16話 影帝イビルディザスター
【イビルハイドからイビルディザスターに到達だ!】
グスタフが人生で【2番目】に聞きたかった言葉が今耳に鳴り響いた
ここまで来たと今実感できる言葉が彼の耳に次々と入って来たのである
【今のステータスを確認させよう】
・・・・・・・・・・
グスタフ・ザイツェルン(19)イビルハイド【上位】
☆戦術スキル
剣術【7】剣術熟練度、恩恵により攻撃力・耐久力が大アップ
体術【7】体術熟練度、恩恵により耐久力と素早さが大アップ
魔術【7】魔術熟練度、恩恵により魔力量を大アップし・詠唱時間を大軽減する
技強化 技の威力が小アップ
溜め短縮 技や術の発動までの溜め時間を半減させる
魔力タンク 自身の魔力量を大アップさせる
☆補助スキル
根性 【大】 致命的な攻撃でも耐えることが出来る
我慢 【大】 耐久力があがる
威圧 【大】 相手を確実に恐怖状態にする
恐怖耐性 【大】 恐怖状態に非常になりずらい
気配感知 【大】 生物の気配を広い範囲で察知
痛覚耐性 【大】 痛覚を大軽減
魔力感知 【中】 体内の魔力の流れを感じとることが出来る
努力の極み【中】 鍛錬によるレベル上昇率が中アップ
観察眼 【中】 視力が中アップ
☆称号スキル
ゴブリンキラー ゴブリン族に対し攻撃力が上がる
人形キラー 眷属化した対象に対し攻撃力が上がる
グリズリーキラー グリズリー系に対し攻撃力が上がる
猪キラー 猪系に対し攻撃力が上がる
喧嘩師 技スキル以外の攻撃力を大アップ
生還者【大】 素早さが大アップ
☆技スキル(開示ステータスに表示されない部分)
居合・骨砕き・脳天唐竹割・パワーブレイク
共鳴斬・真空斬
鬼無双(拳)・連拳断(拳)
ナックルバスター(拳)
影武者鬼走り(黒)
シャドーボール(黒)・シャドーショット(黒)
ダークボム(黒)・ディザスターハンド(黒)
シャドウハンド(黒)・グラビデル(黒・重)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
【技強化を進化しブースターとなる、戦術スキルに影の者と魔物特攻追加】
はて何だろうとグスタフは心の中で首を傾げた
影の者というのはきっとナッツでいうと千剣スキルと同じ天位職用の更なるステップのスキルなのだろうと思い込みながらも聞こえてくる声を聞き漏らさずに静かに聞き始めた
【補助スキル追加で不屈と鬼そして超感知に魔の心、観察眼を大にしよう・・・魔力感知も同じくだ】
(おいおいおい!不屈と鬼って超レアな伝説スキルだぞ?!超感知と魔の心ってなんだぁ?)
グスタフは驚くが天位職というのは恩恵が凄まじいと今知った。上位職との差はこの段階から始まっているのだろう
だから天位職は強い
【称号スキルに影帝の加護を追加、今まで覚えたキラー系スキルを一括し魔物キラーとなるが魔物全てに与えるダメージ量が増えるであろう】
(とんでもねぇな・・・)
【ふふ・・続くぞ、特殊技追加・・・影界、ワーストナックル、イビルブラスター、イビルゲート、カタコンペ、そして職最強技であるバベルだ】
この時点でグスタフはその変わりゆく自分に小さく微笑んだ
やっとここまで来たんだとこの声が知らせてくれる、俺にまだ走り続けろと鼓舞してくれると
速く帰ってこいジャフィンと彼は願った
【召喚・影犬と影馬】
(は?)
