22話 超生命体 黒龍リュシパー・ズール
『フレア』
スカーレットは両手に込めた魔力を使う為に黒龍リュシパーの正面に両手を合わせて赤く大きな魔法陣を展開して巨大な龍のブレスと言っても過言ではない巨大な業火を放った
『アインビルドゥングパルサー!』
グァゾは叫ぶと正面に向かって閃光を放った
黒龍リュシパーはその眩しさに薄目になるが完全に目を閉じることは無かった、だが体中に微かに痺れを感じその技は電撃系統だと知るがさほど彼には効いていない
だがそれよりも・・・・
『小賢しい術が!』
体の正面をリュシパーは翼を縦代わりにしてフレアを防いだのである、僅かに後ろにズリズリとフレアの放出する力に押されているけども気になる程押されてはいなかった
『この程度で倒す?笑わせるな!』
翼を振ってフレアを掻き消すと飛び火が上空に舞い上がりそれは辺り一面に降り注いだ
火の子には大きな球体だがその明かりで周りが照らし出される、奥から数えるのがバカらしくなるくらいに人間が大声を上げて押し寄せているのがハッキリと見えたが狼狽えたりはしない
そんな暇はないのだから
リュシパーは龍には似合わないであろう舌打ちをしながらいつの間にか上空に展開されていた無数の雷の球体を見て翼を強く羽ばたかせた
グァゾが次に連続で発動しようとしていた上位雷術であるトールハンマーを突風だけで消したのである
『マジかよ』
グァゾもたかが翼を動かしただけで消されるとは思わず、驚きの顔を見せた
目の前にいるのは常識が通じないランクに君臨している黒龍である、そのくらいやってのけるだろう
この時グァゾはランクA+という驚異の存在の力に納得する
そうして1人かなり素早く移動して自身の後方にいるジャムルフィンに攻撃するために長く黒光りしている尻尾を動かして彼を叩き潰そうとした
黒龍は本能で厄介であると感じた彼を優先的に倒そうと感じたのだろう、1発で潰す勢いで振り下ろした黒龍の尻尾がジャムルフィンに向けて叩きつけたが手ごたえが無かった
避けられたと感じて正面を向き直すと正面から大きな銀の狼が大口を開けて襲い掛かっていた
それはジャムルフィンのシルバーダンス、サイズは10mと黒龍に比べ小さいと思えるがこれで十分だと彼は考えて放った、そしてその後ろから隠れて追従していたのである
『小物で動揺など人間よの?』
『!?』
ジャムルフィンの予見が大きく警告を鳴らした
ここにいたら死ぬと体が直接感じているとわかった彼はシルバーダンスを犠牲に直ぐに銀彗星で真横に移動するとそれは起こった
『ドラ・マグナム』
大口を開けた黒龍は口から巨大な赤黒い球体を撃ち放った、とてつもなく大きな炸裂音が響き渡ると同時に横に避けたジャムルフィンにグァゾそしてスカーレットは突然の衝撃波に吹き飛ばされそうになるが黒龍が放った10m級であるその球体はジャムルフィンのシルバーダンスで出現した銀狼をことごとく吹き飛ばしてグァゾとスカーレットの後方に飛んでいった
2人は目を見開いて振り向くと同時に黒龍の撃ち放った球体は迫りくる大勢の人の波の中で着弾し、大爆発が巻き起こる
照らし出される一瞬、多くの者達が吹き飛び爆散していく光景を目の当たりにした
ドラ・マグナムは打ち込む時に衝撃波を発生させて球体を飛ばし、着弾視点から直径50m以内の生命を原型をとどめる事も叶わずに吹き飛び、100m程の距離にいる生命は着弾と同時の衝撃波で小石の様に吹き飛ばされる
あまりにも強力すぎる一撃、これがランクA+と誰もが恐怖を覚えた
ジャムルフィンでさえもその光景に目を奪われそうになるが誰よりも早く正気に戻り大声を上げる
『立ち止まると死ぬぞ!戦え!』
ドラ・マグナムでの飛散が現状に足を止めていた冒険者は兵士達は震える体に鞭を打って走り出す
滑稽だと薄ら笑いを浮かべる黒龍は次はどんな技で楽しませてくれるのだろうかと息巻いてはいたが再びドラ・マグナムを放たんとすべく口から赤黒い光を発光させていつでも放てる準備をしていた
『銀帝次元槍』
真横からジャムルフィンはそう叫びながら黒龍にハルバートを押し込もうとするが巨躯に似合わない速度でスレスレでそれを回避した、だが黒龍は背中に激痛を感じて顔を歪める
何故後ろから?誰もいない筈だと思いながら長い首を使い背中を見るとジャムルフィンのハルバートが丸い円を通り抜けて自身の背中に突き刺さっていた
(異次元攻撃を使えるだと!?)
