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【完結済】槍の新兵は夢を見ない  作者: 牛乳太子
13章 番外編 それぞれの生活
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11話 大雨の街ポートレア

次の日は予想以上の大雨の雨音に俺はルッカよりも先に起きた

俺は上体を起こすと窓に視線を向けるけども雨が打ち付けられて窓のガラスが滝の様に雨が流れている


『おはよ・・・雨凄い』


どうやらルッカも起きたか、だが眠たいらしくまだ彼女は薄目だ

そんな彼女に頭を撫でながら答える


『この前の村での土砂降りだな』


『そうね』


2人で暫く窓を見つめるが雨が止むことは無い

どうやら本当に今日は外に出るのはやめた方がよさそうだ、時間を見てみると朝の5時とまだ早かった

夏になると外が明るくなるのが早いせいで頭の感覚が狂う

ルッカはパタリとベットに再び寝転がるがどうやら寝る気だ、ザ・二度寝だな

確かにまだ眠い、俺も便乗してベットで横になり再び寝始めるとちゃんと起きたのは朝の9時である

着替えてからフロント迄降りて見ると窓全てが滝の様な光景となりこれじゃ外には出られない

物流関係はこういう時辛いけども殆どは休みになる筈だ、窓から目を凝らしても人は見当たらない


流石の大都市でも自然の驚異の前じゃ形無し

そうしてルッカと宿の中にある軽食店にて朝食を取る事にした

他の客も大勢おり、空く迄数分椅子に座って待っていたけども客の殆どが一般客であり他の街から着た人達だろうし冒険者はごく僅かしらいない


朝食はゼリフタルでは当たり前のスクランブルエッグにベーコンは必ず出る

俺は好きだけどもな!ルッカはサラダを追加で頼むとキャベツの千切りにミニトマトが1つ乗っている簡単な料理が出てきたが胡麻ドレッシングをかけてなにやらニコニコしているけどお前好きだな胡麻ドレ


当然炊き立てホカホカのお米もあるので2人で仲良く食べ始めたけどもふと俺に近付いてくるスーツ姿のお爺さんが使用人2名つれて歩いて来た、あれはこの宿のお偉いさんかなと思ったが合ってるな


『誰だろうね』


ルッカがサラダを食べながらお歩いて近付くお爺さんを見ている


『宿の偉い人かな』


俺が答えると同時にお爺さんは俺の前で立ち止まり後ろの支配人と共に軽く会釈してきたので俺とルッカも同じく会釈すると彼が口を開いた


『銀狼殿と存じております、わたくしこの宿の系列の社長をしておりますゾッグマンと申します』


とんでもない人だった、この宿は他の街にも点々と展開されておりそのトップである社長だ

話を少し聞くと会長は妻がしてくれているらしく夫婦でこの宿を営んでいると聞くが凄い

そんなお爺さんが俺に何か用かと考えるけども多分何か頼みたいのかな


『そのような人が俺に何かありましたか?』


『はい、実はこの大雨で困ったことがありまして・・・私個人の事なのですが妻がダリアに展開している宿から今日こちらに着く予定だったのですがこの雨でどこかで立ち往生していると思うのです、勝手な我儘な願いだと理解していますがきっと森を抜ける道を夜間に選んで向かっていたのだと思いますがまだついていないのです』



挿絵(By みてみん)