何だそれはと少し間抜けな声が出そうになるがそれは目覚めてのお楽しみにすることにした
理解できないくらいの情報量が嬉しいくらいに押し寄せてくる、それもとうとう最後に近付いたのだ
【新しいお前を見るが良い】
グスタフ・ザイツェルン(19)イビルディザスター【天位職】
☆戦術スキル
剣術【7】剣術熟練度、恩恵により攻撃力・耐久力が大アップ
体術【7】体術熟練度、恩恵により耐久力と素早さが大アップ
魔術【7】魔術熟練度、恩恵により魔力量を大アップし・詠唱時間を大軽減する
魔物特攻 魔物に与えるダメージが特大アップ
影の者 全体的に身体能力が大アップ、闘気・魔力消費が少し軽減
ブースター 技・術の威力が大アップ
溜め短縮 技や術の発動までの溜め時間を半減させる
魔力タンク 自身の魔力量を大アップさせる
☆補助スキル
不屈 どんな攻撃でも耐えることができ、耐久力が特大アップ
鬼 相手の耐久力を貫通してダメージを与える
超感知 超範囲で生物の気配を察知、種類まで確実に特定する
魔の心 魔物の全てを知る
根性 【大】 致命的な攻撃でも耐えることが出来る
我慢 【大】 耐久力があがる
威圧 【大】 相手を確実に恐怖状態にする
恐怖耐性 【大】 恐怖状態に非常になりずらい
痛覚耐性 【大】 痛覚を大軽減
観察眼 【大】 視力が大アップ
魔力感知 【大】 体内の魔力の流れを細かく感じとる
努力の極み【中】 鍛錬によるレベル上昇率が中アップ
☆称号スキル
魔物キラー 全魔物に対して攻撃力が上がる
喧嘩師 技スキル以外の攻撃力を大アップ
生還者【大】 素早さが大アップ
影帝の加護 攻撃力が大アップ、夜には特大となり体の損傷を急速に回復させる
特殊技全てが即座に発動可能だがバベルのみ溜めが必要
☆技スキル
居合・骨砕き・脳天唐竹割・パワーブレイク
共鳴斬・真空斬
鬼無双(拳)・連拳断(拳)
ナックルバスター(拳)
影武者鬼走り(黒)
シャドーボール(黒)・シャドーショット(黒)
ダークボム(黒)・ディザスターハンド(黒)
シャドウハンド(黒)・グラビデル(黒・重)
☆邪影技
影界・ワーストナックル・イビルブラスター・
イビルゲート・カタコンベ・バベル
☆召喚術
影犬・影馬
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
グスタフはその変わりように一つ疑問を感じた
どの天位職にも特徴がある、ジャムルフィンは卑怯臭い速度に全距離特化型
ナッツは複数人での対応が優秀であり操る剣の数はタイマンでもその効果を発揮するしカールは耐久性能に優れている
では今自分のなったイビルディザスターはどのような職なのだろうと考える
『こりゃどんな特徴の職なんだ』
【ステータスの通りだ、魔物に対して絶対的な力を押し付ける対魔物最強職、勿論対一にも強いがタイタンハンド以上ではないにしても俺はお前に期待している】
『俺に期待だと?』
【くふふ、面白い男がこの職に舞い込んだか・・・ローガンを超えるか?まぁこの職になれたのはお前を含め2人しかおらぬがまぁいい】
『魔天狼に勝てるか?』
【知らぬ】
『ケッ』
ローガンは勝てなかったがそれを超える可能性を秘めている
それも考慮した遠回しの返事なのだが表上は適当な言葉とも見受けられた
だが現実は何もわかりはしない
起きれば何かが変わるだろうとグスタフは信じた
【まだ2人目である、俺を育てろ】
『はっ?お前は何を言【行け、ローガンの血を受け継ぐ者よ】』
『!?!?』
いきなり目の前は眩しくなり彼は目を閉じたのだが気付くとナラ村の水晶の前で棒立ちでポトロト教聖の前に立っていた
終わったのかと目を細めながら水晶に体を向けて目を凝らした
まだ未完の天位職という事を職の親は言っていた、完成させろと言ってきた
お前ならできると遠回しに伝えて来た
グスタフの頭には色々な情報が溢れてくる、イビルディザスターの技や感覚が一気に押し寄せているのである
『?』
グスタフの顔を見たポトロトは首を傾げた
彼の顔はいつよりも増して目を細めて何も見えない壁をじっと見ていた
ただ見ているだけならいいがその雰囲気にポトロトは昔の思い出を蘇らせ目を見開く
あれは獰猛な獣が何かを狙う時の目であり少年時代にグランドパンサーに襲われそうになった時のあの目を思い出した
