20話 決勝まで来たんだけど
俺は4日目には父さんに会場の外で捕まってしまい皆でご飯を食べに行くことになったけどもナッツはベティーナの親と何やらまた会う案件があるらしく苦笑いしながら俺達と別れたが俺とグスタフは夜食の場をポートレアの適当なところで外食となったがナラ村の領主であるエドガーさんがすこぶるご機嫌が良かったのが印象的だった
一応この夜食会は決勝に向けて頑張れ会みたいなことを父さんが適当につけていたけどもまぁ飯が食えればそれでいいやと思いながら黙々と食べていたが大人連中はとてもはしゃいでいたしゼルさんもその輪に入って酒を飲んでいたから今日は息抜きみたいな感じだろうと思いながら肉をグスタフと頬張っていた
当然ルルカもその場におりグスタフの隣の席で微笑みながら彼用のご飯を皿に盛って渡しているけどもその行為に熊は何も突っ込もうとしない所をみると公認らしい
グスタフ・・・お前も満更じゃないだろ
そんな外食も終わると今日くらいはルッカを借りることにして俺とグスタフとルッカはホテルに向かったけども当然ルルカもついて来た
それもその筈、彼女は最高峰の部屋を大会が終わるまで借りているんだし当然俺達と一緒に来る
各自部屋に戻ると俺はパンツ一枚となるが暑いわけじゃない、この部屋は温度を調整する魔石が天井につるされておりそのおかげで快適な部屋の温度が保たれているが俺は熱気・冷気耐性があるからいつも快適な温度である
ルッカも寝間着というよりかは短パンにTシャツ姿になるが胸が強調されて俺の目が幸せを感じている
『見過ぎでしょ』
胸元を隠して顔を赤くする彼女もいつも通りだけども男だし仕方ない
『しょうがないだろ、とりあえず飯も食ったしここにも薬剤師の変わった本が1回フロント近くの休憩室フロアにあったけど見に行くか?』
ベットに腰かけながらそう言うとルッカは即座に目を輝かせて即答した
『いく!』
そうだよな・・・
んで俺はちゃんとルッカの様に短パンにTシャツ姿であるがハルバートを持って彼女と1階に降りると休憩室フロアの椅子に仲良く座ってルッカが本を読んでいるのを俺は眺めていた
奥の方にはロロノイがソファーに座っているが彼も本を読んでいたけども表紙には魔物百科とか書いてるし冒険者として勤勉なのだろう、けれどもチラチラとこちらを見ていると言うよりもルッカを見ている
いやルッカのTシャツから際立つ胸を見ている
気になるのか貴様ぁ!俺は笑顔で軽く殺気を送るとロロノイはビクンと一瞬震えて咳ばらいをしたのちに静かに本を読み始めた
この一件をルッカは夢中で本を読んでいる為気づいていないだろう
すまんなロロノイ!俺の女だ・・・タダでは見せんぞ?
そういえば思い出したけどこの大会が終わって少しするとルッカの薬剤師の上級資格試験がポートレアであるらしい、俺は付き添いでいくことにしているけどもその為にも知識を今吸収してもらいたい
今年は大会後だからそれに向けて猛勉強という事だろうけどもそれなのに応援に来てくれるのはとてもありがたい
『この本イラストが多いから覚えやすいけども城から貰った分厚い本の方がヤバいくらい細かく書いてるのよねぇ』
そういえば国で一番良い薬剤師の本をくれと頼んでもらっていたけどもそれが一番優秀らしい
俺にはとてもわからないけども彼女が言うんだからそうなのだろう
『国で一番の本を貰ったからな、それにしても上級試験か・・・難しいのか?』
『そんなわけないじゃなーい!100人いて2人くらいしか受からないくらい難しいのよ』
結構ヤバいのか、奥が深いな薬剤師も
するとルッカは本を閉じて本棚に戻すと一息ついて椅子で寛ぎ始めた、必要な情報は頭に入れたらしいけどもあったのだろうか?