『お前は強い!だがこの人数ではお前も無理だ!』
『ほざけ!』
体を振ってハルバートを振り抜こうとするがその前にジャムルフィンはハルバートを引いて技を終わらせた
スカーレットのヘルファイアとグァゾの大斧で発生させた大きな真空斬が正面から向かってくるがそれを鼻息だけで掻き消してから直ぐ行動しようとしていたスカーレットに意識を向けた
彼女は悪逆非道剣というジグザクな形状をしているフラスカシルバーの剣を右手に握り走り出していた
その間に大勢の人族が放つファイアバレットやアクアバレットそしてヘルファイアといった術が黒龍リュシパーに襲い掛かるも避ける事は無いとまるで眼中ではないといった感じで体で受け止める
避けなくてもいいのだ、ダメージが無いのだから
その程度の力ではビクともしない鋼の肉体、強靭な黒い鱗を持っているのである
『真空斬』
それよりも目の前に迫ったこの女と珍妙な技を使うジャムルフィンに警戒をすることにしたのだ
2人は交互に武器を使って黒龍に斬りかかるが器用にも両手の爪を使って捌く、2人が武器を弾かれると同時にグァゾが大斧を真横から振り落とすが素早く尻尾を使って彼を遠くに吹き飛ばしたのである
これで注意すべき存在はこの2人とリュシパーは考えようとしたがまだ面倒な奴がいると気づき始める
大勢の人間の中で剣を30本操りながらも紫色の球体に包まれて怪しげな事を企んでいる人間に目を向けたのだ
『小賢しいぞ!ソニック・マグナム』
『『!?!?』』
口に溜めていた力をその場で爆発させて強い衝撃波を発生させるとスカーレットとジャムルフィンは後方に吹き飛んだ
だがタダでは吹き飛ばないのは2人共似ているらしくジャムルフィンは銀超乱で黒龍の上空に触れると爆発する銀狼を10体飛ばし、スカーレットはヘルブラストでドス黒い光線を黒龍リュシパーに放った
この状況でも黒龍リュシパーは一瞬で周りを把握した
その2つの攻撃を翼で防ぎながら考えた
自分を囲む気は無い大勢の者、後方は技を飛ばした時の流れ弾に当たらぬよう自分の正面全てに人族を全て集めて術を放ち下からひ弱な鉄を纏った小物が押し寄せ正面からは一際周りよりも強さを誇示してくる者達がひっきりなしに攻め寄せてくる
(小賢しい)
黒龍は口を大きく開いて吠えた
するとどうだろうか、今まで果敢に攻め入って来た者達が固まり始める
誰もがこの瞬間に体に刻み込まれ始めていた、勝てるのだろうかと?
兵士に秀でた者はリュシパーから見て皆無に等しくタダの餌でしかないが複数人は餌としても極上ともいえる者達が向かってきている
『ヘルファイア!』
『真空斬!』
マリアンヌやマルスも自分の持つ技を底が尽きるまで何度も何度も打ち放っていた
『臆するな!絶対に立ち止まるな!国の存亡がかかっている!』
『明日を手に入れるために進め!我らが明日を見せるために!』
ノートン大将軍とツァクラ将軍も部下達を鼓舞しながら黒龍の周りで勇敢にも武器を振るうが尻尾の一振りで思うように近づけずに苦虫を噛んだ様な表情を浮かべていた
黒龍リュシパーは面倒が攻撃が来ると感じてその方向に目を向けたがその時には既に放つ準備をナッツはしていた
『ガンマレイ!!』
無数の光線が複雑に屈折を重ねてリュシパーに襲い掛かる
多少は避けないと後半に差し支えるかとその程度の考えでナッツのガンマレイを口から火球を放って半分まで撃ち消したのだがかなり複雑に屈折するため全てを打ち落とすことが出来なかった
『人族風情が』