森の奥の茂みから隠れて獲物を見る目、ターゲットを見定めた時のあの目
いったい彼は何を狙っているのだろうと考えるとグスタフは入口に向かって歩き出した
一瞬体をギクンと震わせる老人はそのまま部屋を出て行こうとする彼の背中を見届けるが彼がドアを開けてから振り向いて口にしたのだ
『あんがとよポトロトの爺さん、俺は走れるぜ』
グスタフはその後予想外にも大人しく家に帰った、しかも走ることなくゆっくりと歩いて家に着くと母親に言った通り肉料理が夜食であったがそれを急いで食べ終わると直ぐに自分の部屋に向かったのだ
少し雰囲気が違う息子に母親のディジーは何が起きたか聞いてもグスタフは成長期だというだけ
あまりにもよくわからない答えに口をへの字にしていたが良い事があったのだろうと思う事にして深く追求する事はしなかった
部屋のベットに横になり目を閉じるグスタフは何度も深呼吸をした
その時間は数時間にも及び、夜の22時になる
『南の門から数百メートル先にゴブリンの集団、北門の奥には赤猪2頭の・・・番か』
彼にはあり得ない程遠くの気配を感知していた、その距離は軽く1㎞先であり気配感知【大】など子供の様に感じるレベルでだ、しかも異常なほどに繊細に
彼の家は距離的に森に近いためこのように範囲内にある森の状況が入ってくるのだろう
『東門でゴブリン同士が喧嘩か、ハッ!少し大きい方が押しているか』
そこまで彼の体を通じて情報が流れ込んできている
あまりにも広大な気配感知にストレスを感じないのかとグスタフは少しだけ心配になるがオンとオフが容易なためそう深く悩む問題ではなかった
彼の能力はそこまでではなかった、超感知という能力の壮絶さをどんどんと感じ始めているのである
『腹減ってるなあのブラックパンサー、だから起きてるのか・・・何?眠いけども何か食べてから寝よう?食い意地あるんだな』
魔物の感情も彼は知る
相手の感情がわかるならばそれは一種の読心術、彼が持った超感知とは誰も知らない、理由は言えば簡単であろう
イビルディザスター専用の特化スキルでありローガンは誰にも教えていない
そしてこの天位職になれたのはグスタフ含め2人、知っている筈が無いのである
超感知、その気になれば最大5㎞もの魔物の気配を感知
範囲内の魔物の健康状態や感情を知る事が出来るし勿論何の魔物かも完璧にだ
簡潔に言うと範囲に入った魔物の全てを知る事が出来ると言えばいいだろう
『魔物に対して絶対的有利か・・・面白ぇ職だが他になんかねぇのか』
グスタフは今楽しんでいた、新しい職を探るという新感覚を覚えた彼は寝ずにそのまま朝まで研究したかったがそこは不健康だと今迄の信念が勝り、大人しく寝ることとなった
だがしかし、グスタフは職の最後の声に違和感を覚えた
グスタフがローガンの知を受け継ぐ者?確かに思い出の中では瓜二つといっていいくらい似ていたけが彼はまさかと考えをよぎらせるが今はその予想を忘れて職について研究する事に決めた
朝、彼は目を大きく開けて目が覚めた
上体を起こして自身の両手を眺めながらゆっくりと拳を握り最後には自分の頬を少しつねる
何やら不思議な事をしているが昨日の出来事が夢だったのではないかという不安が少し会った為、そういった事をしたのだろうが決して夢ではなかった
『ヘッ』
彼は感じた、遠くの魔物の気配を
それによって天位職になれた事が本当だと再認識され新しい自分が始まるのだと心が鼓舞されていく
魔物の気配を感じたからと危ないわけではない、村の外なのだからいつもと変わらない
だがグスタフが起きた時には僅かに別の人間が戦っているという状況が体に伝わってくるが誰なのかは細かくは情報が流れてこないとなるとやはりこのイビルディザスターは魔物に対して特化していると確信させられる
『西門近く、人間が2人に魔物は・・・ブラックパンサーか、衛兵だろうが大丈夫だろうな』
多分レイ衛兵長の部下なのだろうと思いながら彼は機嫌を良くしてリビングに降りた
時間は朝8時丁度その頃母親のディジーが朝食の準備を終えてテーブルに料理を並べている最中でありその手伝いをルーシーがしていた
グスタフが起きたと知ると妹は元気に彼に声をかける
『お兄ちゃんおはよう』