『ここ本当にいいわねぇ』
『デカい家で住みたいか?』
『いらないわよ、住むなら逆に落ち着かないわ・・・泊まるならばたまにはいいかなってね』
そういう事か、まぁそんな欲がないからなこいつは
普通に村で暮らす分が丁度いいんだろうけどそれは俺も同じである
『明日は決勝よ?休まなくていいの?』
首を傾げて彼女が俺に問うけども俺は普段通りしていればいいし問題ない
相手はカールであり苦戦するかもしれないけどもだからと言って特別休息をとらないとという考えにはならない
飽く迄いつも通りである、自然体が俺には向いている
『大丈夫だ、いつも通りいくつもりだしさ』
『ふーん、にしてもよくここまで強くなったものねぇ』
微笑みながらそう口にするルッカ
近い人間にそこまで登りつめた男がいると言うのは滅多にお目にかかれないし婚約者でもある
考えれば考える程とんでもない事だけども俺は強くならないといけないからな
『強くならないとお前とも入れないからな』
当然の様に答えるとなんだか照れだしている
足をパタパタとさせているけども機嫌が良いらしい、女は足でわかる!筈だ・・・多分
『リヴィより強くならないとね』
『ああ・・あと少しで俺は摩天狼になれる、なって勝てると言う保証は俺はわからないけどもシルバがあいつに勝てると言うんだから信じるしかない』
『結婚して直ぐ未亡人とか嫌よ?』
『わかってるよ』
面白い事を言うもんだから少し笑ってしまう、確かに来年には結婚するしその頃には俺も最終的に摩天狼にはなっているだろう、ルッカの力を借りてなるんだし負ける訳にはいかない
俺の強くなる目的は生きる為だ、人が当然に行う行為を俺もするために
『明日頑張ってね』
その言葉は何よりもうれしい
『ああ』
それよりも速くご褒美を前借させてくれないだろうか、そろそろ俺の精神も限界が来ている
俺は少し性格が変わったかもしれないがそれは環境が変わったからだろうし職だけの影響とは言えない
なんだか前より自信を持てるような気がする
『おらぁ?ジャムルフィンの嫁さんべっぴんさんじゃねーか』
俺とルッカはその声の方向に顔を向けると以前より包帯巻きになっているバニアルドがニコニコしながら反対の椅子に座ってきた
何やら交互に見てから小さく何度も頷いて微笑んでいるけどもこいつもなんだか機嫌がいいな
今日は赤マントを羽織っておらずこいつも短パンにTシャツなので包帯が一層際立つ
『なぁに俺も鈍感じゃねー、少し話したらちゃんとおめーらの時間にするからよ』
そう言いながら腕を組んで笑っているけどもなんだか楽しそうにしている
ルッカがお辞儀をすると彼に口を開いたんだ
『初めまして、今日はジャムルフィンがお世話になりました』
『ああ!俺はバニアルドだ!よろしくなっ・・・というか話で聞いてた通りいい嫁さんだなぁ!ってことはジャムルフィンは尻に敷かれるだろうな』
少し心に刺さったけども図星かもしれない、彼の言葉にルッカも口元を手で押さえて笑っているきっと否定できない
それにしても話に聞いてた通りとはどういう事だろうか
少し気になってバニアルドに聞いて見ることにした
『話に聞いてた通り?』
首を傾げて質問を投げつけるとバニアルドは腕を組んだまま話してくれた
『そりゃ参加者の情報でお前が一番皆欲しがるんだからな、どのくらい強いかとかどんな戦い方とか情報を探してれば身内周りも自然と手に入れれるんだぞ?その中で銀狼の嫁さんは学園時代では天使的存在の女だったって聞いた時には半信半疑だったかいざ目の前にすると納得だぜ?俺もそろそろ身を固めて母さんを安心させるかぁ』
まぁ一番の要注意人物で間違いないだろうな俺は、彼の言う通り情報を欲しいと思い探せば身内周りも手に入れることは出来るが最後はこいつ自身の隠居を考えやがった