その声を発した瞬間にナッツのガンマレイがリュシパーに命中して爆発が起きた
ジャムルフィンはそれに乗じて体に狼気を纏いならが銀超乱で30頭の銀狼を即座に上空から煙の中にいる黒龍に撃ち落とした
爆発が爆発に紛れて周りの者達は吹き飛びそうになるもノートン大将軍の指示で一旦後ろに下がる物や術を打ち続ける者と別れ始めた
『ソニックブラスター!』
バニアルドも音速の空気を両手から瞬発的に放つ
皆自らの技や術を打ち続けた、見えない龍に向かって
その攻撃は鳴りやまず闇を生む夜でのその激選はとても明るい、この死闘は遠くの街からでも見えるであろう
山とは大きい存在でありその近くは他の街よりも標高は高い
眩い光はポートレアの近くの街からハッキリと非難した人々の視界にとらえられていた
鳴りやまない人族の攻撃も予想外な事が起きれば止まる
噴煙の中から大口を開けた黒龍が兵士の波に一直線に襲い掛かり数人その口の中でかみ砕かれる瞬間に絶望と恐怖を顔に浮かべてかみ砕かれた
『ヒィ!!!』
『全然効いてないぞぉぉぉ!!!!』
『化け物だぁぁぁ!!!』
兵士にも恐怖が徐々に生まれ始めた
冒険者達も圧倒的な力に体が震えだした
これは不味いと思ったジャムルフィンは狼撃破を放って銀狼を突っ込ませるがそれは黒龍の尻尾で容易く打ち消された
グァゾのトールマンマーも見方を犠牲にしながらも打ち込んでも雷がさほど効いていない黒龍はそのまま人並みの中で暴れまわった
『小賢しい人族めが!?ランクA+を甘く見るな!!』
ジャムルフィンはその言葉で思い出した
それは彼だけじゃなくナッツもバニアルドも・・・インダストリアルで頑張った者達が一斉に同じことを考えたのだ
今迄の戦ったランクA+の魔物達は加減をしていたことを今になって思い出した
そして現在倒そうとしているこいつは確実に自分たちを殺そうとしているランクA+の化け物
『ぐぁ!』
マルスが黒龍の尻尾で遠くに吹き飛んでいった
吹き飛ぶ姿を見たジャムルフィンは目を見開いてから黒龍を睨みつけると彼は不敵な笑いを見せながら口を開く
『どうした?打つ手なしか?』
『シルヴァシルヴァ』
『!?』
ジャムルフィンは奥の手を出した
銀色の狼気を放出し始めた彼を見た黒龍は今までと雰囲気が違う人間の1人に寒気を覚え始めた
(・・・これは)
黒龍は地面を踏みしめて襲い掛かろうとしたら足に激痛が走り僅かに苦痛を歪めた
ガクンと上体が下がるが足元を見るとバニアルドがバンカーバスターで黒龍リュシパーの足の指を打ち砕いていたのだ
数本あるうちのたかが1本、だがれっきとしたダメージが入っていると誰もがその光景で理解した
『やりー!頑張るぞおめーらー!』
暢気な声を出しながら爪を振って斬り裂こうとしてくるがバニアルドは危なそうな顔をしながらギリギリで避けて後ろに逃げていった
黒龍は砕かれた足を見ている暇はない、目の前には銀色に包まれたジャムルフィンが迫っていたが流石の黒龍でのその速度には反応出来ずに首元を深く斬られてしまったのだ
誰もがそれに驚いた、攻撃が届いている・・今体を斬り裂いたと
『なっ!!??バカな!この鋼鉄の体を・・・』
これには黒龍も驚きを隠せずにいた
斬りつけて後方に通過したジャムルフィンを睨みつけるとドラ・マグナムを撃ち出すが撃ったと同時に彼は消えて今度は左肩を浅くだが斬られた、筋肉が密集している部位なのでその程度でしかダメージが与えられなかったが確実に斬ったのだ
(こんな速度で動く人族が!いるだと!これは不味い!一度撤退を!)