『あらグスタフ、ご飯食べなさいよ』
その声で彼はテーブルに並べられた料理に目を向けた
トマトサラダにハムサンド、今日は軽めの朝食になっている
『わかった、食い終わったらちっと出るぜ?』
椅子に座りながらもそう伝えるとルーシとディジーも朝食を食べる為に椅子に座る
やはりグスタフの雰囲気が少し違うなと気になる母親は昨夜とは一変し、聞いて見ることにしたのだ
『そういえば昨日から機嫌良いわね?どうしたの』
『だっよねーお母さん、お兄ちゃんとしたの?』
母親に釣られるようにルーシーも首を傾げて兄を見た
グスタフは一応まだ内緒だと抑えきれない笑みを浮かべつつも2人に自分のステータスを見せる
するとどうだろうか、ルーシーとディジーは目を大きく開けてずっと彼のステータスを見つめたまま固まっていたのである
この家系から天位職が生まれたという事実もあっての驚きだろうがそれにしても大袈裟だなとおもっつあグスタフは口を開いた
『まだ内緒だぜ?あいつが帰ってきたら大公開してやるぜ・・・それまでにこの職の事を知らないと宝の持ち腐れだ』
あいつとはジャムルフィンの事だろう、彼はルッカと薬剤師の上級試験の付き添いでポートレアに言っていたので今のグスタフをまだ知らない
だからといって内緒で戦う事もしない、まだ今の現状この職を扱えるとは微塵も感じていないからである
『イビルディザスター・・・グスタフこれどんな職なの?』
『おお母ちゃん!これ凄いんだよ!村の外の魔物迄普通に感知する』
『はぁ!?』
似合わない驚きを声に出すとルーシーは渇いた笑みを浮かべて囁く
『広すぎない?』
『俺もビビるぞ?しかも何の魔物かも何を思っているかも範囲内の魔物の全てがわかるんだぜぇ』
グスタフは家族と朝食を食べながら説明した、話を聞く2人は終始彼の言葉に真剣に耳を傾けるが驚きの連続でちょくちょく食べる手を止めてしまっている
今わかっている事は魔力に対して友好的な職だという事、召喚術が一部使えるという事も話した
使える技や術などは見せる際に表記されないので彼は口で説明すると妹がふと口走った
『お兄ちゃん召喚術っての高レベルの術だよ?戦闘職で召喚術持ちは無いって学校でそう習ったけど』
ルーシーの言葉で思い出したグスタフ、召喚術とは高レベルの術でありナッツの試験で使える試験官がいた事は覚えていた
召喚士ならば扱えるけれどもルーシーが口にしたように自身で戦いながら召喚術を行使できる職など聞いたことが無いのである
未知数過ぎるイビルディザスター、天位職の書でも条件しか記載されておらず条件を書いていたとしても千剣同様に唄が無いと駄目な職だが唄が必要な職ほど歴史が深いのだろうとグスタフなりの考えがよぎる
その考えは当たっていた、困難な職程その力は偉大である
達成者が2人となると条件が乗っているだけでも奇跡に近い
グスタフはそのことをふまえてルーシーに答えた
『まぁ過去でこの職になれたのは俺で2人目だし色々調べてみるさ』
そうして彼は近くの森に向かう事にした
勿論場所は北の森であり、橋を渡ると魔物がいる川辺に足を運んだ
何がいるかなど彼には既にお見通しであり直ちに向かうとそこにはブラックパンサーが水を飲んでいたのだがグスタフは茂みの中からその様子を伺い始める
喉が渇いた、一先ず喉を潤して休む
そう彼の心に魔物の感情が流れ込んできているがまだ慣れぬ感覚にまだ驚くグスタフ
(凄ぇな本当こいつぁ)
そう思いながらもじっとブラックパンサーを観察する
飲み終えた黒い魔物は軽く犬の様に背伸びをすると上流に歩いて去って行ってしまう
寝床で休もう・・・今日は狩りも終わったし面倒だ
『ケッ・・・魔物も人と変わらねぇな』
そう口に出した彼は次なる場所に向かうが森を奥に進んだ山の麓付近、この山を越えれば違う村に行けるのだがここからでもその近くまでの魔物が細かく彼にはわかっているが行かない、行く理由が無い
一先ず自分の村の近くの範囲での考察を試みる
山の麓まで向かうとゴブリンの徒党が焚火をしながら猪を焼いていた
丁寧に焚火の周りに石を囲んで人間の様に上で気とも言える立派な焚火だ
再び森の木の影からチラリと顔を出してその様子を見ているがゴブリンもお手の物、心が聞こえる
腹減った・・・もう食べよう
昨日生焼けで腹やられただろ?