だが学園生活のルッカの話か、誰でも当時の学生だった奴らなら知ってるか
なんだかルッカもバニアルドの話を聞いて少し顔を赤くしているけどもよほど気になるのか彼に言ってみたんだ
『誰から聞いたんですか天使とかそんな・・・』
『ん?マルス!!!』
ガチャン!と何かを落す音が聞こえた
3人でフロント付近に顔を向けると部屋の鍵を床に落としてこちらを見ているマルスが引きつった笑顔でゆっくりと後ずさりしているのが目の映る
『マルス君・・・』
ルッカも苦笑いしているといきなり慌てだしたマルスが早口で言いだした
『違うんだ違うんだ僕はルッカさんの顔を立てようとして少し盛ろうかなと思ったけどまさかこうなると思ってもいなかったんだ別に悪意があった訳じゃないよそれでもやっぱ当時の学生の中では群を抜いた魅力を持っていたし全員が振り返るくらいの人だったし僕も遠目でしかいつも見てなかったけど天使とかは周りの学生が言っていたし確かに僕も言っていたけども』
うんわからん
あまりの慌てっぷりにルッカが腹を抱えて笑い出すとマルスは顔を赤くして床に落とした鍵を拾いこちらに近付くと彼も近くに椅子に座ったんだ
何故逃げずに座ったお前ぇ・・・
『くっふっふっふ・・・』
バニアルドも面白うそうにしているし本当にタイミング良いなマルス
『別になんとも思ってないから気にするなよマルス』
『そっ・・そうかいジャムルフィン君!』
目を輝かせてからホッと胸を撫でおろす彼はようやく落ち着いたようで椅子に全体重を乗せて寛ぎ始めた
『変わったけども変わってないわね、初めて話した時も早口だったし』
『そそそそうかいルッカさん!?僕そんなに早口かな』
照れながらマルスがルッカと話をするけども凄い早口だ
俺の銀彗星といい勝負だと思うけどな
『マルス君も大会お疲れ様』
『ありがとうルッカさん』
凄い嬉しそうだ、そうならばよかったけどもな
『んでジャムルフィン、明日は決勝だが当然決め手はあの卑怯臭いシルバシルヴァだろ?技の名前が初代摩天狼の職の者の名だと聞いているけどもあの技は流石に対処できる奴はいねぇだろうな』
バニアルドが俺に口を開く
彼の言った様に俺の切り札はシルバシルヴァだが確実に使う筈破目に陥る
カールはネメシスという別名は天罰者という天位職であり力敵には俺に一番近い奴だしさ
『シルバシルヴァからの銀彗星ならば流石にカールも動きが遅れるだろうけども必ずデュデフトラフターを使って効果を消そうとするだろうな、カウンター技の最高峰と言っても過言じゃない彼の天罰は銀彗星の効果は消せても一度加速した速度までは消せないから使うなら俺が走り出す前しかない』
『でしょうね、カールさんもそれはバレていると理解しているならば別の方法を今頃は考えているんじゃないでしょうか』
マルスは先程の雰囲気を一変させて真剣に口を開く
あいつなら俺に勘ずかれている事くらいわかってる筈だな
『そう考えるのが痛い目見ないだろう』
俺がマルスに返事をするとルッカが口を開いた
『困ったら銀閃眼で撃ちまくったら?』
彼女の言う事も最もであり俺の銀閃眼は即座に打ち込むことが出来るので溜めが無い
その為に追撃では無類の強さを誇る、しかも避けようとしても音速と同じ速度で飛んでいくので避けられる奴はそうそういない
『あれは卑怯だよな、だって弾見えねーんだもんな』
バニアルドが笑いながら評価を口にしているけども人間に避けるのは難しすぎるのだ
クズリは避けたけども・・・あれは人間じゃないと思う
『発砲音が聞こえたと思ったらそれと同時に命中ってレベルですから、ジャムルフィン君の職は単純に職によって身体能力がずば抜けて強くなったと思われがちですけども遠距離や中距離そして近距離まで満遍なくこなす技を保有している事が上乗せされている気がするんですよね』