確かにダリアから東に直線で行けばポートレア迄最短、だが森があるけども一応は通り道はあるがそこを通って来るはずだと彼が言っている

昨日の夜から出発しているらしいから今頃はついていても可笑しくはないのだがまだ来ていないので夫である社長は心配しているのである


この大雨で立ち往生という線は濃厚だ、色々忙しくて天気を頭に入れてなかったのだろうか


『個人の事というよりも仕事上のお願いでは?』


ゾックマンにそう答えると彼は首を横に振って正直に言った


『それなら貴方様にお願いなどしません、妻が心配だからこそ頼んだのです』


なるほど・・・感情の問題か

ルッカは期待の眼差しで俺を見ているけどもそうされなくてもやるしかあるまい

俺は武器立てにかけておいたハルバートを握ると彼に話した


『ちょっくら行ってきます』


『本当に有難い、のちほどお礼は致しますのでどうかお願いします』


行くことは決まったがこういう状況を離されては無視は無理だ

人助けは冒険者としてもしなくてはな、ルッカは俺が戻るまでは自主勉強していると言うから俺は大雨の中外に飛び出した

銀彗星で加速をしても雨を避けるのは不可能、自然を避けると言うのは諦めよう

西に進んで走り出すが俺は数秒でずぶ濡れとなる、多少服が濡れて重く感じるけども問題ない

街の通りに人はほぼいないので贅沢に道の真ん中を駆けだす


ゴーという雨には似合わない音が辺りに響くが水の都ポートレアと言われている街の水路はいたる所で溢れそうで危なそうだ


『凄いな・・・今日は人間の休日だな』


そう呟いて数分で街を出ることになりゾックマンの妻が通るであろう夢凱通(ユメガイトウという道をダリアに向けて西に直線に進んだ

暫くは知っているけども馬車は見当たらすとうとう森の中にまで足を勧めるけども人の気配も無い

途中で馬車が転倒してとかそういう事態も備えて気配感知を十分に働かせているが近くには魔物の気配しかない、魔物はいるけども遠いから問題なし


『もしかして天気があれだし出発をずらしたとか?』


そういう考えも浮かび口にする 

幸いな事と言えば風は強くない


『ガウ!』


黒い猫か、名前なんだっけ?ブラックパンサーだっけ

お前は黒いのに夜はちゃんと寝るとか衛生的過ぎるぞ

もっと体の特徴生かして夜行性になれ


『そい!』


『ギャウン!』


銀閃眼の通常弾を1発胴体にお見舞いして撃退

いたのは知ってたけども注意を払うレベルかと言われるとそうでもないかならな

森の中の道は速度を落として進むがそうしていると奥の方で僅かに気配を感じた、人の気配だが数人


『これか?』


道を少し外れてる?距離は数百メートル、進んでみると雨によって馬車が通ったようであり車輪の後が水溜まりになっついたがそれが途中で横にずれている


その方向は森だか目を凝らすと森を屋根の代わりにして馬車が雨宿りしていた、近付いてみると馬車を引く馬の足が怪我しているけどもこれが原因か、馬の足には包帯が巻いており体には体が冷えないようにタオルケットがかけられてた




『どなた?』


馬車の中から顔をだすおばあさんがいるが後ろには他にも馭者っぽい人や冒険者らしき人がいるのがわかる


俺は会釈をして自己紹介をしたんだよ


『初めまして、銀狼のジャムルフィンと言いますがゾックマンさんに頼まれて様子を見に来ました』


『夫が?』


『心配していたようで丁度宿に泊まっていた俺に見に行くように頼んできたので来てみたのですが馬の怪我ですか』


『そんな銀狼さんがくるなんて…私のせいです、悪天候に無理して馬を走らせた結果このような事になってしまい…』


ゾックマンの妻は落ち込んだ様子でそう口にすると中にいた冒険者二人が外に出てきて話してきたんだ


『魔物ならば問題ないが治癒術は使えなくてどうしたもんかと悩んでいたんだ』


『私は魔道士だけと治癒術はまだ覚えてなくて…』


それは仕方ないだろう、男女の冒険者は肩を落とすが総ての出来事に対処出来るほど冒険者は便利屋じゃないぞと伝えると彼らはホッと胸を撫で下ろして返事してくれた


『ありがと、そう言われると少しは楽になる』


男が微笑みながらそう言った

それにしてもだ、馬の怪我を見てみたが外傷はなく足を滑らせて捻ったんだろうなと思う


『ブルルル』


鼻息を俺に飛ばすな、なめるな…

皆心配そうに馬を見ているがここは使うしかないな

俺は馬の怪我している前足に右手を伸ばして口を開いた


『グレンツェントヒール』


緑色の光が俺の右手から馬の足に流れていく、その様子を見て魔道士の女性は目玉が飛び出そうなくらい驚いた顔で固まった

まぁ君の職からすればこれ賢者の治癒術だもんね、卑怯だよな


『ブル!?』


馬も何が起きたか理解できたらしく元気に立ち上がるとめっちゃ俺をなめてきた


なめるな…


その光景に馭者は馬車から出ると馬の容態を見て口を開いた


『こりゃ驚いた!伝説の治癒術を銀狼殿が…戦いでは敵無しなのに治癒術持ちとは生きてることが理不尽としか…』


誉めてるの!?

肝心のゾックマンの妻は何が起きたかわからず馬と俺を何度も交互に見ているので俺は苦笑いしながらゆっくり馬を進めましょうと話すと困惑した感じて小さく頷いた


馭者は馬車を道に移動させて馬に引かせ始めた

雨だから馬の体温低下も危惧していたけどもそこは馬の首にかけている魔石で体温低下を防いでいるらしいから問題はないと自信をもって言う


だが馭者よ、お前はずぶ濡れかよ!なんか羽織れよ

俺は馬車の中に入り冒険者二名にゾックマンの妻であるセラさんと軽く話し込んだ


『まさか銀狼とは、戦闘特化職でありながら完全治癒術持ちとはな』


冒険者の男がそう口にするが俺は自分がどう周りから評価されているか気になって彼に質問してみた


『俺って冒険者からどんな感じて化け物扱いされてるんですか?』


それには彼は苦笑いしながら考え込んだ

女性の冒険者は笑いながら代わりに答えてくれた


『全距離から対応できる高性能な技持ちに身体能力の高さがそれを更に引き立ててる卑怯な職って聞いてるわ、武人祭見たけどあれに立ち向かう冒険者達に称賛送りたいわ、あんな速度で攻撃されたら無理よ…人間の反応速度越えてる』


ありがと、一応誉めてるととらえよう!