『ギャギャギャ!』
『ギャーギギギ』
鳴き声がそのように聞こえる彼はこの感覚を楽しんだ
ゴブリンにも人間の様にひっそりした感じで生活していたのだなと思うと彼らの見方は変わるが襲われればそれも無関係、倒すのみである
奥の方に目を向ければ小さい洞穴であり確実にゴブリンの根城だと思われるが今は倒す理由も先ほどの様に意味が無い為グスタフは静かにその場を後にする
周りに魔物がいないことを確認したグスタフは次の試作に移る
『影馬』
森の中で彼はとある特殊な技を使用したが召喚術である
その言葉を発するとグスタフの影が前方に大きく伸びで真っ黒な馬がその影から飛び出してきたのきたがそれは黒馬に似た何かだがタテガミが異様に長い、だが馬ではない・・・影だ
黒い煙を体中から薄く発しながら主であるグスタフの近くにいくと乗れと言わんばかりにその馬は彼の横にぴったりとついた
『召喚術でもこれは乗り物か、しかも魔力消費が予想よりも少ねぇ・・・まぁ魔力量が大幅に増えた事もあるし』
馬の背中を軽く撫でると心地よさそうにし始めた
その様子を見て軽く鼻で笑うグスタフだがいよいよ馬に似た影に乗ると乗り心地は最高だった
きっと乗りやすく馬が形状を背中の上だけ僅かに調整しているのだと直ぐに理解するとグスタフはその馬で色々試し始めた
『行こうか、ブレヴァリ』
何故か彼は馬に名前を付けた、これは彼のちょっとした遊び心でもあるが名前があった方が拍がつくしこの馬の影にも命令しやすいだろうと思いそう口にしたがそれは良い方向に向かうのだろう
前足を上げて嬉しそうに泣くとそのまま着地と同時に影馬ブレヴァリは森の中を走り出した
(ちょ!?早い!)
森の景色が一瞬で後ろに通り過ぎていく
グスタフのダッシュとは比べ物にならないくらいに足が速いが馬だから当たり前であろう
走っている時に前方にゴブリンやハイゴブリンなどが進む先から何事だというような感じでこちらを見るがその時には既にグスタフの乗るブレヴァリは目の前、あまりの速度に目を見開いている隙にその突進に吹き飛ばされてどこかに飛んでいく
(弱い魔物には突進だけで行けるか、だが戦わせるという手段は止した方が良いな)
彼は影馬を移動手段だと決定づけた
時速は80キロは出ているであろうその速度には圧巻だ、ここは森なのだから無尽蔵に生えている獣道を華麗に避けて村へと戻るその足腰の強さをグスタフは称賛した
『流石だぞブレヴァリ』
『ブルゥ!』
馬も嬉しそうにしているがきっと平坦な道ならばもっと速度が出せるだろう
試さなくてもわかるのでそれはしない事にして村へと戻るが5分で辿り着いてしまった
橋を渡り門を通るかと思えば10mある防壁を軽々飛び越えて村の中に入っていくが防壁を監視していた衛兵2人がかなり驚いてグスタフを見ていた
『グスタフ君、それは・・・』
『ああ!新しい相棒だ』
『なるほど、お疲れ様です』
『ああ』
軽く会話するとグスタフは再び馬を軽く歩かせながら腕を組んで考えた
一度この召喚を発動すると一回分の魔力消費だけで良い事、召喚時間が長いからその分魔力消費するというわけじゃないらしい
ナッツのハンドハーベンと似たものであろう、しかもこのまま別の技も使えるとわかった
『シャドーボール』
空に向かって馬の影から黒い球体を撃ち放った