どんな力でも捉えきれない速度には無意味である
届かなければそれは力と言えない、速度こそ力・・・それが魔天狼である
ジャムルフィンはシルバシルヴァを解いて一度下がった
『ブーゼスクレイパー!!!』
ナッツが大声を発して30本の剣先を黒龍に向けてビームを放つがこの技の特徴を知らないリュシパーは翼を使ってガードをしてしまった
だがそれは間違った判断である、ナッツがガードする黒龍を見て笑顔になった
『ありがとうございます!』
その意味が分からなかった、翼で体を隠すようにしてガードしたが彼の攻撃が当たった瞬間に黒龍の鱗が弾け飛んでいった
『ガァァァァァァァァァァァ!!!』
30本もの剣から放たれた紫色の光線は容易く片翼の大半の鱗を削ぎ落した
これは硬い甲殻を無にする技だと気づいた時には既に遅かった、黒龍は次第に焦りを見せ始めた
『ヘルブラスター』
スカーレットの攻撃が撃ち出されると黒龍はブレスを放って彼女の技を消滅させた
その間にも翼に激痛が走る、ノートン大将軍が飛び掛かって巨大な黒龍の翼に彼のご自慢の槍が貫いていたのである
凡愚に容易く隙を上手く利用されたと感じた黒龍は歯を食いしばって怒りを鎮めようと我慢した
今取り乱してはそれこそ死だと先ほどまでの余裕を忘れ、全てが餌になりたくないと懸命に歯向かう人族
に向かってブレスを放った
1発1発が強力な技でありその業火に冒険者が飲み込まれ兵士達が炎の中で泣き叫びながら阿鼻叫喚と暴れまわる
ジャムルフィンは黒龍が焦っていると感じて直ぐに銀帝次元槍を使い地面を刺して再び敵の背中を突き刺した
どうやらこの技は嫌らしく、槍を抜いて次元を閉じるとジャムルフィンを酷く警戒し始めた
『生で食べたかったがそうは言ってられんな!!!』
その言葉を聞いたジャムルフィンは予見スキルが警告していると感じて大声で叫んだ
『来るぞぉ!!!』
『ドラゴンブレス!』
首を横に振って全方向に龍らしさを見せつけた超業火を口から吐いた
そのブレスの射程距離は100mはゆうに超えておりその場の殆どが業火の中に消えていった
龍とは何か?それは攻撃性の高すぎる技を所有する化け物であることだ
一つの技で数百という命を簡単に奪う事が出来るのである
この攻撃にバニアルド達も射程範囲にいたが彼らはコットンの術壁で難を凌ぎ
ナッツはシルトで後方の者達を全員助けた
スカーレットも自分の後ろにいた兵士た冒険者を守るために術壁を大きく展開してマルスやナイトライダー闘色々な者達を守ったのだが殆どはこの攻撃を防ぐ手段が無かった
『熱いぃ!誰かぁぁぁぁ!』
『うわぁぁぁぁぁ!!』
黒龍の攻撃を耐えきったのは射程内でごく一部だけなのだ、一瞬で数百が業火によってその命も燃やしていた
そんな悲痛な叫びの中に黒龍は突っ込んだ、口を開いて炎の中に飛ぶこんで1人1人バキバキと鉄をかみ砕く音を立てて死ぬ前の兵士達をかみ砕いて飲み込んでいるのだ
『これ以上あいつに食わせないでください!!!龍に進化してしまいます!早く倒さないと!!!』
ナッツが叫んで剣を全て黒龍に飛ばすが体には歯が立たず、鱗が剥がれた片翼だけに数本突き刺さった
忌々しいと思いながらも黒龍はドラ・マグナムを撃ち放つがスカーレットがナッツの前に現れるとマジックカウンターという卑怯ともいえる術壁を正面に展開して黒龍の攻撃を撃ち返した
『な!?』
黒龍は予想外に帰ってくる自分の攻撃を避けようと地面を踏みしめた
その瞬間またあの痛みが襲い掛かった
まさかと思いながらも自分の足元に視線を向けるとバニアルドがまたバンカーバスターで砕いた足の指の隣を嫌味の様に打ち砕いていたのだ、バンカーバスター・・・その技が今日黒龍は嫌いになった
『やりー!でも逃げれねぇぞ?お前も俺も』
『・・・なるほど』
時間が足りないと直ぐに理解したのだ
黒龍はいつ攻撃してくるかわからないジャムルフィンに意識を向けながら面倒な者達と戦っているのだ
意識を四方に向けなければならない初めての感覚に黒龍は目を細めた
何故自分にダメージを与えれるあの銀色の男は槍を持って構えているだけなのだろうかと
何が目的なんだと考えを何重にも張り巡らせた
だが答えが出来たと同時にスカーレットが跳ね返したドラ・マグナムが黒龍の体に命中して大爆発が発生した
『一度下がれ!また襲い掛かってくるかもしれぬ!』
ノートン大将軍の言葉で全員が一斉に下がった
先ほどは黒煙の中から大口を開けて襲い掛かってきたことは誰もがトラウマでありあんな攻撃の犠牲になりたくないと今まで以上に素早く後退し始めた
『先輩、助かります・・・構えてればあいつは先輩に警戒したまま周りを見ていつかはボロを見せる筈ですので続けてください』