『そんな凄い人に助けて貰えるとは光栄です、お礼は着いたらきっと』


サラさんがしんみりと言うがいらないと答えるとますます困惑した顔を見せてきた

報酬は目的じゃないと伝えてから正面の窓を開いて馭者に話しかけた


『変わろうか?寒いでしょ?』


『実は……』


寒いらしい、まだそれなりに若そうな馭者だがそれでもこの大雨なら風邪はひく筈だ

一先ず交代という事で俺が馬の手綱を握るが特殊な事はしない

馬は俺の村にもいるしこれくらいできる


『ほえー、最強が馬をひいている』


冒険者の女性が窓を開いて口を開いてるが似合わないと言われている気がするがまぁいいか

流石にこの雨だと魔物でさえ今日は大人しい、さっき襲ってきたのは多分魔物じゃない…多分


セラさんが後ろの窓から話をしてくれたがどうやら今回ダリアにある同じ系列である宿の様子を見に行っていたらしくその帰りだったとか

明日は夫であるゾックマンとの結婚記念日もあり急いでしまったんだってさ


だからゾックマンはそれもかねて個人の願いだと俺に頼んできたか

でも無事で何より、少し雨が弱まったからある程度視界も見やすきなる


『あのまま立ち往生してたら今よりもっと道は悪くなってたかもしれません』


セラさんが言うけどもその通りかもな

この大雨はしばらく止みそうにもない


『ポートレアには夕刻着きますね』


彼女にそう伝えると馬とずぶ濡れになりながらポートレアにゆっくりと進める

途中休憩を2回挟むがその時にゴブリンが現れたけど森の奥から眺めているだけで流石のゴブリンも雨に打たれるのは御免か


襲いかかる様子もなく敵意を感じないのでこちらも変に刺激しないように皆に指示してから数分体を休めて再出発した

大雨と言うこともあり魔物の出現は無くポートレアまで辿り着いた


宿に着くと心配でずっと外を眺めてたであろうゾックマンは大雨など気にせず外に飛び出してくるが直ぐにずぶ濡れになるが相当不安だったのだろうと感じる


『おお!銀狼殿、ありがとうございました』


『ゾックマンさんずぶ濡れですよ、宿の裏手の小屋に移動させますね』


『わかりました』


そうして馬車を収納する小屋に馬を進めてから皆宿に入りようやく安心して休むことが出来るだろう

俺はずぶ濡れだけどもそのまま借りている部屋に向かうとルッカは机に座ってお勉強中だったのだが俺の姿を見て驚いた様子でタオルを用意してくれて一先ず服を脱いで体を拭いた

当然俺は裸なのでルッカは顔を横にそらしているけどもちゃんと話はしている


『大丈夫?』


心配そうにしているが問題はない


『大丈夫だ、馬がこの天気で足を滑らせて立ち往生してたから治癒術使ってここまで来た』


『それならいいけど、強いからって無理しないでよね』


その言葉がなんだか嬉しい

体を拭き終わってから着替えるとようやく彼女もこちらを向いてくれて軽くハグしてくるが暖かい、良い匂いだ


『お疲れ様』


その後またフロントまで戻ると馬車に一緒にいた二人の冒険者がいたがこの宿に泊まるらしく受付をしていた最中で今日は無料で宿泊できる事に喜んでいた

明日は雨も小雨になるらしいのでその時にダリアに戻るらしい


『助かったよ銀狼』


『ありがと銀狼』


感謝されるのは悪くない、笑顔で反応してからゾックマンとサラさんに応接室に呼ばれたけどもお礼の話になったけども報酬は別にいらないと言っても納得はしてくれなかったから仕方無く金貨8枚を頂いて部屋に戻るとルッカがベッドに横になって休憩していた


『あとは明日に控えるわ、勉強し過ぎると緊張しそう』


なるほどな、そういった作戦も良いと思う

それにしても凄い雨だ、先ほどまで雨の勢いは弱まったと感じかのだが再び土砂降りと化している 


『今日は冒険者も依頼なんて無理だな』


そう口にしながらベッドに横になってルッカを唾棄枕のように抱え込んだ


『んみゅ』


ルッカから変わった声が聞こえたけどもまぁいい

たまには何もししない日もいいだろう、とは言ってもちゃんと動いたんだけども人助けだ

グスタフは今日妹のルーシーの買い物の付き添いと出発前に聞いていたがこの様子じゃナラ村も外出は無理だ


色々考えていると何やらルッカが俺の首もとを甘噛してくるが顔を覗けば少し赤い、熱かな?とは思いたくなるがこれは恥じらいがあっての彼女なりの僅かなメッセージである


そうかしたいのか!やることないならやることしないとなぁ!

まぁ多分だけども彼女の生理も近いのだろうし女性はそうした現象の前にはなんとやらと聞いたことはある


勿論普通に襲ってから二人でタオルケット1枚羽織った

裸同士だとくっつくだけで直接体温が感じるが意外にそれが好きだ


夕方には雨も徐々に勢いを弱めて小雨にはなるけども外に出るつもりはない

ルッカと服を来てから夜食をとるために1階に降りるが明日は大事な試験である


できるなら合格してほしいけどもそれは口には出さずに満足行く成果をぶつけてほしい





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新作ですがこの小説を見てる人ならわかる部分が多い内容になってます 勇者ですが指名手配されたので逃亡ライフをはじめます
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