馬上での戦いもできるとわかりグスタフは軽くニヤついた、馬の扱いは意外と上手いと自負している
そしてこの影馬ブレヴァリだが消そうとしても嫌がる、グスタフがそれには困ってしまう
体中を撫でたりして機嫌をとって数十分、ようやく馬はグスタフの影に吸い込まれるように消えていくと彼は一息ついて近くのベンチに腰を下ろして口を開いた
『影犬』
今度はベンチに座る彼の影から5匹の真っ黒な犬はグスタフの前方に現れたがサイズは人間の飼う犬と変わりはない
本当に犬だ、グスタフが主とわかっており尻尾を大きく振りながら彼の前で下を出しながら何かを待っている様であるがそれに対して彼は苦笑いしながら命令を出すことにしたのだ
『お座り』
『『『『『ワンっ!』』』』』
座った、グスタフはどうすればいいんだこいつらと思い額を抑えて俯いた
変わった召喚術である、いったいこいつはローガンはどのように扱ったのかまったくわからない
戦える様な感じはしないが彼の持つ召喚術は2種類だしどちらも戦闘させると言った趣向ではないだろう
座って尻尾を振る影犬を見つめながら彼は頬杖をついて考える
軽い命令をさせるだけでいいのか?と
だがこの犬の能力を彼は今知る事となる、偶然にも道の奥からレイ衛兵長が部下2名を連れて歩いてくると影犬はバッと振り向いて彼らを目視すると1匹だけワンワンと可愛く鳴いてレイ衛兵長に近付いて言ったのだ
『おっ!真っ黒な犬!どこの犬だぁ?さぁおいで!』
レイ衛兵長は自分に好意があると勘違いしてしゃがみこんで犬を迎えるために両手を広げて待ち構えた
『ちょっ!!レイさん!?』
その声は時すでに遅し、影犬がレイに向かって飛び込んだ
笑顔を浮かべて抱きしめようとしたレイが影犬に触れた瞬間にボフン!と黒い煙に包まれた
かなりグスタフは焦った
『なななななな!なんだこれ!体が動かぬー!』
レイは黒い煙に包まれたまま抵抗を試みるがそれも無理そうである
焦っていたグスタフはこの時影犬の能力を理解できた
(こいつら対象に触れると相手の行動を・・・)
止めている、金縛りに近い状態異常だと理解した彼はこの召喚術の評価を上げた
使い方はいくらでもある、2名の部下はあたふたしながらレイを見ているがその拘束も5秒ほどで解除されるとレイは疲れたらしくその場に尻もちをついてグスタフに視線を送って口を開いたのである
『グスタフ君、これ新しい術かい?』
『すいませんレイさん、そうっす』
『あははは!可愛いからわかんなかったよ・・・触れると数秒の金縛りか、残りの4匹もそうなのだろうな』
そう言いながらグスタフの正面で尻尾を振る犬を見た
頷いたグスタフはそのまま犬を消してレイに向かってお礼を言うが犠牲になったとわかったレイは苦笑いしながら答える
『いいよいいよ、君もだんだんジャムルフィン君と同じ感じになって来たね』
その言葉がたまらなく嬉しく感じた
俺は近づいていると決定づけるその証拠となる言葉に彼は口元に笑みを浮かべて頭を下げるとそのまま家に戻ることにした
今日全部の技を知る必要はない、焦らず行こうと冷静な判断をしたグスタフは帰り道を歩きながら小さく呟いた
『犬の名前はコロだな』
今日一番のネームセンスの無さが開花した
ゾロア『ブレヴァリの名はbraveryからであり勇気、大胆さ、勇敢さを意味している』