『わかったさナッツ』
これはナッツの作戦であった、ジャムルフィンを最大の隙に攻撃してもらう為に攻撃せずに構えて敵意を向けるだけで良いと戦いながら言われていた
その成果もあって黒龍は酷くジャムルフィンを警戒しながら戦う羽目となり僅かな焦りや苛立ちを見せ始めていた
怯えながらも戦っていた兵士や冒険者にも僅かに笑みがこぼれるとスカーレットが直ぐに口を開いた
『愚か者が!気を緩めるな!まだですよ!』
ビクンと兵士達が体を震わせて手に持った武器を再び握りしめて構えた
モリスとコットンは泣きそうな顔を浮かべながら黒煙の後方に走っていくがバニアルドが吹き飛んでいく光景を見たからだ
黒龍を逃さないために足を潰してほぼ直撃に近い場所から後方に吹き飛んでいたのだ
ジャムルフィンもかなり心配はしていた、死ぬなバニアルドと何度も願った
『ごめん・・・私魔力尽きるわ』
『術士は仕方ないわよ、下がって待機しときなさい』
マリアンヌが申し訳なさそうな顔で言うと近くにいたルルカが笑顔で答えた
そうしたやり取りが行われていても殆どが黒煙で見えない化け物がいつ動き出すか警戒している
まだ死んでいない、死ぬはずはない、自分自身の攻撃で死ぬような奴じゃないのだ
『頼む、死んでくれ』
『くそ!くそぉ!さっきまで隣に俺の友人がいたのに・・・ちくしょぉ!!』
『レッグ・・・テリーがいない』
『言うな、今は言わないでくれ』
震える体にそのような声を出す冒険者や兵士がいる
マルスが涙を浮かべながらその手に持つ剣に闘気を込めて待機しているが彼のチームの1人がいつの間にか近くにいたのに消えていたのだ
だがそんな仲間が使っていた片手剣が地面に転がっているだけであり、血でまみれていた
それを見てマルスは確信したのだろう、仲間は死んだと
『ひ・・・テリーさん、そんな』
『マルス!しっかりしろ!』
『はい・・・』
リーダーであるレッグから怒号が放たれて彼は弱々しく頷いた
今は考えてはいけない、悲しむのは最後だ
冒険者も気づけば300人ほどいたのが今では200人、兵士達も5千近くその命を落としていた
だがナッツやスカーレットは上出来だと悪魔の様な言葉を心の中で感じていた、最悪もっと被害は尋常じゃないくらいある筈だったがジャムルフィンを案山子にするだけでひりまわされる姿となり兵士達が攻撃されるという攻撃があまりされなかったのである
ジャムルフィンは遠くからマルスを見て複雑な感情を見せた
どう思えばいいのだろうかと、俺の友人が生きている・・・嬉しい事だが彼の仲間が死んだ
ホッとしているのだ
知り合いが生きていることに
『くそがぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!』
翼を乱暴に羽ばたかせて黒煙を飛ばすと黒龍は血だらけで息を荒くして激しくその場の全てを見回して睨みつけた
その威圧に全員が息を飲んだ、ダメージはあるのにまだ元気
まるで見た目だけそう見えているのではないかと誰もがそう思っていた
『この程度で俺が死ぬと思っているか!?貴様等の安い考えで!!??』
彼は怒っていた、平常心を忘れて息を荒々しくしながら口に炎を溜め始めているがまた業火を口から吐くと思った者達はまるで効いていないと感じさせる黒龍を前に逃げ出したくなるがその感情もとある言葉で安心を覚える事となる
『ダメージ量は半分越えてるだろぉ?聞こえてるぜお前ぇの心の声、そろそろ不味いが弱っている姿を見せないようにしている事もなぁ!』
響き渡る声に黒龍は目を見開いて驚いた
その声の言う通り、この黒龍は相当のダメージを蓄積されていたのである
どんな攻撃も星の数ほど与えればいつかはゼロに近付く、人間は小さい生き物に油断をするが微生物だって無数に集まれば人を脅かす病気を生み出し体を蝕むことだってできる
黒龍は傲慢ゆえに弱いと侮り基本的な事を忘れていた
塵も積もれば山となるという当たり前な原理を作った龍族が自ら
ジャムルフィンはその声に口元に笑みを浮かべて大声を発した
『グスタフ!!!』
ルルカは目を輝かせて辺りを見渡すが姿は見えない
黒龍はまた面倒な奴かと首を振って周りを見たが変わった様子はなかったが心を読みとった存在を確認しなくては落ち着いてられない
『何人集まろうと黒龍リュ『バベル!!!!!』 !?!?!?! 』
後ろから声が聞こえたと振り向いた瞬間足元から何かが浮き上がって来たと感じたがそれも瞬き程の一瞬の考え
地面から直径50mと巨大で黒い塔が黒龍を乗せて空に伸びて言ったのだ
異様な光景に誰もが目を奪われるが一番驚いているのはジャムルフィンでありその技の名に覚えがあった
『バベル・・・なれたのかお前』