軽く耳を伏せるが目を閉じることはなかった、いや出来なかったのである

理由はアルセリアが放った弓独特の切り札を目の前で披露されたからだ


矢を込めていない弓に真っ赤な球体が矢の代わりに撃ち出されるとそれは直ぐに炸裂し、無数の球を放ったのだ。

まるでジャムルフィンが使う銀閃眼でいう散弾に近いがこのアルセリアのグランチャリオットという技はそれとは違い、物体に触れると爆発するのである

放射された彼女の技によってグランドパンサー2頭は勿論数えきれない球を避ける事叶わず、ミンチ状態だ


『・・・軽く前方が焼け野原だな』


マルスが渇いた笑いを浮かべながらそう口にした

彼の言う通り撃ち放った方向は爆発によって地面が抉れたり木々が折れたりしながら焦げた匂いを放っていた

全員が瞬間火力は凄まじいと見るや否や、アルセリアは振り向いて全員に話しかけたのである


『お荷物かな?』


その言葉に誰もが彼女が微笑んでいると感じた

軽い自己紹介をしたかったのだろう、その為にアルセリアは使わなくても確実に倒せるであろう2頭をあえて特徴的な技で答えようとしたのだ


これからのチームプレイに差し支えないようにするために

彼女の言葉にアレンはとアビゲイルは目を輝かせ、アリスは口を開けたまま固まり

マルスは彼女の言葉に笑顔で返事を伝えることにした



『ようこそ新生カレジリージョンへ』


不安など何もない、マルスはこれから先を走ってでも見てみたいと思い始めた

レッグの夢が少し見えてきたような気がしたからだ

本当は難しい夢だと思っていた

それはレッグと他の仲間達がいたからその夢が近づいてきているとわかったはいたがその者達は既にいない

いまは新しいメンバーと共に歩みを始めた彼の気持ちはどこまでいけば自分たちがいた位置まで辿り着けるのかだ、長い年月を覚悟した・・・それを覚悟した



だがその不安は彼女の放った技と共に吹き飛ぶ


(レッグさん、僕はあなた達の為でもありますがあなたが他の人にも見せてくれた様に彼らに夢を持つことの楽しさを知ってもらいたい、僕がきっと)


そう心で誓いを立てているとアルセリアが颯爽と皆の元に近付いてきて

小石に足を躓かせて派手に転んだ



そして














フードがめくれた




『『『!?!?!?!?』』』


全員人生で一番驚いたであろう、今魔物が来てもきっと対応は出来ないくらいに

それは何故か?それはフードで隠れたアルセリアが顔を持ち上げた瞬間に再び訪れた衝撃的な事実



『いたた・・・』


頭を掻いていたそうな顔を浮かべたアルセリアの耳は長く綺麗な顔立ちの美女であったが身長は低い

背中まで到達する髪は黄色で美しく絵本で見たようなとある種族に酷似していたからなのだ

それはエルフ族、遥か昔に絶滅したと言われている紙の姿を借りた種族とも言われた存在


明らかにそうとしか思えないが絶滅したと聞いている

だが今彼らの目の前にはそのエルフ族の生き残りがアッ!といった顔で固まっていたのである

バレた!と彼女の頭を支配しているけどもすでに遅い、どういった反応をしていいか誰もわからないかを思いきや


アビゲイルが幸せそうな顔を浮かべてマルスに口を開いた


『マルスさん、僕に天使ができました』


『・・・よかったな』

アルセリア『悪いけどもまだ続くからね!!!』


ジャムルフィン『あのっ!僕のストーリー!』



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新作ですがこの小説を見てる人ならわかる部分が多い内容になってます 勇者ですが指名手配されたので逃亡ライフをはじめます
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