マルスが苦笑いしながら俺の顔を見て言う
そうだよな、ただでさえ身体能力がかなり上がったうえに優秀な特殊技が沢山あるんだから相手にされた奴はたまったもんじゃないだろうに
カールは俺が予見持ちだってわかってるけどもそれでどう動いてくるかが未だにわからない
天罰を使われても俺の反射神経ならば即座に動けそうだけどもその場になってみなきゃわからないな
それでも俺は負ける気が一切しないんだ、理由はわからないけども行ける気がする
『大怪我させないでよねジャン』
『わかってるよルッカ』
明日が少し楽しみである
去年同様に決勝はカールだし因縁染みた戦いになるだろう
前より彼は桁違いに強くなっている、油断はできない
そうして俺達は解散してルッカと部屋に戻るとベットに横たわるルッカに飛び込んで狼と化すけども俺はおっぱい星人なのかもしれない
終わった後はルッカの胸に顔を埋めて柔らかい感触を感じて寝ようとすると彼女が頭を撫でて来た
『無理しないでね?』
『わかってる、終わったら薬剤師の試験だろ?手伝うよ』
『ありがと』
軽い会話をして俺達は明かりを消して眠りについた
翌朝はルルカがノック無しに部屋に入って来たが鍵はかけた筈、どうやって入ったんだろうか
『起きなさい?夜は楽しんだと思うけども朝食の時間よ?』
ルッカと飛び起きたけどもそのまま皆でグスタフを連れて朝食をとってからポートレア闘技場に足を運んだ
最終日は付き添い以外は選手控室が使えないが去年同様グスタフがついてきてくれた
ナッツは会場の外で出会ったけども選手用の客席で応援してますよ笑顔で言うと走って去っていく
控室で俺とグスタフは椅子に座ってのんびりしているけども当然カールもいる、それに付き添いはミミリーだ
『今回は去年と違うわよー?』
ミミリーがなんだか楽しそうに口にしている
この感じもなんだか久しぶりだと思いながら彼女に返事をした
『そうだろうな、だが油断はしないからな?』
『わかっているさジャムルフィン』
するとカールが返事をしてきた、彼の顔は穏やかでありいつも通りの表情を俺に見せる
俺もお前もいつも通りってことだな
この場で一番いつも通りなのはミミリーかもしれない、ずっとニコニコしているしな
『今回は勝つ』
カールが自身の目の前で拳を握り微笑むがそれに否定するように俺は答えることにした
『今回も勝たせてもらうよ』
『ふふふ・・・楽しみだよ』
機嫌よくカールは腕を組み始めた
グスタフは空気を読んでか大人しく会話を聞いているだけにしている
さてどう戦えばいいのだろうか考えてみるか
銀閃眼を即打ち込む、この手に限るな
それでカールに行動を起こさせようと思うが俺は避けることに関しては不安は無い
ただどう動いてくるかを知りたいし後手でも予見のおかげで対応が出来るのでカールを動かす方が俺にはいい
『さぁ今日は武人祭最終日!3位決定戦と決勝ですが今回3位決定戦のバニアルド選手は流石にグスタフとの死闘からの銀狼との戦いで体力が尽きたために棄権と申告が彼の母親からきました!よって3位は西皇帝グァゾ選手に決定しました!』
母親かい!!!!、まぁでも仕方ないよな・・・あいつとうの限界超えてたし俺との試合も十分動いたよ
その後も司会の白熱した話が聞こえてくるけども今の俺達にはどうでもいい
客を沸かせるとかいいものを見せるとかそんな事どうでもいいんだ
ただ目の前の男を床に鎮めるだけだ
『俺が何か言うまでもねぇな』
グスタフがそう告げた
不思議と落ち着いている俺を察しての言葉だろう
『いつも通りでいくよ』
『そうしな』
それ以上は彼は何も話さなかった
話したとなると役員が俺達を呼びに来てから入場口までグスタフが来てくれてその時に一言だけ言ったくらいだろうな
『頑張れよ?』
『ああ』
彼とハイタッチをして俺はリングに向かった